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戦国異伝

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第二百十七話 九州騒乱その五

「家臣であってよかったわ」
「ですな、そして江戸城は」
「あれの縄張りはな」
「徳川殿でしたな」
「うむ、働いてくれた」
 織田家、信長の盟友である家康がというのだ。
「あの方はとかくな」
「はい、いつもですな」
「織田家を助けてくれる」
「まさに天下の律儀殿ですな」
「全くじゃ」
 家康を評してこうも言うのだった。
「あの方にはどれだけ助けてもらったか」
「わかりませぬな」
「そしてあの方もな」
 家康もというのだ。
「天下の器やもな」
「徳川殿も」
「そう思う、そしてそのな」
 羽柴と家康、この二人がというのだ。
「こちらにおることは有り難い」
「そしてその猿と徳川殿も」
「出陣される」
 九州、そこにというのだ。
「この度な」
「では余計に心強いですな」
「武田殿、上杉殿もじゃ」
 信玄と謙信もというのだ。
「あの方々もじゃ」
「おお、それはまた」
「心強いな」
「はい」
 まさにというのだ。
「お二人が先陣に立たれれば」
「天下に敵う者はいないわ」
「そこに北条殿や毛利殿も加わるのですね」
「伊達殿もな」
「しかも織田家家臣団もいるとなれば」
「九州攻めは果たせる」
 確実にというのだ。
「どうなってもな」
「ですな、では我等は」
「ここで我等の仕事をする」
「その九州攻めの兵糧や武具の備えと輸送を」
「その両方が出来なければじゃ」
 その時はどうなるかもだ、信行は長益に言った。
「その確実に勝つ戦もじゃ」
「はい、負けまするな」
「だからじゃ」
「我等はここで我等の仕事を果たすのですな」
「万全にな」
「わかっております」
 長益は次兄に確かな声で答えた。
「それがしも命を賭けて」
「茶を嗜んでもよい」
 長益の無類の茶好きを知っていての言葉だ、彼の茶好きは信長以上のもので利休の高弟にさえなっている。
「しかしじゃ」
「茶ばかりをするのではなく」
「己の仕事もせよ」
「わかっておりまする」
「ならよいがな」
「しっかりと承知していますので」
「頼むぞ、何しろ三十万の大軍の兵糧に武具じゃ」
 それの手配だからだというのだ。
「相当じゃ、船を使って送る」
「陸からよりも船をですか」
「その方が速いし銭もかからぬ」 
「銭もですか」
「うむ、船の方がな」
「馬を使うよりも」
「そうじゃ、だから瀬戸内からな」
 九州までというのだ。 
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