ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
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閑話――とある別界にて
前書き
今回、すべての話をはじめから読んで訂正しました。とはいっても、ほとんど変わっていないと思います。それに、見落としている箇所もあると思います。
第十五話にはすこし内容が変わっているところがありますが、読み返すほどの大きなものではないので、無視していいです。
やはり誤字脱字が目立つと思いますが、目をつぶってください、お願いします。
それと知っているとは思いますが、SAO×ダンまちの転生ものを書き始めました。
よろしければ、そちらも手に取っていただければと思います。
それとあさって、予約投稿しているのでよろしければ読んでほしいです。
「くそっ!何故だ!」
壮年の男、否男神が苛立たちをぶつけるようにソファーに拳を打ち付ける。
「何故詠唱が変わっている!俺がどんなに手間隙かけて考えたと思っているんだ!!」
ぎりぎりと歯軋りしながら、不平を垂れ流すのは顎に程よく髭を蓄えた黒髪の男神だった。
「仕方ないでしょう。あの場面であなたの考えた詠唱を紡ぐ時間などなかったのですから」
その男神が座る豪奢なソファーの後ろで付き人のように直立していた女性、否女神が貼付けたような笑みを浮かべながら、目の前の男神を諌める。
「そんなことはわかっている!!だが、あの詠唱考えるのに費やした一週間は何だったんだ!」
男神の発言と感情が全く一致していない。
「また考えてあげたらいいでしょう、あなたであればあの詠唱より、いえ他のどんな詠唱よりも『かっこいい』ものを作れるでしょう」
そんな男神に対する呆れを怒りとともに心の奥底に沈めた女神は心にもない言葉を口にする。
「そ、そうだな。俺であれば、あんな詠唱なんて糞に思える詠唱などすぐにできるのだ」
(糞なのはあんたでしょうが。この糞中二坊が)
女神は瞳に烈火のごとき怒りの炎を潜ませ、内心で唾棄する。
女神は今なおたらたらと「しかし、あの詠唱も嫌いではなかったのだ」、とか未練がましく言う愚かしい男神を視界から消すために、男神の背後にいることをいいことに、部屋の天井に目を向ける。
天井は墨でできているようにどこまでも漆黒な平面だった。
それは天井だけではない。
四方の壁もそうだった。
その所為でこのたった六Mの部屋を延々と広がる部屋のように見せる。
その部屋には申し訳程度の家具しかない代わりに、不必要な程に金の壺や金の額縁に入った絵画などのきらびやかな装飾品に溢れ、黒い部屋も相まって、視力に弊害を生じさせそうだった。
勿論このコーディネートは男神の手掛けたもので、その品位を感じさせない内装に女神は嫌悪を覚えないほどに見飽きていた。
「それにしても何故、詠唱が変わったのだ?」
「きっと彼の少女に対するただならぬ情感の所為でしょう。人間は時に私たちの理解を超える奇跡を起こします。それはあなたが一番知っているでしょう?」
詠唱の変化を呆れるほど遅れて疑問の思った男神に尽きない嫌悪を抱きながら、女神は偽の解答を渡す。
「そ、そうだったな。そうだ、そうだ」
そんな安易な解答に男神は偉ぶるように顎に手を添えて深く頷く。
「つまり俺の詠唱を消したのはあの子娘ということだな。忌ま忌ましい。何がデイドラをそこまであの小娘に現を抜かさせるのだ」
「気付かないでしょうね?」
いまだに詠唱のことを引きずっている男神に女神が訊く。
「何をだ?」
「あの少女に似た子が殺した子の中にいたでしょう?」
「あ、ああ、いたような気がするな。で、それがどうしたんだ?」
取り繕うように男神は答える。
「きっと、その子はデイドラと私とあなたのような関係だったのよ」
その男神の頬に背後から手を添えて一番言いたくない言葉を口にする。
「似たような、つまり恋仲にあったということか?」
それだけで、男神の声音に嬉々とした気色が窺えた。
「そうよ。あくまで、きっと、だけれど――でも、これだけは言えるわ」
「何だ?」
「子は本当に大切な人のためなら命に代えてでも助けようとするのよ」
男神が、訊いてくるばかりで、全く自分で考えようとしないことは無視しして女神は答えた。
その女神が見詰めるのは、男神の前にある豪奢な卓の上の円鏡、『神の鏡』。
任意の場所の映像を映し出すことできる下界で特別に公的使用が認められている『神の力』。
その『鏡』には緑光に染まったダンジョン。
そして、中心には横たわる少年とその傍で両手を翳す背中に精霊と思わせる羽を生やした少女。
女神はその二人に賭けていた。
――この死よりも辛い一辺六Mの空間からの解放を。
今まで下界に関わってこなかった、否この部屋から出たことすらない、引きこもりのゲーマー男神が最近になって『リアルRPG』とか言って一人の少年に御執心だった。
女神は一時の暇潰しかと思っていたが、男神は予想に反して没頭した。
女神はこれを好機だと見た。
何度も妨害をして男神が痺れを切らし下界に下りる、もとい上がる時、自分もついて行き、下界に逃れようと、絶命しそうな程つまらない部屋から脱出しようと目論んでいた。
(だから、その時まで死なないでちょうだい)
女神は画面の中の二人に鋭い視線を向けながら、我知らず笑みを浮かべていた。
後書き
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