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僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。

作者:小狗丸
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金色のサーヴァントとそのマスター

 声が聞こえてきた方を見ると、屋上の給水塔の上に一人の男、恐らくはサーヴァントが立っていた。

 金の髪を逆立てて黄金の甲冑で身を包み、深紅の瞳で僕達を睨み付ける金色のサーヴァント。

 あそこまで上から下まで金色で揃えた姿は下手をしたらこれ以上なく悪趣味に見えるが、あのサーヴァントの場合は悪趣味に見えるどころかこれ以上なく似合っているように見えた。

「無礼者共が。凡夫雑種の分際で我の許しなくして我を見るとはな。……む?」

 金色のサーヴァントは不愉快そうに僕達に言った後、不思議なものを見たような顔をした。……見ているのは凛と北斗か?

「そこにいるのはトオサカリンか。そしてその隣にいるのは……なるほどそういうことか」

「あのサーヴァント、私のことを知ってるの? それに青野君のことも?」

「彼は一体……?」

 自分達を知っている口ぶりの金色のサーヴァントに凛と北斗が困惑するが、金色のサーヴァントの方はさっきまでの不愉快そうな表情から面白そうな笑みを浮かべていた。

「よいぞ。トオサカリンとその隣にいる雑種。貴様ら二人なら我の特等席に踏みいった罪、特別に許そう。……だが貴様らは駄目だ。そこな雑種とそのサーヴァントよ。貴様らは我の前に立つ資格はない。失せるがよい」

 金色のサーヴァントは凛と北斗にそう言うと、次に僕とアヴェンジャーに「さっさと帰れ」と言ってきた。

 え? 何で? 何で僕達、いきなり現れたサーヴァントにそんなことを言われないといけないの?

 というか何で凛と北斗はいいのに、僕とアヴェンジャーは駄目なの?

「ちょ、ちょっと駄目だよアーチャー! そんなことを言ったら駄目だって!」

 金色のサーヴァントの言葉に僕とアヴェンジャーが不条理を感じていると、給水塔の影から僕と北斗と同じ月海原学園の制服を着た一人の女生徒が姿を現した。茶髪のロングヘアーで、クラスで三番目くらいに美人って感じかな? 彼女があの金色のサーヴァントのマスターなんだろうけど、どこかで見たような気が……?

「む? もう昼寝から起きたのか、マスター? ……ふむ。マスターがそう言うのであらば仕方がない。そこな雑種とそのサーヴァントよ。貴様らもここにいることを許そう。寛大な我と、我のマスターに額を床に擦り付けるくらい勢いで感謝するがよい。……しかしだ。マスターよ」

 金色のサーヴァントはもう腹を立つのを通り越して呆れるくらい尊大に言うと、自分のマスターである女生徒の額に右手を伸ばして「ズビシッ!」と、痛そうな音がするデコピンをした。

「ふぎゃ!?」

 デコピンをうけた女生徒は悲鳴を上げて額を押さえると、涙目で恨みがましい視線を金色のサーヴァントに向けるが、金色のサーヴァントはそれを鼻を鳴らして答えた。

「何度言えば分かるのだマスター? この我を『アーチャー』などと凡百なサーヴァント共と同じように呼ぶなとな。我のマスターであるのなら堂々と我の名『ギルガメッシュ』を口にすればよいのだ。貴様はこのムーンセルで唯一、我の真名を口にする栄誉を授かっている魔術師なのだからな」

『………!?』

 女生徒のマスターと金色のサーヴァントの会話を聞いていた僕達は思わず驚いて絶句した。あのサーヴァント、自分から真名をバラした!? というか今、「ギルガメッシュ」って言ったか?

 ギルガメッシュ。

 世界最古の英雄譚「ギルガメッシュ叙事詩」の主人公で、シュメールの都市国家ウルクを治めていた半神半人の王。

 幾度の冒険と試練を越えたウルクの王はこの世全ての財宝を自分のものとして、その伝説はその他の英雄達の伝説のモデルとなったとされている正に英雄達の王、「英雄王」と言うべき存在。

 この月の聖杯戦争にはこんな英霊まで参加しているというのか? 正直、人間の枠からはみ出たサーヴァントは、一回戦のレミエルだけにしてほしかった。

『……………』

「ふん。どうやら我の偉大さを理解できるくらいの頭はあるようだな」

「え? え? 何これ? どうして皆驚いているの?」

 僕達が金色のサーヴァント、ギルガメッシュの名前に驚いていると、その様子を見てギルガメッシュは上機嫌となって頷く。逆にそのマスターである女生徒はこの場の空気についていけずおろおろとしていた。

「あ、あの……。驚かしてごめんなさい。私は……きゃ?」

「雑種共よ。貴様らも聖杯戦争に参加しているのなら覚えておくがよい。我は英雄王ギルガメッシュ。そしてこの娘は我のマスター、『岸波白野』。この月の聖杯戦争を制する英雄と魔術師の面貌、その眼に焼き付けておくがよい。フハハハハハッ!」

 学園の屋上に英雄王の笑い声が響き渡る。

 まさか世界最古の英雄まで参加しているだなんて……。僕達、本当にこの聖杯戦争で生き残れるのか? 
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