妖精の義兄妹の絆
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大好きな友達のために
ドカッ
「きゃ。」
「んがっ。」
ナツとウェンディは坑道で捕まった後、王国兵により牢屋に叩き込まれた。
「…んの野郎…!!みんなはどこだー!!!」
ダッダッ
ナツは怒りに身を任せ出口に突撃する。
ガシャン
王国兵は寸前で扉を固く閉ざした。
「みんな?」
「ルーシィさんとシャルルとハッピーとエマです!!」
「ルーシィ……あぁ、あの女か。悪ィけどあの女には要は無ぇんだ。
処刑されんじゃね?」
そう答えたのは王国軍第三魔戦部隊隊長のヒューズである。
ガシャン
ナツは扉に突撃するが頑丈な為ビクともしない。
だが、ナツは額を血で滲ませながら叫んだ。
「ルーシィに少しでもキズをつけてみろ…てめぇ等全員灰にしてやるからな。」
「おお!スッゲェ怖ー。アースランドの魔導士はみんなこんなに凶暴なのかよ。」
「なんでルーシィさんだけ…。シャルルとエマとハッピーは!!?」
ウェンディがヒューズに尋ねる。
「エクシードの事か?」
「ハッピーはそんな名前じゃねぇ!!!」
「任務を完遂したエクシードは母国へおつれしたよ。
今頃、褒美でももらっていいモン食ってんじゃね?」
「任務を完遂?」
ウェンディはそれを聞いて疑問に思った。
_私がエドラスに帰るという事は“使命”を放棄するという事。
出発前にシャルルが言った一言。
それが本当であればシャルルたちは向かい入れられる側ではなく追われる側のハズだ。
「そんな事ありえない。その任務の内容は知らないけど、シャルルは放棄したハズ。」
「いいや、見事に完遂したよ。」
「何なの?シャルルたちの任務って…。」
「まだ気がつかねぇのか?」
ヒューズは不敵に笑いだした。それを見ていると非常に不愉快な感じになる。
一方その頃、ハッピーとシャルルとエマはというと…。
「!あれ?ここは?」
ハッピーは目を覚まし辺りを見渡すと見覚えのない部屋にいる事だけが分かる。
「どうやらどこかの寝室のようですね。」
そう答えたのは一足先に起きていたエマだった。
「エマ!!そうだ…シャルル起きて!!」
「オスネコ…メスネコ…。私たち…どうなったの?」
シャルルも目を覚まし辺りを見渡す。
「とりあえずここから出てタクヤたちを探さないとですね。」
「…。」
「シャルル?」
ハッピーはシャルルの様子がおかしい事に気付き声をかけた。
「私の“情報”が罠だった。」
「違うよ!!オイラたちはたまたま見つかったんだ!!」
「そうですよ!!シャルルのせいじゃありません!!!」
ハッピーとエマはシャルルを元気づける。いつものシャルルならここで文句の一つでも飛んでくるのだが…。
「誓ったのに…私はウェンディを守るって誓ったのに…。」
自分の情報のせいでウェンディと離れ離れになってしまい、
ウェンディがひどい事をされるビジョンが頭の中をよぎってしまう。
「シャルル…。」
シャルルのそんな姿を見てエマは無意識に涙を浮かべていた。
ガチャ
すると、部屋の扉がゆっくり開かれた。
部屋に入ってきたのはどこかで見たような顔の猫と顔の長いネコだ。
「おまえたちがアースランドでの任務を完遂した者たちか?ウム…いい香りだ。」
「一夜!!!?」
「!?」
「てゆうか、猫?」
三人がそれぞれ驚いていると後ろに立っていた長顔の猫が一夜似の猫に説明する。
「ニチヤさん、彼等は初めてエドラスに来たんですよ。きっとエクシードを見るのも初めてなんでしょう。」
「おぉ!そうであったか。私はエクスタリアの近衛師団長を務めるニチヤだ。」
「ぼきゅはナディ。任務お疲れ様。」
ニチヤとナディが自己紹介を終えた所でニチヤが外に出るように促す。
「さっそくであるが女王様がお待ちである。ついてまいれ。」
「女王様だって!?」
そう言ってニチヤは先導しナディは手招きをしていた。
「シャルル…オイラに任せて。ここはひとまず様子を見るんだ。オイラが絶対守るからね。」
「私は守ってくれないんですか?」
「もちろんエマもオイラが守るよ!!」
少しでも場の空気を変えようとハッピーとエマが会話をする。
だが、それでもシャルルの表情は沈んだままだった。
ナディに早く来るように催促され三人は部屋を出た。
道中エマがナディに「なんで腕を振ってるんですか?」と聞いた所、
「何の事だい?」と言われてしまったのでそれ以降会話がなくなった。
本人は自覚してないらしい。
外に出るとそこにはハッピーたちと同じ猫が沢山いた。広場でお茶をしている者、勉強をしている者、
元気に走り回っている者、その全てが猫だった。
「猫の国だ。」
まさしくその言葉がピッタリだ。人間など一人もいない猫だけの国。
「ぼきゅたちは猫じゃない。エクシードさ。人間の上に立ち、人間を導くエクシードだよ。」
「エクシード…。私たちも同じ…エクシード…。」
「そしてここはエクシードの王国…エクスタリア。」
目の前にあるのは女王様と呼ばれる者がいる城だ。
ハッピーたちはニチヤとナディが案内するがままについて行く。
「人間はひどく愚かで劣等種だからね。ぼきゅたちがきちんと管理してあげないと。」
「その上ひどい香りだ。」
「女王様はここで人間の管理をしているんだ。」
「女王様は素敵な香りさ。」
やっぱりこの人は一夜だなとエマは思った。
「勝手に増えすぎるとやっかいだからね。いらない人間を女王様が決めて殺しちゃうんだ。」
「な、何でそんな事…。」
「失われつつある魔力を正常化する為だと女王様はおっしゃった。」
「だからって…。」
“いらない人間は殺す”その考えが普通とは考えられないがここにいるエクシードは人間を劣等種と見ている。
それは小さな子供にまで浸透してしまっていた。
「さらに、女王様はこの世界だけでなくアースランドの人間も管理しておられる。」
「人間の“死”を決めてるの?」
「女王様にはその権限がある。なぜならあの方は
神なのだから。」
「神…!!?」
ゴーン ゴーン ゴーン
その時、外でいつかを知らせる鐘が鳴り響いている。
「私たちの任務って何?」
「!」
「私には生まれた時から任務がすり込まれていた。女王の人間管理によって選ばれた
滅竜魔導士ウェンディの抹殺。」
「「え?」」
一瞬シャルルの言った意味が飲み込めなかった。でも、それは紛れもない真実だった。
「ど、どういう事!!?シャルル!!!」
「黙ってて。」
「ウェンディの抹殺ってどういう事ですか!!!…!!!」
その時、二人の頭の中で気付いてしまった事があった。
シャルル…いやハッピーたちに与えられた任務。
「あれ?…それじゃ…オイラたちの任務って…あれ?まさか…。」
「アンタたち…知らなくて幸せだったわね。」
「オイラ/私がナツ/タクヤを抹殺する任務に…!!!!」
ハッピーとエマはあまりにも残酷な現実に耐えきれず頭を抱えその場に膝をついた。
「落ち着きなさいオスネコ!!!メスネコ!!!私たちは任務を遂行してないし遂行するつもりもなかった!!!!
なのにどうして完遂した事になってる訳!!?」
シャルルがニチヤとナディに問い詰める。
「記憶障害か?」
「仕方ありませんよ。“上書き”による副作用は未知数なのですから。」
「答えなさい!!!!」
シャルルはナディの態度に苛立ちを覚えナディに怒鳴った。
「ぼきゅが説明するよ。
女王様の人間管理に従い6年前、100人のエクシードをアースランドに送ったんだ。
卵から孵ると滅竜魔導士を捜索し抹殺するように“情報”を持たせてね。
しかし、状況が変わったんだ。人間の作り出した“アニマ”が別の可能性を導き出したからね。」
ナディは淡々と説明をしている。
「アースランドの人間を殺すのではなく…魔力として利用するというものなんだ。
中でも滅竜魔導士は別格の魔力になるみたいだよ。
なので、急遽キミたちの任務を変更したんだ。
“滅竜魔導士を連行せよ”とね。」
こちら、王都
ヒューズから全てを聞いたナツとウェンディは言葉を失っている。
そこに追い打ちをかけるかのようにヒューズが言い放った。
「オレたちが本当にほしかったのはオマエらさ。ドラゴンの魔力。カハッ。」
ウワアァァァァァァァァァ
「何?今の声…。」
微かに誰かの叫び声が聞こえた。
「数時間前に捕らえた滅竜魔導士さ。」
「「!!!」」
「一足先に魔力を吸収してるんだ。」
ウワアァァァァァァァァァ
さらに叫び声が聞こえてくる。
「やめて…やめてぇぇぇぇぇっ!!!!」
「やめないよ。アイツからはまだまだ魔力を吸っちゃうからね。」
「てめぇぇぇらぁぁぁっ!!!!」
ナツは扉を壊そうとするがびくともしない。ウェンディは泣き続けている。
「そう焦んなって。じきにおまえらからも魔力を貰うからさ。」
そう言い残してヒューズは笑いながらその場を去る。
しばらくして、タクヤの叫び声は聞こえなくなった。
そして、エクスタリアでは…。
衝撃の事実を聞いてシャルルは立てなくなった。
「やはり遠隔での命令上書きではうまく伝わらなかったようですね。」
「しかし、結果オーライ。おまえたちは滅竜魔導士をつれてきたのだからな。
魔力化“マジカライズ”は人間どもかな任せてある。そういうのは人間どもの方が得意だからな。」
ニチヤはそう言ってハッピーたちに労いの言葉をかけるが三人には耳に入って来なかった。
「ち、違う…。私は自分の意志で…エドラスに…。」
「ううん…命令を実行しただけだよ。」
「みんなを助ける為に…坑道へ…、」
「気づいてなかったのかい?ぼきゅたちが誘導したんだよ。」
「私は…私は…ウェンディが大好きだから守りたいって…。」
「それは一種の錯覚だね。
命令が“抹殺”から“連行”に…すなわち“殺してはいけない”と変更された事による…、」
「ウソだぁぁぁーーーっ!!!!」
全ての言葉が偽り…、全ての感情が偽り…、全ての思いが偽り…、全てが自分ではない誰かが操っていた動作。
シャルルは頭を抱え泣きながらその場にへたりこんだ。
「おまえたちの行動全ては私たちの命令によるものだ。」
「オイラたちは操り人形じゃないぞォ!!!!」
「私たちは家族のために立ち向かいます!!!!」
シャルルの前でハッピーとエマがニチヤとナディに啖呵を切る。
「「オイラ/私たちは
妖精の尻尾の魔導士だァ!!!!!」」
「…ハッピィ…エマァ…。」
「行こう、シャルル!!!エマ!!!」
ダッ
「え?」
「はい!!!」
ハッピーはシャルルの手を取り走り出した。エマも後を追う。
「「!!!」」
二人もいきなりの出来事に驚く。
「ちょ…!!」
「およよよよ…。」
「オイラたちでみんなを助けるんだ!!!絶対助けるんだ!!!!」
ハッピーは叫びながら必死に駆ける。友のために。
「こ、これは…。」
「堕天…。地上“アースランド”の汚れに毒されてしまったエクシードは堕天となる。」
「オオオォオォォーー!!!!メェーーーン。堕天が三人逃走!!!!近衛師団!!!!出撃ー!!!!」
すると、王宮の中が地響きがなる。号令を聞いて近衛師団が集まってきているのだ。
三人を捉えると一気に距離を詰めようと迫ってくる。
三人も逃げながら近衛師団の追撃をなんとかかわししつつ城の外へと出た。
「どいてどいてー!!!」
「何だ何だ?」
「あいつら確か…。」
城下町に出ると市民が溢れ返っており上手く前に進めない。
だが、それは近衛師団も同じで中々距離が詰められないでいる。
「ハッピー!!!このままじゃ捕まっちゃいます!!!」
「待て待てーい!!メェーン!!!」
「あれに隠れよう!!」
ハッピーは近くにあった干し草が入った荷車に隠れた。
それが幸をそうしたのか近衛師団はそのまま荷車を通り過ぎ奥の道へと消えていった。
「これでなんとか…。」
ガタ ゴロ ゴロ
「「!」」
荷車はハッピーたちが入った衝撃で前に傾き坂道に進入していた。
そして、徐々にスピードが乗り出す。
ガガガガガガ
「うわぁぁぁぁぁ。」
「「きゃぁぁぁぁぁっ。」」
次第に荷台車は街を過ぎ平原の坂を滑っている。
「あっ。」
「「シャルル!!!」」
石を踏んだせいで荷台車はバランスを崩し、シャルルが外に放り出されてしまった。
「ハッピー!!エマ!!」
がしっ
間一髪のところでハッピーとエマはシャルルの手を握り荷車に連れ戻す。
「しっかりつかまってて。」
「大丈夫ですか?」
「うん。」
なおも荷車は滑り続けるが再度石を踏み、盛大に空中で崩壊してしまった。
「ううーん。」
「うぅ…。」
「…痛いです…。」
三人はエクスタリアの端に転がっている。シャルルはそこである物を見つけた。
「ハッピー!!エマ!!あれ見て。」
「「!」」
シャルルが指差す方向には巨大な魔水晶が宙に浮いていた。
王都で見るよりも遥かに大きい。あの魔水晶が妖精の尻尾とマグノリアのみんなである事がわかった。
「ここ…!!空に浮かぶ島だったのか!!」
「王都があんなに下にあるなんて。」
つまり、ハッピーたちがいるエクスタリアと並列に並んでいる魔水晶の下に王都がある訳だ。
だが、ハッピーたちは肝心なことに気づいた。翼が使えないのだ。エドラスに来てから翼が出せていない。
どうしようかと思ったその時…、
「おめぇらオィラの畑で何しとるだ。」
「しまった!!!」
振り返るとそこには桑を持ち、口の周りに髭を生やしたネコが立っていた。
「ははーん…。兵隊どもが探し回っとる堕天とはおめぇらの事だな。」
「「…。」」
三人は焦っていた。もし、この人が近衛師団に通報すればこんな拓けた場所で逃げきれない。
「かーーっ!!!!」
すると、いきなり雄叫びを上げながら桑を振り回してきた。
「ひぃぃぃっ!!!!」
「恐いですぅーっ!!!!」
「出てけ出てけーっ!!!」
桑を振り回しハッピーたちを畑から追い出そうとする。
「あい!!!ごめんなさい!!!」
「荷車が転がっていったのはこの辺かー。」
「「!」」
坂の上から近衛師団の声が聞こえてきた。
「探せー。」
「はっ。」
「もう追ってきた…。」
「かーーっ!!!!」
「うぎゃあ。」
シリアスな所をおじさんネコの怒鳴り声で台無しにされた。
かと思えばそのネコは自分の家に来るように勧められた。
三人は意味がわからないままおじさんネコの家に身を寄せる事にした。
家に案内され中に入ると優しそうなネコが食事の用意をしていた。
ハッピーたちはおじさんネコに言われるがままテーブルにつく。
せっかく身を潜めさせてもらうのでエマは今まで起きた事を二人に簡潔に話した。
「あらあら。それは大変だったわね。」
「おじさん、おばさん…かくまってくれてありがとう。」
「かーっ!!!めしを食え!!!めしっ!!!」
「あい!!」
感謝の言葉を怒鳴り声で返されてしまいハッピーはすっかり怯えてしまっていた。
「ありがとう…。」
「ありがとうございます。…二人は何でこんな所に住んでいるんですか?」
確かにここは街からずいぶんと離れていて不便だと思われる。
「それはね、ウチの人ってこんなだから王国の考え方とソリが合わなくてね。
昔、追い出されちゃってこんな所で暮らしているのよ。」
「かーーっ!!!いらん事言わんでえぇ!!!」
「はいはい。」
「そっか…。それでオイラたちを…。」
「そんなんじゃねぇやい!!!めし食ったらフロ入れー!!!かーっ!!!」
「あ、あい…。」
さっきからすごく怒鳴っているが疲れないのだろうかとエマは心の中で思っていた。
さらに、替えの服なども用意してくれていた。
風呂から上がった三人は縁側で休憩していた。
「ハッピーとシャルルとエマっていうのね。素敵な名前。
アースランド生まれなんでしょ?誰が名前をつけてくれたの?」
「ナツ…友達だよ。」
「私もです。」
「私も…そう…友達。」
ハッピーたちはそれぞれ言った。
「そのともだちが王都に捕まってるんだ。オイラたち助けに行かないと。」
「人間を助けるのね。」
「エクスタリアではその考え方は間違ってるのよね。」
シャルルは街で見たネコたちを思い出していた。みんな人間を自分たちより下に見ている。
自分たちの方が上だと言わんばかりに年寄りから子供までそれを感じ取れた。
「そんな事ないわ、素敵な事よ。友達にエクシードも人間も関係ない。
だって見た目が違くても“大好き”っていう心の形は同じなの。」
「心の形…?」
「そう…。大好きの心の形はみんな一緒。」
シャルルはそれを聞いてナディが言っていた事を思い出す。
「私の心は…私じゃない誰かによって操られている。今、話してる言葉さえ私のものかどうか…。」
「「シャルルの心だよ/です!!!」」
「オイラたちがみんなを助けたいって心はオイラたちのものだ!!!」
「私たちは誰でもない自分の意志でここまで来たんです!!!」
二人はシャルルを元気づけようと必死に慰める。
「今はちょっとまよってるみたいだけど、きっと大丈夫よ。
こんな素敵なナイト様が近くにいるじゃない。
あなたは自分の心を見つけられる。ううん、本当はもう持ってるの。
あとは気づけばいいだけなのよ。“大好き”に気持ちを信じて。」
その言葉を聞き、シャルルは少しだけ笑って見せた。
「やっと笑いましたね。」
「え?」
エマがシャルルの横に座りそう言った。
「普段もあんまり笑いませんけどエドラスに来てから一回も笑ってませんよ。」
「そう…かもね。久しぶりに笑ったかも。」
「やっぱり美人なんですから笑ってないと。ねっ、ハッピー?」
「ナイト様…ナイト様…。オイラがナイト様…。」
ハッピーは顔を赤くして何かブツブツ言っている。
「それにしても、おばさん変わってるのね。」
「そうかしら?」
「だって…エクシードはみんな、自分たちを“天使”か何かのように思ってる。
人間は劣等種だって言ってた。」
そう話すとおばさんネコは少しだけ悲しい顔をした。
「昔はね…そういう考えだった。でも、子供を女王様にとられてね。」
「「!!」」
「ドラゴンスレイヤー抹殺計画とかて100人もの子供…卵が集められた。
そして、自分の子供の顔も見れないままアースランドに送られてしまったの。」
「…。」
正直三人は困惑していた。アースランドに被害を加えているだけでなく、
エクタリアにも不幸な事が起きていたなんて想像もしていなかった。
「その計画に反対したせいで私たちは王国を追い出された。
その頃からね…。私たちは神でも天使でもない…。私たちはただの“親”なんだって気づいたの。
そしたら人間とかエクシードだとかどうでもよくなってきたわ。
ウチの人も口は悪いけど私と同じ考えなのよ。」
「かーーっ!!!!くだらねぇ事話してんじゃねーよ。おめぇらもいつまでいやがる!!!」
「アナタ…。」
家の奥からおじさんネコが怒鳴りながら縁側にやって来る。
「辛気くせぇ顔しやがってぇ、
生きてるだけで幸せだろーが。かーーっ!!!
甘えてんじゃねぇぞー!!!!早く出てけーーっ!!!!」
「アナタ、そんな急に…。」
「いえ、おじさんの言う通りです。」
「うん。オイラたち早くみんなを助けに行かないと。」
シャルルもエマとハッピーの言葉にうなづく。
「怯えたままじゃできる事もできねぇんだっ!!!!
最近の若ぇのはそんな事もわかんねぇのか!!!!」
「「!」」
その言葉を聞いてエマたちの中で何かが吹っ切れたようだ。
「ありがとう!!おじさん!!おばさん!!」
「美味しい料理ありがとうございました!!」
「かーーっ!!!二度と来んなーっ!!!」
「気をつけておいきー。」
二人はハッピーたちが見えなくなるまで手を振ってくれた。
たったったっ
三人は後ろを振り向かずただ前に進む。
揺るぎない決意を胸に秘めて…。
「シャルル!!エマ!!
さっき、おじさんの言ってた言葉の意味わかる?」
「えぇ…わかったわ。」
「もちろんです。」
「エドラスに着いた時、オイラ…不安でいっぱいだった。」
初めてエドラスに降りたあの日、
右も左もわからず仲間を助けるという漠然とした目的だけ抱えていた。
エドルーシィやエドラスの妖精の尻尾に助けられながらここまで来た。
「…そうね。私も…。」
そこに不安や恐怖がなかったなんて言えない。
「でも、今は違います。」
目的は変わらない。仲間を助けたいという気持ち。
「進まなきゃいけないから!!!!
飛ばなきゃいけないから!!!!」
彼らはエクシード。
このエドラスにおいて唯一体内に魔力を持つ者。
魔法を使えなかったのは心が不安定だったから。
だが、今は違う。三人の背中には青白く輝く翼が姿を現す。
自分の心な形が見えた時、翼が彼らを前へ進ませる。
「行こう!!!!みんなを助けなきゃ!!!!」
「あい/はい!!!!」
三人は全速力で王都へと羽ばたいていった。
そんな姿を見送っていた二人。
「かーーっ!!!ちゃんと飛べるじゃねーか。」
「飛び方がアナタそっくりね。」
「バカ言うない!!!飛び方なんかじゃねぇ!!!
一目見りゃぁ気がつくだろ!!!!」
「そうね…。あの娘たち彼女かしら?」
マールは自然と涙が流れていた。
悲しみからではなく嬉しさからくる涙。
「かーーっ。女つれてくるなんて100年早ェんだョ…。」
「友達想いのやさしい子に育ったのね…。」
「かーーっ…グス…あい…。」
二人の涙はしばらく止まらなかった。
後書き
すっごい久々に更新ですよ。
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