英雄は誰がために立つ
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Life8 Is he Lover? NO! Father or Brother
前書き
タイトルを英文にした理由はなんとなくです。深い理由はありません。
今回は話の都合上、Interludeによる区切りが多いです。
もっと文章力があれば、少なく出来たかもしれませんが私にはこれが限界です。
どうか、どうかご容赦をm(__)m
特訓1日目
「フゥーーーー、コォーーーー」
小猫は士郎の指導の下、様々な中国拳法の中から八極拳を選び、基本から学ぶために練功中だった。
中国拳法の中で、仙術と最も相性がいいのは太極拳だが、小猫は敢えてそれを避けた。
恐らくは、未だ自分を曝け出すこと自体に忌避感を持っている為だろう。
だが、そんな思いから逃げる様にとは悪く聞こえるが、かなりの熱心さと元々の才能のおかげで、基本の動きは現時点までにほぼ完ぺきに仕上がっていた。
「そろそろ時間だな。キリの良い所で昼食にしようかー?」
「――――は、はい!」
士郎の遠くからの呼び出しに、素直に応じる小猫は駆け足で近寄る。
「っ!?」
ただ焦りにより、注意が散漫になっているのか、地面の何処かに躓き踏みとどまれずに途中で転んでしまった。
「むぐ!――――」
一時の時間も惜しむ小猫は、直に立ち上がろうとした処で妙な浮遊感により勝手に立ち上がれた。
「大丈夫か?」
「あ・・・・・・・・・は、はい」
如何やら、士郎が転んだ小猫を抱き上げて立たせたようだ。
「慌てなくてもいいんだぞ?おかげで可愛い顔が泥だらけじゃないか」
「・・・・・・・・・・・・」
瞬時に投影でタオルを作り、小猫についた泥を優しく拭き取っていく。
その姿はまるで、子供或いは妹を甲斐甲斐しく世話をする、優しい父親或いは兄のような姿だった。
(藤村先輩が、天然ジゴロだって理解しているにも拘らず、執着していたゼノヴィア先輩の気持ちが解ってきました)
「何か言ったか?」
「いえ、何も・・・」
「そうか。じゃあ、食べようか。ちゃんと栄養バランスを考えたメニューだから安心してくれ」
誘導に従う小猫は、士郎を後ろから見て、もし自分に兄か父親がいればこんな風に面倒を見てくれるのだろうか?と、タラレバの妄想をしながら昼食をとるために続いて行った。
-Interlude-
特訓2日目
「――――ん、うく・・・・・・んん――――」
『オイ、そろそろ起きろ相棒。このままじゃ朝食を食べる時間すらないぞ?』
「・・・・・・んあ?ドライグ?――――そうだっ!魚と木の実を急いで取らねぇと!?」
ドライグの声で急ぎ起き上がる一誠。
彼がいるのは山の何処か。
タンニーンからのスパルタ特訓2日目の朝だった。
『早く取らんと、朝食抜きでタンニーンに追われる羽目になるぞ?』
「そんなの無理に決まってんだろぉ!まずは魚だっ!早く川に――――」
『その必要はない。さっき士郎の奴が来て、朝食も含めた保存が利く、3日分の料理品を持ってきたからな』
「へ?」
ふと足元を見れば、弁当らしき容器と、大きめのリュックサックがあった。
『リアスや朱乃が創った料理では無くて悪いがなと、言っていたぞ?』
昨日の、タンニーンから追われて流したのとは、別の涙を流す一誠。
アザゼルから要らんサプライズを受けるわ、敬愛するリアスに心からの慟哭には耳を傾けてもらえなかったわ、その上、強大なドラゴンに追われた上に初めて山中で一夜を過ごすわと散々な目に遭っていた一誠は、その反動からか、感涙にむせていた。
「やべぇ、俺士郎さんに惚れそうだ!」
『ん?士郎の奴もハーレムに加えるのか?男に目覚めたのか?』
「んなわけあるか!比喩表現だ!」
『ハーレムに加えるかは兎も角として、早く喰わんとタンニーンが来るぞ?』
「わかってる!はむあむ・・・・・・・・・うめぇーーーー!久しぶりに喰ったけど、やっぱり士郎さんの料理はスゲーうめぇーーーーー!」
士郎の作ってきた弁当に、涙を流しながらむしゃぶりつく一誠。
『おい、相棒!そんなに大声を出したら――――』
ゴォオオオオオオオ!!
ドライグが警告を言い切る前に、強い衝撃と共に火の息吹が一誠がいた所を含めて広範囲に焼け切れた。
「アチアチ!ま、まさか・・・!?」
「――――何所だ小僧!」
『言わんことじゃない』
士郎の作った弁当の美味さに対する歓喜が災いして、今日の特訓を問答無用で始めると言わんばかりに、一誠の大声を頼りにタンニーンがもう襲来して来たのだ。
「冗談じゃない!」
3日分の保存食が入ったリュックサックを背負い、弁当を喰いながら逃げる一誠。
しかし、運悪くタンニーンの視界に入り、逃げる一誠を火の玉が襲う。
ブォオオオオオオオオオオ!!
「ひぃいいいいいい!!?」
辛くも避ける一誠だが、背中に背負っていたリュックサックは掠った。
しかも掠ったのが下の方で、その部分の穴が開き、幾つかの保存食が転がり落ちていった。
「あーーー!俺の飯ぃいいいい~~~!!?」
拾う為に思わず引き返そうとするが、一誠の目の前で無残にも保存食が潰された。
潰したのは、全体的には紫色で爪の部分が凶悪なほど鋭そうで大きい――――つまるところ、タンニーンの後ろ左足だ。
「此処に居たか小僧。さぁ、今すぐ始めるぞ!」
自分を見下ろしながら威圧してくる元龍王に、一誠は目尻に涙をためながら、タンニーンの命令に背いて脱兎のごとく逃走を選ぶ。
「また逃げるのか?これでは何のための特訓だか・・・」
嘆息するタンニーン。
しかし、一誠は逃げながら後ろに向かって大声で言い放つ。
「――――この怪獣、ドラゴン!悪魔!!紫ぃいいいい~~~!!!」
『相棒、1~3番目まで正しいカテゴリーを指摘しているだけの上、最後もその通りだが罵言雑言ですらないぞ?』
そんな風に今日も始まった。
-Interlude-
同時刻。
小猫は今日も張り切って、いや張り切り過ぎなくらに1人で特訓をしていた。
(今日は藤村先輩がいない。けど、1人でも頑張らなきゃ!)
そう自分に言い聞かせながら、八極拳の練功に集中しようとするも、頭の中から士郎のサポートが離れない。
(藤村先輩優しかったな・・・。お兄さんか、お父さんみたいだった・・・)
正確には小猫には親との思い出など皆無なのだが、人間界で過ごしてきた中のテレビなどから得た情報に当てはめた結果が、士郎に対する感想だった。
だがしかし、小猫は再度集中するために、頭を振りながら自分を言い聞かせる。
(藤村先輩が今日いるのは、リアス・グレモリー眷族側じゃない。シトリー会長たちの所なんだから)
士郎の優しさが印象的過ぎたため、無理矢理にでも依存度を低くさせて、自分に檄を入れる小猫だった。
-Interlude-
同時刻、士郎は椿姫との約束を果たす為に、特訓に付き合うつもりで来ていたが・・・。
「ソーナも含めて、如何して眷族も全員集合してるんだ?約束は椿姫だけの筈だったんだがな」
そう、待ち合わせ場所に来てみれば、主人であるソーナ含めて、ソーナ・シトリー眷属が全員集合していた。
「騙すような形ですいません、士郎君。ですが、そんなに椿姫と2人きりになりたかったんですか?」
ソーナは士郎を冷ややかな目で見る。
そんなソーナの態度にどう反応するのか、椿姫と匙以外の眷属らは、楽しそうに士郎の返事を待っていた。
「2人きりって、別にデートじゃあるまいし。そもそも、そんな浮ついた気持ちで特訓をして行くつもりか?」
「い、いえ、それは・・・」
差しさわりの無い対応に間髪入れずに、隙を逃さないようにやり返されたソーナは慌てるしかなかった。
しかしそこで、元士郎がソーナを庇う様に前に出る。
「会長を非難し続けるつもりなら、“俺が”相手になりますよ!」
「・・・・・・・・・・・・」
匙の行動に意外性を感じる士郎。
大人しく人畜無害とまではいかないが、もう少し自分の発言を控えていくと言うのが士郎から見た、匙元士郎の印象だったからだ。
そして匙がソーナを庇ったのは、士郎とソーナの間に自分にとって非常に都合の悪い関係があるんではないかと――――懸想しているんではないかと、疑っている。
その為、ソーナに対して自分を必死にアピールしているのだ。
「匙」
「何ですか?会長!!」
「話が進みません。退いていなさい」
ガッーーーーーーーン!!
ただ努力はしても届くとは限らないわけだが。
ソーナの命令に、肩をしょげさせて退く元士郎。
それを眼で追いはするものの、今の会話について何も言わない士郎。追求したら、何かしらの墓穴を掘りそうで、恐れているのだろう。
「士郎君」
「ん?」
「先ほどは失礼しました。確かに、少々浮ついていた発言でした」
「いや、自覚があるなら構わない。それよりも、早く言って欲しい。如何してソーナの眷属全員いるんだ?」
士郎に促されるソーナは、まず、軽く咳払いをする。
「では直截に。士郎君の修得している戦闘技能の幾つかを、私たちにご教授願いたいのです」
「別にそれは構わないが、ただ一つだけ聞きたい事がある」
「何でしょう?」
「如何して何人か、得物を持ってるんだ?」
約束の時間に来た時から、ソーナの眷属達は何故か得物を携えて、或いは剣呑な空気を纏ってもいた。
「まずご教授願う前に、士郎君の強さを私たち自身で実感しておきたいのです」
「何の意味があるんだ?」
「私たちは純血や転生の違いあれ、悪魔です。そんな私たちを指導するのが人間ならと、相応の実力が問われると思います」
「頼んでる側の割りには、随分上から目線だな?」
客観的にも上から目線に思えるソーナの発言に、士郎は訝しみながら眉を顰める。
「そうですね。自覚はしています。ただ、シトリー家の次期当主として体面上、確かな理由も無く、頭を下げるわけにもいかないのが実情なのです」
「だからシトリー家の本邸の目の前かつ、周りに居るギャラリーたちの前で証明しろと?」
士郎が評したギャラリーとは、シトリー家に使える給仕に執事たちだった。
「行きます!」
士郎の返事も聞かずに勝手に開戦宣言をするソーナ。
それに続いて周りの眷属たちも士郎に向かって行く。
此処に、士郎1人対ソーナ・シトリー及びソーナ・シトリー眷属全員との戦いの火ぶたが、切られた。
-Interlude-
現在ソーナたちは、士郎に戦闘技能を1人ずつ、説明を受けていた。
本邸前に集まっていた給仕と執事たちは、既に解散して自分たちの仕事に戻っていた。
因みに、開戦してから今は1分後である。
「如何してそんなに不機嫌そうなんだよ?」
「不機嫌ではありませんが?」
「嘘つけ!ぶすっとした奴が言う事じゃないな」
士郎の指摘にソーナは、普段と変わらぬ表情で返事をするが、それを嘘と言う。
「何時もと変わりありませんが?」
「何言ってるんだ?全然いつもと違うだろ!眉が両方とも僅かに吊り上がってるし、米神の血管も若干浮いたり沈んだりの繰り返しだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
「それに――――」
ソーナの表情の僅かな変化に、何の苦労も無く言い当てる士郎。
そんな士郎に対してソーナは・・・。
「士郎君。セクハラです」
「なんでさ!?」
突然のセクハラ呼ばわりに、当然反論する士郎。
「私の顔を普段から観察していたんですね?これがセクハラでは無く、一体何だというのですか?」
「そんな事する程、俺は暇じゃないぞ?大体こんな事、同じクラスメイトとして判るだろう?なぁ、椿姫」
「いえ、私も言われて初めて気づけたレベルですよ?これは矢張りセクハラですね」
「だからなんでさ!?」
ぎゃあぎゃあと主張し合う3人。
「――――だいたい、如何してこんな会話になってたんだったか?」
「士郎君が私たちを、瞬殺レベルで気絶させたからじゃないですか?」
そう、開戦の火ぶたが切って落とされた次の瞬間、あんまり怪我をさせないようにと言う士郎の気遣いとして、瞬時に全員の後ろに回り込み、首に軽いしかし確実にツボを突いた当身を浴びせた結果気絶して、5秒も経たないで戦闘終了になったのだ。
しかも全員その10秒後に起こされたと言う次第だった。
「公衆の面前で、確かな実力を示せと言ってきたのはソーナじゃないか!」
「だからと言って、あんな風に瞬殺しなくてもいいじゃないですか!」
「やっぱり不機嫌なんじゃないか!」
「士郎君が無理矢理、感情を引き出したのでしょう!」
普段からクールな2人が、感情的に言い争うと言う貴重な場面を見る眷属たち。
「珍しいですね?副会長~。会長のあんなに興奮する姿って」
「そうね。それを言うなら士郎君もだけれどね」
「確かに。藤村先輩があんな風に声を荒げるのって始めて見るかも・・・・・・って、ルシファー様と争ってた時も声荒げてたんだったわ」
「それにしても、御2人共仲良いですよね~」
「・・・・・・・・・・・・!!」
それぞれが思い思いに感想を口にする中で、元士郎だけが妬みかつ、羨むように士郎を見ていた。
その気持ちも解らないでもない。2人の言い合いは傍から見れば、痴話喧嘩に見えるのだから。
兎に角、こうして士郎はソーナたちに指導していった。
-Interlude-
人間界、某所。
様々な部品や機械で埋め尽くされている研究所の様な部屋で、以前にKraと話していた男性が、通信機越しに“誰か”と話していた。
「――――成程。話は分かりましたが、全部どれも試作機ですよ?」
『構わない。所詮勝手に援護するだけの上、彼らの作戦が成功するか否かについても拘りは無い』
通信機越しから伝わる声音には、嘘は混ざっていなかった。
「まぁ、それが命令であるなら私は従うだけですからね」
『――――それに、お前自身丁度いいだろう?近々、データ収集をしたいと呟いていたと記憶していたが?』
「――――成程。つまり、お互いに利のある話ですな?」
『如何判断するかについては任せる』
「了解しました。ではあちらの準備が整い次第、私の方から勝手に順次発進させて、勝手に援護させますよ。それではこれで黒幕」
その言葉を最後に通信が切れた。
-Interlude-
特訓3日目
ソーナの眷属たちは皆、特訓に勤しんでいた。
そして、日が暮れる頃、ソーナは椿姫をある用で訪ねて来た。
「椿姫、います・・・・・・か?」
「ん?」
扉を開けた先には確かに椿姫はいたが、そこには何故か士郎もいた。
しかも用のある椿姫は寝ていた。士郎の膝を枕にして。
「・・・・・・・・・・・・」
「如何した?ソーナ。そんなトコに突っ立てないで入ってこないのか?椿姫に用があったんだろ?」
「――――確かにそうですが、当の本人は寝ているではありませんか?」
「疲れたんだろ?忌まわしい過去を、真正面から受け入れるって言うのは、口で言うほど簡単じゃないからな」
士郎が昨日、椿姫にアドバイスした際に、強く成りたいなら忌まわしい過去を乗り越える事が重要とアドバイスしたのだ。
それに対して、椿姫は表面上士郎のアドバイスを素直に聞くモノの、自分が生まれ持った神器のせいで迫害されながら育った過去を改めて受け入れる事は、精神面を過剰に消耗させる事に繋がり、士郎が様子を見に来た時にかなりグロッキー気味だったので、小休憩を取ることを勧めたらこんな状態になっていたのだった。
「――――そうですね。ところで、何時もそんな風に椿姫は、士郎君の膝枕で寝ているんですか?」
「いいや、今回は椿姫が倒れそうなところを俺が受け止めて、此処は鍛錬場だし枕も無かったから、取りあえずこうして俺の膝を枕代わりに寝かせてるんだ」
「その状況に対して何とも思わないんですか?」
ソーナの言葉も尤もである。
士郎と椿姫の現在進行形で続いているシチュは、傍から見れば恋人同士でやる様なモノだからだ。
だからと、言うワケじゃあないが、士郎は少しムッとする。
「俺だって男だ。この状況で何とも思わないワケじゃ無い」
「そうですよね。安心しま――――」
「男の膝枕なんてごつごつしてて、寝にくいだけだろうから早く普通の枕で寝かせてやりたいさ!」
「・・・・・・・・・・・・」
論点がずれている士郎の発言にソーナは、表面上は兎も角、内心では偏頭痛が起きている時のように米神を抑えたい気持ちに駆られた。
「如何したんだ?そんな呆れるような顔をして・・・」
「ようなではありません。呆れてるんです」
「なんでさ」
そんな反応をするからですと言いたかったソーナではあったが、口にしても無駄だと諦めた。
「・・・・・・話を元に戻しますが、私は椿姫に用があって来たんです」
「まさか起こすのか?」
「そんな事をする気はありません。ただ椿姫が起きるまで、私の我儘を聞いてはもらえませんか?」
「出来る範囲内であれば・・・」
「それなら大丈夫です。それは――――」
-Interlude-
「会長は此処か?」
椿姫の使っていた鍛錬場に、ソーナが向かったという情報を聞きつけた元士郎が扉の前辿り着いた。
ちょっとした所要があって、鍛錬を早めに終えてからソーナに会いに来たのだった。
入室する前にノックをする。
『どうぞ』
「?――――失礼します」
ソーナや椿姫は勿論のこと、女性の声でもない事に頭上にクエスチョンマークを浮かべるように傾げる元士郎だったが、執事の人でもいっしょに居るのかな位に思いながら扉を開ける。
「あー、君か。確か匙君だよな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(パクパクパクパクパクパク)」
だが、扉を開けた先には想像を遥かに超えた光景が、元士郎に現実として突き付けていた。
自分の用があった会長と、この鍛錬場を使用していた副会長は、恋敵としての疑いのある魔術師、藤村士郎の膝枕で2人揃って気持ち良さそうに寝ていたからだ。
「ソーナか椿姫に用があって来たんなら、悪いが少し時間を置いてやってくれないか?ご覧の通り、2人揃って寝てるんだ」
しかし、士郎は元士郎の思いに何の気付きもせずに、素で淡々と口にする。
無論、元士郎はそんな光景を目にして素面で居られるほど、大人では無い。
「・・・・・・!!!」
けれど、此処で大声を出すと、折角気持ちよさそうに寝ている2人の邪魔をするので、何とか怒鳴り声を抑える。その代り、身を焦がす程の嫉妬を士郎に叩き付けるように睨んでいた。
若干、目尻に涙を溜めこみながら。
(如何して俺は、親の仇のような目で睨み付けられなければならないんだ?)
そして何時もの如く、士郎はその手の感情に非常に鈍いので、現状の理不尽さに疑問に思えずにはいられなかった。
結局、2人が目覚めたのはそれから10分後の事で、その間士郎は元士郎の嫉妬滾る双眼に晒され続ける羽目だったと言う。
そして、今日この日より、匙元士郎にとって、藤村士郎はいつか乗り越え打倒しなければならない、強大な恋敵として確定された。
余談ではあるが、ソーナが元士郎を捉えた時に猛スピードで手を掴まれて、猛スピードで退室したらしい。その時の顔が、誰かに恋をし始めた初々しい男の子の様だったと言う事を、すれ違った給仕が同輩の中だけで噂にしたらしい。
ーInterludeー
特訓4日目
士郎は何とも嫌な空気の中に居た。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
それもその筈、今日の特訓の指導相手は、昨日の夕方に親の仇のような目で睨みんでいた、匙元士郎本人だった。しかも2人きり。
しかしながら、このままでは埒が明かないのは勿論、特訓にならない。
仕方がないので指導役である士郎から切り出す。
「昨日の俺の何が気に入らなかったかは知らないが、このままじゃ特訓にならない――――つまり、ソーナの期待にも応えられないぞ?それで良いのかい?」
「・・・・・・・・・っ!――――確かにその通りですね。分かりました。今日の指導、宜しくお願いします」
ソーナを引き合いに出されて仕方なく、士郎の意見に同意する元士郎。
「なら、一昨日口頭説明だけした、空手について教えていくぞ?」
「はい、お願いしますっっ!」
匙元士郎は、強大な恋敵から指導を受けると言う反骨精神で、今日一日を過ごす事に成った。
相手をする士郎は、感情を抑えようとしても抑えきれていない、元士郎の嫉妬の双眼を何度も見る羽目になった。
-Interlude-
特訓5日目
ソーナは予定通り、自分の眷属たちに今日の特訓のメニューを渡してから自分の特訓も終えてから午後の事、士郎に簡易版のレーティングゲームで対戦相手を務めてもらっていた。
「――――投了します。また私の負け・・・ですね」
「ふむ」
既に3回目のゲームだが、3回ともソーナの囲碁や将棋で言う中押しでリザインの宣言をしていた。
「何度やっても士郎君に勝てません。私の何がいけないんでしょうか?」
「珍しいな。ソーナから俺に、そんな風に聞きに来るなんて」
士郎が疑問に思うのも当然。
ソーナは基本的に策を講じるタイプだ。それ故に、仙術論理について誰が相手であろうと仕立にでる事は非常に珍しいと言える。
つまり、こうして士郎に聞くこと自体が切羽詰っているか、壁にぶつかっているかのどちらかだ。
「此処まで負けが込んで来れば、聞きたくもなります。それで、如何思います?」
「はっきり言わせてもらうと、策を弄し過ぎて戦術が固いな。口で言うほど簡単じゃないだろうが、もう少し柔軟さも学ぶべきだぞ?」
「・・・・・・・・・・・・」
士郎の指摘に黙るソーナ。
それは自分自身、薄々感じ取っていたからだ。
とは言うモノの、ソーナの年齢を考えれば十分な程と言えるのだが、現在の彼女から見て、本物の戦場を渡り、愚直なまでに鍛えてきた士郎の戦術論理が相当に上に見えるのだろう。
そんな彼女の考えをよそに、士郎の指摘は続く。
「――――って事で、もう少し盤面を俯瞰しながら対処していかなきゃ駄目だ。戦場は、生き物のように此方の予想の斜め上を突いて来ること自体、ザラじゃないんだしな。後はそうだな・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
士郎の戦術面の感覚、士郎の慧眼に心底感服しているので、言葉を待つ。
「――――と、その前に一つ。ソーナ、君は今回の対戦に、どんな思いを志して臨むんだ?」
「如何いう意味ですか?」
いきなりの話題の変化に訝しむソーナ。
「いきなりの話題変更で悪いが、聞いておきたくてな。理由を尋ねると言うなら、笑われたそうだな『夢』を」
「っ!」
士郎の言葉に、ソーナにしてはまたまた珍しい位に露骨に不機嫌な顔を作る。
「と言っても予想出来ていたさ。ルシファー様から、参加したくないって言うのに勝手にどんな会合の内容についてかと、聞いていたからな」
「冷静ですね?士郎君」
士郎の言葉を受けて、声から温度を消失させるソーナ。
聞くモノが聞けば、裸足で逃げ出してしまいそうな冷え冷えとした声だ。
「そうでもないさ。予想出来ていたとはいえ、俺にとってソーナは大事な友人だ。その友人の夢が嗤われた事実を改めて聞かされれば、腹も立つよ・・・!」
士郎の言葉には、確かな憤りが孕んでいた事に直にソーナは気付いた。
だからこそ嬉しく思う。まるで我が事の様に、自分の夢に対する理不尽に怒ってくれる事に。
「――――と、此処で先に戻る訳だが、何を思って今回のリアスとの戦いに臨むんだ?」
「・・・・・・・・・・・・何を、ですか」
「ああ、そうだ。これは戦術以上の事だぞ?時としてそう言う思いが、劣勢な戦況をひっくり返す事もあるんだ。こんな事女性に言う事も如何だかなとも思うんだが、もう少しかなぐり捨てる必死さも大切だな。勿論、この簡易ゲームにそれは通用しにくいがな」
この士郎の言葉を聞いたソーナは、暫く考えたいと言って少し休憩を挿んでから、また何度も挑んだ。
結局一度たりとも勝てなかった様だが、士郎の助言の前と後で劇的に変わったようだった。
そして今日一日が終わった後の士郎は、何とも言えないような顔をしていた。
(このままいけば、ソーナたちの布陣はかなり強化される。そうなれば、勝敗に関係なくリアス達の評価は確実に下がるだろうな。幼馴染として贔屓してやりたいが、中立の立場だから無理だしなぁ)
知る事は出来ても口にしてはならないと言うジレンマに、士郎は天を仰ぐしかなかった。
-Interlude-
2人の少女たちは夢を見ていた。偶然にもほぼ同じ夢をだ。
2人ともそれぞれがテレビを見ていた。
内容は兄が妹を、父親が娘を撫でたり膝枕で寝かせたりとの家族のふれあいを映した、ありきたりなシーンだった。
しかし、少女たちは夢の中で切実に、こう思ったようだ。
『羨ましい』
―――――と。
-Interlude-
特訓6日目
士郎は、シトリー家本邸からグレモリー家の本邸から20キロほど離れた庭のある一角に来ていた。
ゼノヴィアに二刀流の戦法を教えていたのだが、無駄になりそうなのでやめた。
何故辞めたかは剣の大きさだ。
本来二刀流であれば短刀か、大きくても標準サイズに対して、士郎の投影で創り出す絶世の名剣の原典と違い、ゼノヴィアの使うデュランダルは大剣で、アザゼルに言われた新たな剣とはミカエルから一誠が受け取ったアスカロンなのだが、あれももた大剣なのだ。
器用な者であれば、大剣の二刀流でもイケるかもしれないが生憎ゼノヴィアは不器用な方だ。
使えるレベルになっても数年先だろう。
なので今は、アスカロンとデュランダルを交互に使いながらの模擬戦闘をしている。
「ハァッ!」
ゼノヴィアの大振りなれど、振り下ろす速度を上げたアスカロンの一撃を、往なしてそのまま顔目掛けて切りつける。
されど、それを辛うじて避ける。
しかし、無理して躱したので、体勢が崩れた所を莫耶の柄をアスカロンの柄に力強く振る上げる様に当てられて、アスカロンを無理矢理手放されてしまう。
だが、その失策に嘆くことをせずに、バク転をしながら距離を取り、虚空へ掌を上げる。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、聖母マリア。我が耳に声を傾けてくれ!」
ゼノヴィアの詠唱後、空間が歪むと同時に亜空間に仕舞われていたデュランダルがその姿を現す。
そうしてアスカロンの代わり、デュランダルを新たに手を取ろうとした瞬間に、干将莫邪の投擲によりぶつかり、明後日の方向に飛んでいく。
「あーー!?」
頼みの綱のデュランダルを吹っ飛ばされたことには、ゼノヴィアも流石にショックを隠せずに驚きの声を上げる。
しかし、その驚いている時間が致命傷になった。
「チェックだ」
ゼノヴィアの背後から、先に彼女の手から強引に外したアスカロンを、士郎は斬り傷が付かない様に首筋に当てる様に見える位置まで近づけた。
「何か言う事は?」
「・・・・・・降参です」
ゼノヴィアの素直な敗北宣言に、士郎はアスカロンを退かす。
「これで今日は18敗目だが、集中力が足りてないぞ。何かあったのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
士郎は、アスカロンを返しながら聞く。
「小猫の事か?」
「・・・士郎さんは心配じゃないんですか?」
返されたアスカロンを地面に突き刺しながら疑問を呈する。
忌まわしい自分の本来の姿への忌避感。
しかし、それを受け入れなければ根本的に強く成れないと言う現実。
それらが小猫を焦らせた結果、オーバーワークが仇になり倒れたと言う。
士郎は、昨日の深夜にその事を知ったので、訪ねなかった。
「そりゃ、心配さ。けどなゼノヴィア。仲間を思いやる事と、心配し過ぎて特訓・修行が疎かになる事は別物だぞ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「集中が続かないなら、少し休憩を挿んだ方が良い。これ以上やっても変な癖が付いて、悪循環になるだけだ」
「・・・・・・・・・・・・はい」
ゼノヴィアの横につき、頭を撫でながら本邸に続く魔法陣まで歩いて行くが、彼女にしては珍しく、士郎に頭を撫でられてもあまり気持ちよさげな表情をしてはいなかった。
-Interlude-
グレモリー家本邸に戻って来てから、ゼノヴィアと別れた士郎は、小猫の居場所を執事に聞いて向かっていた。
そうして扉の前に来てノックをする。
『・・・・・・・・・はい』
少し遅れて声が聞こえて来た。
如何やら今日は倒れてはいない様だ。
「士郎だけど、入っていいかな?」
『藤村先輩・・・!―――――どうぞ』
小猫から了承をもらえた士郎は、そのまま入室する。
そこには少し汗をかいている小猫がいた。
「元気そうで何より――――とまでは往かずとも、倒れた事に尾を引いていなくて何よりだ」
「・・・・・・・・・すいません。藤村先輩にも、ご心配をお掛けして」
「別に良いんだぞ?そんな事を気にしなくて」
「ですが、昨日直に訪ねて来てくれたイッセー先輩に、酷い事言いました」
昨夜、一誠が折角心配して訪ねて来た時に、乱暴な言葉を吐いた事を思い出した小猫は、後悔がある様に俯く。
しかし、士郎は頭を撫でながら心配するなと言いながら続ける。
「一誠はそんな事、気にしていないと思うぞ?」
「如何してそう言い切れるんですか?」
月並みの言葉から来る訝しみでは無く、純粋な質問として聞く。
「実は今朝、ゼノヴィアとの稽古を始める少し前に一誠の様子を見に行ったんだが、正直言って非力ながらも、逃げるよりも立ち向かって行く姿勢が増えたんだ」
実は士郎は、一誠の様子の確認として、毎日遠くからで見に行っていたのだ。
「恐らくは小猫や朱乃の様に、辛くても目を背けたい現実と向き合おうとも、少しづつ前進しようと言う姿勢に勇気をもらったんだと思う。だから気にする必要はないが、それでも気にしてしまうなら誠心誠意の謝罪を一言あればいいさ。それであいつは、きっと許してくれるよ」
憂鬱気味な小猫に、笑顔を向けながら優しく頭を撫でる。
「・・・・・・はい。分かりました」
「うん!」
そんな風に自分を撫でてくる士郎の姿に、あることを思いつく。
「その、藤村先輩」
「ん?」
「以前に、背中を押して欲しければ押してくれるって言いましたよね?」
「ああ、言ったが・・・・・・押して欲しいのか?」
「いえ、少し違うんですが、我儘を一つ聞いてもらえますか?」
そんな上目使いで、士郎に頼み込んだ。
-Interlude-
士郎が、小猫が特訓に使っている鍛錬室に入っていく時に、小猫の体調を心配した朱乃が訪ねて来たのだが、中には入室せずに様子を窺うようにドアの前で立ち聞きをしていた。
(流石は士郎君ですわね。小猫さんの体調も良さそうですし、そろそろ戻りましょう)
そうしてその場を離れようとした時に、部屋の中から小猫が我儘と言う言葉を使っていたので、そのキーワードに何となく気になった朱乃は、思い止まった。
(一体何かし――――)
『出来る範囲なら構わないがその前に、そこで突っ立ってないで入ってきたらどうだ?』
「!?」
如何やら、外から窺うように立ち聞きしていた事がばれていたようで、驚く朱乃は士郎の言う通りに従った。
「副部長・・・」
「盗み聞きとはいい趣味じゃないぞ――――と言いたいところだが、小猫の様子を見に来たんだろ?」
士郎の言葉に素直に頷く。
「士郎君の仰る通りです。また無理しすぎてると思ったけれど、一応大丈夫そうで安心しましたわ」
「心配してくれて・・・・・・有難うございます」
「良かったじゃないか?小猫。――――ところで、さっきの我儘って言うのは何なんだ?」
「・・・・・・・・・ふぇ!?ぃぇ、ぉぉ、ぁぉ」
士郎からの突然の振りに、小声になりながらしどろもどろになる小猫は、時折朱乃の方にも向く。
そんな小猫の反応に、士郎と朱乃は2人揃ってクエスチョンマークを頭上に浮かべる。
「言いにくいなら仕方ないし、出ていくが・・・」
「待ってください!言います、言いますから!?」
士郎が自分から離れようとするのを、慌てて小猫は引き留めにかかる。
そして恥ずかしそうに呟いた。
「膝枕してもらえませんか?」
顔を真っ赤にしながらの上目づかいは、一見して反則級ではあるが、この男にはキョトンとさせるだけだった。
「眠いんだったら枕の方が良いんじゃないか?」
そんな事を言いながら、投影で枕を創り出した。
ソーナと椿姫の件んで、如何して枕を投影で創り出さなかったのかと考えなおした結果だったが、そんな事は今野暮でしかなかった。
「膝枕・・・・・・駄目ですか?」
「え?あ、ああ、まぁ、それで良いんなら俺はいいけど・・・」
流石に涙目になってきた小猫の反応を見た士郎は、家訓の『女性を泣かせるな』が住み込まれている結果も響いたのか、素で怯む。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えまして――――」
「小猫さん。私もご一緒させてもらえませんか?」
「はい?」
「ん?」
士郎に、ごり押しでの膝枕権を勝ち取った小猫が、早速右膝に頭をのせようとしたら、朱乃からの思わぬ頼み事をされて驚く。
「ご一緒って、朱乃もか?」
「あら?小猫さんは良くて私はいけないのですか?」
「そんな事は無いが、本当にいいのか?小猫もだが、俺の膝枕なんて到底気持ちいとは思えないんだがな・・・?」
「構いませんわ」
そこまで言うならと大人しく了承する士郎に対して、朱乃も直に近づき、小猫とは逆側の左膝に頭を乗せる。それを見た小猫は、慌てて自分も士郎の右膝に頭を乗せる。
「満足か?」
「・・・・・・できたら撫でて貰えませんか?」
「私もお願いしますわ。士郎君・・・」
相変わらず不可思議な表情を作るが、2人の頼みに士郎は素直に頭を撫でる。
そんなシチュエーションに、2人の顔は自然と緩んだのだった。
-Interlude-
リアスは、可愛い下僕の1人である小猫の様子を見に来ていた。
かれこれ15分前から、室内の様子を覗く形で。
(2人とも気持ちよさそう・・・。狡いわ!士郎の膝枕を、初めてして貰えたのは私だったのにぃぃ!)
小猫と朱乃の緩み切った表情を見て、リアスはひたすら嫉妬していた。
リアスは幼い頃、嫌な事がある度に藤村邸に家に駆けこんで、膝枕などで癒してもらっていたのだ。
そんな事情もあってか、リアスの初恋は士郎ではあるが、今ではイッセーが居るので士郎を異性としての好意からの嫉妬では無く、お嬢様じみた我儘な独占欲の様なモノだろう。
こうして、今も直嫉妬に駆られるリアスだが、本来の目的である小猫の様子見は頭の中から消え失せていた。
-Interlude-
士郎は今困惑の中にあった。
(俺は、それ相応に鍛えてるから膝なんて決して気持ちよくないだろうに、如何して皆俺の膝枕で寝たがるんだ?)
とはいうモノの、彼女らの頭も膝の上に乗せて撫で続けていた。リアスとアーシア頭をだが。
何故2人とも変わっているかと言えば、朱乃と小猫に頼まれてから30分ほどで2人とも満足したのか、朱乃は頬を少し朱に染めてからきちんとお礼をして、小猫は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして簡単にお礼をしてこの部屋から退室した。
それを、入れ換わるようなタイミングでリアスが入室して来て、士郎の否応を言わせぬ怒涛の勢いで膝枕を強要して右膝を占拠した。
それから間もなく、小猫の様子を見に来たアーシアが、その状況に遭遇した士郎に上目使いで頼み込んで、今の状態になったそうだ。
2人とも気持ちよさそうにしているので、良しとしているが困惑自体は続いていた。
(如何したもんかな・・・)
「小猫、大丈夫・・・か―――――」
「ん?ゼノヴィア?」
そこへ、小猫の事を心配し、ゼノヴィアも訪ねて来た。
しかし、士郎の状況を見て固まる。
そして――――。
「うわぁあああああああぁああぁあああああああん!!!」
「ゼノヴィア!?」
嫉妬や怒りに駆られて、士郎目掛けて飛びついて来る訳では無く、泣きながら道を逆走してしまった。
士郎としてはそれを追いたかったが、状況がそれを許さず、解放されたのは40分後の事だった。
因みに、日付が変わる宵、士郎は又もやゼノヴィアに追いかけられる羽目になった。
なにせ、ゼノヴィアは士郎の膝枕を体験した事が無かったからだ。
この事を切っ掛けに、ゼノヴィアは何時もの調子を取り戻せたようだ。
だがしかし、こうして士郎は求められるがまま、リアス達やソーナ達の特訓・修行の手伝いをし続けた。
-Interlude-
特訓10日目
士郎達が今日も特訓・修行を始めようとしていた時に、所在地不明の屋敷にて報告がなされていた。
『――――って事で、予定通り話し合いの末で決まった罠の設置、全部終わりましたぜ。既に配置にも就いてるんで何時でもイケますよ?旦那』
アーチャーが。
『こちらも私の宝具にて、兵の確保終わりました』
セイバーが。
『此方キャスター。僕の方も予定位置に着いたよ』
『此方はレヴェルです。使い捨ての駒の出撃準備、全て滞りなく終わりました。並びにアサシンも配置につきましたよ?ライダーよ』
キャスターにアサシン及びレヴェルが、ライダーの前で宙に浮かんだモニター映像からの報告を受けていた。
「うむ。一方、アレが動いた時は余が抑えよう。そして、諸君らの武運を祈る!」
『『ハッ!』』
『『了解』』
自らの夢のために、今も努力の血と汗を流している若者たち陰で、蠢く者達が冥界を震わせる。
後書き
元士郎と士郎を一緒にさせる時間が長いと、紛らわしいですかね?やっぱり・・・。
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