ジャパニーズ=ラップ
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第一章
ジャパニーズ=ラップ
ラップと聞いてだ、八条学園高等部商業科一年B組に通う大神俊介はその話を出してきた浜田岳にこう返した。
「何かな」
「何かって何だよ」
「いや、どうもな」
俊介は首を傾げさせつつ岳に言った。やや細面で肌は白い。鼻は高めで一重の目はすっきりと横に切れ長でもないが伸びている。眉は黒く適度な太さだ。茶色の細い髪で背は一七八程だ。
「ぴんとこないな」
「日本人にはとか言うなよ」
岳はその黒髪を上にかき上げながら言った。黒髪は豊かで上の方を伸ばし左に流している。横は比較的短くしている。
目はあどけない感じで唇がやや厚い。髪の毛から耳がはっきり出ているが大きい。背は一七二位ですらりとしたスタイルだ。
「そんなことは」
「いや、どうしてもな」
「ラップはアメリカか?」
「そう思うからな」
だからだというのだ。
「ちょっとな」
「そう言うけれどな」
「日本語のラップもか」
「かなり定着してるぜ」
そうなったというのだ。
「もうな」
「そうかも知れないけれどな」
「それでもか」
「俺的にはあれだよ」
どうしてもという口調でだ、俊介は岳に言うのだった。
「ラップはアメリカでな」
「英語か」
「それでダンスをしながらな」
あの独特のラップダンスをである。
「それで歌の内容はな」
「社会の矛盾点ってやつをか」
「出してな」
「告発したり糾弾するんだな」
「それがラップだろ」
こう岳に言った。
「やっぱりな」
「それはそうかも知れないけれどさ」
「日本のラップもある」
「そういうことだよ、それでな」
「それで?」
「やってみないか?」
岳はここで笑ってだ、俊介に提案した。
「俺達もな」
「ラップか」
「御前運動神経いいし歌も上手だしな」
「それでか」
「一緒にやろうぜ、ラップ」
また笑って俊介に誘いをかけたのだった。
「これからな」
「だから俺はな」
「日本のラップはか」
「邪道っていうかな」
「違うっていうんだな」
「ラップじゃないだろ」
俊介はこうまで言った。
「あれは」
「そこまで言うか?」
「実際にそう思うからな」
「いや、違うさ」
岳はその俊介に強い言葉で返した。
「御前のそれは食わず嫌いだよ」
「そう言うのかよ」
「まずはやってみろよ」
「御前と一緒にか」
「ああ、ダンスだけでもいいからな」
「やれやれだな、まあダンスはな」
ラップダンス、俊介はそれについてはこう言った。
「歌わないだけだとな」
「いいだろ」
「あれだけならな」
俊介でもだった、受け入れられるものを感じてそれでこう言った。
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