原作に介入=生 不介入=死 何だ!この世界は!
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38話 vivid本編開始
前書き
今回からvivid本編の入ります。時間軸では前話から二年程経過しています。一年前の出来事は本編の回想シーンとして小出しにしていこうと思っています。
ユウに獅子王の遺伝子が混ざって数年が経過し、ユウは高等科一年。ヴィヴィオ達は初等科四年生となった
現在、ユウは公民館で三人の少女のストライクアーツの練習につき合っていた。
「やあ!」
一人目は妹分、高町 ヴィヴィオ。
ヴィヴィオから繰り出される拳や蹴りをユウは顔色1つ変えることなく防いでいた。そして開始から暫くしてヴィヴィオの蹴りがユウにヒットする。
「そこまでだ…5分12秒か、前より攻撃が鋭くなったな」
ユウはデバイスで時間を確認する。
「やったぁ!レベル3で新記録だ!」
5分12秒とは練習が始まってからヴィヴィオがユウに一撃を入れるまでにかかった時間。レベルとはユウが力を出す割合である。レベルが上がるに連れてユウの出す力も上がって行く。
「次はコロナ!」
二人目はユウとも数年前から交流のあるヴィヴィオの一人目の親友。コロナ・ティミル。
「はい!よろしくお願いします!」
「二人も良く見とけよ」
「「はい」」
その後、10分程でコロナはユウに一撃を入れる。
「それまで!」
「はい!」
コロナはユウの言葉に従い拳を収める。
「踏み込みにぶれはあるがコロナも前より動きが良くなっているな」
「はい!でもヴィヴィオより5分以上、かかっちゃいました」
「コロナの接近戦はサブなんだから十分だ。というよりコロナとヴィヴィオが同じ時間で俺に一撃を入れてたら。ヴィヴィオの立場がない」
コロナは巨大ゴーレムを 作り出す創成魔法をメインにしているので格闘はあくまでもサブである。
「次は私です!」
そして最後の一人。去年の学期末頃にヴィヴィオが連れてきた二人目の親友である。リオ・ウェズリー。
リオの家は何代か前から春光拳の道場をやっていて、リオもそれを習っている。炎と雷の変換資質を持っているなど近接戦闘で攻撃力は三人の中で間違いなくトップである。
「やぁぁ!」
それから一時間程、三人のスパーリングの相手をしてその日の練習を終えた。そもそもユウが三人のスパーリングの相手をしているのは三人の師匠であるノーヴェに頼まれたからである。
ノーヴェ・ナカジマ。JS事件の犯人側の一人であったが罪を認め、捜査に協力的であったため海上隔離施設で更生プログラムを受けることになった。現在はチンク、ディエチ、ウェンディらともにナカジマ家に引き取られる。因みに残りのセイン、オットー、ディードは聖王教会に引き取られている。
初めはユウが教えるという話もあったのだが、(中身はともかく当時)中学生の自分では何かあったら責任を取れないと拒否したのだ。その後、ユウが知らないところでノーヴェがヴィヴィオとコロナに武術を教えるようになっていた。だが、ノーヴェも働いているので時間が取れない時もある。
そこでノーヴェが忙しいときは彼女が作ったメニューをユウが受け取り代わりに指導するようになったのだっだ。ユウはヴィヴィオ逹より遥かに強いので全力でスパーリングできる最適な相手であった。
「それじゃ気をつけて帰れよ」
「「ありがとうございました」」
「じゃあね。リオ、コロナ!」
二人と別れ、ユウはヴィヴィオを送って行って帰路についた。それから数日間、ヴィヴィオが専用デバイスのクリス。正式名称セイクリッド・ハート(うさぎのぬいぐるみ外装とした補助・制御型のデバイス)を手に入れて、16歳前後の姿になる変身魔法を披露するなどがあったが概ね平和に過ぎていった。
夜の帰り道、ユウとノーヴェは連れだって歩いていた。
「今日は買い物に付き合ってもらってサンキューなノーヴェ。おかげでいいトレーニンググッズが買えた」
「気にすんなよ。あたしが忙しいときのヴィヴィオ逹の訓練を見てもらっている礼だ」
先日、ユウの愛用していたトレーニンググッズの一つが寿命を迎え、新しいのを探していたところ、ノーヴェが良いものを知っていると聞いたので買い物に付き合ってもらっていたのだ。
「のどが乾いたな……自販機で買ってくるからちょっと待っててくれ」
「あたしのもよろしく」
「了解」
ユウはノーヴェに荷物を預け、その場を離れた。
「まったく、近くの自販機のスポドリが売り切れとかついてな「あたしの知ってんのは、一生懸命生きてるだけの普通の子供達だ!」…お?」
目的の飲み物を探して少し遠くの自販機まで行っていたユウが戻ってみるとノーヴェが薄い緑色の髪をした女性と向かい合っていた。
「何してんだあいつ?」
ユウは疑問に思いながらも 様子を見ることにした。そうしているとノーヴェが相手に不意打ち気味の膝げり放ちバリアジャケットを装着する。対戦相手と街頭試合を始めたようだ。
ノーヴェは得意の蹴り技で攻めるが相手も攻められてばかりではない。独特の歩法でノーヴェに接近し鋭い拳を放ってノーヴェを攻める。ユウの見立てでは実力はノーヴェの方が上であるが(少し頭に血が登っているのか)動きが悪い。結果、二人の実力はほとんど同じであった。
数回、拳を交えた後、攻撃を食らったノーヴェが距離をとったところで、再度言葉が交わされる。両者、感情が高ぶってきているのか声量が先ほど大きくすこし離れたユウにもはっきり聞こえた。
「列強の王逹を全て倒し、ベルカの天地に覇を成すこと、それが私の成すべきことです」
対戦相手の放った言葉はユウも少しばかり驚かせた。この時代そんなことをやろうとする人間がいるとは思っていなかったのだ。
「寝ぼけた事抜かしてんじゃなねぇよ!」
ノーヴェのその言葉と同時に戦いが再開される。
「昔の王様なんざ、みんな死んでる!生き残りや末裔逹だってみんな普通に生きてんだ」
「弱い王ならこの手で屠ふるまで」
その言葉にノーヴェの感情が爆発する。
「この!バカったれが!ベルカの戦乱も聖王戦争もとっくの昔に終わってんだよ!」
ノーヴェはIS(スカイライナー)で作った空中の道をもうスピードで駆けて対戦相手に接近する。対戦相手も迎撃体制に入り両者激突する。しかし実際には両者の攻撃が激突することはなかった。それまで様子見していたユウが二人の間に入り攻撃を両手で止めたのだ。
「ユウ!」「っ!」
ノーヴェは突然ユウが現れたことに対戦相手はノーヴェと自分の攻撃をあっさり止めたことに驚愕する。
「両者、特にノーヴェ。熱くなりすきだ。ルールなし潰し合いならそれでもいいが見たところ街頭試合とはいえ両者が納得した上での試合だろ?そのままだと、相手に大怪我負わせる危険があるぞ」
普段ノーヴェがここまで感情的になることは少ない。それだけヴィヴィオ逹が大切なのだろう。
ユウが(内心面倒くさいと思いながらも)止めに入ったのはこれ以上両者の感情が高ぶると、どちらかが病院送りになる可能性あると考えたからだ。
「それはどっちも本意ではないだろ?」
「………悪いユウ」
「………」
ノーヴェは少し頭が冷えたようだ。対戦相手は無言のままだ。
「どうする?水をさした俺が言うのも何だが、まだ続け」
ユウがその先を言うことはなかった。対戦相手はユウに拳を放ったからだ。
「おっと」
ユウはあっさりそれを避ける。本気で当てる気は無かったのだろう。ノーヴェはユウを攻撃した対戦相手を睨む。
「……たてがみを思わせる髪……貴方は王の関係者ですね?」
「………そうだ。獅子王の末裔だ」
ユウは少し考えた末に正直に答える。髪だけで判断するのもどうかと思ったが、対戦相手の目は質問している目ではない、直感的にユウが王の関係者であると確信している目だ。
「私は覇王。獅子王の末裔、お手合わせをお願いします」
「てめぇ。いい加減に「良いぞ」ユウ!?」
ユウは迷うことなく申し出を受ける。
「ノーヴェ、自称覇王の目を見ろ、断ったところで逃がしてくれるように見えるか?」
「………」
自称覇王の目は先ほどノーヴェと戦っていたとき以上に強い光を放っていた。逃げても地の果てまで追ってきそうだ。
「……はぁ、わかったよ。ただし、負けるなよ」
「誰に言ってんだ?」
「…だな」
ノーヴェは二人から距離をとる。
「さて覇王。休憩は入れるか?」
「必要ありません。漸く覇王の悲願が一歩進むのです。ですが一つだけ質問させてください。貴方は他の王の末裔逹のことを知っていますか?」
「王か……3人知っているな」
「教えて頂いても?」
「俺に勝ったら教えてやるよ。こっちからも質問だ」
「…なんでしょう?」
「弱い王ならを屠ふるってのは本気で言ったのか?」
「…本気です」
「………………そうか」
ユウの目が僅かに細くなり、纏う雰囲気が鋭くなる。
「あんたの事情も、どういうつもりでその言葉を吐いたのかもしらないが巻き込まれる側からしたら迷惑極まりない。潰されても文句言うなよ」
ユウはバリアジャケットを纏い、腰を低くして構える。
覇王も構え独特の歩法でユウに接近戦を仕掛ける。両の拳でユウの胴体に連続攻撃を放つ。これに対してユウは片手で応戦し全てを防いで見せた。覇王は驚愕しながらも攻撃の手を緩めない。
それから数分、覇王が攻めてユウが防御する展開が続いた。そして時間が経つにつれて覇王の拳がユウに決まるようになっていった。しかし、これはユウが覇王に気づかれない様に少しずつ手を防御を緩くしているからである。手を抜いているとはいえ、ユウに拳が入る様になっている。だが覇王にとってそれは勝利に近づ結果にはなっていない。寧ろさらに遠退いたことを自覚させた。
「(攻撃は入っているのにまるでダメージになってない!)」
攻撃が入らないのと攻撃が入ってもまったくダメージにならないのでは後者の方が精神的不可が大きい。自分の攻撃が無意味なものに感じてしまうからだ。
「今度はこっちの番だ。しっかり守れよ」
今度はユウが動き出し、覇王に強烈な上段回し蹴りを放つ。覇王は両腕で防御に入るが通常の人間の数倍の力を持つユウの蹴りをただの防御程度で止められるわけはない。受け流そうにも技量はユウが上なので簡単には流せない蹴りを繰り出している。ユウの蹴りは覇王を防御をものともせずに横に吹き飛ばす。覇王は地面に激突する前に体勢を整えて立ち上がったが防御に使った両腕は痺れているのか動かしづらそうである。ここでユウは構えを解く。
「それでまだ続けるのか?」
「あたり……前です。」
「攻撃してもほとんど防がれて、当てさせてやってもダメージはならない」
「っ!」
「防御してもガードごと吹き飛ばされてダメージを負うのにか?」
ユウの告げる現実は覇王の精神を大きく揺さぶる。
「それ…でも…です」
覇王は拳を後ろに引いて何かの構えをとる。
「後一撃だけ付き合ってやる。あんたの最高の一撃を放ってこい。それで決着だ」
ユウも獅子王の技の体勢はいる。
「タイミングは任せる。全力が放てる様になったら放ってこい」
「わかりました」
両者が構えて数分が経過したころ。
「行きます!」
「ああ!」
「覇王」「獅子王」
「断空拳!」 「獣王拳!」
両者の技は中央で激突し周囲に衝撃波を生じさせる。だが、両者の技が拮抗したのは僅か一瞬だった。
獅子の拳は覇王の拳を食い破り体に突き刺さる。そのまま吹き飛ばされた覇王は地面を転がって止まる。起き上がってくることはなかった。
「こんなもんか「やり過ぎだ!」」
覇王が起き上がってこないのを確認して構えを解いたユウにノーヴェの蹴りが飛んでくる。
「危ないな」
「余裕で避けといて言うな!あそこまでやらなくてもお前なら勝てただろ!」
今回の手合わせでユウは覇王の自信を粉々に打ち砕いて見せた。攻撃、防御、頼みの大技さえも正面から打ち砕いた。精神力の弱い人間なら武術を辞めかねないほどのダメージを負ったことだろう。
「これでも手加減はしてる。大きな怪我も負わせてない」
「あたしが言っているのは精神的な問題だ!」
「この程度で辞めるなら それまでだろ。それにこいつがベルカの王の打倒を続けるなら何時か叩きのめされる日がくる。こいつの実力じゃあ、俺の知り合いの王の末裔には絶対に勝てないしな」
ユウの頭には雷帝の末裔であるヴィクターの顔が浮かんいた。覇王の実力では一撃を入れることすらできずにヴィクターに負けることになるだろう。
「だけどよぉ」
「何より、屠ふるなんて軽々しく口する奴に必要以上の手加減をする気はない」
過去に殺されかけたことのあるユウは殺すなどの、命を奪う意味を持つ言葉を嫌っている。
覇王はノーヴェとの会話の中で《弱い王ならこの手で屠ふるのみ》と言った。屠ふるは殺すの同義語にあたる。覇王がどういう意味で使ったかは不明だがユウには弱い王〈人間〉なら相手の都合も関係なく殺すという意味にとった。嫌いな言葉を使い、大切な妹分に理不尽に手を出す輩に容赦する気はユウにはなかった。
「見たところ。こいつは高校生ってところだ。屠ふる何て言葉を平然と使うのを俺が許容してやるのは精々、中学生くらいまでだ」
「中学生とかだったらどうしてたんだよ?」
「ここまではしないけ……あ?」
ノーヴェと話をしていると気絶していた覇王の体が光始める。そして光が収まるとそこには。
「げっ!」
中学生くらいに縮んだ覇王がいた。
「変身魔法……か?」
中学生くらいのを少女にやり過ぎな倒し方をした事実にユウは冷や汗を流す。そんなユウの肩にノーヴェは手を叩く。
「姉貴とティアナに連絡しような」
「……はい」
この後、ユウは駆けつけたティアナとスバルに説教されることとなる。
気づかなかったとはいえ、やり過ぎたことは事実なのでユウは甘んじて説教を受けたのだった。
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