妖精の義兄妹の絆
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ファイアボールと連隊長
ルーエンの街からしばらく歩きタクヤたちはシッカの街に到着した。
到着したのが夜だったため近くのホテルを借り一夜を明かす事となった。
「見ろよ!!」
タクヤたちがリビングでくつろいでいるとバスルームからエドルーシィが全裸でやってきた。
「こいつとあたし体まで全く同じだよ!!」
「だーっ!!!そんな格好で出てくなー!!!!」
すぐさまアースルーシィがエドルーシィの体をタオルで隠した。
やはり、同じ体なので見られるのはまずいのだろう。いや、同じでなくてもまずいが…。
「エドルーシィさん!!お兄ちゃんやナツさんがいるんですよー!!!」
「別にあたしはかまわないんだけどね。」
「かまうわー。」
などというやりとりを終えてからもアースルーシィはぶつぶつ言っていたが。
「にぎやかだね。Wーシィ。」
「ぷっ。」
「それ…うまい事言ってるつもりなの?てか、そこも笑わない。」
するとナツがエドルーシィを凝視する。
「なんだナツ、見たいのか?」
「やめてーーー!!!」
「ぷ。」
ナツはしばらくして震えながら笑いをこらえていた。
「な、何がおかしいのよ。
そぉかぁ…あたしよりエドルーシィの方がスタイルいいとかそーゆーボケかましたいのね?」
「自分同士で一緒に風呂入るなよ。」
(「「言われてみれば!!!」」)
Wーシィは二人そろってバカな事をしたなと後悔することとなった。
「それにしても見分けがつかねぇくらいそっくりだな。」
確かに改めて見ても姿はまるで鏡でも見ているかのようにそっくりであった。
そこでナツがある事をひらめく。
「鏡のモノマネ芸できるじゃねーか!!」
「「やらんわ!!!」」
「ああ、息もピッタリ。」
「悲しいわね。」
そこでエドルーシィは髪を切る事にしてアースルーシィが巨蟹宮の星霊キャンサーを召喚した。
キャンサーの巧みなハサミ使いによってエドルーシィの髪がみるみる短くなっていく。
シャキン
「こんな感じでいかがでしょうかエビ。」
「うん。これでややこしいのは解決だな。」
「本当によかったの?」
「ん?アースランドじゃ髪の毛を大切にする習慣でもあるのか?」
エドルーシィはアースルーシィに聞いてみた。
「まぁ、女の子はみんなそうだと思うエビ。」
「女の子ねぇ。」
エドルーシィは照れながらもすぐに何かを思い出す。
「こんな世界じゃ男だ女だって考えるのもバカらしくなってくるよ。
生きるのに必死だからな。」
「でも、こっちのギルドのみんなも楽しそうでしたよ。」
「そりゃそうさ。無理にでも笑ってねぇと心なんて簡単に折れちまう。」
エドルーシィは窓際に行き、外を見渡すとカップルがちらほら歩いており楽しそうにしている。
「それにこんな世界でもあたしたちを必要としてくれる人たちがいる。
だから、たとえ闇に落ちようとあたしたちはギルドであり続けるんだ。」
「…なかなかやるじゃねーか。」
「ボソ けど、それだけじゃだめなんだよな。」
「え?」
「いや…なんでもねーよ。」
そしてタクヤたちは明日に備えるため就寝した。
そして、夜が明けた。
「信じられないっ!!!」
朝一番に大声をあげたのはアースルーシィだった。
「何よコレーー!!!」
隣の部屋からうるさいと壁越しに怒鳴られたがルーシィはおかまいなしに奇声をあげる。
「朝からテンション高ぇーな。」
「どしたの。」
リビングのソファーで寝ていたナツとハッピーが目をこすりながらルーシィに聞いた。
「エドラスのあたし逃げちゃったの!!!」
そう言ってアースルーシィは一枚の書置きを二人に見せた。
そこには王都の行き方と激励の言葉が書いてあった。
「手伝ってくれるんじゃなかったのー!?もォー!!どーゆー神経してんのかしら。」
「ルーシィと同じじゃないの。」
「うるさい!!!!」
「うるせー!!…ったくおちおち寝れねぇじゃねーか。」
そこに隣の部屋に寝ていたタクヤとウェンディ、シャルルにエマが入ってきた。
「しょうがないですよ…元々戦う気はないって言ってましたし。」
「だな。」
「あたしは許せない!!!同じあたしとして許せないの!!!」
それでもルーシィは喚き散らしている。そんなルーシィをほっといて出発の準備に取り掛かった。
タクヤたちと別れたエドルーシィは街を歩いていた。
(「あいつらなら世界を変えてくれるかもしれねーだと?
何甘えた事を考えてるんだあたしは…。」)
次第にエドルーシィは駆け出す。
(「本当に世界を変えたければ…自分たちの手で変えずにどうする!!!!」)
エドルーシィは走りながらそう考えていた。
仮にタクヤたちが仲間を助けこのエドラスを救ってくれたとしてもその後はどうする。
また今のような息がつまりそうな世界へ戻ってしまう。この世界のごたごたにまで巻き込む訳にはいかない。
(「あいつらだけの力で仲間を救出できればそれでいいけど…王国相手にそれは難しいな。
だから、あたしはギルドのみんなを説得してみるよ!!!!みんな…立ち上がってくれ!!!共に戦う為に!!!!」)
エドルーシィは街を出て一刻も早くギルドに戻るのだった。
宿をチェックアウトして数時間がたった。
先程まで怒り狂ってたルーシィは本屋で買ったエドラスの歴史書をニコニコしながら抱えていた。
「うわ…もう機嫌直ってる。」
ハッピーは少々呆れ気味でルーシィの後ろを歩く。
「珍しい本見つけて嬉しいんだろーね。」
「あんたたち。この世界について少しは知ろうと思わないわけ。」
ルーシィが後ろを振り返りタクヤたちに言った。
「別に。」
「どーでもいい。ファァ」
元々ナツとタクヤは文学を嗜むという概念がない。活字ばかりの本のどこが面白いのかと思うぐらいだ。
「歴史書が物語ってるわ。この世界っておもしろい!!
たとえば、ここね。今から100年以上前だけど…エクシードっていう一族がいたのね。」
ルーシィは歴史書を開きタクヤたちに説明し出した。
「興味ねぇって。」
ものの見事に一刀両断したナツ。すると、
ゴゴゴゴゴゴゴ
「「!!!」」
突然大きな機械音が辺りに撒き散らされ、空に何かが浮かんでいるのか日陰ができた。
「何?」
「ん?」
「あそこ!!」
「あれは!!?」
空を見上げるとそこには巨大な飛行船が飛んでいる。
「急げー!!」
そう叫びながら街にいた王国軍が飛行船に群がり出した。
「すぐに出発するぞー!!」
「王国軍だわ。」
「とりあえず隠れろ!!」
タクヤたちは近くにあったドラム缶の影に身を隠した。
「あの巨大魔水晶の魔力抽出がいよいよ明後日なんだとよー。」
「うひょー。」
「乗り遅れたら世紀のイベントに間に合わねーぞ。」
王国軍がそう話しているのに聞き耳を立てる。
「巨大魔水晶って…。」
「マグノリアのみんなの事だ。」
「魔力抽出が2日後?歩いて行ったら間に合わないじゃない!!」
このシッカから王都までは歩いていったら3日はかかる。走ってもとてもじゃないが間に合わない。
「オイ!!みんなはどーなるんだ。」
「魔力抽出が始まったら、もう…二度と元の姿には戻せないわよ。」
「そんな…!!」
タクヤたちは飛行船が着陸するのを黙ってみていた。何もできないのか、助けられないのか、
不安は広がる一方だ。
「あの船奪うか。」
ナツが大胆な事を言い出した。
「普通そこは“潜入”ではないでしょうか?」
「隠れんのヤダし。」
「よく乗り物なんか提案したな。オレら魔法使えないからトロイアかけてもらえないのに。」
「この案は却下しよう。」
「「オイ!!」」
ナツの出した案はすぐに取り下げられた。
「あたしは賛成よ!!それに奪わなきゃ間に合わないじゃない。」
ルーシィはナツが出した案には賛同している。
「でも、どうやって?」
「あたしの魔法で♡知ってるでしょ?今のあたし最強ーって。」
明らかに天狗になっているルーシィを見てタクヤたちそうするしかない事に情けなさを感じた。
「ルーエンの街で戦ってみてわかったのよ。
どうやら“魔法”はアースランドの方が進歩してるんじゃないかっとね。」
「確かにそうかもですね。」
「まぁ見てなさい!!!」
ダッ
ルーシィは王国軍に向かって飛び出す。突然の突撃に王国軍も一瞬スキを作ってしまった。
「開け!!獅子宮の扉…ロキ!!!!」
ボォォン
ルーシィがいきよいよく鍵を振りかざし現れたのはロキ…
「申し訳ございません。姫。」
ではなく、処女宮のバルゴだった。
「…ってあれーー!?」
「バルゴだ。」
「ちょっとどういう事!!?」
何が起こっているのか分からずバルゴに事情の説明を求めた。
「お兄ちゃんはデート中ですので今は召喚できません。」
「お、お兄ちゃん!!?」
「おまえら兄妹だったのか。」
「いえ、以前そのように呼んでほしいとレオ様より。」
「バッカじゃないのアイツ!!!!」
そんな事をしている間に王国軍は態勢を立て直し向かってきた。
「どうしよう!?あたしの計算じゃロキなら全員やっつけられるかもって…。」
「姫…僭越ながら私も本気を出せば…
踊ったりもできます。」
「帰れ!!!」
ルーシィは踊っていたバルゴを強制閉門した。瞬く間に絶体絶命のピンチに陥った。
オオオオ
なおも王国軍はタクヤたちに迫ってくる。
「ルーシィ、アクエリアス!!」
「ここ…水ないし。」
「タウロス!!」
「今は無理…。あーんどうしよー。」
結局魔法が使えてもルーシィはいつものルーシィだった。
「だったらやるしかねぇな!!」
「こっちのルールでよ!!」
「もう使い方は大丈夫です。」
タクヤとナツ、ウェンディはエドラス魔法で王国軍を迎え撃つ。
「いくぞ!!」
「はいっ!!!」
バッコォーン
「あれーー!!!?」
「いーやぁー!!!!」
ナツとウェンディはあっという間に王国軍にやられてしまった。
「えぇっ!!!?弱っ!!!?」
タクヤはなんとか王国軍に迎え撃ちながら吹き飛ばされるナツとウェンディに叫んだ。
「ナツとウェンディがぜんぜんダメだぁ!!!ルーシィよりはマシだけど。」
「ごめんなさーい。」
「オラぁぁぁ!!!」
バン バン バァン
タクヤは王国軍と距離を取りつつ海銃で応戦するが数が多過ぎるため徐々に追い詰められていく。
「マズイわ!!飛行船が。」
「「!!」」
飛行船がみるみる浮き上がっていく。
「あれに乗らなきゃ間に合わないのに…。」
「いや、まだだ!!!!」
「「!!」」
タクヤは一旦海銃をホルスターにしまい飛行船めがけて走り出した。
その行く手を王国軍がバリケードを作り遮る。だが、タクヤは止まらなかった。
「うおぉぉぉぉぁらぁぁっ!!!!」
タクヤはいきよいよく飛んだ。王国軍の頭を踏み台にしてバリケードを突破する。
すかさずホルスターから一丁の海銃を取り出しダイヤルを回した。
バァン キィィィィン
すると、海銃から水の鎖を発射する。
「鎖っ!!」
鎖は見事飛行船に命中した。タクヤは鎖を海銃から引きはがし両手で引っ張る。
「ぐぐぐぐぐ…。」
「奴を取り押さえろ!!!」
王国軍はタクヤを取り押さえようと迫ってくる。
「妖精の尻尾を…なめんじゃねぇぇぇ!!!!!」
グゥゥン
飛行船はタクヤに引っ張られ徐々に地上に落ちてきた。
「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ドゴォン
一気に力を入れ飛行船を地上に落とした。
「な、何者だ!!?奴は…。」
「ハァハァ…ハァ…。」
「すげぇぞ!!!タクヤ!!!」
「お兄ちゃん!!!!」
ナツとウェンディも取り押さえていた王国軍を薙ぎ払いタクヤの元に向かった。
「ハァハァ…へへっ。どうだ!!妖精の尻尾をなめ…、」
バァン
「「!!!!」」
一つの銃声が空に響いた。
「な…。」
バタ
タクヤはそのまま地面に倒れた。
「「タクヤぁぁ!!!!」」
「お兄ちゃぁぁぁん!!!!」
倒れたタクヤを王国軍が取り囲む。
「な、なんだ…。体が…動かねぇ…!!!」
「タクヤ!!無事なんですか!!?」
「だ、大丈夫っぽい…。」
すると飛行船から声が聞こえてきた。
《そいつらを飛行船に乗せろ。》
「そういう事だ!!!おとなしくしろ。」
「くっ。」
その時だった。
ヴォォン オオオオン
「「!?」」
遠くから何かがこちらに向かってきている。
ヴォォン ヴォン
次第に音が近づいてくる。
「な、何だ!!?」
ドガガガガ
そこに現れたのは妖精の尻尾の紋章が彫られた魔導四輪だった。
キキキキ
魔導四輪はいきよいドリフトを決め、その勢いで王国軍を追い払う。
「魔導四輪!?」
「妖精の尻尾の紋章だ!!!」
「ルーシィから聞いてきた。早く乗りな!!!」
中の運転手がナツたちを呼ぶ。
「でも、まだお兄ちゃんが…!!!!」
「あぁ?」
そうしている間に動けないタクヤは王国軍に抱えられ飛行船の中へと消えていった。
「お兄ちゃん!!!!」
「タクヤ!!!!」
「おい!!王国軍が迫ってるぞ!!!一旦引くんだ!!!」
確かに、王国軍が態勢を立て直し迎撃に加わろうとしている。
「タクヤを置いていけるか!!!」
「ならなおさら引け!!!お前たちも捕まったら誰がアイツを助けるんだ!!!!」
「「!!!」」
ナツたちは飛行船に目をやるがすぐにそらし魔道四輪へと走る。
「くそォオオオオオオーーッ!!!!」
魔道四輪の中に乗り込んだのを確認するとアクセルを強く踏んだ。
「GO!!!!FIRE!!!!」
魔道四輪は一気に加速し王国軍を撒いた。
「チッ。…まぁいい。どの道奴らも捕まえるからな。」
飛行船の中の一室に立っていた男が呟いた。
ブロロロロ…
無事王国軍から逃れたナツたちは街を出て荒野を走っていた。
「助かったわ。ありがとう。」
「…ありがとうございます。」
「お、おおお…。」
元気のないナツたちをよそに運転手は言った。
「おまえら王都に行くんだろ?あんなオンボロ船よりこっちの方が速ェぜ。クク…妖精の尻尾最速の男…
ファイアボールのナツとはオレの事だぜ。」
「「ナツーーー!!!?」」
「オ、オレ!?」
一方こちらは飛行船の中にある牢屋
ここにタクヤは閉じ込められていた。
「コラぁぁぁぁ!!!!ここから出しやがれ!!!!」
ガコン ガコン
鉄格子に何度も体当たりするがビクともしない。
「くそっ!!てかここあちぃ!!!」
タクヤは暑さに耐えきれず黒髪のウィッグを投げ捨てた。
「この手錠もうっとうしい!!!」
「テメーの方がうっとうしいっての。」
「!!」
鉄格子の外から誰かの声が聞こえてきた。
「ったくよ。いい加減おとなしくできねぇのかよ。どーせ魔法もねぇんだから。」
そこに現れたのは背中に幾つもの剣をからい、両腰にも長剣を携えているフードの男だ。
男は笑いながら持っていたパンを食べ始める。
「オイ!!ここから出せ!!てかメシ食わせろ!!」
「オイオイせめてひとつにしねーか。メシなら後で持ってきてやるよ。」
「テメー!!オレを捕まえてどうする気だ。」
タクヤは依然フードの男に威嚇しながら問いただす。
だが、男は笑ったままその場を後にする。
「ちょ、答えろやぁぁぁ!!!」
男は止まる事なく手を振りながら消えていった。
「連隊長!!後1時間で王都へ到着いたします。」
「おう、ごくろーさん。」
そう言って部下の一人は連隊長の前を後にした。
「いやーアースランドかぁ。おもしれぇな。ホントにソックリだったぞ。」
連隊長はフードを外し、外に目をやる。
綺麗な碧髪に逆立った毛先。その顔はどこか幼さを残しつつも凛とした顔立ちだった。
「ハハッ…。
まじでオレそっくりだ…。」
連隊長タクヤ•コキュートスは静かに笑った。
後書き
どうも!!久しぶりにあとがき書きます。まずは更新が遅れてしまい申し訳ございません。
楽しみに読んでくださっている方々には大変な迷惑をおかけしました。
そして、さらに言わせてもらいますと次回からはタクヤ視点になりますので原作の部分が大幅にカットしてしまいます。
誠に勝手ながらご了承ください。
これからも誠心誠意頑張りますので応援お願いいたします。
では、感想コメントなどありましたらお書きください。
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