戦国異伝
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第二百十四話 家康の馳走その二
「それが楽しみで仕方ないわ」
「そういえば徳川殿は」
ここで氏政も言うのだった。
「ただのいくさ人ではありませぬな」
「政も見事じゃな」
「しかも教養もかなりの方で」
「深い御仁よ」
それが家康だとだ、氏康は己の嫡子にも語った。
「もっともいくさ人としてもな」
「天下屈指の方ですな」
「そうじゃ、そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「そこに政も学問もありじゃ」
「家臣の方々も」
徳川家の家臣達の結束の強さは天下でも随一とさえ言われている、家康の下に一致団結しているのだ。
「そうした徳川殿だからこそですな」
「ああしてな」
「絶対の忠義を持っておられるのですな」
「それだけの方だからじゃ」
忠義を払われるだけの、というのだ。
「あの御仁の周りにはあれだけの家臣も揃っておる」
「そういうことですな」
「武田は二十四、上杉は二十五」
それだけの将がいる、北条は二十八と言われそして徳川は。
「あの家は十六じゃな」
「数は少ないと思えて」
「その一人一人は負けてはおらぬ」
「我等にも」
「しかも常に一つにまとまっておる」
「それだけに無二の強さがありますな」
氏政もここで唸る様にして言った。
「そうですな」
「その通りじゃ、そうした家にしたのもな」
「徳川殿ご自身ですな」
「あの御仁は人も惹き付ける」
ただ文武に秀でているだけでなく、というのだ。
「だからこそじゃ、この天下のな」
「執権にですな」
「なる」
「それだけの方ですか」
「うむ、ただな」
「ただ、ですか」
「どうも上様はな」
信長の考えもだ、氏康は言った。
「石高の多い者よりもな」
「低い家の者をですか」
「国の要にされるな」
その考えを読んでの言葉だった。
「どうやらな」
「では徳川殿は」
「今あの家は百六十万石じゃ」
一つの家では織田家を除いて最も大きい。
「それだけともなると」
「要にはですか」
「なれるやも知れぬ、しかし」
「そのお力だけのものはですな」
執権になれずとも執権足り得るだけのそれはというのだ。
「見せて下さいますな」
「必ずな、ではな」
「はい、我等も」
氏政は父の言葉に頷いてだった、そのうえで。
彼もまた宴に出るのだった、北条家もまた家康を見るのだった。その彼の器をである。そうしたことを話してだった。
信長もだ、こうしたことを言っていた。
「さて、竹千代の宴はのう」
「それはですな」
「これからはじまるそれは」
「見事なものじゃ」
もうわかっているという言葉だった。
「それがどうなるかな」
「我等もですな」
「見られますな」
「うむ」
その通りだというのだ。
「だからよいな」
「はい、では」
「これからですな」
「それを見て」
「そのうえで」
「あ奴は天下の執権になれる」
信長もこう言うのだった。
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