FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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DORAGON SENSE
エドシリルside
「うおおおお!!」
「潰されそ・・・」
「うぎぎぎぎ・・・」
「踏ん張れぇっ!!」
「止まれぇ!!」
「なんとしても止めるんだ!!」
エクスタリアと巨大魔水晶を衝突させないために、俺たちは魔水晶の乗っている浮遊島を全員で押している。くそ・・・全然浮遊島が止まらんぞ!?
「無駄なことを!!人間の力でどうにかできるものではないというのに!!」
リリーが遠目から俺たちを見てそう言う。だけどなぁリリー・・・何事にも、無駄なことなどないのだよ!!
俺たちが浮遊島と格闘していると、エクスタリアから一つの小さな影が飛んでくる。
ガコォン
「シャルル!!」
飛んできたのは、白毛のエクシード!!確かシャルルと言ったな。俺たちと一緒に魔水晶を止めに来てくれたのだな!!
「私は諦めない!!妖精の尻尾もエクスタリアも両方守って見せる!!」
ギュウーン
「うあーーー!!」
ドガッ
シャルルの次は、黒いヒョロ長い顔のエクシードが飛んできて魔水晶を押す。
「アンタ・・・」
「ぼきゅも守りたいんだよ」
涙を流しながら押す二人。その後ろからたくさんの羽を羽ばたかせる音が聞こえてくる。
「きっとみんなも」
魔水晶を押しながら後ろを脇目で見ると、そこにはたくさんのエクシードとそれに抱えられているアースシリルとアースウェンディの姿があった。
「自分たちの国は自分たちで守るんだ!!」
「危険をおかしてこの国と民を守り続けてきた女王様の為に!!」
「ウェンディさん!!シャルルさん!!さっきはごめんなさい!!」
エクシードたちはそれぞれが思いを叫びながら魔水晶に飛んでくる。俺はてっきり、女王がいなければ、こいつらは何もできないと思っていた。
だが・・・それは間違いだったのだな。
「みんな!!今はこれをなんとかしよう!!」
「全員で力を合わせれば、絶対に押し返せるよ!!」
「押しかえそう~!!」
アースウェンディ、アースシリル、セシリーがそう言う。
そのエクシードたちの後ろの方で、片翼のエクシードが懸命に翼と手をばたつかせて飛んでいる姿が見える。
「シャゴット!!そんな翼じゃ無理じゃ!!」
「いいえ!やらなきゃいけないのです。私たちにできることを!!」
エクシードたちが次々と魔水晶に向かって飛び込む。
そんな中、片翼のエクシードがバランスを崩して落ちていく。
「女王!!」
「シャゴット!!」
あのエクシード女王なのか!?
女王は地上に向かって落ちていく。しかし、それをリリーがガッチリと受け止める。
「リリー!?」
「女王様・・・ウソをつくのに疲れたのかい?」
「ごめんなさい・・・私・・・」
女王は申し訳なさそうに顔を下げるが、何か水滴が落ちてきたことに気づいて顔を上げる。
「俺もさ・・・」
その水滴はリリーの涙だった・・・
「どんなに憎もうとしても・・・エクスタリアは俺の国なんだ!!」
「リリー・・・」
「けど、もう無理だ・・・これだけのエクシードが束になっても、こいつは止まらねぇ!!みんなすまねぇ!!俺のせいだ!!俺なら止められた!!人間を、止められたんだぁ!!」
リリーはボロボロと涙を流す。女王はリリーの手をぎゅっと握りしめる。
「想いは・・・想いはきっと届くわ」
リリー・・・自分の気持ちに正直になれたのだな・・・ならば、俺はその想いを繋いでやる!!
「うおおおおおお!!」
「止まれーーーーー!!」
「みんな頑張れー!!」
「押せーー!!」
「俺たちならできるぞ!!」
「負けるかよ!!」
「諦めてなるものか!!」
「うう・・・」
「ギィィィ!!」
「止めるんだから!!絶対に!!」
「私たちも押すのよ!!」
「あいさー!!」
「必ず・・・止めてやるー!!」
「お願い!!止まって!!」
俺たち全員が一致団結して押し続ける。すると、徐々に魔水晶が押し返されていく。
「魔水晶が、押し返されていく・・・」
リリーが呟くように言う。すると、魔水晶が突然光りを放ち始める。
「何!?」
「くっ!!」
「なっ!!」
「なんだ!?」
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
「うっ!!」
「一体・・・」
俺たちはその光で思わず目を閉じる。次に目を開けると、浮遊島に乗っていたはずの巨大魔水晶と竜鎖砲の鎖が姿を消していた・・・
「これは・・・」
「魔水晶が・・・消えた?」
「竜鎖砲の鎖も・・・どうなったの?」
俺たちが何が起きたのかわからずにいると、
「アースランドに帰ったのだ」
「!!」
俺たちの後ろから聞き覚えのある声が聞こえる・・・この声は・・・
「ジェラール!!」
「ミストガン!?」
そこにいたのは顔を布で隠している男・・・だが、あの声は間違いなくジェラールだ。ミストガンというのは、アースランドでの名前か?
「全てを元に戻すだけの、巨大なアニマの残痕を探し、遅くなったことを詫びよう。そしてみんなの力がなければ間に合わなかった。感謝する」
「おお!!」
「元に戻したって・・・」
「そうだ。魔水晶はもう一度アニマを通り、アースランドで元の姿に戻る。全て終わったのだ」
ジェラールは淡々とそう告げるが・・・これはすげぇことなんじゃないのか!?
「やったのか・・・」
「俺たち、エクスタリアを守れたのか?」
「「「「「「「「「「やったーー!!!!」」」」」」」」」」
俺たちとエクシードたちは喜びを爆発させる。全て・・・全て終わったのだな!!
「エドシリル!!」
「アースシリル!!」
アースシリルがセシリーに捕まれてこちらに飛んでくる。俺たちは互いにハイタッチをし、握手する。
「手伝ってくれて・・・ありがとう・・・」
「いや、礼には及ばんよ。俺はほとんど役に立てなかったからな」
アースシリルは涙を流しながら俺の手を握っている。俺はジェラールに視線を向けると、ジェラールは顔に巻いている布を取り、リリーに話しかける。
「リリー、君に助けられた命だ。君の故郷を守れて良かった」
「ええ・・・ありがとうございます・・・王子」
「王子が帰ってきたよー!!」
「王子!?」
「ジェラールって、王子様だったの!?」
「知らなかったのか?」
「うん」
アースシリルがジェラールが王子だったことに驚く。まぁ、確かに王子が何年も国に帰らないなど普通はないからな。知らないのも無理ないか。
「シリル。お前にもずいぶん迷惑をかけたようだな」
ジェラールがこちらに視線を移す。今のシリルは・・・俺か?
「別に良いよ。アースシリルのおかげて、俺は元に「ぐわぁぁぁ!!」リリー!?」
俺とジェラールが話していると、突如リリーが声を上げそちらに視線を移すと、そこには体を貫かれたリリーがいた。
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
「黒猫!!」
「リリー!!」
その場にいた全員が驚愕し、リリーを見る。崩れ落ちていくリリーの後ろには、大量のレギオンとこちらにテン・コマンドメンツを構えるエルちゃんの姿があった。
「まだだ!!まだ終わらんぞ!!」
リリーは体を貫かれたせいで、空を飛ぶ力がなくなったのか、地上に向かって落下していく。
「裏切り者め。所詮は堕天、元エクシード。王に救われた恩を忘れ、刃を向けるとはな」
「向こうのエルザ!!」
「ナイトウォーカーだよ!!」
「あのやろうよくも!!」
「仲間だった猫を撃ったのか!?」
アースナツ、ハッピー、ガジル、アースシリルがエルちゃんを睨みながら言う。
「誰か!!リリーを助けて!!」
「ダメじゃよシャゴット」
「女王様!!私に任せてください!!」
女王の命を受け、女の子のエクシードがリリーを助けに向かう。リリーは割りと丈夫だが、大丈夫なのか?
「スカーレットーー!!」
「ナイトウォーカー・・・」
エルちゃんの狙いは、向こうのエルちゃんか。
「待て、エルザ」
アースエルちゃんの前にジェラールが割ってはいる。ジェラールなら、止めれるか?
「エドラス王国王子であるこの私に、刃を向けるつもりか、エルザ・ナイトウォーカー」
「王子!?」
「くっ・・・」
エルちゃんはジェラールに言われて、手を出せないのか、表情を歪める。
『フハハハハハ!!王子だと!?笑わせるでないわ!!ワシは貴様を息子などとは思っておらん!!』
「!!」
「王様の声だ!!」
「え!?どこにいるの!?」
ジェラールの言葉を聞いてか、王はそんなことを言う。どこにいるかわからん・・・ということはまさか・・・
『7年も行方をくらませておいて、よくおめおめと帰ってこれたものだ』
行方をくらませた・・・だと?その原因はお前ではないのか?
『貴様がアースランド でアニマをふさいで回っていたのは知っておるぞ!売国奴め!お前は自分の国を売ったのだ!!』
「この声、どこから・・・」
「まるで・・・地の底から聞こえてくるみたい」
「まさしくその通りなんじゃないのか?」
「おい!!姿を現せ!!」
「そうだそうだ!!」
アースシリルたちが辺りを見回しながら言う。
「あなたのアニマ計画は失敗したんだ。もう戦う意味などないだろ?」
『意味?戦う意味だと?』
俺も下を見て声の位置を探していると、地面が緑色に輝いている場所を発見する。それと同時に、すさまじい地響きが聞こえてくる。
「な・・なんだこの音・・・いや!これは!」
「魔力で大気が震えてるんだ!!」
アースグレイとルーシィが驚異を感じているようだな。まさか・・・王はマジであれを使うつもりなのか!?
『これは戦いではない!王に仇なす者への報復!一方的な殲滅!!』
緑色に輝いているところから、何かが浮かび上がってくる・・・やべぇぞ、ありゃあ!!
「何よアレ!?」
「魔導兵器か?」
『ワシの前に立ちはだかるつもりなら、たとえ貴様であろうと消してくれる。跡形もなくなぁ!!』
光から現れたのは、鎖で押さえられている白い卵のようなもの、王が言うと、その鎖が外される。
「 父上・・・」
『父ではない。ワシはエドラスの王である』
鎖から解き放たれた卵は、光を放ちながら割れる。
『そうだ・・・貴様をここで始末すれば、アースランドでアニマを塞ぐものはいなくなる。また巨大な魔水晶を造り上げ、エクシードと融合させることなど何度でもできるではないか』
「な・・・なんてことをいってるんだあいつは・・・」
俺の隣のアースシリルが怒りでプルプルと震えている。だが押さえろアースシリル。あれはまずいのだからな・・・
『フハハハハハ!!王の力に不可能などない!!王の力は、絶対なのだーーー!!』
そこに現れたのは、巨大なドラゴンの形をしたロボット。
「何・・・あれ・・・」
「ドロマ・アニムだよ、アースシリル」
ついに姿を現しやがったか、ドロマ・アニム!!
「ドロマ・アニム~?」
「ドロマ・アニム・・・こっちの言葉で、竜騎士の意味。ドラゴンの強化装甲だと!?」
「ドラゴン・・・」
「言われてみれば、そんな形・・・」
「強化装甲?」
「強化装甲って何!?」
アースナツたちがジェラールの説明に目を白黒させている。
「対魔専用魔水晶、【ウィザードキャンセラー】で外部からの魔法を完全に無効化してしまう搭乗型の甲冑だ!!」
「王様があの中で、ドロマ・アニムを操縦してるんだよう」
俺とココが説明すると、ドロマ・アニムは大きく口を開ける。そこには、巨大な銃口なものが見えていた。
『我が兵たちよ、エクシードを捕らえよ!!』
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
王の指示によって魔戦部隊がエクシードたちに向かってくる。
「まずいぞ!!」
「逃げるんだ!!」
俺とジェラールが叫ぶと、エクシードたちは四方八方に逃げていく。くそっ!恐れていたことが起きてしまった!!
「逃がすなー!!」
「マジカライズキャノン、充填完了。照射!!」
魔戦部隊がマジカライズキャノンでエクシードたちを照らす。その光に照らされたエクシードたちは、皆魔水晶にされてしまった。
「みんな!!逃げて!!」
「シャゴット!!私たちも行こう!!」
「みんな・・・生き延びるのよ・・・」
エクシードたちは魔戦部隊から大急ぎで逃げていく。
「追えーーー!!」
「「「「「オオオオオッ!!」」」」」
魔戦部隊も逃げたエクシードたちを全力で追いかける。俺たちは急いでココのレギオンに乗る。
「王国軍からエクシードを守るんだ!!ナイトウォーカーたちを追撃する」
「そうだね!!」
「あのでかぶつはどうする?」
「相手にするだけ無駄だよう。魔法がほとんど効かないんだから」
「かわしながら行くしかない!!今のエクシードは無防備だ!!」
「エドシリルの言ってたのってこういうことか!?」
「すまん!!伝えきれてなかった!!」
「んなこたぁいい!!行くぞ!!」
俺たちはレギオンに乗って魔戦部隊を追いかける。しかし・・・ドロマ・アニムの攻撃を、全て避けるのは不可能だ!!しょうがない!!
「ココ!!エルちゃんたちを追ってくれ!!俺がドロマ・アニムをなんとかしよう!!」
「えぇ!?どうやって!!」
俺はドロマ・アニムに向き直る。確かに対魔専用魔水晶は、魔法をほとんど通さない。そう、ほとんどである。つまり、強大な魔力をぶつければ、倒せるかも知れんのだよ!!
「アースシリル!見ていろ!!これが真の水魔法だよ!!」
「おう?」
俺は魔方陣を一気に書き上げる。
「それは・・・完成させていたのか!?」
ジェラールが俺の書いた魔方陣を見て声を出す。無論、これは水魔法の中での最高の魔法だよ!!
「究極水魔法、水素爆弾!!」
ドガガガガガガッドカーン
俺の魔方陣から放たれた水が、ドロマ・アニムに衝突し、その瞬間に大爆発を起こす。
「すげぇ・・・」
「まさか、これほどの魔法を・・・」
「俺の時にこんなのされたら死んでたわ・・・」
ナツとエルちゃん、そしてアースシリルがそう言う。これなら・・・ん?
俺が手応えを感じていたら、煙が晴れたところからドロマ・アニムが見えてくる。その姿には、ほとんど傷がついた様子がない!!
「バカな!?」
『フハハハハハ!!そんなものは無駄だ!!』
王が言うと、ドロマ・アニムからブレスが飛んでくる。ブレスが俺たちを消し去ろうとした時、ジェラールが魔方陣を書いてそれを止める!!
「ジェラール!!」
「「ミストガン!!」」
俺とエルちゃん、アースシリルが叫ぶ。
『ミストガン?それがアースランドでの貴様の名前か?ジェラール』
「くっ!シリル!!エルザ!!今のうちにいけ!!」
「しかし・・・」
「くそっ・・・」
ここはジェラールに任せるべきなのか?一緒に戦うべきなのか?
「行くんだ!!」
「王子様~・・・」
「お前・・・」
ジェラールは魔方陣を展開させる。
「三重魔方陣、鏡水!!」
ジェラールがそう言うと、ドロマ・アニムに攻撃が返される。
『何?跳ね返した?』
ドロマ・アニムは避ける暇もなく、その攻撃をまともに受ける。
「今度こそ・・・やったか?」
『フッフッフッフッ、チクチクするわ!!』
ドロマ・アニムはやはり全くダメージを受けている気配がない。これが・・・対魔専用魔水晶の力なのか・・・
『いかなる魔導士があがこうと、ドロマ・アニムには効かん!!』
ドロマ・アニムが再びジェラールにブレスを放つと、ジェラールは避ける間もなく打ち落とされる。
「うあああああああ!!」
「ミストガン!!」
「ジェラール!!」
『ファーハッハッハッ!!貴様には地を這う姿が似合っておるぞ、そのまま地上でのたれ死ぬが良いわ!!』
その間にもエクシードたちが次々に魔水晶にされていく。
『おお、美しいぞ!エクシードを一人残らず、魔水晶にするのだ!!』
ドロマ・アニムはこちらに何度も何度も攻撃してくる。俺たちは避けるので精一杯でとてもじゃないがエクシードたちを守るのなんか出来そうにないぞ!!
「くそ!!あれをかわしながら戦う無理だ!!」
「レギぴょん頑張って!!」
「でも、どうすればいいの?」
「ルーシィが囮になればいいと思います」
「それだ!!」
「鬼ーー!!てかエドシリルも乗るなーー!!」
いや、それ以外に思い付かんし・・・そういえば、ナツとアースシリルはどこだ?さっきから姿が見えんのだが・・・
ドゴッ
『何!?』
俺たちがふざけていると、突然ドロマ・アニムの首に何らかの負荷がかかり、変形する。
ズドンッ
『ぬおっ!!』
続いて懐に衝撃が加わる。
ドガッ
続いて後ろに傾きかけた反動を利用して、後ろからドロマ・アニムに攻撃が加えられる。
『ぐっ!!誰だ!?魔法の効かんはずのドロマ・アニムに攻撃を加えている者は!?』
王が怯んでいると、その上にツインテールの女の子がジャンプする。
「天竜の・・・咆哮!!」
『ぐおおおおおお!!』
アースウェンディの咆哮を受けて、ドロマ・アニムは後ろに押される。
「やるじゃねーか、ウェンディ」
「うまく決まったね」
「ううん。シリルたちの方がダメージとしては有効だよ」
「ヤロウ・・・よくも俺のネコを・・・」
先に攻撃を加えたナツ、ガジル、アースシリルがウェンディの周りに集まってくる。
「ナツ!?」
「ウェンディ!?」
「シリル~!?」
「ガジル!?」
ハッピー、シャルル、セシリー、ルーシィは驚いて名前を叫ぶ。あいつら・・・まさか・・・
「行け、ネコたちを守るんだ」
「そっちは任せたぞ」
「待て!!まさかあいつら戦うつもりか!?」
「そうよ!!あんなの相手に、四人で大丈夫!?」
「なぁに、問題ねぇさ」
俺とルーシィの言うとグレイが答える。
「相手はドラゴン、倒せるのはあいつらだけだ。ドラゴン狩りの魔導士、滅竜魔導士!!」
強大な魔力を持つ滅竜魔導士か・・・ならば、ここは信じるぞ!!アースシリル!!
俺たちはその場を四人に任せて、魔戦部隊を追いかけた。
シリルside
「任せておけ、エドシリル」
俺たちはドロマ・アニムに向き合ってそれぞれが気合いを入れる。
「行くぞ、火竜」
「またお前と共闘かよ・・・」
「二人とも、落ち着いてください!!」
気合いが入りすぎてるのかな?二人は若干にらみあってるような気がする・・・今は味方ですよ~?
「てめぇとの決着は、このぶっ壊しがいのありそうな奴をとっちめてからって訳だ」
「燃えてきたぞ」
二人はドロマ・アニムを見据えて言う。なんだ、仲間割れするかと思った。
『おのれ小僧ども!!』
「やろうぜ!!ウェンディ!!」
「うん!!援護します!!天を駆ける俊足なる風を!」
ウェンディがそう言うと、俺とナツさん、ガジルさんの足元に魔方陣が現れる。
「うおっ!?なんだ!?」
「体が、軽くなってきやがった!?」
「速度上昇の魔法です!!」
「バーニア!!」
俺たちはドロマ・アニムに向かって突撃する。
ドロマ・アニムが俺たち三人にブレス攻撃をしてくるが、ナツさんは右に、ガジルさんは左に、俺はジャンプしてそれぞれ避ける。
「!?かわしただと!?」
俺たちはドロマ・アニムの周りを縦横無尽に駆け回る。
『くっ!!狙いが定まらん!!』
ドロマ・アニムが俺たちの動きを追って目を回している隙に次々と攻撃をしていく。
「火竜の鉄拳!!」
「鉄竜棍!!」
「水竜の鉤爪!!」
「「「オラオラオラオラオラオラオラァ!!」」」
『ぐぅっ!!魔法を通さぬはずのドロマ・アニムが微量とはいえ、ダメージを受けている!?』
ファウストはそう言うけど、予想以上にダメージが通らないぞ!!
「くそが!!なんつう固さだ!!」
「これが対魔専用魔水晶の効果か!!」
「ちっ!!びくともしねぇぞ!!」
「それなら・・・」
俺たちがドロマ・アニムの固さに苦戦しているとウェンディが左手を高々とかざす。あれは・・・
「天を切り裂く・・・剛腕なる力を!!」
ウェンディの魔法により、俺たちの体が青白く光る。
「おお!?」
「今度はなんだ!?」
「攻撃力上昇の魔法か!!」
「アームズ!!」
ウェンディのアームズによって、俺たちの力が増す!!
「力が・・・みなぎってくる」
「やるじゃねえかぁ!!」
「これならいけるぜ!!」
「しゃあ!!」
『なんだ!?奴等の魔力が上昇している!?』
俺たちは体に魔力がみなぎってくるのを感じ、ドロマ・アニムに飛びかかる!!
「おりゃあ!!」
「やあああ!!」
「オラァ!!」
「火竜の煌炎!!」
「鉄竜槍・鬼薪!!」
「水竜の砕牙!!」
ウェンディのおかげで力が増した俺たちはドロマ・アニムを攻め立てる。ドロマ・アニムはサンドバッグ状態だ!!
『ぐぅぅぅ!!おのれ!!あの小娘か!!』
ファウストはどうやらウェンディのおかげで俺たちが圧倒的な力で押していると気づいたようだ。
『竜騎弾発射!!』
ドロマ・アニムの尻尾からかなりの量の弾丸がウェンディに襲いかかる。
「しまったぁ!!ウェンディが!!」
「危ない!!」
「私なら大丈夫です。バーニア!!」
ウェンディは自らの速度を上げて弾丸を避ける。しかし・・・
「追尾型!?」
ガジルさんの言う通り、弾丸はウェンディが避けた方へと追いかけていく。
すると・・・
ガッ
「きゃっ!」
「えぇ!?」
ウェンディが壊れた建物の残骸に足をとられて転倒する。こんなタイミングでドジッ子属性出さないで!!
「いった~・・・!?」
弾丸は転んだウェンディに容赦なく向かっていく。間に合え!!
「水竜の盾!!」
「シリル!!」
俺がウェンディを水の盾で守る。ウェンディは俺が必ず守ってやるぜ!!
『まだまだ!!』
「出させるかよ!!」
ドロマ・アニムがミサイルを再び出そうとするが、その前にガジルさんによって尻尾を殴られてミサイルが出せなくなってしまう。
『ぬぅぅ!!小賢しい!!』
「ぐおっ!!」
ガジルさんが尻尾に叩き落とされる。
俺がドロマ・アニムに向かおうとした時、目の前にミサイルが来ていたことに気付く。
「まだ2発残ってた!!」
「問題ない!!水竜の・・・」
俺が鉄拳で弾丸を壊そうとしたが、
「シリルダメ!!さっきまでのとは違う!!」
ウェンディに言われて俺も異変に気づいたが・・・もう遅い!!
ズガガガガガガ
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
ミサイルは俺たちに衝突する前に大爆発を起こす。これが狙いだったのか!?
『フハハハハハ!!身の程を知らぬ魔導士が!ドラゴン狩りが聞いてあきれるわ!!』
得意気なファウストの笑い声、だけど・・・
『ん? なんだと!?』
爆炎をナツさんがきれいに平らげる。おいしいですか?
『竜騎弾の爆炎を食っているのか!?ん?』
今度はガジルさんが尻尾をガジガジ食べている。なんかすげぇな!!
『こいつは尻尾を食っているのか!?』
「ふぅ・・・なんだよこのますい火は。こんなにムカつく味は初めてだ」
ナツさんは口元を拭いながら言う。おいしくなかったんですね。
「ちげぇねぇ。だがよぅ、とりあえず・・・」
「「食ったら力が湧いてきた!!」」
二人は息ピッタリに言う。以外に相性いいのかもしれないですね。
「しっかし強ぇな。ドラゴンって言うだけあって」
「ざけんじゃねぇ。こんなもん、ドラゴンでも何でもねぇよ」
「実際はただのロボットですからね」
「でも、一国の王だと言うのに、護衛もつけないなんて・・・よっぽどの自信があるんだ」
「燃えてきた」
俺たちはファウストの自信を感じとり、全員が気持ちを昂らせていく。
すると、ドロマ・アニムが突然黒色のオーラを放ち始める。
「なんだ?」
「大気から・・・魔力が・・・」
「ドロマ・アニムに集まってる?」
「あいつに・・・流れてってるのか?」
なおも魔力を集めていくドロマ・アニム。次第に、その姿が変わっていっているように見える・・・いや、本当に変形してる!?
『まずは貴様ら全員の戦意を無くしてやろう!!ドロマ・アニム黒天の力を持ってなぁ!!』
さっきまで白のボディをしていたドロマ・アニムは、真っ黒に変色し、右手に大剣、左手に巨大な盾を装備している。その大剣を俺たちに向かって振りかざすと、俺たちはその衝撃に飛ばされてしまう。
「うおおお!!」
しかし、ナツさんはすぐにドロマ・アニムに火竜の鉄拳を食らわせる。が!
『蚊でも刺したか?』
その攻撃は左手の盾に遮られ、ナツさんは投げ飛ばされる。
「うわああ!!」
「ナツさん!!」
「アームズの攻撃力が通じねぇのか!?」
「そんなバカな!?」
俺たちは強化されたドロマ・アニム黒天の力に驚く。大気から魔力を奪っているために、とんでもない力を獲得しているのか!?
『ワハハハ!!感じるか?この絶対的な魔力!!素晴らしい!!跪くな!!命乞いをするな!!貴様らはただ震えて、立ち尽くしておるが良いわ!!』
ドロマ・アニム黒天の剣に魔力が吸い寄せられ、その剣が光り輝く!!
『恐怖しろ!!ドラゴンの魔導士ー!!』
光る剣を降り下ろすと、そこから放たれた魔力が俺たちを飲み込む。
「グアアアアアアアア!!」
「キャアアアアアアア!!」
「ウワアアアアアアア!!」
「ドワアアアアアアア!!」
第三者side
「すまない、ナツ、シリル」
シリルたちがドロマ・アニムと戦っている頃、近くの森ではジェラールが四人の戦っている方角を眺めていた。
「王子・・・何のマネですか?あなたはさっきわざとやられた」
エクシードの女の子に支えられ、リリーがジェラールに近寄る。
ジェラールはリリーに振り返ると、微笑んでみせる。
「俺を助けるために・・・?」
「ケガは大丈夫か?」
「これくらい何とも・・・クッ!」
リリーは傷口を押さえて顔を歪ませる。先程のエドエルザの攻撃がよほど応えているようだ。ジェラールはシリルたちの方に視線を戻す。
「ドロマ・アニムはシリルたちに任せる他ない。私たちには、他にやることがある」
「やること?」
「最後の仕事だ。それには、君の力が必要になる」
リリーはこの時、ジェラールが何を考えているのか、全く理解できなかった。
一方、エドシリルたちは・・・
「追い付いた!!王国軍だ!!」
「しかし・・・何て数だ」
「第二魔戦部隊が全員いるわけだからな」
「どうする!?」
エドシリルたちはようやくエクシードたちを魔水晶にしている王国軍に追い付く。しかし、王国軍とエドシリルたちでは明らかに数に差がありすぎた。だが・・・
「行くしかなかろう!!私たちがやらねば、エクシードがやられる!!」
「だな」
エルザの言葉にエドシリルがうなずく。しかし、その前に一匹のレギオンが立ちはだかる。
「待っていたぞ、スカーレット」
「!!」
そのレギオンに乗っているのは、妖精狩りのエルザ。その顔には、笑みがこぼれている。
「待っていた・・・だと?」
「・・・!!いかん!!」
エドシリルがエドエルザの言葉の意味を真っ先に理解するが時すでに遅し。エドシリルたちのレギオンは王国軍のレギオンに取り囲まれ、さらには下からそのレギオンを狙っている者たちもいる。
「まずい!!罠だ!!」
「伏兵!?」
ズドドドドドド
「グアアアア!!」
「うわぁ!!」
「きゃあ!!」
「くっ!!」
「レギぴょん!!」
「ああっ!!」
地上からの砲撃により、エドシリルたちは落下していく。
「確実に仕留めるんだ!!地上に降りるぞ!!」
王国軍は落ちていく者たちを追いかけていく。
「二人を持ち上げるのは無理だわ!!」
「すまねぇシャルル」
「レギぴょ~ん・・・」
「お・・・おも・・・重たい~!!」
「あたし一人なんだけど!!」
「俺たちも降りるぞ!!」
「うん!!」
シャルルはグレイとココの二人を持ち、ハッピーはルーシィ、セシリーはエドシリルを持っている。
シャルルとハッピーは定員オーバーだったのか、急速な落下をし、セシリーはエドシリルの指示により、ゆっくりと地上に降りていく。しかし、そこには一人、いるはずの者の姿がない。
「あれ?エルザは?」
その一人とはエルザ・スカーレット。そのエルザはというと・・・
ズギャッ
「うわぁ!」
「!!」
レギオンに乗っている兵を一人片付け、そのままエドエルザに斬りかかる。
「スカーレット!!」
「そろそろ決着を着けようか、ナイトウォーカー」
「全員地上に降りろ!!こいつは私一人でやる!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
王国軍はそのまま地上に向かい、二人のエルザはレギオンから降り、エクスタリアに降り立つ。
「お前はエルザでありながら、妖精の尻尾を傷つけすぎた」
「お前もエルザでありながら、我が王に牙を剥いた」
二人はそれぞれ換装をし、互いを見据える。
「「エルザは二人もいらない」」
二人は同時に相手に飛び付く。
「「この勝負!!どちらかが消えるまでだ!!」」
二人のエルザの戦いの火蓋が、ここに切って落とされた。
後書き
いかがだったでしょうか。
エドシリルがドロマ・アニムに向かって放った魔法は、今後のシリルの成長に繋げていく予定なので出させていただきました。
次はいよいよエドラスの妖精の尻尾再登場です。
次回もよろしくお願いします。
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