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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第十一幕その九

「まだこれ位だとね」
「驚かないよね」
「普通だね」
「まだね」
「平気だよね」
「イギリスは本物が出るところがね」
 それこそなのです、イギリスは。
「あるからね」
「そうそう、ホテルなり何なりね」
「古城とかね」
「イギリスはそうした話が多いから」
「日本もそうみたいだけれど」
「イギリスはね」
「多分世界一そうした場所が多いから」
 皆つい最近までイギリスにいたから知っています、イギリスは幽霊のお話が物凄く多い国なのです。それでなのです。
 皆もです、この病院を模したスリル満点のお化け屋敷の中にいて言うのです。
「これ位だとね」
「別にね」
「悲鳴をあげるまではね」
「ないね」
「そこまでは」
「本物の幽霊はもっと凄いね」
 先生も幽霊に出会ったことがあるみたいです、それで自分の目の前であえて怖い仕草をしているお化け屋敷の患者さんを見つつ言います。
「ロンドン塔でも出て来て」
「そうそう、あそこね」
「あそこの幽霊は色々な人がいてね」
「どんどん脅かしてくるから」
「あの迫力と比べたら」
「ここはね」
「まだ穏やかかな」
 皆もリラックスして楽しんでいる感じです、ロンドン塔のことを思い出しながら。
「これ位だとね」
「イギリスだと逃げたくなる場所あるからね」
「あまりにも怖くて」
「それと比べたらね」
「まだまし?」
「ここも」
「いや、これは日本の怖さなのかな」
 ここでこうも言った先生でした。
「若しかして」
「日本の?」
「日本の怖さなんだ」
「これがなんだ」
「そうなんだ」
「そうかもね。実は最近日本の怪奇小説も読んだけれど」
 誰の作品かといいますと。
「夢野久作という人のね」
「その人の作品読んでもなんだ」
「怖くなかったんだ」
「漫画もね。何かイギリスの怖さと違うね」
「だからここもなんだ」
「このお化け屋敷もなんだ」
「そうかもね。怖いことは怖いけれど」
 それでもというのです。
「もう逃げ出す位まではね」
「僕達にとってはなんだ」
「そこまではいかないんだ」
「他のお客さん達みたいには」
「なっていないんだね」
「そうかもね」
 先生は考えるお顔になっています、そのお顔で皆と一緒に歩いてお化け屋敷の中を進んでいます、左右のお部屋を見ると血塗れの遺体の模型や不気味な手術の場面があります。 
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