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妄想全開男子

作者:abcdes
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家〜「G」


暑い。暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い!!!

俺はクーラーのリモコンを握りしめボタンをポチポチと連打する。

ピッピッピッピッピッピッピッ!

つけつけつけつけつけつけ!!!

その想いも儚くエアコンには遠く及ばない。

なんでだよ!なんでつかないんだ!ふざけやがって!

俺は室内の気温を確認した。

えーっと、36度。36度!?人間の平熱かっ!!
この気温じゃ俺を殺しにきてる。確実に、火影から俺を暗殺せよと命令が下されてる。

このままではせいろ蒸し状態の家に、亜美が帰ってきたらまた罵倒される。それは嫌だ。絶対に嫌だ。俺以外とガラスのハートだから。亜美に天使のような声がなかったら今頃俺確実に死んでるから。小5で多分三途の川渡ってたから。
よかったな亜美!俺が妹の声フェチで!

それにしても暑すぎんな。どうにかして室温を下げないと、肉まんになっちまう。とりあえず窓全部開けるか!

俺は家中の窓を開けた。

ウォォォォオ!予想以上に涼しい!サウナから出た後みたいな涼しさだな。

喚起されてく部屋の空気が心地良く感じられ、リビングのソファで寝転んだ。

気持ち良い!あー最高な、き‥‥ぶん‥だ‥‥。


ハッ!

いつの間にか寝てしまった!

壁に掛けてある時計を見ると、針は4時15分を指していた。
あたりはまだ暗くはなっていないが、夕方特有の赤みがかかった空模様になっていた。
部屋の温度はすっかり落ちつき、居心地の良い室温を保っていた。

ふぁ〜でもよく寝れた。そろそろ妹も帰ってくるだろうし、ボイスレコーダーの準備しないと‥‥‥あ

カササッ

ソファの下を通り過ぎた黒い物体の姿を俺は見逃さなかった。

「ひぃぃやあぁぁぁぁぁぁ!!!!うわええええあああああ!!!!」

俺はようやく気付いた。網戸をしないで窓を全開にしたままだったことに。

「Gだ!く、くくくく黒光りするGだ!いやぁぁぁあ!無理無理無理無理」

カササッ

ソファで身動きが取れなくなっている俺をあざ笑うかのように、Gはソファにかけあがってきた。

「ぎゃぁぁぁあ!‥お、おぇ‥‥おおえ‥‥ど、どっかいけ!」

俺は慌てふためいたがクッションでバンバンとソファを叩き威嚇すると、玄関の方にGが退避したのを確認できた。

よっ、よかった。ひとまずは安心していいな。

Gが玄関の方にいる間に、俺は迅速に動き、家中の窓を閉めた。

ガラガラッ
ガラガラッ
ガラガラッ
ガチャ

最後の窓を閉めたあたりで玄関から妹が帰ってきた。

「ただいま〜。お兄ちゃんいるのぉぉいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

あっしまった!運悪く帰ってきやがったか!

「大丈夫か亜美!?待ってろ!今ボイスレコーダー持ってくるから」
「いやなんでよ!?そんなことよぁぁぁぁぁぁあ動いだぁぁぁ」

くそっ!すでに亜美は見つけてしまったか‥‥。今はボイスレコーダーより亜美を助ける方が先決だな。

「早く助けなさいよゴミ兄!!」

ゴミ!?兄ちゃんゴミ!?
これを機に亜美にはちゃんと「お兄ちゃん」って呼ばせるか。

「俺のことちゃんと《お兄ちゃん》って呼んだら助けてやらんこともないぞ」
「何言ってんの早く助けなさいよ!!じゃないとカス兄が夜な夜な永遠と女の子の声を聞いてたってお母さんに言いつけてやるんだから!」
「‥‥‥」

あれ?ばれてた?イヤホンして完璧だったつもりなのに‥‥。でも、まだ俺が妹の声フェチだってのはばれてないから大丈夫だ!!それくらいの情報の漏えい屁でもねえわ!!
いけG!妹に粛清しろ!すてみタックル!

「何してんの早く!!私の声を盗聴してたことも言うからね!!」
「よしきた!」

何もかもばれてた。盗聴ばれてた。さすが亜美さんかなわねえや。

俺は妹に近づくGより早く亜美を助けに猛ダッシュをする。

「ひぃぃぃい!!ゴキ兄も黒光りするGも来ないで!気持ち悪い!」
「おいちょっと待てや」

俺はとっさにGが動きを止めたのを見計らって一旦リビングに戻り、あるものを手にもって玄関でブルブル震えている妹の目の前にかっこよく参上した。

「Gジェット!?早く吹きかけて!!殺して!」
「残念だが‥‥。吹きかけんのは俺じゃない。亜美だ!」
「それボイスレコーダーじゃねえか!!どさくさに紛れて何録音しようとしてんだ!Gジェット二匹にかけんぞ」
「さっきの《ひぃぃぃい》頂いていいか?」
「今!?」

フッ。わかってねえな。俺が亜美をかばう形でGと亜美の間に入ったのにまだ気づかないのか?

「俺は本当は妹想いなんだぜ」
「お兄ちゃん‥‥」

俺は玄関に立てかけてあった虫取り網を手に取りGに立ち向かった。
さながら親愛なる恋人を守る勇者のように。

「おりゃぁぁぁぁあ!!!」
「お兄ちゃんやっちゃえ!」

俺はこの時、事故る前の走馬灯のように、脳が凄まじいほどの回転をしある一つの記憶が蘇った。

そういえば、Gは生命の危機に瀕した時、基本的に高い悲鳴をあげる女性に向かっていきやすいって聞いたことがある。

ブブブブッ

おい嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ!!

Gは真っ黒な羽を羽ばたかせながらこちらに向かって飛んできた。
俺と亜美はそれを紙一重でかわしたが、耳に野太い羽音が残り全身の身の毛がよだつ。

ごめん。勇者になんてなれなかった。守れんかった。

「いや!いや!いや!きゃあ!」
「うわっ!おい暴れるな」

ドンッ

Gは俺らの周りをただひたすらに飛ぶだけだったが、パニクった亜美に俺は背中を思い切り押された。

その際に運悪く、Gはピタッと俺の背中に止まり、体勢を崩した俺は背中から倒れこむしか選択技がなかった。

「亜美覚えてろよ。この借りは必ず返せよ?」
「あ‥‥お兄ちゃんごめん。後でなんでも言うこと聞くから‥‥」

せめてこれ以上何もすることができず天命を終えるのならば、Gに怯え涙ぐむ可愛げのある妹を目に焼き付け、、、、死んでやる。

俺は目を閉じすべての感覚をできる限り最小限に抑え、G付きの背中から床に大の字で倒れこんだ。

さらば‥‥俺の寂寥なる人生よ‥





ブチュッ!
 
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