妄想全開男子
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コンビニ〜「命名」
「命名」
いらっしゃいませー。お預かりします。ピッ158円1点ピッ213円が1点」
あだ名はとても大事だ。
本名とは別の名で外見や内面、性格からあだ名は客観的視点でつけられる。
自分の思っている箇所とは違った考えがあだ名に反映されるのがまた、滑稽でありその場の笑いを誘うこともしばしばある。
だがそれが本人にとって良い思いをしないあだ名だった場合、ただのいじめと化す。
俺はあだ名一つでいじめられかけたことがある。
イケてるグループの奴らのあだ名は、そいつらの他愛もない冗談で終わるかもしれないが、俺らイケてないグループの奴らに対してのあだ名は確実に見下していて、それが一生定着してしまう。
それがイケてない俺たちとあだ名の因果関係である。
俺は今でも小学校で「あいつがいるだけでクラスがジメジメするからあいつの名前これから"ジメジメ"ね」と言う女子達に言われた言葉を絶対に忘れない!
ジメジメしてたのは雨の日の投稿率が高かったからで、俺がいるだけで場がジメジメするわけでもないし、雰囲気もジメジメとさせたこともない!
まずその空気に取り残されてたからな!ジメジメさせるほどの存在感を俺は持っていない!
「合計1032円になります。1100円お預かりします。68円のお返しとレシートになります。ありがとうございましたまたお越しくださいませ」
そんな悲しい思い出を持った俺は、学校帰りにあるコンビニに立ち寄った。
何の用もなくお菓子を物色していると、1人の店員の男子高校生がレジを打ち、もう1人は袋詰めをしていた。
そして接客し終わった後の二人の会話が、俺の忌まわしき過去を思い出させたが少し興味が湧いた。
「あのおっさんは白髪でマルキン買ったから"マルキンの白"だな」
「なんかかっけえな!次来店した時も覚えとかなきゃ!えーっと"マルキンの白"だな。やっぱすげーな岡崎!名前考えんの天才的だな」
"マルキンの白"か‥‥。なんかかっこいいじゃん!なんかこう‥‥説明しにくいけど、感覚的にかっこいいのは伝わってくる!わかる!岡崎くん意外とあだ名付けのセンスある!
岡崎くんは得意げな表情をし、次の客の品物を袋詰めを始めた。
「いらっしゃいませ。お預かりします。151円が1点。128円が1点ーーー」
さぁ次は難しいぞ!今度はおっかない顔のおっさんだ!
見た目おっさんしか特徴がないし、買った品物もおにぎりとジュースとタバコだけだ。
この少数の手がかりで岡崎くんはどうあだ名をつける!?
「ありがとうございました。またお越しくださいませ‥‥‥で、あの人はなんだ?超怖そうだっな。かっこいい名前考えたか?」
「あの人はなここの常連さんだ。いつもあのタバコを買って帰る。このことからタバコの銘柄も乱用してあのおっさんをこれからこう呼ぼう!"暴君ショートホープ"と」
「うおおおおお!超かっけえじゃん!岡崎センス半端ねえ」
うおおおおお!岡崎くんめっちゃかっこいいあだ名あのおっさん如きに渡しよったな!まさかタバコの銘柄を使う荒技を見せつけるとは恐れ入ったぜ!
次にレジに現れたのは、髪がボサボサで左裾だけ膝の位置までまくられたアンバランスさの長ズボンを履いたなんとも言い難い格好のおっさんだった。
これは難易度高いぞ!俺だったらどう考えてもダサい名前になってしまうぞ!さぁ岡崎くんはこいつをどう料理するんだ!
「ありがとうございましたまたお越しくださいませ‥‥。あれはむずいんじゃねえか?いけるか?岡崎」
「ん〜。"レフトアップパーマケント2"」
「うっほ!こりゃすごいな!カタカナがたくさんだぁ!」
これにはさすがに驚いた。
あんなにダサい格好したおっさんでも、カッコ良い名前をつけてしまう岡崎くんに感無量だわ!俺も適当にお菓子買ってレジに並ぶか。
俺は適当に目の前に置いてあったチョコレートのクッキーを一枚取りレジに並んだ。
俺の前にはごつい化粧をしたおばさんがレジで会計をしていた。
「いらっしゃいませ。お預かりします。1032円が1点。528円が1点ーーーお会計10021円になります」
「二万円からザマス。お釣りは坊や達にあげるザマス」
「えぇ!?本当ですか!?ありがとうございます!」
「ありがとうございます!またぜひお越しくださいませ!」
おいおいすげーなあの金持ちババア。お釣りもらうの面倒だからって人にあげんなよ。
岡崎くんはこんな対応をしてくれた金持ちババアにどんなあだ名をつけるんだ?どんなかっこいいあだ名をつけるんだ?
「おお、岡崎!あの人は?あの人のあだ名はなんだ?」
「あの人は‥‥神だ!!名を"ゴッドマザー"とすっ‥‥ダメだ。"マリア"だ。あの女性は"マリア"だ!」
「それ地上最強で最高の褒め言葉じゃん!あっ、いらっしゃいませー」
うわぁぁぁあ!俺の前の人があんな人智を超えたことするから俺のあだ名が霞むじゃん!絶対霞む!小学校でのあだ名"ジメジメ"以上に霞む!
お願い。妥当なのにして。"チョコレートマン"でも"チョコレートクッキー〜ケチ男〜"でも"クッキーモンスター"でもいいから俺の気が滅入る奴だけはやめて!"ジメジメ"以上のものこい!
「ありがとうございましたまたお越しくださいませ」
俺はレジ横のフライヤーを買おうか悩むふりをして、岡崎くんの命名に耳を貸した。
「岡崎。さっきのはどうだ?"マリア"以上にいい奴出た?」
「出るわけねーだろあれが最強なんだから。でも出たには出たな」
「おっ!なに?見た目から入った?」
「そうそう!よくわかったな」
「俺もしかしたらわかったかも」
「まじかよ!?じゃあセーのであいつのあだ名言おうぜ!いくぞ!?セーのっ」
「「童貞!」」
俺はフライヤーから目を離しコンビニから退店した直後に、岡崎くんの命名にチョコレートクッキーを一口かじり感想を放った。
「正解だよ!」
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