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妄想全開男子

作者:abcdes
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告白〜「リア充」

「リア充爆発しろ」

俺はこの言葉が大好きだ。
この言葉を作った人に国民栄誉賞を授与したい。俺から。
でも、最近その言葉は他人事すぎてかわいそうなんじゃないかと思うようになってきた。最近というか今。NOWだよね。

「ここに呼んだのは‥‥その、えっと、ごめん谷川緊張してきた」
「池田君‥‥」

二次元でしか充実してない俺は「リア充」の「充」の部分だけであって、「リアル」がついてこない。
だけど、三次元で充実してしまったらそれはリアルとなり「リア充」と呼べる。
それにプラス「爆発しろ」と、なんて無残なひねくれた言葉が合体した日には、「リア充」の三文字がボンッと爆発するから被害多いよね。あまりに酷だよね。
俺みたいに「充」の字だけ背負ってるものは、自分一人で勝手に背負って勝手に爆発してるぶんにはいいけど、「リア充」って言葉の重みって相当重いと思う。

被害が多い!文字的に!

「リア充」の三文字の言葉を背負う重みと責任感の三文字を背負うことには、リスクが伴う。
そのリスクの原因は自分以外の人を巻き込むことだ。

「俺‥‥俺っ!」
「‥‥‥」

自分以外の人というのは迷うことなく相方(恋人)のこと。

それを作るための作業が、俺の帰宅を阻むように行われていた!

「‥‥‥」
「何?池田君」

池田君頑張れ!ここで緊張して明日食う飯がうまいか!

学校の帰り道たまたま人気のない道を通りたくなった俺は、俺と同じ制服を着た二人の男女がモジモジとしてたので、つい、行動反射で隠れてしまったのが運の尽き。

まさか「リア充」という言葉を背負うための通過儀礼ーーー告白を行おうとしていた!

リア充爆発しろとかいつも思ってるけど、さすがにこんな場面見せられたらちょっと応援しちゃうよね?池田君頑張れって思うよね?
勿論、池田君も谷川さんも俺の知り合いじゃないけど‥‥。

他人が幸せを掴み取ろうとしてるのってなんか素敵やん!

「‥‥‥」
「‥‥‥」

何をモジモジしてんだ!早く言っちゃえよ!「好きです」って言え!そして、俺をその幸せの立会い光景人にさせてくれ!

「俺‥‥谷川さんのことがずっと前から好きです!付き合ってください」
「えっ‥‥!」

言ったぁぁぁぁぁ!池田君言った!よく言った!
いーけだ君!いーけだ君!いーけだ君!いーけだ君!

谷川さん早くOKしちゃえよ!おい早く!谷川さん早く!

あれ?谷川さん‥‥。ちょっと、あれ?間隔開けすぎじゃない?何その間は?早く答えを言わないと池田君にとっての地獄の時間になっちゃいますよ?てか、なってますよ!

もしやこれは‥‥!「私あなたをそんな目で見たことがなかったのごめんなさい」パティーン!?振られるパティーン!?

これはやっちゃったな!池田君やっちゃったな!だから、早めに距離詰めとけって言ったじゃーん。ほんとは言ってないけど。
でも、池田君よくよく見たら軽くブス入ってね?非モテ系男子じゃね?俺側じゃね?

あー!俺側ってことはもう無理だ。後先がない!採算が取れない。

だいたいJKってのはまず人を顔で判断するから、池田君ちょっと「ごめんなさい」方向なんじゃないか?
池田君よくよく見たらそばかすあるし、歯に矯正してるしで見た目ボロクソだな。俺が言えないけど‥‥。

谷川さんなんか気持ち引いてね?泣きそうじゃね?

この女‥‥。顔で判断する女か!よくいる系女子か!
なんかおかしいと思ったんだよね、この間!
普通互いに好きだったら間隔開けずに「私もっ!」ってなるはずだし。

もうやめてあげて!その間!早く池田君にYES、NO教えてあげて!

「‥‥だめ‥‥かな?」

池田くぅぅーーーーーーーーん!!

その悲しい表情やめて!俺に純情な心見せないで!
早く答えろや谷川!なにしてんねんボケ!池田君かわいそだろが!モジモジしすぎだろ!

「‥‥‥」
「‥‥‥」

モジモジしすぎ?ん?これはまさか。俺に課せられた試練なのでは?

もしかして神は卑下な心を持った俺に、純情な心を持った男子高校生を助けろと言っているのか?
そうかそういうことだったのか!ならばここで男を見せねば今の俺が廃る!

よし!あの告白を無茶苦茶にして答えをうやむやにさせてやる!

それには‥‥まず俺があそこに飛び込まなきゃいけないのか‥‥。

うん。無理!そんな勇気持ち合わせてない!NOTブレイブ!
昨日家でも「NOTブレイブストーリーの主役なら俺でもなれんじゃね?」とか思ったほどだわ。忘れてた。
元から腐ってるわ俺。廃れてるわ。

ならばここで見届けさせてもらう。

神よ!ごめん!

さぁ谷川さんの答えはいかに!?


「私も大好きだった!」

フォォォオォォォァァぉぉ!!!

池谷君おめでとう!池田君の幸せが俺の幸せだ!

でも、さすがにやるなあの女‥‥。溜めてからの解き放ちうまいな。
きっとあの女、相当付き合って別れてを繰り返し行ってきてるんだと思う。
池田君頑張れ!多分セフレ候補だと思うけど、幸せに決まった形なんてないんだ!
自分の思うように転れ!

俺は初めて心地よくこの言葉が言える気がする。




「リア充爆発しろ」




いやー!いいもの見た!
人が幸せを手にするとこをまじかで見れば、誰しも俺と同じの気持ちになるんじゃないか?
みんな結婚式行ってみるといい。学生のうちに。

あのカップルの横でも通って家に帰るとするか。

俺は幸せそうなカップルを幸せな気持ちで通り過ぎた。その際にこんな会話が聞こえた。

「初々しかったなーあの頃は。今日で3年目だね」
「そうだな。なんで交際三年目でもう一回はずい告白デジャブさせないといけないんだよ!けっこーはずかったわ」
「キャハハ!記念だしいいじゃん!じゃあプリいこ!みんなに自慢しよ!」
「そうだな。三年なんてなかなか続かないもんだし、きっとみんな祝ってくれんだろ」

俺は複雑な気持ちになった。

告白が遊び?記念?ほほーなるほど。

3年ねー。なるほど。



ここ1、2分の感情前言撤回!!

俺は天高く飛び行く飛行機に睨みを効かせ、晴れ渡る雲ひとつない青空に呟いた。



「リア充爆発しろ」

 
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