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美しき異形達

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第五十三話 山師その五

「カリオストロ伯爵は何故サン=ジェルマン伯爵に対抗意識があるのかのう」
「そのことだね」
「そういえばどうしてなのかな」
「お互いにライバル意識があるのはわかるけれど」
「カリオストロ伯爵の方がね」
「一方的になんだよね」
「それが長い間続いておる」
 両者の対立関係、もっと言えばカリオストロ伯爵のサン=ジェルマン伯爵への一方的な対抗意識だ。それがというのだ。
「そして今回もじゃ」
「あの娘達にだね」
「自分達の怪人を向けて」
「それで戦わせて」
「自分の生み出した怪人の方が優れているって証明したいんだね」
「そうじゃろうな」
 博士は周囲の言葉にやや忌々しげに応えた。
「競争心というやつじゃな」
「誰にでもあるものだね」
「僕達にもあるし」
「それであの伯爵にもだね」
「あるんだね」
「そういうことじゃ、例え不老不死になってもな」
 それでもというのだ、例え永遠の命を手に入れても。
「人は人じゃ」
「仙人になってもだね」
「それでも」
「人間だから」
「そうした感情はあるんだね」
「人はよい感情もあれば悪い感情もある」
 その心もというのだ、そしてこうも言った博士だった。
「善悪はどうしてもな」
「それであの伯爵もだね」
「サン=ジェルマン伯爵に対抗意識を出して」
「そして今みたいなこともして」
「あの娘達を苦しめてるんだね」
「エゴじゃ」 
 博士はカルオストロ伯爵のその感情をこれに結論付けた。
「結局は」
「サン=ジェルマン伯爵に勝ちたいだけという」
「それだけのことなんだね」
「自分ではどう思ってるかわからないけれど」
「自分のことは自分ではわからぬ」
 達観もだ、博士は言葉として出した。
「主観故にな」
「何百年生きていても」
「タイムマシンであらゆる時代に行けても」
「人は人ってことだね」
「心があるのなら」
「僕達も含めて」
「人の心が一番厄介じゃ」
 こうも言った博士だった。
「それが一番ややこしく災いにもなる」
「今回のことも」
「他のことも含めて」
「人の心こそが」
「この世で一番難しいものなんだね」
「確かにこの上ない災厄をもたらすものじゃ」
 博士の言葉は続いた、ここでも。
「しかしじゃ」
「それと共にだよね」
「人の心はこのうえない素晴らしいもの」
「博士いつもこうも言ってるよね」
「人の心はそうした意味でも大切だって」
「そう言ってるね」
「うむ、実際にそうだと思う」
 哲学者としての言葉だった、博士は哲学者でもあるのでそれでこうした言葉も学者として出せたのである。
「それが人なのじゃ」
「人の心」
「そうなんだね」
「最悪のものであり最高のもの」
「そのどちらでもある」
「それが人の心だね」
「君達も含めてな」
 周りにいる友人達への言葉だった。 
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