| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

美しき異形達

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十三話 山師その四

「この場所に屋敷があった」
「わかった、ここじゃな」
「そうだ、しかし」
「場所を移してるやもか」
「そう思うが」
「いや、それはないのう」
 博士は伯爵が場所を変えた可能性は否定した。
「あの伯爵でもな」
「それはないか」
「うむ、おるのはな」
「ここか」
「それは間違いない」
「流石に屋敷まで移動させられないか」
「あの伯爵の魔術等なら出来るが」
 しかし、というのだ。
「屋敷ごと他の、遠くの場所に移動させるとなると」
「相当な力を使うからか」
「流石にそれはない」
 幾ら何でもというのだ。
「その分怪人を造る方に力を注いておる」
「では怪人を造る場所もか」
「あの屋敷にあるのう」
 博士はこのことは予想して言った。
「おそらくじゃが」
「そうか、ではな」
「伯爵の幻術を防いでじゃ」
 そして、というのだ。
「それからじゃ」
「そうなるか」
「うむ、しかしな」
「俺がやることはだな」
「これで終わりじゃ」
「そうか」
「君の戦いはもう終わっておる」
 博士の声がここで優しいものになった。
「既にな」
「だからか」
「君が戦うことはない」
「既に戦っているがな」
「しかしじゃ。もういい」
 彼が戦うこと、それ自体がというのだ。
「君は休んでくれ」
「そうか、ではな」
「後はあの娘達じゃが」
「あの娘達はやってくれるか」
「うむ、あの娘達も強い」
 彼を見てだ、博士は表情も優しいものにさせていた。
 そしてだ、こうも言ったのだった。
「必ず。自分達の運命のしがらみを断ち切る」
「自分達自身でじゃな」
「君がそうした様にな」
 こう彼に言ってだ、それからだった。
 博士はあらためてだ、周囲の面々に言った。
「何はともあれあの伯爵の居場所もわかった」
「そこが何処かをだね」
「あの娘達に教えてあげるんだね」
「そうする」
 まさにというのだ。
「これからな。あとな」
「あと?」
「あとっていうと?」
「おそらくじゃがもうな」
 博士は何かを察している顔になった、その顔で遠くを見つつそうしてだった。周りの面々にこうしたことも言った。
「もう一人の伯爵はあの娘達の前に来ておるのう」
「サン=ジェルマン伯爵は」
「もうなの」
「うむ、あくまでわしの予想じゃが」
 そうではないかというのだ。
「そしてあの娘達は多くのことを知ったわ」
「何かね」
「ここで急にだね」
「話が動いてるね」
「そうだよね」
「うむ、しかし思うことがある」
 博士は今度は深く考える顔になっていた。
 そしてだ、その顔でさらに言ったのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧