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魔法少女リリカルなのは 世界を渡りあるく者

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第五章 過去との決別 〜ミッドチルダ J・S事件〜
  最終話 少年の内に秘めたる思い

 
前書き
2話とか言いましたが、きりが悪かったので一つにまとめました。これにて、JS事件は終結です

それから、PV100000ありがとうございます。最初はここまでいくとは思っていなかったので感極まっております

このまで完走できたのは読者の皆様のお陰です。心から感謝申し上げます 

 
空が、極光で染まる

漏れ出る魔力は空気を叩き、風を起こしている

「この量、オリジナルが本当に人間か疑いたくなるね」

ーーリミットブレイク エクストリームブレイク

これは、純粋なエクストリームドライブの発展、完成系だ

効果は同じで、魔力を一度に放出できる量を増やす

だが、フルドライブとはレベルが違う

フルドライブ時の4倍。それが、いま俺が一瞬で放出できる魔力量だ

「アルティメイタム!」

〈シームレスモード〉

片手剣が消え、待機状態のブレスレットに戻る。しかし、普段とは決定的な違いがあり、そのブレスレットは両手首(・・・)にある

俺は手を伸ばし、両手に魔力を集中させ、デバイスを顕現させる

形状はいままでのものとは違い、ハンドガンの先端下部に刀が付いているという異形。カートリッジもグリップ内部に装填するタイプではなく、17式拳銃のようにトリガーの前にセットされている

俺は右手のそれをあいつに向けて、トリガーを引いた



ーーーーーーーーーーーーーー


「っ!」

思いっきり右に跳躍する。嫌な予感が悪寒となって背筋を凍らせたからだ。こういうのは外れたことがない。そして、今も避けなければ一発でやられていた

「ノンチャージで高威力直射砲....。ますます規格外だね」

放たれた直射砲は僕の背後にあるゆりかご付近のガジェットをもまとめて潰していた。これは、少し気合を入れないとかな

「はああああああああ!!」

下がっていたら砲撃の餌食になる。こんなれば神速で相手の懐に入るしかない...!

そう判断し、僕は敵に向かって突進する


ーーーーーーーーーーーーーー


カートリッジすら使わずに、ただトリガーを引くだけでディバインバスターを撃てる。これは、エクストリームブレイク状態だからこそできる。あいつが突っ込んでくるのを見て、俺は左の刀で弾く


この形態は今まで通りラグなしで剣と銃の形態を変化させることができる。それだけでなく、銃形態は扱いやすいハンドガン。近接形態は俺と常に共にあった刀。ゆえにこれは俺とアルティメイタムが辿り着いた終極点、最終形態(アルティメットモード)

シームレスモードは、デバイスとしての補助能力を待機状態と同じブレスレット型の中に入れ込み、武装を自身の魔力で再現することによりどの形態でもすぐに用意できる。たとえ壊されたとしても、投擲武器に使ったとしてもすぐに用意しなおせるようにした状態のことを示す。例えるなら投影魔術を使ってるような感じか

それにより、言い方は悪いが使い捨てのように使うことができる

「はああああああああ!!」

高速でこちらに突撃してくる。いままでならこの攻撃を迎撃するのは難しかっただろうが、いまの俺からしてみれば

「遅い!」

身体を捻りながら交わし相手の背後を取って再びトリガーを引く

一筋の光が空を走る。それは敵を飲み込まんとするが届かない。僅かに掠り防護服を削っただけだった

「なにが心なんてない、だ。ならなんで俺を殺そうとする!」

「言われたんだ...。オリジナルがいる限り僕が僕であることはないって。誰だって生きたいと思うのは当然だろう!」

空中戦闘(エアレイド)をしながら話す。あいつの本心を引きずり出すために

ああ、確かにそうだよ。誰だって心の奥底では生きたいって、ここにいたいって思ってるよな。俺だってそうなのだと気付かされた

「ああそうかよ。でも、それが本当だとどうして信じられる。なにをもってお前はスカリエッティを信じた!」

グリップ部を稼働させ、刀部分とグリップまでが一直線となり、それでもって切り掛かる。互いに二刀、手数の部分では互角だ。ゆえにいまはまだ拮抗しているが、徐々にこちらが押してきている。向こうもまずいと思ったのか俺の右手にもつ刀を弾いた瞬間に後ろに下がった

別に見えない速さじゃないけど、それでも一瞬一瞬の速度は速い。いや、違うか。俺がだんだん遅くなってるんだ

原因は分かってる、だからこそこれでいいと思える。これが正しいのだと

「あの人が僕を育ててくれた。なら、信じる理由はそれで十分だろう!」

「それは盲目って言うんだよ!」

くそっ!あいつの砲撃の威力がどんどん上がってやがる。いまはまだディバインバスターで相殺できてるがこのままじゃ越されるぞ

「じゃあどうしろって言うんだ!」

再び剣を打ち合わす。相手が突いてくるのを落とし、こちらが切るのを流される

「自分の目を開け!他者を通して見るんじゃなくて、自分自身で見るんだよ!」

「っ!」

一瞬、ほんの刹那だが動きが止まる。そこを見逃さずに切る!

初めてクリーンヒットし相手は吹き飛んだ

「自分の目で....?」

「そうだ。自分で聞いて、見て、感じて。そうやって自分はここにいるんだって、自分は自分だって思えるんだ。それすらしないお前は確かにここにいないだろうさ」

互いに攻撃の手を止め、見つめ合う。俺が言った言葉を吟味するように、嘘偽りがないか確かめるように俺の瞳を覗いてくる

「そうだとしたら.....僕は、どうすればいい....」

「そうだな。お前一人くらいなら俺が色々教えてやれるさ。元々俺のせいで産まれたようなものだ、面倒くらいは見てやる。だから、そんな所からは離れてこっちに来いよ!」

俺は手を伸ばす。思ったよりも簡単に説得できた。これならすぐにあいつらを助けに行ける!

あいつも俺にゆっくり、本当にゆっくりだけど俺に手を伸ばす。俺はその手をつかもうとして......













『はーい、そこまでよー』

気持ちの悪い声を聞いた

あいつの手が止まる、肩を震わせ、まるで獣に魅入られた動物のように目は開き、息は不規則になる

そして俺も、聞こえてきた声に吐き気を催し動きが止まっていた。その声は世の男をそれだけで魅了させることのできる色香を持っているのだろう。もっともそれ以上のものを知っている俺からしてみればどうとも思わないが

しかし、それ以上に内包されている悪意が凄まじい。蛇のように絡み、その粘つきは例え難い

そんなものを前にして、流石の俺も吐き気と嫌気を抑えきれなかった

『お坊ちゃま。いままで育ててくれたドクターの恩を仇で返すつもりですかぁー?親よりも見ず知らずの他人を信用するんですかぁー?そんなことありませんよねぇー。だから、いますることは貴方を惑わすその口、その手を切り刻むことですよぉ?』

「それでも....僕は見てみたいんだ。あの人には感謝してるけど、なぜか今、この人の言葉が正しいって直感(・・)したんだ」

俺はその言葉に驚いた。まさか、感じ取ったものを信じるのか...。全く、昔の俺にそっくりだよ

『......そうですか。なら、その迷いを消してあげます。ドクターがいざという時のためと言って仕込んでおいたコンシデレーション・コンソールが役立つとは想定外です。ですが、これで心置きなく暴れることができますよぉー。その身に宿すレリックと一緒に力の限りを尽くして目の前の男を惨殺してくださーい』

「え....?うぐっ.......。何かが入ってくる.....。気持ち悪い、こんなの.....認めない....」

通信が切れたと思ったらいきなりあいつがうずくまった。なんだ、なにがおこってる

「聞いて....。僕の中にはレリックがある。そしていま..クアットロにそれを暴走させられようとしてる.....」

何かに抗うようにしながら、俺に語りかけてくる

「お願い......お願いだから....助けて。このままじゃ、見つける前に僕じゃなくなる。そんなのは....いやだ!」

頬を伝わっていたのは一筋の涙

俺は、その言葉に対して意志を感じた。先程までは微塵も感じなかった、あいつ自身の言葉ってやつなんだと確信した。だから

「ああ、わかったとも。安心しろ、俺の名にかけてお前を助け出してやる!」

俺はあいつに対して力強く頷き、刀を再び構える

そして、嵐が起こる

「っ.......」

俺は吹き飛ばされまいと魔力を後ろに放出する。腕で顔を庇いながらもその中心を睨みつける

「いくぞ....!ビット展開!!」

嵐が弱くなると共に右刀で風を斬りはらい、ビットを周囲に展開する

俺のビットは長方形の形をしている。防御と攻撃を両方行うことができ、防御するときは上下に少し開き、そこからバリアを発生させる。攻撃時には4基で一つの蓋なし立方体を作り一基となり、砲撃を放つ

それが全部で16基、俺の周囲に滞空している


「これだけじゃないぞ...。刮目しろ、これこそ原初の魔法!源流魔法式、エミュレートスタート!」

足元の魔法陣が、ミッド式のものから変わる。丸だったものが、丸の中に三角形が入っている。それはまるで、ミッド式とベルカ式の魔法陣を重ね合わせたようである

「エクストリームーーーーー」

左手の銃を嵐の中心にむける。カートリッジが3発ロードされ、先端には先程と同じ魔法陣。さらに周囲には攻撃モードとなった4基のビット、それらの後方にも同じ魔法陣が展開している

「バスター!!!」

トリガーを引き、5つの光が迸り嵐をかき消す。俺は多少のダメージを与えられたと思ったが

「..........」

「おいおいまじかよ」

全くの無傷。それどころか俺の砲撃の一部を吸収して自分に纏ってやがる

次なる攻撃に移ろうとした瞬間、未来線が俺の額を貫く。不味いと思いビットを防御モードで一基置く。俺が認識したのとほぼ同時に目の前にあいつが現れビットのバリアに剣を突き刺す

早すぎるだろう....!

このままだと遠距離に逃げる前に追いつかれる。なら、近接戦を受けるしかないか

左も刀に変え、あいつに斬りかかる。刀に変えると同時にビットは砕かれ、俺の額に剣が突き立てられようとするが、それを左で弾く。そのまま返す刃で斜めに斬り落とす。後ろに躱されるが、残っている攻撃ビット3基を使い追撃する。あいつはそれを態勢を整えながら左右に避ける

「くっそ、周囲の魔力も集めて身に纏ってるのか...」

このままじゃやばい。集めれば集めるほど身体能力は上がり、魔法の威力は上がり、さらに速度も上がる

向こうと違いこちらは今でも速度が下がってきてる。当然か、それはこの身が幻想から現実に戻ってきてることの証。速度が下がっていく代わりに俺自体の存在強度も上がってきてる。

このまま長期戦をやるのは不味い。ならば...

「短期決戦、やるぞ」

最大火力を持って落とす!

「桜花派生!」

足元に陣を張り、そこを足場として桜花を使う。刀は二本共に腰に構え...

「烈風、二閃!」

神速でもって突きを放つ!

ガキン!

だが、それだけでは相手の鎧を貫けなかった。このまま停止してしまったらいい的なのは理解していたので、そのまま通り過ぎる

これでも貫けないとすると、高威力砲撃か、あるいは雪月花並みの奥義しかないだろう。でも剣術じゃだめだ。恐らく内部のレリックのみを壊すことは出来ない。そうなると、大威力砲撃のみ、か。でも、収束砲(ブレイカー)はチャージに時間がかかる。先ずは、それを打つ為の場を整える!

「アルティメイタム、新技やるぞ。あの鎧なら丁度いい」

<わかりました ロードカートリッジ>

魔力がなくなった薬莢がアルティメイタムから排出される。そしてマガジンが空になったので新しく装填する

「......っ!」

魔力を圧縮、今度は一撃離脱の為ではなく、正面から斬り合う為に相手の懐に飛び込んで行く

「せい!」

圧縮魔力を放出、再び神速で空を飛ぶ。右の刀を左下から切り上げ、左の刀を右下から切り上げる。その速度は早く、例え閃光と謳われるフェイトであっても目で捉えることは出来ないだろう。だが、相手はそれに対して

「.........」

キン!

「っ!!!」

無表情のまま、腕のみで両方の刀を止めた。だが、それがなんだ。この程度は予測の範囲内だ。すぐさま刀を消し新たな刀を作り出して、今度は左右上斜めからクロスに切る。これもまた腕の動きのみで止められる

だが、いまの止めは先ほどよりかは若干余裕がなかったぞ。このまま...!

俺はそのまま四方八方から斬りつける、その全てをことごとく防がれるがそれで構わない




ーーーーーーーーーーーーーーーーー

打ち合う速度はこれまた高速、刀の軌跡は、全てが同時にあるように見えた。ただ勘違いしてはいけないのは、決して多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)ではないということ。そも、根源に達した際に取った手段によって得られる魔法は変わる。蒼炎が取ったのは平行世界からのアプローチではなく、自身の起源と世界との契約によるもの。ならば、第二魔法を使えるわけがない。魔法抜きで多重次元屈折現象を使うことを許されているのは後にも先にもただ一人。故に、蒼炎は同時に斬ってはいない。しかし、剣術を極めたものとしての全ての技術をもって同時一歩手前の領域に踏み込んだ。それは、凡人と天才を隔てる壁、一般人(・・・)が辿り着く事のできる最奥

打ち合いが10合を超える

ーーまだ、足りない。刀に宿る輝きは微量

50を超える

ーー少しが蒼炎が押している、という程度。故にまだ足りない。輝きは星のそれにまだ届かない

そして、70に届くか届かないかというあたりで変化は起きた。刀に込められた輝きは眩く、まるで新星の如く、見る人々を魅了するように

「....っああああああ!!!」

さらに、蒼炎の攻撃により相手が少し、ほんの少しだけ後ろに下がった。それは、鎧を貫いたということを意味する。では、どうやって?その答えは彼の刀を見れば一目瞭然だ

「これがっ!俺の、俺たちの考えた近接での一撃必殺!!」

刀には高密度高濃度の魔力が収束されている、この打ち合いの間に溜めていたのだ。しかも、ただ大気にある残留魔力だけでなく、斬り込む度に大気に拡散されていった鎧の魔力を利用していたのだ。そうして集められた魔力を過剰圧縮、収束して刀に纏わせる、一種のブレイカーの準備をしていた

そして今それが解き放たれようとしている、できた隙はほんのわずか、刹那に満たないがそれでも十分すぎる。その刀を振り下ろすのに刹那はいらない...!

「一撃必殺!ストライク.....!」

右の刀を左肩の上に振り上げ、瞬閃の要領で光の速さの如く斬り落とす

「ブレイカーーーーーーーー!!!!」

相手の体に当たると同時に魔力を解放、斬撃とともに放つ。放たれた魔力は相手を飲み込まんと空を迸る、がそれでも無傷。それでも鎧は壊せない。だが、蒼炎は二刀流。そして、大気にはさらに魔力が満ちている!

それらの魔力も上乗せした左の刀。先ほどの体の動きを利用し、全く同じ軌道で斬りかかる!

「剥がれろおおおおおおおお!!」

放つ。今度の攻撃は一瞬であり、射程は限りなく短いが、その魔力の輝きは約束された勝利の剣(エクスカリバー)に勝るとも劣らない。その一撃に、どうやって耐えられようか。物の見事に鎧は剥がれ、相手は空から落ちていく。蒼炎はその隙を逃すことはしない

「バインド!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「バインド!!」

魔法陣周囲に空間凍結機能付きで、引っ張られても壊れにくくしたチェーンバインド、相手の再強化を遅らせるためにストラグルバインド、四肢を凍結させるためにアイスバインド、極め付けは、駄目押しで動けなくするためにレストリクトロック。バインドを四重に掛けて、相手を完全拘束する

「はぁ....っあ...っ!」

度重なる高難易度魔法の使用で体が悲鳴をあげる。さらに、そろそろ魔術回路とリンカーコアが危険信号を出してる。このまま長引かせるのはまずい

これで、最後だ

足元に魔法陣をだす。ミッドではなく源流の

「収束....!」

攻撃型にしたビットを全基俺の周囲に滞空させ、それぞれが別々の魔法のチャージを始める。そして、俺自身も収束魔法のチャージに入る

「っ....。あと少しだけ、耐えてくれ...」

視界がぼやけてきた、体の魔力がそろそろそこを尽きてきてる。まだだ、この砲撃を撃つまで俺は倒れるわけにいかない

貯まるまでの時間、たったの数十秒が無限に思えてきた。だが、それがなんだ。この身、この魂こそは無間地獄から戻った4つの中の一つ。たかが無限で何を恐れる!

「待ってろ、いまそこから救い出してやる...!」


チャージが終わった。いくぞ、これが最後の一撃

そして俺はトリガーに指をかけて












視界が暗転した











ーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー質問、()は一体何を望むの


あいつを、救いたい

ーーそれは正しいこと?

誰かを救いたいという思いは、間違いじゃないはずだ

ーーそうだね。でもそれは彼には当てはまらない。彼はこの僕の複製体、起源に差異はあれども、幻想の力を欠片ほどではあるが宿している。もし僕の思う通り、引き取って一緒に生活したらその欠片が成長してしまうかもしれない

それが?俺と一緒の道なんて歩ませないさ

ーー違うよ。それは、相反する力である真実を拒む可能性があるということ。すなわち、幻想と真実が共存できるという可能性を内に秘めている僕を否定する可能性があるということだよ。ならば僕が取るべき最良の手段はここで殺すことだろう?僕が忌諱しているのは、同じ過ちを繰り返すことだ。ならばその可能性を摘む方がよっぽどいい

.....確かにそうだな。昔ならそう思ってもおかしく無い。でも今は違う。俺はここにいるんだ。ならば、目を向けるべきは過去じゃない、未来だ。失敗を怖がって足を前に進めないならば生きる価値なんてない。昔の俺はそうだった、また誰かを救えなかった?はっ、違うだろう。失敗を恐れていつも後手後手に回ってたからそうなるんだ。ならそれは必然の結果だよ。皮肉なものだ、自分自身で運命を決めつけてたんなんてな

ーーそれの何が悪いの?僕は理不尽は変えられることを知っている。例えそうだとしても、結果的に助けられた(ハッピーエンド)なら良くない?

嫌だね。俺は、俺のせいで悲しませたくない。ああそうさ、俺は我儘だからな。結果だけじゃなくて過程も求めるんだ。それにその結果はこの身を犠牲にして手に入れられるものだ。悪いが、大切な人にそれは間違ってるって言われて気がついたよ、だからもうそんなことはしない。そりゃ、危ない橋を渡ることはこれから先数え切れない程あるだろうさ。でも、渡らなくていいものなら避けて通るよ。

ーーそんなの、幻想(お伽話)の中でしか無理だね

は、ならやっぱり俺とお前は違うよ。俺は幻想の魔術師だ。俺自身が幻想になるんじゃなくて、幻想を求めるのも構わないだろう?

ーーそうだね。僕と()は違うもの、か

ああ、俺はあいつを救う。もう振り返らない。これからは前を向く。だからーーーお別れだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「っらああ!!」

気を失いかけたのを気合で押さえ込む。いまのこの一瞬で、なにかがあった気がしたがそんなものは気にしない

さっきよりも空気が重く感じる。そして察した、もうここから先、俺は上位世界に行くことはできても、完全な形で幻想を使うことはできないだろう。そりゃそうだ。ここにいないという思いが力となるのに、今の俺は明確にここにいると感じている。正しくはティアナがいるところに俺がいるって感じか。だから、あいつが幻想とならない限りは俺も幻想とならないだろう

いまなら、やれる。そんな気がする

「うおおおおおおお....!」

照準をあいつに定め、先ずはビットから撃つ!

全4基を一斉掃射するのではなく、時間差で撃つ

1射目、始まりの砲撃であるディバインバスター

ほんの少し時間を空けて2射目、自身の特性を付与した、ディバインバスター・ブリザード

3射目、一番新しい砲撃魔法であるエクストリームバスター

4射目、初めて使った収束魔法である、エターナルブレイカー

それら全てを打ちながら、ビットの中央にいて、溜めていた俺は収束魔法を放つ

それは、俺の全てを乗せた魔法。ならば、この名こそが相応しい

「一撃....決殺!ファイナル...ブレイカー!!」

膨大な魔力は海より深い蒼色を成して、相手を包み込む

「ああああああああああ!!」

「もう少しの辛抱だ...!」

そして、ガラスが砕けるような音がした。レリックが砕けた音だ。俺はその音で、全てが終わったと思い気を緩めるが

「まだ!僕の中には二個(・・)入ってる!!」

その言葉に俺は気を持ち直し、勢いが落ちたブレイカーを立て直そうとするが

「ぐっ....。だったら、ブラスター3!!!」

<ブラスター 3>

「ブースト...!シュート!!」

ブラスターシステムで持って無理やり出力を上げて

「うおおおおおおおおおおお!」

パリン...

気合で持ってして砕いた。その音と同時に今度こそ安堵して、そのまま落ちていこうとするあいつを受け止めた

「.....ありが..とう。これでようやく、本当に自由に、なれた」

「今は眠っとけ。また、後でな」

「うん」

こいつはこれでもう大丈夫だな。全く、気持ちよさそうな顔して気を失いやがって

「こちらBC01。要救助者一名確保、これから転送でそちらに送る。ちょいとやり過ぎたかもしれないから看てやってくれ」

[こちらロングアーチ、了解しました。指揮官はこれから?]

「決まってる。ゆりかご内部に突入、あいつらの援護にいく」

身体の調子は、お世辞にも良いとは言えないがまだ活動できる。少なくとも、補給を必要としない程度には。だが、そんな必要はなかった

[蒼炎さん!こっちは大丈夫です!もう全員脱出しました!!]

「て、ティアナ!?平気なのか!??」

通信からティアナの声が聞こえ、今度こそ本当に気を抜いた。気を抜きすぎて空から落ちるところだった

「よかった...。本当によかった....」

[蒼炎の兄貴はそのままの位置で!すぐお迎えにあがりますんで!]

「ああ、そうだな。少しばかり疲れたよ。頼む」

ヘリに入って座った後、俺の意識はすぐに飛んでしまった。その寝姿の顔は、まるで赤子のように柔らかかったらしいが...まあ俺には関係なかった話だ

これで、ようやく休める

俺は久しぶりに意識を完全に落として眠りについた 
 

 
後書き
春がやってきた。桜舞い散る季節に、俺たちはまた別れる

これで、本当に全てが終わり

誰も失うことなく、物語は幕を閉じる

さあ、終演(フィナーレ)といこうじゃないか

次回 終章 未来へと 〜機動六課 解散〜
これにて舞台は一時閉幕 
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