FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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ファイアーボール
シッカの街、宿屋にて・・・
俺たちはルーエンの街近くの森から少し歩いて、今はシッカの街というところの宿屋に来ている。
俺たちはそこでエドラスの地図を広げている。
「ホテルの人から借りてきた、エドラスの地図です」
「アースランドの地形とあまり変わらないね」
「本当だ~!!そっくり~!!」
「お前らよく地形なんて覚えてるなぁ・・・」
ハッピーとセシリーが地図を見てアースランドとエドラスは地形が似てるなんて言ってるけど・・・俺にはよくわからん。だって地図なんてあんまり見ないもん。
シャルルがその地図を使ってエドラスの妖精の尻尾の位置や、その後の出来事が起きた場所、そして俺たちの目指す王都の位置を教えてくれる。まだまだ王都までは遠いなぁ・・・
「まだまだ遠いなぁ・・・」
「おまけに間に海があるみたいですし・・・」
「しかも、王国軍に見つからないように気を付けないといけないですし・・・到着までどのくらいかかるか・・・」
俺たちがそんな真剣な話をしていると、
「おい見ろよ!!」
「「「「「「?」」」」」」
突然ルーシィさんの声が聞こえたのでそちらを見る。
「あいつとあたし、体までまったく一緒だよ!!」
「だー!?そんな格好で出てくなぁ!!」
そこにはエドルーシィさんが立っていた。バスタオル一枚だけを身につけて。
「ブッ!!」
「し、シリル!!」
「はい、ティッシュ~」
「あ、ありがとうセシリー・・・」
思わず鼻血を出してしまった俺にセシリーがティッシュを渡してくれる。とりあえず鼻にティッシュを入れて・・・よし、おっけぇ。
「エドルーシィさん!!シリルとナツさんがいるんですよ!!」
ウェンディが慌てた様子でエドルーシィさんにそう言う。もっと言ってやってくれ、ウェンディ。
「別にあたしは構わないんだけどねぇ」
「構うわ!!」
「そこは構ってください!!」
しかしエドルーシィさんは恥じらいもなく笑顔でそう言う。恥じらいと言うことを知らないのかな?エドラスの人は。
「にぎやかだね、Wーシィ」
「それ、うまいこと言ってるつもりなの?」
「え~?ハッピーにしてた上手だと思うよ~?」
セシリーたちはそんな会話をしている。Wーシィか・・・うまいなぁ。
「ふ~~~ん・・・」
するとナツさんがWーシィさんの方をじーっと見つめている。そんなに見つめちゃダメですよ!
「なんだナツ~、見たいのか?」
「やめてぇ!!」
エドルーシィさんは自分のバスタオルに手をかける。や・・・やめてくださいよ~?
「プッ!」
するとナツさんがなぜか吹き出す。どうしたんだ?
「な・・・何がおかしいのよ!?そうか、あたしよりエドルーシィの方がスタイルがいいとか、そう言うボケかましたいわけね!?」
「フフン!」
エドルーシィさんは勝ち誇った表情をする。しかし、ナツさんの言葉は予想の斜め上を行っていた。
「自分同士で・・・一緒に風呂入んなよ・・・」プルプル
「「言われてみれば・・・」」
そう言われてみると・・・なぜ一緒に入ったんですかね?
「本当に見分けがつかないほどうり二つですね」
「まさかケツの形まで一緒とはなぁ」
「やめてよぉ!」
「おっ!」
Wーシィさんたちがそんな話をしているとナツさんが何かを思い付く。
「鏡の物真似芸できるじゃねぇか!!」
「「やらんわ!!」」
「あぁ、息もピッタリ・・・」
「悲しいわね」
「根本的なところは一緒なのね・・・」
「なんだかな~・・・」
ナツさんに突っ込むルーシィさんに少し同情する俺たち。
「ていうかジェミニが出てきたみたい」
「おお、確かに」
「外見は・・・ですけどね」
ジェミニは相手の思考とかもコピーするからな。エドラスとアースランド中身は少し違う気もするけと・・・
「ジェミニ?」
「あたしが契約してる星霊よ。他の人そっくりに返信できるの」
そういってルーシィさんはジェミニの鍵を取り出す。
「開け、双子宮の扉、ジェミニ!」
「じゃ~ん!ジェミニ登場!!」
召喚されたジェミニは既にルーシィさんになっていた。さすがに空気を読んでるね。
「おお!?」
「Wーシィじゃなくて、Tーシィね!」
「おお!?すげぇ!これだけで宴会芸のゲームに使えるぞ!!」
想像してみた・・・けど・・・よく考えるとみんな外見は一緒だからわかるわけなくね?
「「「これは芸じゃない!!」」」
「息がピッタリ・・・」
「悲しいわね・・・」
「なんだかなぁ・・・」
「ていうか服着ないの~?」
「わ・・・忘れてたー!!」
ルーシィさんはそう叫んで大急ぎでパジャマに着替えました。ちなみにジェミニは閉門しました。
「二人に戻ったけど、やっぱ見分けつけにくいな」
「にくいどころかさっぱりわからないですよ」
ナツさんと俺はルーシィさんを見てそう言う。パジャマまで一緒だからさっぱりわからん。
「確か、髪型を弄ってくれる星霊もいるんだよな?」
「うん。蟹座の星霊、頼んでみよっか?」
ルーシィさんはそういってキャンサーさんを召喚する。
「お久しぶりです、エビ」
「蟹座の星霊なのにエビ?」
「やっぱりそこに突っ込むか、さすがあたし」
出てきたキャンサーさんの語尾に突っ込むエドルーシィさん。なぜに語尾がエビなんだ?
そうこうしてるうちにキャンサーさんがエドルーシィさんの髪型をショートヘアにした。
「こんな感じでいかがでしょうか?エビ」
「うん、これでややこしいのは解決だな」
エドルーシィさんはそう言うけど・・・ずいぶん短くしましたね。
「でも本当によかったの?こんなに短くしちゃって・・・」
「アースランドでは、髪の毛を大切にする習慣でもあるのか?」
「まぁ、女の子はみんなそうだと思う、エビ」
「女の子ねぇ・・・」
エドルーシィさんは苦笑いをしたあと、表情が暗くなる。
「こんな世界じゃ、男だ女だって考えるのもバカらしくなるよ・・・生きるのに必死だからな・・・」
エドルーシィさんは外の景色を見ながらそう言う。確かに・・・生きてくだけで精一杯ですもんね・・・
「でもこっちのギルドのみんなも楽しそうだったよ?」
「そりゃそうさ。無理にでも笑ってねぇと、心なんて簡単に折れちまう。それに、こんな世界でもあたしたちを必要としてくれる人たちがいる。だから例え闇に落ちようと、あたしたちはギルドであり続けるんだ」
エドルーシィさんの顔に、少し笑みが戻った気がする。やっぱり、そう言う思いがあるからこそ、みんなあんなに笑顔でがんばっていけるんだな。
「けど、それだけじゃダメなんだよな・・・」
「え?」
「いや、なんでもねーよ」
エドルーシィさんは何か言ったようだけど、俺たちには聞こえなかった。
なんでもないと言うし、俺たちは特に気にすることもなく、その日はそのまま眠ることにした。
翌日・・・
「信じらんなーい!!何よコレー!!」
俺とナツさんとセシリーたちはソファで寝ていたのだが、朝になるとルーシィさんの大きな声で目を覚ます。たぶんアースランドのルーシィさん・・・かな?
「朝っぱらからテンション高けぇな」
「うぅ・・・嫌な目覚め方・・・」
「どうしたの?」
俺たちがそう言うとルーシィさんは一枚の紙を見せてくる。
「エドラスのあたしが、逃げちゃったのよ!!」
俺たちはルーシィさんの周りに集まり、その紙をウェンディが読み始める。
「王都へは東へ3日歩けばつく。あたしはギルドに戻るよ。じゃあね、幸運を」
「手伝ってくれるんじゃなかったの?もう!どういう神経してんのかしら!!」
「ルーシィと同じじゃないの?」
「根本的なところは一緒みたいだったしね~」
「うるさい!!」
ハッピーとセシリーに言われてルーシィさんは怒ってしまい、その場で地団駄を踏み始める。
「仕方ないと思いますよ?」
「元々戦う気はないって言ってましたし」
「だなぁ」
昨日喫茶店で言ってたもんな。王国とやりあえるはずないって。あ!その時ルーシィさんいないんだった!
「あたしは許せない!同じあたしとして許せないの!」
「まぁいいじゃねぇか」
「よくない!!ムキー!!」
ルーシィさんはますます不機嫌になってしまう。やれやれ・・・
その後しばらくすると・・・
「ふん♪ふふ~ん♪」
ルーシィさんは本を抱き締めながら鼻歌なんか歌ってる。機嫌直るの早いですね。
「もう機嫌直ってる」
「本屋さんで珍しい本見つけて、嬉しいんだろうね」
「本で機嫌直るなんて・・・さすが小説家志望」
ルーシィさんは小説をよく書いてるらしい。本を買って機嫌直るなんて・・・俺にはよくわからないな。
「何の本買ったんだよ、ルーシィ」
「こっちの世界の歴史書。あんたたちも、この世界について知りたいでしょ?」
「別に」
「この世界にそんな長居しませんし」
「歴史書が物語ってるわ!この世界って面白い!!」
ルーシィさんは本を高々と持ち上げて目をきらきらさせる。だから別に知ろうと思いませんってば。
「例えば、エクシードって一族について書いてあるんだけど」
「あ!私も聞きました。すごく恐れられている種族らしいですけど・・・」
「それにセシリーたちが昨日間違われたんですもんね」
「興味ねぇって。ん?」
「「「「「?」」」」」
ナツさんが何かに気づいたと思った時、俺たちにも何やら変な音が聞こえてきて、突然辺りが暗くなる。なんだこれ?影か?
「何?」
「あれは・・・」
俺たちは上を見上げるとすぐにその正体がわかった。
「飛行船!?」
ナツさんがそう言う。すると俺たちの歩いている近くの道を王国軍が走り去っていく。なんだ?
「王国軍だわ!」
「隠れて!」
俺たちは王国軍に見つからないようにすばやく建物の影に隠れて様子を伺う。
「あの巨大魔水晶の魔力抽出が、いよいよ明後日なんだとよ!」
「それで俺たちにも、警備の仕事が回ってきたのか」
「乗り遅れたら、世紀のイベントに間に合わねぇぞ!」
王国軍がそんな話をしているのが聞こえる。間違いない!ギルドの皆さんのことだ!
「魔力抽出が二日後?歩いていたら間に合わないじゃない」
「歩いて3日はかかるらしいですからね・・・」
「魔力抽出が始まったら・・・もう二度と元の姿には戻せないわよ」
シャルルの言葉で俺たちは不安感に襲われる。どうしよう・・・どうすればいいんだ?
「あの船奪うか」
「は!?」
「奪う!?あの飛行船を!?」
「普通そこまでしないでしょ!!忍び込むだけで十分じゃない!!」
ナツさんの提案に思わず驚く俺たち。シャルルの言う通り潜入すればいいじゃないですか!?
「隠れんのやだし」
「そんな理由なの~!?」
「ナツが乗り物を提案するなんて珍しいね」
「フフフフッ!ウェンディのトロイアがあれば乗り物など――――」
「私たち魔法使えませんよ」
「この案は却下しよう!」
「おい!!」
ナツさんは乗り物酔いが激しいらしいから、できるだけ乗り物には乗りたくないみたいですね。
するといつの間にか飛行船はプロペラを回し始めている。まさかもう出発するのか!?急がないと。
「あたしは賛成よ。そうでもしなきゃ、間に合わないでしょ?」
ルーシィさんが立ち上がりながらそう言う。確かに他に選択肢ないですもんね。
「でもどうやって?」
「あたしとシリルの魔法で!知ってるでしょ?今のあたし最強って」
「だから最強ならシリルなんじゃねぇのって・・・まぁいいけど」
ため息混じりで言うナツさん。ルーシィさんにあきれてますね。でも・・・大丈夫かな?ルーシィさんなんやかんやで役に立たないときあるしなぁ・・・
「ルーエンの街で戦ってみてわかったのよ。どうやら魔法は、アースランドの方が進歩してるんじゃないかってね」
「確かにそうかもですね」
「どうでもいいから早くやっつけてよ~」
ルーシィさんの言葉にウェンディとセシリーがそう言う。でも大丈夫かな?ルーシィさん意外と役に立たないときあるし・・・大事なところなので二度言いました。
ルーシィさんはいつの間にか飛行船の前に行っている。俺も早く行くか。
王国軍もルーシィさんの姿が見えたためこちらに振り向く。もう後戻りはできません!
「開け、獅子宮の扉、ロキ!!」
「申し訳ありません、姫」
「え?あれ?」
ルーシィさんがロキさんを召喚すると・・・なぜか出てきたのはバルゴさんだった。なぜ?
「ちょっと、どういうこと?」
「お兄ちゃんはデート中ですので、今は召喚できません」
お・・・お兄ちゃん?
「お、お兄ちゃん?」
「はい。以前そのように読んでほしいとレオ様から」
「バッカじゃないのあいつ!!」
頭を抱えるルーシィさん。お兄ちゃんか・・・
俺はウェンディの方をチラッと見る。
「どうしたの?シリル」
「俺のこともお兄ちゃんって呼んでくれてもいいよ?」
「あんたもバカじゃないの!?」
シャルルに頭を叩かれた・・・冗談だったのに・・・
「えぇ!?でも・・・お兄ちゃんじゃ結婚できないし・・・」
「ウェンディ~、帰ってきて~」
ウェンディは顔を真っ赤にして何かぶつぶつ言っていた。セシリーが一生懸命揺するけど・・・ウェンディは全然戻ってくる気配ないな。
「あいつ、ルーシィだ!」
「捕まえろ!!」
王国軍はルーシィさんを見てこちらに一気に迫ってくる。
「どうしよう・・・あたしの計算じゃ、ロキなら全員やっつけられると思って・・・」
「姫、僭越ですが私も本気を出せば」
おお!?バルゴさんも戦えるのか?
「踊ったりもできます」
「帰れ!!」
踊らなくていいような・・・そんなうちにも王国軍はこちらに迫ってきている。
「もう!ルーシィさんやっぱり使えないじゃん!!水竜の咆哮!!」
「使えないってシリルひどい!!」
ルーシィさんがなんか言ってるけど、だって本当のことじゃないですか。
俺の咆哮を受けて王国軍は結構な人数が倒れてる。よし!このまま一気に・・・
「なんだ!?この小娘!!」
「口から水を吐いたぞ!?」
「女の癖になんつう力だ!!」
「この女!!」
・・・・・・・・・・・
「シリル?」
「う・・・」
「どうしたの~?」
「うわ~ん!!」
「泣いた!!」
「なんで!?」
「だって・・・こんな大勢に女女って・・・」
俺は悲しくなってきて膝をつく・・・ダメだ・・・力出ないや・・・
「なんだ?どうした?」
「あの小娘、いきなり泣き出したぞ!!」
「チャンスだ!!捕まえろ!!」
王国軍が俺が座り込んだのを見てこちらに向かってくる・・・やべぇ・・・けど・・・なんかもう力出ねぇ・・・
「しょうがねぇ。やるしかねぇな。こっちのルールで」
「もう使い方は大丈夫です!」
ナツさんとウェンディが闇市で買った魔法で王国軍に向かっていく・・・けど・・・
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
王国軍にいとも容易くやられてしまう。やっぱりダメか・・・
「ナツとウェンディが全然ダメだ!!」
「シリルとルーシィさんよりましだけど~!!」
「ごめんなさ~い!!」
「すみませ~ん!!」
だって・・・なんか悲しくなったんだもん・・・
「まずいわ!!飛行船が!!」
シャルルの声が聞こえて横目で飛行船を見ると、既に離陸を始めてしまっている。
「あれに乗らなきゃ間に合わないのに!」
「くそぉ・・・」
「そんな・・・」
飛行船はそのまま王都へと飛んでいってしまう・・・残されたのは王国軍に捕まった俺たち・・・もうダメか・・・
俺がそう思った時、遠くから何やら音が聞こえてくる。
王国軍もその音に気づいてそちらを向く。そこにはこちらに向かってきている魔導四輪が見えた。
「「「「「「「「「「うわああああ!!」」」」」」」」」」
その魔導四輪は王国軍に突っ込んでいき、王国軍は一気に飛ばされる。その魔導四輪には妖精の尻尾のギルドマークがついていた。
「ルーシィから聞いてきた。乗りな」
「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」
俺たちは運転手にそう言われて急いで魔導四輪に乗り込む。
「飛ばすぜ。落ちんなよ。GO FIRE!!」
運転手の声と共に魔導四輪は凄いスピードでその場から離れる。速い速い!!
「すっご~い!!あっという間に逃げ切っちゃった!」
「助かったわ」
「ありがとうございます」
「お・・・おお・・・」
「ナツさん・・・大丈夫ですか?」
ナツさんは既に魔導四輪で酔ってしまったそうだ。俺もトロイアできるけど・・・魔力もったいないから黙っとこ。
「王都へ行くんだろ?あんなおんぼろ船より、こっちの方が早ぇぞ」
確かにそうですね。でも・・・この運転手の声・・・どこかで聞いたことあるような・・・
「「妖精の尻尾最速の男・・・」
「「「「「「あっ!!」」」」」」
男の人はゴーグルを外す。その顔はとても見覚えのある顔だった。
「ファイアーボールのナツとは、俺のことだぜ」
「「「「「「ナツ!?」」」」」」
「お・・・俺・・・?」
俺たちはまさかの人に驚く。なんでこのナツさん、乗り物が平気なんだ!?
「ナツ?こっちの・・・エドラスのナツ・・・?」
「ルーシィが言ってた通り、そっくりだな。で?あれがそっちの俺かよ。情けねぇ」
エドナツさんはナツさんを見てそう言う。ナツさんは乗り物酔いで後部座席に倒れ込んでいた。
「こっちのナツさんは、乗り物が苦手なんです」
「乗り物に乗ったとたんすぐにこうなりますよ」
「それでも俺かよ?こっちじゃ俺は、ファイアーボールって名前の、運び屋専門の魔導士なんだぜ」
ウェンディと俺が教えるとエドナツさんはクールに答える。なんかかっこいいぞ!!
「この魔導四輪、SEプラグついてないよ!!」
「SEプラグ?」
「SELF ENERGYプラグって言って、運転手の魔力を燃料に変換する装置なんだ」
ウェンディの質問に俺が答える。確かによく見ると、SEプラグついてないな。
「そっか。こっちじゃ人が魔力をもってないから、SEプラグが必要ないんだ」
「完全に魔法だけで走ってるってこと~?」
「何よ。車に関しては、アースランドよりも全然進んでるじゃないの」
俺たちがそんな話をしていると、突然エドナツさんは急ブレーキをかける。今度はなんだ?
「ちょっと、何よ急に!」
「そうとも言えねぇな。魔力が有限である以上、燃料となる魔力もまた有限。
今じゃ手に入れるのも困難。だから、俺が連れてってやるのはここまでだ。降りろ」
「「「「「「なっ!?」」」」」」
エドナツさんにいきなりそう言われて俺たちは固まってしまう。そんな~・・・
「これ以上走ったら、ギルドに戻らなくなるんだ。あいつら、また勝手に場所を移動したからな」
「おおお!!生き返った!!」
するとナツさんはもう既に魔導四輪から降りてしまっている。そんなに早く降りたかったのか?
「もう一人の俺は、ものわかりがいいじゃねぇか。さ、降りた降りた!」
俺たちはそう言われて魔導四輪から追い出される。
「王国とやりあうのは勝手だけどよぉ、俺たちを巻き込むんじゃねぇよ。今回はルーシィの・・・お前じゃねぇぞ。俺の知ってるルーシィの頼みだから、仕方なく手を貸してやった。だが面倒はごめんだ。
俺は・・・ただ走り続けてぇ」
「おい!」
俺たちを見ながらそう言うエドナツさんに、今度はナツさんが何やら話しかける。
「お前も降りろ!!」
そういってナツさんがエドナツさんを魔導四輪から引きずり出そうとする。
「バッ!てめぇ!何しやがる!」
「同じ俺として、一言言わしてもらうぞ」
「よせ!!やめろ!!俺を・・・俺を下ろすなぁ!!」
エドナツさんの必死の抵抗むなしく、エドナツさんは魔導四輪から引きずり出される。
「お前・・・なんで乗り物に強ぇ?」
「「そんなことかい(ですか)!?」」
ナツさんのまさかの質問に俺とルーシィさんが突っ込む。そんな質問魔導四輪に乗ったままでもできたような・・・
「ひっ・・・」
「ん?」
すると・・・エドナツさんの様子が何やらおかしい・・・どうしたんだ?
「ご・・・ご・・・ごめんなさい・・・僕にも・・・わかりません」
「「「「「「「は?」」」」」」」
エドナツさんは泣きながらそう言う。ど・・・どうした?
「お・・・お前・・・本当にさっきの俺?」
「はい!よく言われます!車に乗ると性格変わるって!」
「こっちが本当のエドナツだー!!」
「まさかそうきましたか!!」
ハッピーと俺が叫ぶ。まさか車に乗ると性格変わるとは・・・予想の斜め上をいきますねエドラスは!!
「ひ~っ!大きな声出さないで~!怖いよぉ・・・」
「・・・・・・・」
「鏡の物真似芸でもする?」
頭を抱えて怯えるエドナツさんを見て固まるナツさん。ルーシィさんはそれを見ていやらしい顔をする。
「ごめんなさい!ごめんなさい!でも僕には無理です~!!」
「ああ?」
「ルーシィさんの頼みだからここまできただけなんです~」
エドナツさんは怯えながらそう言う。なんかいたたまれないなぁ・・・
「いえいえ、無理しなくていいですよ」
「ここまで送ってくれただけで十分ですから」
ウェンディと俺がそう言うとエドナツさんは少し落ち着いてくれる。王国軍から助けてくれただけでも十分ありがたいですからね。
「こんなのいても、役に立ちそうにないしね」
「シャルル!!」
「そういうこと言わないの~!」
シャルルがそう言うとエドナツさんは一回顔を下ろしてしまう。しかしすぐにこちらを見直す。
「もしかして、ウェンディさんとシリルさんですか?」
「はい」
「そうですよ」
「うわぉ。二人とも小さくて可愛い」
可愛いって・・・俺男なんだけど・・・
「でもシリルさんは、こっちのシリルさんの小さいときに似てますね。きっと将来はかっこよくなりますよ」
「本当ですか!?」
「はい。こっちのシリルさん、すごいかっこいいですから」
おお!!なんか嬉しくなってきた!!早く大人になりたい!!
「そっちが、アースランドの僕さん?」
「どこにさんづけしてんだよ」
エドナツさんにナツさんが突っ込みを入れる。エドナツさんは丁寧な人なんですねわ
「オイラはハッピー。こっちがシャルルで、こっちがセシリー」
「ふん!」
「よろしくね~」
ハッピーが自己紹介すると、シャルルは顔を背け、セシリーは手をあげて挨拶する。
「あたしは、もう知ってると思うけど」
「ひ~!!ごめんなさい!!なんでもします!!」
「お前さ、もっと俺にやさしくしてやれよ」
ルーシィさんが挨拶しようとしたら、エドナツさんは魔導四輪の陰に隠れてしまう。
てかナツさん。こっちのルーシィさんにそんなこといっても意味ないですよ?
「こっちのルーシィさんは・・・皆さんをここまで運ぶだけでいいって・・・だからぼく・・・」
エドナツさんにそう言われて気づいたけど・・・俺たちのいるところのすぐ下には王都が見える。ウソ!!もうついてたの!?
「大きい!!」
「すげぇ・・・」
ウェンディの言う通り、確かに王都は今までの街に比べて大きかった。
それを見てナツさんはエドナツさんと肩を組む。
「なんだよ!着いてんならそう言えよ!」
「うわぁ!!ごめんなさい!?」
「・・・・・・」
エドナツさん・・・怒ってるわけではないのでそんなに怖がらないでください・・・
ナツさんはそんなエドナツさんから離れて王都を見下ろす。
「いいぞ!!こんなに早く着くとは思わなかった!」
「あのどこかに、魔水晶に変えられたみんなが・・・」
「さっさと行くわよ」
「あ!待ってよシャルル~!!」
シャルルとセシリーはいち早く王都へと向かって降りていく。
「俺たちも行こうぜ!!」
「うん!!」
「んじゃ、ありがとな」
「あたしによろしく!」
俺は転ばないようにウェンディの手を取って下り始める。
途中でナツさんとエドナツさんが何か話していたようだけど・・・下っていく俺たちには聞こえなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
次回もよろしくお願いします。
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