美しき異形達
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第五十一話 二人の伯爵その八
「そうだと思うよ、そしてね」
「仙術もか」
「身に着けていたと思うよ」
「そうか」
「うん、だから仙人みたいな人だから」
「あたし達じゃ理解出来ないか」
「どうした行動を取るのかね」
そうだとだ、智和は話した。
「理解出来る筈がないよ」
「そうか、じゃあ探すよりもな」
それよりもとだ、薊はここで一つの結論を出した。
「待つ方がいいか」
「そうだね、探してもね」
それでもだというのだ。
「見付けられる人じゃないから」
「だよな、じゃあ」
「待つべきだよ」
「それしかないか」
「ちょっとね」
「あたしの性格には合わないけれどな」
行動的な薊にとってはだ、待つことはどうしても出来ない。こうしたことはどうしても出来ないものがあるのだ。
それでだ、いささか残念そうに言うのだった。
「それも手だな」
「あれっ、薊ちゃん闘う時は」
裕香がその薊に言う。
「結構待ってない?」
「そういう時もあるよ」
実際にそうだとだ、薊も答える。
「結構」
「そうよね、だから待つことは」
「いや、我慢してるんだよ」
薊はこう答えたのだった。
「いつもな」
「そうなの」
「拳法の時もな」
「攻める方が好きなのね」
「休まずにな」
身体全体を動かしてだ。
「激しく攻める方がいいんだよ」
「確かにその方が薊ちゃんらしいわね」
「そうだろ、だから待ってる時はな」
「我慢してるのね」
「そうなんだよ、だから今もな」
「待つことは」
「好きじゃないな」
実際に、というのだ。
「仕方ないにしてもな」
「伯爵さん探してもね」
「見付かる人じゃないならな」
それならだった。
「諦めるしかないからな」
「じゃあ今は」
「待とうな」
「そう、ここは博士待ちかな」
自分から調べておくと言った彼の、というのだ。
「あの人からの連絡を待とう」
「そういうことか」
「うん、じゃあね」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
薊達は今は待つことにした、あらゆることに対して。
そうしてこの場は智和が出してくれたコーヒーやケーキを楽しんだ。そのコーヒーやケーキを楽しんでいたのは博士も同じだった。
博士は自身の研究室でコーヒーとケーキを楽しんでいた、ケーキは苺のケーキだ。そのケーキを食べつつだった。
周りにいる友人達にだ、こう語っていた。
「探して欲しいのはな」
「うん、カリオストロ伯爵だね」
「あの人だね」
「そうじゃ、そしてもう一人おる」
こう彼等に話すのだった。80
「サン=ジェルマン伯爵もじゃ」
「ああ、あの人もなんだ」
「今何処にいるかだね」
「僕達に調べて欲しい」
「そうなんだね」
「そうじゃ、二人共な」
見れば周りの面々は人間ではなかった、一つ目小僧もいればから傘、ぬり壁や一反木綿といった面々だ。日本の妖怪達だ。
その妖怪達がだ、博士に応えて言う。
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