| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

美しき異形達

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十一話 二人の伯爵その七

「それがね」
「武か」
「だから君達が生きたい、戦いを終わらせたいのなら」
「戦うしかないか」
「そうするしかないよ」
「そうだな、戦うしかないんならな」
 覚悟、それがあった。
 その覚悟のうえでだ、こうも言ったのである。
「戦うか」
「ええ、生きる為に」
「これから楽しい人生を過ごす為にはね」
 他の少女達も言うのだった。
「戦うしかないのなら」
「戦いましょう」
「そして生きる」
「カリオストロ伯爵を倒してでも」
「私達は」
「そういうことだな、怪人達も倒して」
 薊は全員の言葉をまとめる形で述べた。
「必要ならカリオストロ伯爵も倒すか」
「そういうことなら」
 少女達のその言葉を最後まで聞いてだった、智和も。
 意を決した顔になりだ、少女達に言った。
「僕も及ばずながらね」
「悪いな、何かと」
「いいよ、僕も錬金術には興味を持ちだしてるし」
 微笑みだ、智和は答えた。
「伯爵達にも会いたいし」
「サン=ジェルマン伯爵にもか」
「うん、あの人にもね」
 是非にというのだ。
「会いたいね」
「あの人本当に何時出て来るんだろうな」
「それはね」
 どうにもとだ、智和もこの伯爵については言葉が曖昧になった。
 そしてその曖昧になった言葉でだ、薊達に言った。
「誰にもわからないよ」
「探してもいなくてか」
「博士のお話だとね」
「逆に探してもいないのに、だよな」
「出て来る様な人みたいだから」
 所謂神出鬼没の人物だからだというのだ。
「会うことは難しくかつ簡単だよ」
「つまり運任せか」
「多分にね」
 そうだというのだ。
「あの人については」
「運ってのが一番わからないものだからな」
「この世でね」
「っていうか気まぐれなんだな」
 薊が思うサン=ジェルマン伯爵の性格はこうしたものだった。
「あの人は」
「まあ何ていうか」
「そうだよな」
「うん、長生きしているせいか」
 智和は薊に伯爵のその性格について話した。
「超然的っていうのかな」
「あたし達の理解の外か」
「そうした感じだね」
「じゃあ気まぐれかっていうと」
「また違うと思うよ、むしろ」
 ここでだ、智和はこうも言った。
「あの人は僕達の知らないことを沢山知っている」
「それでその知っていることに基づいて動いてるのか」
「だから僕達の想像出来ない行動をしているんだ」
「そういうことか」
「言うなら仙人だよ」 
 それがサン=ジェルマン伯爵だというのだ。
「仙人は何を考えているかわからないね」
「ああ、物語とかだとな」
「それは僕達の想像も出来ない知識や能力を持っているからね」
「それであの伯爵もか」
「そう、仙術にも通じているだろうし」
「というか中国にも行ってるよな、あの人」
「間違いなくね」
 その長い人生の中でだ、伯爵はあの国にも行っていたというのだ。この辺りはあくまで憶測であるがだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧