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謎の美食家

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2部分:第二章


第二章

「それとハム、後は」
「後は?」
「キャベツを煮たものがあるな」
 野菜もだった。
「キャベツと人参、それに蕪を煮たもの。これをくれ」
「わかりました」
「それとジャガイモとベーコンをバターで炒めたものだ」
 それもだった。
「ビールは黒だ」
「黒ビールですか」
「まずはこれだけだ。ソーセージとハムは四皿ずつだ」
 その数も告げてであった。客は店の端の席に陣取り次々と食べていく。何時しか彼の周りに他の客達も来てだ。賑やかに飲み食いするのであった。
「やあ、あんたまた来たな」
「食ってるねえ、相変わらず」
「凄い量だね」
「人間とはだ」
 その客は厳しい声で、だが饒舌に話すのだった。
「食べることだ。だからわしもだ」
「食うってのかい」
「その山みたいな量のソーセージにキャベツ」
「ビールも」
「そうだ。食べて飲む」 
 言葉が断言になっていた。
「そうするのだ」
「いいねえ。それじゃだよ」
「こっちもな」
「そうさせてもらうか」
「一緒でいいかい?」
 労働者達は笑顔で彼に問う。
「席一緒で」
「椅子こっちに持って来てもいいか?」
「食い物とビールもな」
「一緒にやるかい?」
「勿論だ」
 にこりともしないが確かに言う彼だった。
「それではな」
「ああ、それじゃあな」
「楽しくやろうぜ」
「思う存分な」
 こうしてだった。彼は労働者達とも楽しく飲み食いをするのだった。それが彼だった。
 彼はよくここに来てだった。とにかく飲み食いをした。その彼を見てだ。
 おかみがだ。こんなことを言うのだった。
「何かあのお客さんってね」
「んっ、何だ?」
「何かあったのか?」
「前からちょっと思ってたけれど」
 それでもだというのだった。それはだ。
「どっかで見た気がするんだよ」
「どっかで?」
「っていうと何処で」
「いや、何処かはわからないよ」
 おかみはそれはわからないという。しかしだった。こうも話すのだった。
「よく見る顔なんだけれどね」
「よく見る、かい」
「あの怖い顔のおっさんがか」
「そうなんだ」
「そうじゃないかい?見覚えないかい?あの顔に」
 おかみの今の言葉を聞いてだ。店の者達も話すのだった。
「そういえばそうかな」
「何処かで見たような」
「それも何度も」
「そうだよな」
「目立つ顔だよな」
 誰がどう見てもだった。その顔はあまりにも厳しくだ。そのうえ向こう傷まである。その大柄な身体もあってだ。とにかく目立つ人物である。
 それを踏まえてだ。彼等はさらに考えていくのだった。
「一体誰なんだろうな」
「そうだよな。何処かで見た気がするし」
「誰なのか。気になってきたな」
「全くだよ」
 彼等は謎の客について誰なのか真剣に考えだした。そんな中でだ。
 
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