戦国異伝
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第二百十一話 磨上原の合戦その五
政宗が率いる鉄砲騎馬隊に一直線に向かう、その彼等に対して。
政宗は突き進んだ、それで兵達に言うのだった。
「しまったわ」
「しまった?」
「しまったとは」
「よいな、皆の者」
政宗はその隻眼を鋭くさせて言った。
「鉄砲を撃つとじゃ」
「はい、そうしてから」
「どうすると」
「刀を抜け」
そうせよというのだ。
「よいな、刀を抜いてじゃ」
「そしてですか」
「戦えと」
「鉄砲騎馬は一旦撃つとな」
そうすると、というのだ。
「その次にじゃ」
「はい、一旦反転して」
「そしてまた撃つ」
「それを繰り返しますから」
「強いのですが」
「連中はこのまま来るぞ」
柴田が率いる織田の騎馬隊はというのだ。
「そしてじゃ」
「刀を抜いていますな」
「では、ですな」
「我等に斬り込んで来る」
「そうしてきますか」
「わしも今気付いた」
まさに、というのだ。
「鉄砲騎馬隊は一旦斬り込まれると弱い」
「では織田はですか」
「ここは一旦撃たれてもですか」
「斬り込んで来る」
「そうしてきますか」
「ならばじゃ」
斬り込んで来るのなら、というのだ。
「その時はじゃ」
「我等もですか」
「刀を抜いて」
「そうしてですな」
「あの者達と戦うのですな」
「そうするぞ、よいな」
こう兵達に告げてだ、政宗もまた。
鉄砲を撃つ、他の兵達と共に。そしてそれが終わってからだった。
即座に鉄砲を収め刀を抜いてだ、斬り込んで来た織田の軍勢と斬り合った。忽ちのうちに激しい斬り合いとなった。
そしてだ、その斬り合いを本陣から見てだった。
信長はすぐにだ、控えていた伝令にこう命じた。
「ではじゃ」
「はい、ここはですな」
「次は」
「敵の鉄砲騎馬隊の動きは止めた」
それならというのだ。
「権六がな」
「では権六殿に」
「いや、牛助じゃ」
織田家の武の二枚看板であるもう一人にというのだ。
「攻めさせよ」
「牛助殿にですな」
「そうじゃ、伊達政宗の横腹をじゃ」
今は刀を抜いて戦っている彼等の、というのだ。
「そこを衝けとな」
「畏まりました、それでは」
「よいか、足軽の陣はじゃ」
彼等はというと。
「このままじゃ」
「はい、攻めて」
「そのうえで」
竹中と黒田が応える。
「徐々にですな」
「押していきますな」
「疲れた者は下がれ」
無理はするなというのだ。
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