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戦国異伝

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第二百十一話 磨上原の合戦その二

「織田信長の本陣を襲う」
「織田信長の馬印目掛け」
「行かれますな」
「そしてじゃ」
 そのうえで、というのだ。
「一気にな」
「はい、それでは」
「一気にですな」
「織田信長を襲い」
「そして捕らえますか」
「あの者はわしの第一の家臣とする」
 政宗もまたこう言うのだった、信長がわかっている故に。
「よいな」
「はい、あの者ならです」
「それだけの器です」
「伊達家の執権としてです」
「存分に働いてくれましょう」
「伊達家の執権でありじゃ」
 さらに言う政宗だった。
「天下の管領じゃ」
「殿の下にあり」
「そしてですな」
「天下を治める」
「その器ですな」
「うむ、是非欲しい」
 こう言ってだった、そのうえで。
 政宗もまた兵を進めさせた、そうしてだった。
 両軍は対峙した、そこでだ。
 信長は自ら軍勢の前に出てだ、こう言った。
「伊達政宗はおるか」
「呼んだか」
 すぐにだ、水色の三日月の兜の隻眼の男が出て来た。
「そう言う御主は織田信長だな」
「左様」
 その通りだとだ、信長も答える。
「その通りじゃ」
「そうじゃな、ではわしに何の用じゃ」
「降るがいい」
 信長は単刀直入にだ、政宗に告げた。
「そしてじゃ」
「そうしてか」
「そうじゃ、織田の家臣となるのじゃ」
 こう言うのだった。
「よいな」
「断ると言えばどうする」
 政宗は不敵な笑みで信長に返した。
「その時は」
「言うまでもないと思うがのう」
 これが信長の返事だった。
「その時は」
「そう言うのか」
「うむ、ではじゃ」
 それではと言ってだ、そのうえで。
 信長は政宗にだ、あらためてこう言った。
「戦じゃ」
「思う存分やろうぞ」
「このまま米沢まで進む、覚悟せよ」
「ほう、そう言うか」
「そうじゃ」 
 信長もまた笑みであった。
「覚悟はよいな」
「ではわしはじゃ」
 政宗も負けていなかった。
「安土にじゃ」
「来るというのか」
「そして都にじゃ」
 こう言うのだった。
「上洛してみせるわ」
「わしを降してか」
「如何にも」
 その通りだというのだ。
「そうしてやるわ」
「言うのう」
「御主もな」
 まさに売り言葉に買い言葉だった、だが信長は不敵な笑みを崩さずにだった。
 そのうえでだ、政宗にまた言った。 
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