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戦国異伝

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第二百十一話 磨上原の合戦その一

                  第二百十一話  磨上原の合戦
 信長は軍勢を磨上原まで出した、彼等から見て左手には磐梯山がありそして他にも山が連なっている。そして。
 風が吹き荒れている、信長は自分の顔に向かって吹くその風を受けつつ言った。
「強い風じゃな」
「はい、強い向かい風です」
「まことに」
 家臣達もこう応える。
「この風では」
「伊達の弓矢や鉄砲が生きますな」
「それに対して我等の方は」
「この風ですと」
「うむ、中々のう」
 どうかともだ、信長は言った。
「我等にとって辛いわ」
「ではここは」
「どうされますか」
「風は向こうにとって有利ですが」
「この状況は」
「うむ、このままじゃ」
 戦の進め方は変えないというのだ。
「この風でもな」
「ですか、では」
「このまま」
「鉄砲を構えてじゃ」
 そして、というのだ。
「弓矢、そして槍もな」
「構え」
「そのうえで」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「ではいいな」
「はい、それでは」
「このまま」
「足軽達はそれでな」
 信長はさらに言った。
「そしてな」
「鉄砲騎馬隊ですな」
「伊達家の」
「伊達政宗が自ら率いて来る」
「あの者達をですな」
「うむ、叩く」
 まさにだ、そうするというのだ。
「よいな」
「殿が考えられている方法で」
「それで、ですな」
「数と工夫じゃな」
 この二つこそとも言う信長だった。
「戦は」
「その二つをどうするか」
「どうしていってかですな」
「戦は決まる」
「殿のお考えですな」
「昨日は攪乱させて封じた」 
 安藤達美濃四人衆を見ての言葉だ。
「しかし今度はじゃ」
「別の策ですか」
「それを使いますか」
「うむ、それを見せようぞ」
 政宗、そして伊達の軍勢にというのだ。
 そうした話をしてだった、信長は軍勢を磨上原に進めていた。織田家の軍勢は足軽達を中央に、そして騎馬隊をその左右に置いていた。
 その織田家の軍勢を見てだ、政宗は言った。
「来たな」
「はい、いよいよですな」
「勝負の時ですな」
 片倉と成実がここで政宗に応える。
「ではこれより」
「仕掛けますか」
「御主達はじゃ」
 その二人への言葉だ。
「足軽達を率いてじゃ」
「はい、織田の足軽達を抑え」
「殿はその間に」
「うむ、鉄砲騎馬隊を率いてじゃ」
 まさにだ。そうしてというのだ。 
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