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変わった毒殺

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第六章

「私がいいって言ってるから」
「だからですか」
「そう、入って」 
 こう言ったのだった。
「そうしてね」
「それじゃあ」
 岳も上司に言われてはだ、それに酔い潰れる寸前に見える美咲を放ってはおけずにだ。それでだった。
 灯りを点けた部屋は清潔でしかも整っていた、如何にも洗練された大人の女性の部屋だった。その雰囲気にだ。
 岳は飲まれた、だが今は理性を保ってだ。
 美咲にだ、こう問うた。
「あの、それで何処に」
「お風呂ね」
「お風呂?」
「ちょっとシャワー浴びてから」
 それからだというのだ。
「お礼するから」
「あの、そのお礼って」
「デザートよ」
 それだというのだ。
「それをあげるわ」
「デザートですか」
「冷蔵庫にアイスクリームがあるから」
 それがデザートだというのだ。
「好きなものを好きなだけ食べて」
「好きなだけですか」
「そう、好きなだけね」
 そうしていいとだ、美咲は岳に言った。
「そうしておいて。私はこれからね」
「これから、ですか」
「シャワー浴びるから」
 こう耳元でだ、岳に囁いたのだった。
「だからね」
「あの、シャワーって」
「それでお酒少し抜くからその間にね」
「アイスクリームをですか」
「リビングに行って食べてて」
 リビングに入ることもだ、美咲は岳に許した、
「そうしておいて」
「いいんですね、そうして」
「いいわ」
 岳の問いに微笑んで答えた。
「そうして」
「わかりました」
 岳も美咲の言葉を確かめてからだ、それからだった。
 美咲は岳がリビングに行ったことを確かめてからシャワーを浴びた、掃除が行き届いた風呂場の中に入るとだ。
 演技を止めてだ、服を脱いでからシャワーを浴びつつ呟いた。
「ここからが「勝負ね」
 こう言ってなのだった、それから。
 シャワーを浴びて身体を清潔にしてからだった、アイスクリームを食べている岳のいるリビングに向かった。その彼女を見て。
 岳は仰天してだ、こう言った。
「あの、係長」
「どうしたの?」
「何て格好してるんですか」
 こう言ったのだった。
「あの、その」
「もう寝るだけよ」 
 見れば美咲は上に白いカッターを着ただけだ、それまで膝までのスカートと肌色のストッキングに覆われていた脚が露わになっている。
 その姿になってだ、岳の前に出て来たのである。髪は下ろしメイクも落としているが地顔も知的な美貌がある。
 その姿でだ、岳に言ったのである。
「だからね」
「そのお姿ですか」
「そうだけれど」
 こう素っ気なくを装って言うのだった。
「どうしたのかしら」
「どうしたもって」
「それでアイスは」
 美咲は岳に会話の主導権を取らせなかった、だからここでも自分からこう言ってそのうえで進めたのである。 
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