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束縛の口紅

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第三章

「いいわ」
「そう、それじゃあ」
「ただね」
「ただ?」
「お風呂まだよね」
 夫にここでこう問うたのだった。
「だから入る?」
「ああ、じゃあ今から」
「私も入るから」
 友香梨はこのことはだ、意を決して言った。
「そうしましょう」
「あれっ、一緒になんだ」
「ええ」
 実は友香梨は自分のスタイルにはかなり自信がある、特に胸の大きさには。大輔がいつもそのスタイルを褒めていることも喜んでいる。
 それでだ、ここでもまずはスタイルを言葉の中に隠して誘ったのだ。
「そうしましょう」
「そうだね、じゃあね」
「一緒にね」
 夫を自分から誘ってだ、そしてだった。 
 友香梨はまずは大輔と共に風呂に入った。それから。
 風呂から出て軽くメイクをしてからベッドの中でも一緒になった、勿論服は着ていない。そうして夫を下から抱きつつだ、そっと彼の耳元で囁いた。
「今日は私からね」
「友香梨ちゃんから?」
「ええ、していいかしら」
 こう囁いたのである。
「そうして」
「うん、いいよ」
 夫は妻の言葉に気付かないまま頷いた。
「それじゃあね」
 こうしてだ、夫の下から。
 自分の手、そして舌と唇を使った。そうしてこの日は自分から夫を満足させた。そうしてその日の朝にだった。
 大輔は朝食を食べながら共に食べている彼女に苦笑いをして言った。
「昨日だけれど」
「昨日どうしたの?」
「ほら、夜にね」
 言うのは一緒に寝たその時のことだった。大輔は朝食のトーストを食べながらそのうえで友香梨に言うのだった。
「友香梨ちゃん色々してくれたけれど」
「それでどうなったの?」
「さっき着替えた時に」
 見ればもう出勤する服だ、寝巻きから着替える時に見たというのだ。
「身体のあちこちに口紅の跡見付けたよ」
「あら、そうだったの」
「トランクスにまで」
 下着にもだ、付いていたというのだ。
「他にもだったし」
「それは御免なさい」
 顔では申し訳なく謝る友香梨だった、内心は別だが。
「落ちないわよね」
「人には見せられないよ」
 その身体は、というのだ。
「トランクスもね」
「替える?」
「下着はね、けれど身体はね」
 それは、とだ。困った顔のまま言う大輔だった。
「拭いたしかなり落ちたけれど」
「残ってるのね」
「シャツに付かないかどうか不安だよ」
「じゃあ黒いシャツを着ればいいわ」
 白いシャツなら汚れが付いたら目立つからだ、実はこのことも友香梨の頭の中に既に入っていることだ。
「そうすればね」
「いいんだ」
「今日はね」
「全く、少し困ったよ」
 少し苦笑いでだ、大輔はまた妻に言った。 
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