遊戯王GX 輪廻に囚われし赤
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黒炎弾
学園対抗決闘から一週間が過ぎた。今まで決闘がイマイチぱっとしなかった神楽坂も魔玩具との相性が良いのか日に日に強くなっていく。この前ツァンが負けてたからな。シエンでデストーイ・ファクトリーを無効にしなかったのが失敗だ。
シエンと六武衆が他に3体並んでいる所でファクトリーからオウルで融合をサーチ、発動してシエンで無効。ファクトリーの効果で融合を除外してシザーとドッグとオウルとキャットでシザー・タイガー。場を一掃してから魔玩具融合でシザー・ウルフで殴られて終わった。
殲滅力と言う点では魔玩具はHERO並にエグイからな。仕方ないと納得するしかない。だが、それも全て構築次第だ。自分のドロー運に合わせた構築をしなければすぐに事故を起こす。オレは相性が悪くてトイポットの成功率は3割を切る。エッジインプ・シザーでデッキトップを操作しないとどうする事も出来ない。
準の奴は万丈目家との縁を切ったそうで、今は亡くなっている母親の方の旧姓である高遠を名乗っている。学費の問題もあってアカデミアを去ろうとしたが、オレがI2社のテスターとして雇う事にした。準程の決闘者を野に放つのは今後のデュエル界にとって損である。実際エクシーズ関連を渡すと簡単に扱ってしまった。しかもシャークデッキを自ら構築してしまった。RUMはまだ渡していないが、現状でも十分強力なデッキだ。相性も良いみたいだしな。
今日からは試しにリミテッド・バリアンズ・フォースとCX、CNO.を渡してみようと思っていたのだが、クロノス教諭から校長室に来る様にと伝えられる。オレの他には準とツァンと神楽坂も呼び出される。校長室まで赴くとそこには既に亮が校長と共に待っていた。
校長の前に全員が並ぶと話が始まる。
「貴方達を呼んだのは他でもありません」
「ご存じないでしょうが、このデュエルアカデミアの地下にはとあるカードが封印されています」
「『三幻魔』ですね。カテゴリー的には一応神のカード扱いの」
「知っていましたか!?その通りです。封印が解かれると天は荒れ、地は乱れ、世界を闇に包み込み破滅に導くと伝えられています。そして、この『三幻魔』を狙ってセブンスターズと呼ばれる者達が向かって来ている様なのです」
「セブンスターズ、では相手は7人なのですか?少ない気がしますが」
「それには訳があります。『三幻魔』は7つの鍵によって封印されており、鍵1つにつき1人の守護者を割り振り、守護者が決闘に負ける事によって封印が解かれます。そして封印を解く者も7人以下でなければ封印が破られる事はないのです。ちなみにこれをセブンスターズが知っている理由は『三幻魔』の情報を調べる際に必ず触れる事になるからです。これは無関係な者を極力巻き込まない様にする為の処置です」
校長先生の話に納得する。
「では、我々が呼ばれたのは」
「はい、貴方達に鍵の守護者となって貰いたいのです」
そう言って机の中から立派な木箱を取り出し、中に入っているパズルの様な鍵を見せてくる。
なるほど。ならばこれがオレが遊戯十代に代わってやらなければならない事の一つなのだろう。
「未来を切り開くのがオレの仕事だ。それを邪魔する存在はオレが倒す」
オレが最初に鍵を取り、続いてツァンが、準、カイザー、クロノス教諭、少しだけ悩んでから神楽坂が鍵を受け取る。そして残った一つを校長が持つ。
さて、おそらくは闇の決闘が行われるはずだ。対策用のアイテムと守護者達に強化用のカードを用意しなければならないな。負けるわけにはいかないのだから。マリニーのガレージに置いてあるトランクからまだ販売されていないカテゴリーカードに汎用エクシーズとそのサポートカード、エースカード悪用コンボカードを用意していく。
「うわぁ~、それって決まったら毎ターンフィールドが綺麗に一掃され続ける上にレヴァが立ち続ける奴じゃない」
「大抵のデッキが消し炭だろうな。アンチを組んでおかないとどうする事も出来ない。他には油断した所をガーゼットで殴り殺してライフを一気に0にすれば何とかなるか?」
サイ・ガールと共にカードを厳選していると、突然床や壁が光だし、闇の力を感じる。
「意外と闇の力が濃いな。いきなり当たりか?」
光が爆発的に広がり、収まるとオレは火口傍に居た。サイ・ガールは傍にいない。ガレージに置き去りになったか。辺りを見渡すと火口の真上に光の足場があり、その上にツァンが居た。
「ツァン、無事か!!」
「遊矢、これは一体?」
「セブンスターズだろうな。それも一番闇の力を持っている奴が相手だろう」
「ほう、よく分かったな」
今まで誰も居なかった空間に黒い仮面を付けた男が現れる。あの黒い仮面は確か
「貴様、ダークネスか」
「ほう、私を知っているとは。それに中々の力を持っているようだ」
「ちっ、あの時は弱いと思ったら消耗してただけか。ツァンを放せ」
「私を倒すか、私に倒されれば開放しよう。そして負けた方はこのカードに魂を封じ込められる」
そう言ってダークネスが懐から魂の牢獄のカードを見せる。
「良いだろう」
デッキホルダーからデッキを取り出してデュエルディスクに装着する。
「「決闘」」
「先行はオレが貰ったぁあああああ!?」
手札を見て情けない声を出してしまった。手札事故なんてチャチな物じゃねえ。
「どうしたの遊矢!!」
「……デッキを間違えた。ギャンブルデッキだ、こいつ」
「ば、馬鹿!!ちゃんとデッキ位確認しときなさいよ!!」
「だ、大丈夫だ。まだ慌てる時じゃない。一応勝ち筋もちゃんとある。オレはモンスターとカードをセットしてターンエンドだ」
遊矢 LP8000 手札4枚
場
セットモンスター 1枚
セットカード 1枚
「ふっ、安心したまえ。デッキを間違えたからと言って私の勝ちは揺るがない。私は黒竜の雛を召還してリリース、現れろ真紅眼の黒竜」
真紅眼の黒竜 ATK2400
「レッドアイズか」
「そうだ。そして黒炎弾を3枚発動!!」
「なんだと!?」
発動と同時に真紅眼の黒竜が黒炎弾を3発撃ちだし、オレを焼き尽くす。
「ぐわああああああああっ!!」
遊矢 LP8000→800
あまりの高ダメージに前のめりに倒れる。
「遊矢!?」
「これは闇の決闘である以上、ライフを削られるのは命を削られるのと同意義。すぐに楽にしてやる。私は天よりの宝札を発動。お互いに手札が6枚になる様にドローする。ドロー!!」
「くっ、うっ、ど、ドロー」
「魔法石の採掘を発動。手札を2枚墓地に送り、墓地から魔法カードを1枚手札に加える。私は黒炎弾を手札に加える。さあ、今楽にしてやる。黒炎弾を発動!!」
「や、やめてぇーーーー!!」
真紅眼の黒竜が再び黒炎弾を放ち、オレは火口の傍まで吹き飛ばされる。
遊矢 LP800→0
「そ、そんな。遊矢が、遊矢が」
ライフが0になり、全く動かない遊矢に血の気が引く。闇の決闘でライフが0になった以上、もう遊矢は。
「よくも遊矢を!!ダークネス、貴方だけは許さない!!」
「……」
私の叫びにダークネスは反応しない。それどころか戸惑っている。少しだけ冷静になってみると、真紅眼の黒竜が消えていないのに気が付く。あれは、精霊じゃない。ただのソリッドヴィジョンだ。なぜ、まだ残っているのだろう。
「どういうことだ。ライフは0になっているはずなのに、魂の牢獄が発動しないだと?何が起きている」
ダークネスにとってもこの状況は想定外なのだろう。焦っているのが分かる。そして、そのまま何も出来ずに5分が経過しデュエルディスクがターンエンド処理を行う。
「やはり決闘は終わっていない!?」
「くっくっくっくっ、その通りだ、ダークネス。オレの運も満更でもないな。デッキを間違えたと思っていたが、最善だったようだ」
今まで倒れていた遊矢がゆらりと立ち上がる。
「貴様、何をした!!」
「最後の黒炎弾を食らったとき、オレはこいつを特殊召還していた」
そう言うと同時に溶岩の中から一体のモンスターが姿を現す。
インフェルニティ・ゼロ DEF0
「インフェルニティ・ゼロ。こいつはオレのライフが2000以下の場合に相手がダメージを与える魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時、このカード以外の全てのカードを墓地に捨てる事でのみ、このカードを手札から特殊召還することが出来る。このカードはオレの手札が0枚の時、戦闘では破壊されない。そして、このカードが表側表示で存在する限り、オレはライフが0になっても決闘に敗北しない!!」
「ライフが0になっても敗北しないだと!?なんだ、そのインチキ効果は!!」
「落ち着け、効果はまだ残っている。オレがダメージを受けるたびにこいつにデスカウンターを1つおく。三つ以上乗っている場合このカードは破壊される。すでに黒炎弾の分でカウンターは1つ乗っている。さあ、残り2つだ!!」
「ならば、私は手札よりご隠居の猛毒薬を発動。相手にダメージを与える効果を選択する!!」
インフェルニティ・ゼロ デスカウンター 1→2
「止めだ!!昼夜の大火事を発動!!」
「墓地よりインフェルニティ・リベンジャーの効果を発動!!手札が0枚の場合、相手がダメージを与える魔法・罠・効果モンスターの効果を発動したとき、墓地に存在するこのカードを除外することで、自分が受ける効果ダメージを無効にする。その後、相手は以下の効果から一つを選択して適用する。①、このカードのコントローラー、つまりはオレはデッキからカードを1枚ドローする。ドローしたカードがモンスターカードだった場合、このターンオレが受けた効果ダメージと、このカードの効果で無効にした効果ダメージの合計分のダメージを相手ライフに与える。ドローしたカードが魔法・罠だった場合、オレはこのターン受けた効果ダメージ分のダメージを受ける。②、このターン相手に効果ダメージを与える事は出来ない。さあ、どちらを選ぶ。最初に言っておくがオレが勝つ確率は悪くねぇ」
「……私は②を選択。カードを伏せてターンエンドだ」
「つまらんな。まあ結果は変わらん。エンドフェイズ、伏せていた自爆スイッチを発動。自分のライフが相手より7000以上少ない時に発動出来る。お互いのライフは0となる」
「なっ!?それでは引き分けに」
「何を勘違いしている。オレの場にはインフェルニティ・ゼロがいる。こいつが居る限りオレはライフが0になっても敗北しないと」
「だが、ダメージがある以上デスカウンターが3つに」
「自爆スイッチはダメージを与えるカードではない。ライフを0にするだけだ。それにダメージを受けるとしても0を0にするのに与えられるダメージは0だ」
「な、なんだと!?」
「では、さらばだ」
遊矢が手元に現れたスイッチを押すと同時に大爆発が起こり、ダークネスを吹き飛ばす。ソリッドビジョンが消えると同時に、ダークネスが持っていた魂の牢獄とか言うカードに仮面が吸い込まれる。それを遊矢は拾い上げてデッキケースに収めて、ポケットからカードを取りこぼし、倒れる。取りこぼしたカードに手を伸ばし、力つきる様に動かなくなる。
「遊矢!!」
私を囲んでいた光の壁が消えてなくなり、私は遊矢の元に走る。抱き起こすと、火口の近くなのに体温が冷たくなっていた。闇の決闘でライフが0になるということは死を意味する。それを強引にインフェルニティ・ゼロの力で動いていたのだとすると、遊矢はもう
「そんなことない!!遊矢を死なせはしない!!」
遊矢がポケットから取りこぼしたカードを拾って確認する。遊矢が最後まで手にしようとしていたカードだ。何かがあるはずだ。
「ライフ回復の魔法カード?それも見た目がクスリ系や食べ物の?」
至高の木の実、ゴブリンの秘薬、天使の生き血、ブルー・ポーション、レッドポーション。なぜ決闘が終わった後にそれを取り出したのか。
「そうか、カードの実体化!!」
精霊界に行く前に魔界の足枷を実体化させていた様に、ライフ回復の魔法カードで回復しようとしたんだ。精霊界にいた時に一応実体化させる方法は聞いた。確かカードにイメージを込めながら魔力を注ぎ込めば具現化するって。魔力は精霊の力を強める為に扱い方を習っていたから扱う事は出来る。だけど、具現化にはかなりの魔力が必要らしい。カードの力によって必要な魔力も変わってくる。ここは一番回復量の低いブルー・ポーションを具現化するしかない。出来なければ、遊矢は死ぬ。
「そんなこと、絶対に駄目!!」
六武衆達を実体化させる時と同じ様に魔力をブルー・ボーションのカードに注ぎ込む。予想以上に魔力が少なくなっていくのに実体化の兆しは全く無い。それでも諦める事無く注ぎ込み、ようやく実体化させた所で消耗し過ぎた。私自身も倒れそうになっている。それでも遊矢に飲ませなければと口に押し当てるも、ただ零れていくだけだ。
「お願い、飲んで」
私はブルー・ポーションを自分の口に含み、口移しでブルー・ポーションを飲ませる。
「ぐぅ、ごほっ!!」
残っていた分を全部飲ませた所で遊矢が息を吹き返した。
「あっ、なっ、ツ、ツァン?」
「よかっt」
「ツァン!?っ!!」
目を覚ますと目の前にツァンの顔が見え、そのまま気を失ってしまった。慌てて起き上がろうにも全身がボロボロで痛みが走る。とりあえずツァンの状態を確認して見ると魔力が枯渇しているだけではなく魂まで消耗している。周りを見るとブルー・ポーションの容器が見える事からツァンが魔力と魂を使って実体化させたのだろう。それをオレに飲ませたのか?別にかけるだけで効果はあるんだが。とりあえず、オレ自身も限界である以上助けを呼ばなくてわな。
腰にあるメインデッキに魔力を注いで1枚のカードの効果を具現化させる。
「速攻魔法、緊急テレポート。来い、サイ・ガール」
「よいっしょ〜、も〜う、早く呼び!?なんでそんな重傷を!?」
「すまん、準達を呼んでくれ。さすがに今ので限界だわ。あのカードも任せる」
ふっ、さすがに回復が遅かった所為か限界が早かったな。オレも魂が殆ど残っていないか。
後書き
しばらくの間、主人公とヒロインが退場です。次に倒れるのは一体誰になるのでしょうねぇ〜。
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