戦国異伝
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第二百十話 夜の戦その六
「わかったな」
「はっ、では」
「その様に」
周りの者達も政宗の言葉に頷く、そしてだった。
伊達の本軍はすぐに動いた、政宗は自ら鉄砲騎馬隊を率いて川岸に急行した。そして進む中でだった。
物見達を出しつつだ、彼等の報を聞いて言った。
「そうか、やはり」
「はい、闇夜の中にです」
「柴田勝家の馬印がありました」
「他には前田利家、佐々成政のものも」
「美濃四人衆もいます」
「騎馬隊の数は一万」
その数の報もあった。
「一万の騎馬隊がです」
「今まさに川を渡ろうとしています」
「そうしております」
「一万、そしてその将達となるとな」
どうかとだ、政宗はその隻眼を鋭くさせて言った。
「どういもな」
「危うい」
「そうだと」
「うむ、しかしじゃ」
それでもとも言うのだった。
「行くぞ」
「そして川を渡った騎馬隊とですか」
「戦いますか」
「戦いそしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「追い落とすぞ」
「川に」
「そうしますか」
「そうじゃ。例え織田家でもじゃ」
その軍勢でもというのだ。
「ここで下がれるか」
「いえ、それは」
「我等とて武門」
「ならばです」
「ここで逃げては男がすたります」
「そうじゃ、これ位でじゃ」
また言う政宗だった。
「下がれぬ、ではな」
「はい、これより」
「攻めましょうぞ」
家臣達も応えてだった。
政宗は兵を率いて進みだ、そうして。
丁渡川を渡った柴田達の騎馬隊を見てだ、こう言った。
「ではな」
「はい」
「これよりですな」
「あの者達を攻め」
「そのうえで」
「追い落とす」
その川にというのだ。
「よいな」
「では」
「鉄砲を構え」
「行くぞ」
切り札である鉄砲騎馬隊をここで使うというのだ、そして。
政宗は自ら軍勢の先頭に立ちだ、騎馬武者達に言った。
「皆の者行くぞ」
「はい、そして」
「そのうえで」
「あの敵を川の向こうまで追い落とすぞ」
こう言ってだった、自ら馬を駆り。
織田の騎馬隊を攻めにかかった、柴田はその彼等を見て前田達にこう言った。
「来たぞ、伊達の軍勢がな」
「あれが噂に聞く鉄砲騎馬隊」
「そうですな」
前田と川尻が柴田に応える。
「あれは手強いですな」
「噂通り」
「馬に乗りつつ鉄砲を放つ」
「よく考えたものです」
「全くじゃ、殿が欲しがる筈じゃ」
政宗、その彼をというのだ。
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