美しき異形達
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第四十九話 一時の別れその十四
ペットショップの前も見つつだ、裕香達に苦笑いで言った。
「大変だったぜ」
「喧嘩はしない方がいいわね」
「勿論あたしから売ったことはないぜ」
戦いは好きだが無闇な喧嘩はしない、それが薊の行動だ。喧嘩も自分から売ったことは一度もないのだ。
「そうした主義じゃないんだよ」
「そうよね、薊ちゃんは」
「それにヤクザなんてな」
それこそとも言う薊だった。
「誰がなるんだよ」
「というか女の子なのにヤクザって」
「ひでえ話だよな」
「誰がなるんだよってな」
それこそというのだ。
「思うよ、心から」
「普通の人はね」
「まあこっちが断ったらな」
「向こうも引いてくれたの」
「ヤクザ屋さんでもましな組だったからな」
「ちゃんとわかってくれたのね」
「そうだよ、まあとにかくな」
薊は一行をさらに案内していた、カラオケボックスの前も通った。
そのカラオケボックスの前でだ、笑って言ったことは。
「ここでも色々とあったよ」
「楽しかった?」
「ヤクザ屋さんにスカウトされたのはどうかだったけれどな」
そうしたこともあった、しかしそれ以外のことはというのだ。
「それでもな」
「とても楽しかったのね」
「そうだよ、じゃあ神戸に戻ったら」
その時はというと。
「博士のところに行くか」
「そうしようね」
「カリオストロ伯爵か」
薊はこの名前を出すと自然にその顔が鋭くなった。
「やっと黒幕が見えてきたな」
「そうね、一連のことのね」
「それであたし達のこともな」
怪人達を生み出していたその錬金術師のことだけでなく、というおだ。
「聞きたいな」
「うん、私もね」
「裕香ちゃんも聞くべきだと思うよな」
「ええ」
裕香は薊の問いにはっきりと答えた。
「薊ちゃん達の為にもね」
「あの博士なら知ってるよな」
「多分ね」
裕香もその目を鋭くさせて答えた。
「あの人ならね」
「そうだよな、やっぱり」
「あれだけの人なら」
それこそというのだ。
「そうしたこともね」
「知ってるよな、いや」
「いや?」
「もう知っててそれを隠してたのかもな」
そうではないかとだ、薊はその目をさらに鋭くさせて言った。
「あの人は」
「もうなの」
「何かそんな気がするな」
こう言うのだった。
「あたしの勘だけれどな」
「薊さんの勘がそう言ってるのなら」
「多分だけれどね」
「博士知ってるかもね」
「それに確かに思わせぶりでしたし、あの方も」
「だから神戸に帰ったら」
菖蒲達も言う。
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