インフィニット・ストラトス 乱れ撃つ者
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加賀さん再び
「ちょっと痛いなこれ」
「我慢しろ。 むしろ、これくらいで済んでよかった」
今俺は旅館の自室でラウラに包帯を巻かれていた。
結果的に言うと、絶対防御はちゃんと仕事をしてくれたようで、俺へのダメージはほとんどない。
あってもちょっとした打ち身とかの軽傷だ。
俺が一夏達を庇ったあとのことだが、俺が戦闘不可能になってしまい、一夏と箒さんに運ばれる形で撤退することになった。 なんとも情けないことだ。
幸いにも、福音は追撃してこなかったため、こうして治療されているわけだが……
「あの、ラウラ?」
「ん? どうした?」
「……もしかして、包帯使ったことないの?」
「……面目ない」
不器用なラウラに不覚にも萌えた
「御堂、起きているか?」
俺がラウラに巻いてもらった包帯を手直しする最中、襖の向こうから訪ねてくる者がいた。
「大丈夫ですよ、織斑先生」
そう声をかけると、襖の向こうの主は中へと入ってくる。
代わりに、それまで俺に付き添っていてくれたラウラが立ち上がる。
「中、私は先に戻っておく。 無理はするなよ」
「ああ、サンキュー、ラウラ」
それでは、教官と織斑先生に軽く頭を下げて退室していくラウラを見送る。
織斑先生はそのまま俺の布団の側に座り込んだ。
「御堂、その、だな……」
「一応、先にいっときますけど、この怪我は自業自得ってもんですよ。 自分の力を把握し切れていなかった俺が悪い」
「……それでもだ。 私の家族を守ってくれたことには代わりない。 あの攻撃を織斑……一夏が受けていればただではすまなかったはずだ。 シールドエネルギーもほとんど残っていなかった」
零落白夜が維持できなくなっていた一夏。
確かに、俺が受けた攻撃をあの状態の一夏が受けていれば間違いなく大怪我だった
幸い、二人は俺の張ったホルスタービットによって守られていたらしく、怪我らしい怪我はしていないとのこと。
今はオルコット達と一緒にいるみたいだ。
「まぁ、何より、みんな無事で良かったじゃないですか」
「そうなんだが……御堂、お前の専用機、サバーニャのことだ。 損傷がかなりひどい。 当分は出撃出来ないと考えた方がいい」
「……やっぱりそうですか…」
トランザム終了によって機体性能が著しく低下したサバーニャには、あの攻撃は荷が重かったようだ。
織斑先生の話によれば、ホルスタービットは半分が使い物にならず、ピストルビットも何基か大破。 そして、もろに攻撃を喰らった本体の方はボロボロで修復は帰ってからでないと困難とのことだ。
「予想はしてましたけど……かなり精神的にくるものがありますね……」
前世でもそうだが、こっちでもかなりの愛着のある機体だっただけに残念である。
「……福音はどうなりましたか?」
「何故かは分からんが、今現在も近くの海域に止まっている」
「……そうっすか……」
確か、今度は総力戦。この旅館の近くで事が起きたような気がする。
俺もこちらにきてから少々長くいたためか、前世の記憶が曖昧になっているような気もする。
だが、記憶が正しいならば、今夜、福音は来る。
だが、俺のサバーニャは動かない。
つまり、俺は出撃できない。あいつらが戦うのを見ることしかできない。
だが、手はある
「よいしょっと」
「どうした、御堂」
急に立ち上がった俺に疑問を持ったのか、織斑先生が聞いてくる。
「なに、機体がないのなら、新しくもってこればいいんですよ」
「さっすが加賀さん!! 頼りになるっ!!」
ここは朝に専用機持ちが集められた場所。
そこで、俺は遥か上空を飛ぶヘリの姿を確認した。
ヘリには我らがゴッドカンパニーの文字
「中くーーん!! 今から行きますよぉーー!!」
突如、ヘリの扉が開き、一人の男が顔を除かせた。
小さすぎて顔は確認できないが、声からして加賀さんだろう
「御堂、あの人は?」
「加賀さんです。 まぁ、俺の義父ですよ」
隣でことの次第を見守る織斑先生が上空を見つめる。
織斑先生だけではない。
この場所には一夏他五名の専用機持ちにプラスで篠ノ之博士もいらっしゃる。
俺が加賀さんに電話をかけているところを聞いていたようだ。
「お、あれか」
気づかなかったが、よく見ればヘリのしたに何か取り付けられている。
大きさから見て、あれだろう
やがて、パラシュートを準備した加賀さんが姿を表すと一気にとんだ。
もちろん、ヘリにくっついていたお荷物を含めて、だ
着地まで意外と長いのな
「や、待たせたかな」
「いえ、むしろ早かったですよ。 加賀さんやっぱスゲェです」
「ハハ、そうか。ならよかったよ」
そう言って、いつものようにイケメンスマイルを浮かべた加賀さん。
うむ、一夏に勝るとも劣らずだな!!
「で、やっぱりこれがあれなんですよね」
「ええ。 と、その前に中君、サバーニャを出してくれ。今のうちに回収しておきましょう」
頷いた俺は首からピストルの形を模したネックレスを外して加賀さんに預けた。
それを懐にし舞い込む加賀さんは確かに、ともう一度笑った。
ちなみにではあるが、加賀さんには福音のことは言っていない。
今回のこれはたば新しい機体がちょうどよく届いただけ。
「それじゃ、調整とかフィッティングとか全部終わらせましょうか。 データはある程度いれてます。 直ぐに終わりますよ」
加賀さんとともに落ちてきた物体。加賀さんはためらうことなくそれを開ける。
青
最初に見たそれは青かった。
「性能では、サバーニャ以上といってもいいほどのできですよ。 ほら、早く早く」
急かされる形で機体に乗り込むと、朝の篠ノ之博士のスピードには劣るがそれでも十分早い。
さすが、わが社の取締役である。
「はい、終わりましたよ」
「ありがとうございます」
パンッ、とてを叩いて終わりを告げた加賀さんにお礼を言う。
サバーニャとは全く異なる近接格闘のIS
「しかし驚きましたよ。 機体を届けてくれと連絡されたときは何かと思いましたが……見事にぶっ壊れてますし」
「なんかすいません」
「まぁ、君をサポートするのがわが社の使命みたいなものですから」
そのために私たちが造られたんですからね、と耳元に口を寄せて小声で加賀さんが話す。
「なぁ、中。 何がどういうことなのかやく分からないんだが……」
よかわからずに付いてきたのであろう一夏が首をかしげる。
その視線は俺の乗る機体へと注がれていた。
……いや、一夏以外のメンバーもそうか。
「あれだ、俺のサバーニャが今の状態だと使えないらしくてよ」
「……それについては中。 お前のおかげで助かった。 それと、ごめん……」
「だーかーら気にするなっての。 あれは俺の自業自得だ。 ま、それは置いといてだ。
とりあえずサバーニャが使えないのに、まだ福音は動いてんだ。 俺だけ出れないってのは嫌なんだよ。
で、うちで作っていたもう一機を運んでもらったんだよ」
ことの事情を説明しながら、俺は武装の確認をしていく。
ガンダムOOの劇場版において、主人公が乗った機体
『ダブルオークアンタ』
最終決戦仕様で、あの機体が見事にIS化されていた。
「正式名称では長くなってしまうので、機体名は『クアンタ』
サバーニャとはタイプが全く違うので、仕様の際は気を付けてください。 あと、例のあれもつけてますので、ここぞという時には使ってくださいね」
やっぱ、加賀さん。あなた最高です
「ん~束さんは色々と聞きたいことがあるんだけど~……いいかな?」
そんな様子を終始黙って聞いていた篠ノ之博士が口を開く。
この世界にない技術であるGNドライヴ
彼女はそれに興味を示している。が、それを教えれば最後、どんな事態になるか分からない。
「残念ですが、うちの社に関係することは何一つお教えできませんよ。篠ノ之博士」
「ちぇ~残念だな~」
とか言ってるけど、絶対諦めてないぞこの人。
一応、そこらへんは神様が配慮してくれているため、あまり心配はないが……それさえも突破してきそうな予感がする。
まぁ、何はともあれ
「これで、俺も戦えるってな」
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