ローゼンリッター回想録 ~血塗られた薔薇と青春~
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第1章 生い立ち
私は宇宙歴773年父エルビィン・フォン・シュナイダー銀河帝国軍准将と母アルマ・フォン・メルケルとの間に生まれた。
父は生粋の装甲擲弾兵将校で、なかなかの切れ者だったと聞く。母は良妻賢母の鏡とも言われた女性であったと聞いている。
なぜこのように「聞いている」と私が言わなくてはいけないのか?
それは単純である。私の記憶がはっきりしているときには彼らはこの世にはいなかったのだ。私にはもう一人兄がいたが行方不明となってしまった。
このいきさつを少し説明しよう。
私の父エルビィン准将は若くして勲功を立て若干33歳で准将に昇進し、当時イゼルローン周辺西域の恒星アルテナ周辺星系駐屯軍司令官であった。しかし、彼は伯爵家出身ながら専制政治体制への疑念を抱いており上層部からはかなり睨まれていたそうである。
そこで、起きたのが「エルビィン・フォン・シュナイダー反逆未遂事件」である。
これは、私の父を上層部が排除することを目的に行ったものであり、エルビィン准将がイゼルローン要塞を乗っ取り、その駐留戦力をもって銀河帝国帝国に反逆しよとした。というものであるが、父にはその気は全くなく理由もわからないまま憲兵隊に逮捕されてしまった。苛烈極まる拷問の中で、当時憲兵隊にいた私の叔父であるケーニッヒ・フォン・シュナイダー中佐に父はある伝言を託した。それも、詰問内容が収められたビデオの中で。
のちに、叔父から知らされることとなるが父は少尉のころに擲弾装甲兵部隊の小隊長と兼務で通信士官を務めていたらしくその時にモールス信号を研究していた。それを用いてビデオの中でまばたきでモールスを打ち叔父に伝言を託したそうである。
内容は
「私は ここで死ぬ 妻と 2人の息子を 机の 引き出しに 入っている 方法でフェザーン経由 で 逃がしてくれ 。 妻と息子たちへ 愛してると」
を実にそのビデオの中で50回近く繰り返していたそうである。
かくして私たち家族は反逆者となったが叔父とともにフェザーン経由で自由惑星同盟へ亡命した。
しかし、自由惑星同盟宙域に入った瞬間帝国軍駆逐艦からの一斉砲撃を受けて乗っていた宇宙商船は大破した。
そこへ帝国軍の装甲擲弾兵が乗り込んできたのである。叔父は一室に私たちを押し込み一人で戦って時間を稼いでいたが、いつ敵が踏み込んでくるかは時間の問題だったそうだ。
しかし、そこに自由惑星同盟軍駆逐艦が救援に入ったため何とか、難を逃れたものの。母は帝国軍の擲弾装甲兵が放ったレーザーライフルの流れ弾に打ち抜かれて亡くなった。
その時顔も覚えていない私の兄は別々の個室に隠れていたため敵に見つかって連行されてしまった。たったの7歳であった。
そうして私はその時2歳で血のつながりのある家族が誰一人としていない孤児になってしまったのであった。
重傷を負いながらも生き残った叔父と私は自由惑星同盟の亡命帝国人となったのであった。
宇宙歴776年4月のことである。
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