極短編集
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
短編72「ママに会いたくなったらば」
今日は妻の命日だ。
『息子は4年生、娘も2年生になったよ。まだまだ俺も頑張るぞ!』
と、墓前で手を合わせていた時だった。
「ママに会いたくなったらどうするんだっけ?」
と、娘が言った。
「目をつぶるんだよ」
と、息子が答えた。妻が子どもたちに最後に教えた事。
『ママに会いたくなったら、目をつぶってごらん。ママが見えるからね』
娘は目をしっかりつぶると……
「だけど一瞬しか見えなかった」
と、言っていた。そんな二人のやり取りを聞きながら、俺は息子にきいた。
「ママは何してた?」
すると息子は……
「僕をギュッとして、笑ってた」
と、言った。それを聞いた俺は、なぜだか急に涙が出た。
「私も、目をつぶろっと」
と、娘が言うと……
「みんなでギュッして、笑っているよ」
と、言っていた。俺はそれを聞いて、思わず……
二人をギュッと抱きしめたのだった。
おしまい
ページ上へ戻る