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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第32話 気付かれないように近づくのに上から派はいない 

 
前書き
どうも、蛹です。
目隠しして「だーれだっ?」ってヤツ。
気付かれずに後ろに行くのって大変ですよね?
ていうか、そもそもそんな事を元々しませんよね。
そんな事が出来るのは“リア充”ぐらいですww

気付かれないようにと言えばジャパニーズニンジャ!
(この世界では日本がなくなってるから出せない‥‥‥)
壁に隠れたり、屋根を走ったり、天井から出て来たり。
まさに、「だーれだっ?」のスペシャリスト(?)ですね。
目隠しの前に急所をやられそうですがねww

嵐も過ぎ去り、のんびり昼寝を始めたアスラ達。
大丈夫とか言ってたけど本当に大丈夫なのか?

それでは第32話、始まります!! 

 
「う‥‥‥うぅーー‥‥ん」

俺は目を覚ました。‥‥‥‥目を覚ました?
体は起こさずに辺りを見回してみると
周りでみんなも眠り込んでいた。

『‥‥‥‥お、俺は‥‥‥‥‥‥』

いつから眠ってしまっていたのだろうか?
話をしている途中から先の記憶がまるでない。
熱はずっとあったが、その時からずっと無理をして
話していたことが悪かったのだろう。
(しかも短時間は上半身ほぼ裸だったし)
だが今はだいぶ体の調子は良い。
俺はゆっくりと身体を起こした。

「うっ‥‥‥‥ッッ‥‥‥」

腹部の腫れの痛みも少しだけ和らいだような気がする。
(本当に気のせいの気もするが)
空を見上げてみると、日は少し傾き始めていた。

『みんなを起こさなくていいのか?』

森のど真ん中で寝入っていた俺が言うのもなんだが
これってかなり危険な状況なのではないだろうか。
あまりに多い供物に″鎧虫″たちが
どれから食べ始めようか悩むほどではないだろうか。

『しかも‥‥‥‥‥‥』

何だか全員が本当に良く寝入っているように見えるのだが。
アスラはよだれを口から垂らして寝ている。
マリーはそのアスラの背中にくっついて寝ている。
ホークアイは毛布にくるまって安定した寝相でいる。
ここまでは分かる。
リオさんは全員とは違い、やや斜め向きに寝ている。
そして、迅さんもこちらに背を向けている。
顔をうかがうことは出来ないが多分寝ている。

『‥‥‥‥‥‥全滅かよッ!?』

俺は心の中で叫んだ。
ここで本当に大声で叫べば″鎧虫″に
見つかってしまうかもしれないからだ。
みんなは寝息を立てながらスヤスヤと眠っているが
起きている俺にはそんな余裕はない。
出来ればあのまま眠っていたかった。
しかし、この状況下と知った中
のん気に二度寝などできそうにない。

『誰でもいいから起きてくれ~ッ!!』

俺は半ば泣きそうな思いで心の中で叫んだ。

「お?起きたのか」

迅が俺の方を向いていた。
その目は完全に見開かれている。
いつの間にか起きていたようだ。

「迅さん‥‥‥‥‥」
「ん、どうした、悪い夢でも見てたか?
 目からちょっと涙が出てるぞ」

そう言われたので目を拭うと少し濡れていた。
あんな状況の中、一人でしばらく起きているのは
正直に言って怖かった。
一人で生きてくと前までは思っていたが
こんな無力な状態では、仲間の存在が
本当に頼もしく感じられた。
マリーの言う通りだ。仲間は本当に大事な存在だ。

「‥‥‥‥一人が寂しかっただけさ」

俺がそう言うと、迅は少し不思議そうな表情をしていた。

「‥‥‥‥‥何だよ?」
「えっと‥‥‥何というか‥‥‥‥」

迅は少し考えた後につぶやいた。

「随分と女の子らしくなったなって思ってさ‥‥‥」

その言葉を聞いた俺は反応に非常に困った。
何だかどんどん牙を抜かれて行く気分だった。
女を捨てていた俺が、少しずつ女に戻って行く。
それを肯定も否定もできない。
自分自身どうなりたいかがわからなかった。

「それより、ちょっと近くに″鎧虫″がいるみたいだ。
 みんなを起こすのを手伝ってくれ」

迅はアスラとマリーの肩を揺らしながら言った。
え、そんなことがわかるのか?
それが出来るならもっと早くに教えてほしかった。
気になったので訊いてみることにした。

「‥‥‥‥それは迅さんの能力なのか?」

その問いに迅はすぐに答えた。

「能力とか″超技術″とかそんな大層なものじゃないよ。
 日頃の訓練の賜物‥‥‥‥かな?」

その口ぶりから察するに、″侵略虫″には
″鎧虫″を察知するレーダーみたいな能力があるらしい。
それを、訓練によってはある程度離れていても
効果を発揮できるようだ。迅の場合は
寝ていてもすぐに起きれるらしい。
(何だか夜中の地震にいち早く気付く親みたいだ)

「起きろホークアイ」

俺は彼の頬をぺちぺちと軽く叩いた。
彼は険しい表情をしながらゆっくりと身体を起こした。

「う~~~‥‥‥‥ん」

片目を擦りながら唸っている。微妙に前後にも揺れている。
その均衡が崩れ、そのまま前に傾いて行き――――――

 ぽすっ

俺の胸に倒れ込んできた。

「‥‥‥‥‥~~~~~~ッ!!」

俺は突然の事に頭が混乱した。
恥ずかしさなどのいろいろな感情が交錯して
もう訳がわからなくなった。
一発殴ってやろうと拳を固めた瞬間
ホークアイは寝言のようにつぶやいた。

「‥‥‥‥‥姉ちゃん‥‥‥‥‥」

その一言に俺は呆然とした。
力強く固めた拳を緩めてしまう程だった。
どのようにすればいいかが全く分からなかったので
とりあえず少しの間だけこのままでいてあげた。

「ジェーン、ホークアイは起きたか?」

そう迅に訊かれたので、急いで俺は
ホークアイを大きく揺さぶって起こした。
そして、歩いて別の場所へと移動していった。



    **********



「‥‥‥‥‥まぁ、こんなところだろう」

″鎧虫″たちからかなり距離をとったのだろう。
ようやくの休みと全員は腰を下ろした。

「はぁー、寝起きの運動はさすがにキツイぜ」

リオさんは大きく息をついて言った。
(一番起きるのが遅かった自分が悪いのだが)
さすがにホークアイに再び背負わせるのは申し訳ないので
今度はアスラに背負われて俺はここまで運ばれた。
ホークアイと違ってアスラの歩行には安定感があった。
さすが、″鎧人″は体力がまるで違う。

「あんまり揺れなかったか?」

アスラが俺を下ろして訊いて来た。
先程言った通り、非常に安定感していたし
何となく安心感のようなものを感じていた。
俺はとりあえず相槌を打った。

「そうか、それなら良かった」

彼は俺が先程倒れてしまったことを気にしているらしい。
そこまでの事ではないと思うのだが、彼は心配性なのだろうか。

「ジェーンちゃん。アスラのおんぶはどうだった?」

マリーが横から顔を覗き込むようにしながら訊いて来た。
俺は少しの間を開けて答えた。

「すごく安心できるな」

簡潔に語るならそうなる。
マリーは自分が言われた事みたいに嬉しそうだった。

「アスラはね。おんぶがすごく上手なんだよ!
 前はよく私をおぶってくれてたんだぁ♪」

それを聞いた俺は、アスラの事について気付いた。
あれは心配ではなく(心配もあるかもしれないが)
マリーを背負っていた頃のクセのようなものだろう。
背負う相手の事を考えて歩く。これがあの
背負われる側への安心感を生んでいるのだろう。

「‥‥‥マリーはアスラの事が大好きなんだな」

俺は少し笑いながらつぶやいた。
それが聞こえたらしくアスラは歩みを止めた。
そして、聞き耳を立てているようだ。
気付かれてないと思っているのだろうか?
(まぁ、目の前に気付いていない女の子が一人いるのだが)

「うん!大好き!!」

マリーは満面の笑みで言い切った。

 ボンッ!!

それを聞いたアスラは爆発した。
顔は見えないが、確実に恥ずかしがっている。
そのままフラフラと離れてどこかに行ってしまった。
何度かこのやり取りを見たが、何度見ても飽きないものだった。

「‥‥‥‥‥‥いいな、マリーは」

正直にそんなことが言えて。正面から恋が出来て。
どちらも、俺にはとてもできないものだった。

「えっ、何が?」

マリーが俺に訊いて来た。
思わず口からこぼれていたらしい。
このままでは俺の愚痴になってしまうので
何とかごまかす方向で行こう。

「‥‥‥‥あんなカッコイイ彼氏がイテヨ」

うわ。我ながら嘘つくの下手だな。
後半なんて声がおかしくなってしまった。
しかも、これじゃ俺も少し狙ってるみたいに
マリーに誤解されてしまいそうだ。

「うん、良いでしょ♪」

いいや、彼女はド天然だった。
嘘もつけないような超の付く天然なのだ。
性格上、これ以上深追いはして来ないだろう。
とりあえず、ごまかすことが出来た。

 スタ スタ スタ

マリーはゆっくりと音を立てないようにして
アスラが背中に向かって歩いて行った。
(おそらくアスラは心を落ち着かせるのに
 集中しているので気付いていないようだ)

 ガバッ!
 
「だ~れだっ♪」
「うわっ!?」

マリーが後ろから目隠しをした。
アスラは驚きのあまり変な声を上げた。
そして、いつものように楽しそうに会話を始めた。
傍から見てみると、どうみても二人は
ごく普通の初々しいカップルにしか見えなかった。

「‥‥‥‥‥‥いいな、マリーは」

最も身近に頼りになる男がいて。

「‥‥‥俺にも、出来るのかな‥‥‥‥‥」

誰にともなく訊いてみたが
その答えが返って来ることはなかった。



    **********



少し休憩を入れて、大分みんな落ち着いたようだ。

「んで、話の続きはどうなったんだ?」

リオさんたまらず俺に訊いて来た。
よっぽど気になっているのだろうか。
一応、俺的には話してるだけであの時の事を
思い出してきて結構辛いのだが。

「おいリオ、そんな無理にせかすのはやめろ。
 ジェーンが言うのを待つってみんなで決めただろ?」

迅がリオさんに言い聞かせた。
しかし、それでも気になっているようだ。
ソワソワ感が抜けていない。
俺はため息をした後に口を開いた。

「しょ――――――――――――――」

しょうがないな、リオさんは。続きを話すよ。
そう言おうとしたが、その言葉は
次の瞬間の衝撃によって断ち切られた。



「話す必要はねぇよ」



上から男の声が聞こえた。
そして、間髪入れずに右方向から
風を切りながらナイフが首へと向かって来た。

「ここで死ぬんだからな」

″鎧骨格″を換装する暇もない。
完全に俺は油断しきっていた。
男のナイフは無情にも俺の喉を切り裂いて――――――


 ガキィィィィィィィィィィィィィィイイイイインッ!!!


否。男のナイフは目の前に立つ少年、アスラが
鞘から抜き出した日本刀によって受け止められた。
ギャリギャリと互いの刀身が擦れる音が首元から聞こえた。

「俺が当事者なら殺られてたかもな」

彼はすでに″鎧骨格″を換装していた。
リオさんと話していた時、俺の上にいた存在に
もしかしたら気付いていたのかもしれない。
男が降りてくるまで、俺は気配さえ気が付かなかった。
この男は気配を完全に断つことができたのかもしれない。
しかし、肉眼で見えてしまえば無駄だろう。
アスラの位置は俺の少し前の位置。
仮に真上にいたのなら、おそらく彼には見えていたのだろう。

『目の前にいるのにいない感じがするな。
 もしかして、これも″超技術″なのか?』

アスラが考えていると男はナイフを引いて
そのまま上へと避難していった。

「やるな。だが、次はねぇぜ?」

そうして、男はガサガサと茂みの中を移動していった。
音は聞こえるのに、全く気配が掴めない。
おそらく彼は暗殺者(アサシン)なのだろう。
今度は真後ろから襲って来るのか。
それとも、再び上から狙って来るのか。
何一つわからないまま、ただ時だけが過ぎて行った。

「‥‥‥‥‥どうする?」

迅は全員に向かって小さい声で尋ねた。
彼は俺の前に座り込むようにして構えている。
おそらく、あの男からの第二撃を防ぐつもりなのだろう。

「奴は気配を断つことが出来るらしい。このまま警戒を
 長時間保ち続けるのは、正直限界があるだろう。
 せめて、あと数分で対策を練らないと―――――――ん?」

俺が迅の服の裾を引っ張っていたのに
気付いたらしく、顔を近寄せて来た。

「どうした?ジェーン」
「‥‥‥‥‥対策なら、一つある」
「!! 本当か!?」

ジェーンは全員に寄るように言った。
さて、あの男への反撃の開始である。



    **********



少し離れた木の上から見る限りでは
奴らは何か作戦会議でもしているようだ。
男は鼻で笑った。

『フッ、誰もこの“葉隠(ハガクレ)”の位置には気付けねぇだろうな。
 俺の″超技術″、″気配遮断(サインカット)″の前では』



彼の″超技術″、″気配遮断(サインカット)″とは
文字通り、気配を完全に遮断する能力である。

生物は動く時などに脳から信号が送られてくる。
それを受け取って筋肉が動くのだが、この際に
微弱な電気が発生して、皮膚の表面から漏れ出て来る。
これを他人が察知すると、それは″気配″と呼ばれるのだ。
彼の″超技術″はその″気配″をもう一重、微弱な電磁波で
全身を覆うことで、それを完全に遮断することが出来るのだ。

ちなみに余談だが、これは自分だけでなく
別の生物にも使用することが出来る。
しかし、彼は徒党を組んで戦うようなタイプではなく
滅多にこんな使用法をすることはないので、ここだけの話である。



『さぁて、奴らはどう動‥‥‥‥‥ん?』

 ダダダダダダッ!!
 
遠くに見える日本刀を持った少年が
こちらに向かって一直線に駆け出してきた。
葉隠は内心焦ったが、すぐに落ち着きを取り戻した。

『焦るな俺、よく考えろ。
 奴らは俺を肉眼で見つけないと
 まともな位置も分からないんだ。
 このままバレないように隠れていれば
 再び隙が出来る。その瞬間を狙えば―――――――――』

 ザンッ!!

「うおッ!?」

突然、目の前を何かが空を切った。
足元の枝を簡単に断ち切り、そのまま俺を
切り裂こうとした物の正体は、先程走り込んで来た
少年の腰に携えられていた日本刀だった。
つまり、そう言うことは―――――――

「見つけたッ!!」

アスラが葉隠を確認したということである。

『な、何で分かったんだッ!!?』

葉隠は心の中で叫んだ。 
 

 
後書き
まさかの暗殺者(アサシン)の登場です!!
そう言えば、"侵略虫"にも日本語の名前があったので
葉隠(ハガクレ)”という、いかにも暗殺者っぽい名前にしました。
そう言えば、ジャパニーズニンジャも暗殺者ですよね?

まさかの前書きで公言していたことを作品内でしました!!
私的には、マリーとアスラの仲の良さならむしろすべきだと判断しました。
いつも小説を書く時、まずは本文、次に前書き、最後に後書きなのですが
今回は本文を終え、前書きを書いている途中に「だーれだっ?」をすべきと
思った私は、本文をすぐに書き直しました。
毎回書いてますが、こういうシーンは書いてて本当に楽しいです。

「‥‥‥‥‥姉ちゃん‥‥‥‥‥」

ホークアイがジェーンの胸に倒れ込んで来た時に
つぶやいていた一言ですが、この言葉の意味とは何なのか?
まさかの新設定(ゴホゴホ)です。

結構焦りやすそうな男、葉隠の戦闘法とは何なのか?
アスラはどうやって葉隠の位置を探し当てたのか?
というか、過去編が中断されたのだが‥‥‥‥気にしないで欲しい。

次回 第33話 暗殺者の武器はナイフが主流 お楽しみに! 
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