SAO─戦士達の物語
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
GGO編
百十話 トリック
前書き
どうもです!
さて、今回は真実が明らかになって行きます。
では、どうぞ!
それから数分。四人はそれぞれが壁に寄りかかったまま、何も喋らなかった。何となく、口を開く気になれなかったからだ。
しかしそんな沈黙も、流石に永遠に。と言うわけには行かない。初めにそれを破ったのは、この中で普段、恐らく一番よく喋る女。アイリだ。
「……でも、ちょっと安心したかも」
「あ?何がだよ」
リョウが首を傾げるとアイリは照れくさそうに頬を掻いて苦笑を浮かべると、冗談めかしたように言った。
「その……ちょっとだけ怖かったんだよね、もし彼奴が幽霊とか、死神の類だったらどうしよー。とか。見た目それっぽいし……でも、リョウ達の言うとおりなら、あのマスクの向こうに有るのは真っ黒な暗闇とかじゃ無くて、本物の人間だってことでしょ?」
アイリの言葉にリョウは思わず吹き出す。
「はははっ!なんだお前そう言うの駄目な人か?」
「う……い、良いでしょ別に!今大事なのは其処じゃ無いんだから!」
「ま、そりゃそうだ……ぷっ」
言いつつ、それでも笑いをこらえて居るリョウにアイリは赤くなって不満気に暫く彼を睨んで居たが、やがて諦めたようにため息を吐き、キリトを見る。
キリトは苦笑しながら、アイリの問いにまともに答えた。
「勿論。さっき兄貴が言ったように、元《ラフィン・コフィン》の幹部。って所までは間違い無い……もっと言えば、俺がSAO時代の名前さえ思い出せれば、現実世界の本名や住所って言う情報だって突き止められる」
と、ようやく笑いを抑えきったリョウが、付け加えるように言った。
「ちなみに、キリトが知ってて俺が知らねえラフコフのプレイヤーはかなり少ねぇから、俺が思い出しても、結果は同じだな」
「そっかぁ……」
そう言うと、アイリは考え込むように顔を伏せた。と、次はシノンが呟くように問う。
「でも……じゃあ彼奴は、SAO時代の事が忘れられなくなって、またPKしたくなった。だからGGOに来た……って事?」
少し眉根を寄せて考えた後、キリトが返した。
「それだけ……って訳じゃ無いかもな……彼奴は《ゼクシード》や《たらこ》を撃った時も、《ペイルライダー》の時も、あえて大勢の眼がある状況を選んでるから……」
「そうなのか?」
訪ねたリョウに、キリトはコクリと頷く。
「初めの二人に関しては、兄貴も知ってる通りなんだけど、さっき《ペイルライダー》を撃った時も、彼奴は明らかにワザと中継用のカメラに対してアピールしてるみたいだった」
「わざわざ大袈裟に十字切ったりか?」
「あぁ。多分不特定多数の人にアピールしたいんだと思うんだ。自分にはゲーム中から人を殺す力が有る……ってさ」
「はっ……」
キリトの結論に、リョウが嘲笑うように、あるいはイラついたように鼻で笑った。無論それは、キリトに向けられた物ではない。
「厨二病こじらせるなら余所でやれってんだ……あいっかわらず無駄にはた迷惑な連中だな、ったく……」
不機嫌そうに言ったリョウに、キリトが苦笑しながら肩をすくめる。
「出来ればその“余所”が奴らの頭の中だけなのが一番望ましいな」
「全くだぜ」
再びふんっ、と鼻を鳴らしたリョウと苦笑したままのキリトに、シノンが続けて問う。
「でも……どうやってそんな事……」
その言葉に呼応するように、アイリが呟いた。
「アミュスフィアじゃ、ナーヴギアみたいな電磁波なんて出せないはず……だよね?」
「まぁな……つかそもそも、俺らに調査の依頼した奴の話じゃ今回の被害者、最初の二人は脳の損傷じゃなくて心不全で死んでんだよな……」
「えっ、心臓……?」
リョウの言葉に、シノンがびくりと反応した。
「……そ、それってつまり……何か、呪いみたいな、超能力的な力で殺した……って事……?」
「……ウェ!!?」
ビクっ!?とアイリが恐れるように反応する。と、腕を組んだリョウが片眉を持ち上げ肩をすくめる。
「本の読み過ぎだシノン。んなオカルト殺人が今の世の中にあってたまるか」
「だ、だよね〜……」
アイリが乾いた声で笑いながら身体から力を抜く。と其処にキリトが一言。
「けど実際の手段についてはまだ見当も付かないからな……」
「どっちなのー!?」
またビクビクしだしたアイリに、キリトが困ったように笑った。しかし……
「もう……大体もし相手が誰でも――あれ?」
続けて何かを言おうとしたアイリが、その言葉を中断して人差し指の第二間接辺りを唇に当てた。面白がるようにアイリの様子を見ていたリョウが、首を傾げる。
「どした?」
「え?あ、うん……おかしいな。って」
「おかしい?」
「うん」
コクリと頷くと、アイリは思案顔のまま言う。
「さっき、廃墟でリョウに殴り飛ばされた時さ、死銃は反撃しようとしてリョウにP90を向けたでしょ?でも、それっておかしいと思わない?」
「え?あぁ、そうか……!」
キリトが一瞬考え、しかし即座に納得したように声を上げた。
「あの距離なら、死銃は充分あの拳銃を使える距離だった。左手に拳銃を持って居たならそれを撃った方が早いし、もし当たれば一撃で兄貴を殺せるはずだ」
「成程な。なら拳銃を撃たなきゃおかしい訳だ」
リョウが言うと、アイリが頷き返した。
「うん。実際柱の陰から私の事を撃とうとした時は、拳銃を使おうとしてた。なんであの時死銃はわざわざ持ちかえたのかなって……」
「……たとえば、十字を切らなかったから、とか?黒星……あ、あの銃の名前、五十四式黒星って言うんだけど……」
「あれを打つ時は十字を切るって決めてるとか……それか、切らないと殺せない。とか?」
シノンの言葉に、アイリが唸った。
「うーん、でも、馬の上からでも、アイツは何発か撃ってきたよね?馬の上で十字切ったのかな?」
「いや、流石にそりゃムズいだろ」
「そっか……」
シノンがまた思案顔に戻る。と、再びアイリ。
「つまり、あの時死銃はリョウを殺せたのに殺さなかった……それか、殺せなかったって事になるよね?」
「な、成程……」
唸るキリトに、更にアイリは続ける。
「そう言えば、ペイルライダーさんの時も、死銃って隣に居たダインさんは撃たなかったんだよね?」
「あぁ……でもあれは既に死んでたんだよな」
首をかしげたキリトに、リョウが首をかしげる。
「んー、そもそももしマジでネット回線超えて人を殺せるってんなら、HP有無なんか関係あんのか?」
「それはそうね。死体になってもアバターは残ってたし、本人の意識は接続されてる。撃たなかったのが寧ろ不自然な気もする……」
シノンの同意を受けて、キリトが再びうんうんと唸る。
アイリが言った。
「つまり……私、ペイルライダー、シノンの間に、何か共通点が有るって事になるよね?」
「もっと言うなら、初めに殺されたゼクシードとたらこにも……か」
アイリの言葉にキリトが補足する。と、リョウが唸った。
「んんー……共通点……あ」
「え?」
リョウが上げた声に、アイリが首をかしげる。
「待てよ……待て待て待て……だとすっと……あの時……あ、そう言う事か!!」
「え、え!?」
「なんだよ兄貴突然?」
キリトが聞くと、リョウが返すように二ヤリと笑う。
「分かったかもしんね、殺しの仕組み」
「えぇ!?」
「い、行き成りだなぁ……」
「ど、どういう事……?」
アイリはかなり驚いたようだったが、キリトは半ば慣れたように返す。シノンは茫然とした様子だ。
「なぁキリト、お前、初めに総督府で申し込みした時、覚えてるか?」
「え、あ、あぁ。あの色々打ち込んだ奴」
「あぁ。あんとき、住所打ち込む欄あったろ?」
「あった、な……俺は何も入力して無いけど」
「俺もだ。けどシノン、アイリ、お前らはどうだ?」
リョウが尋ねると、二人は眼を見合わせる。
「えと、全部入力したよ?」
「私も……」
「やっぱりか」
リョウが唸る。キリトが何かに気が付いたようにその顔を窺った。
「兄貴、もしかして……」
「あぁ……なんでもっと早く気が付かなかったんだろうな……そもそも初めっから疑問だったんだ……」
「え、ちょ、なに?」
「ちょっと、アンタ達だけで納得しないでよ」
アイリが訳が分からないと言うように身を乗り出し、シノンが不機嫌そうに言う。どうでもいいが、少しは元気が出てきたようだ。
「初めからって……」
「あぁ……初めに話した時よ、依頼主が言ってたろ?初めに殺された二人……死体が見つかった時、両方とも部屋の電気は付いてた」
「あ、あぁ……」
「でもよ、それって明らかおかしいだろ」
リョウの問いに、何かに気が付いたようにキリトが声を上げた。
「え?あ、あぁ!そ、そうか……」
「だから男二人で納得しないでよ」
シノンの言葉に、リョウは苦笑してから話しだした。
「つまりだな……シノンお前、フルダイブしてる時、部屋の電気どうしてる?」
「そりゃ、消してるけど……」
「そりゃはなんでだ?」
「そんなの、電気代がもったいないし……」
シノンの言葉に我が意を得たりとばかりに、リョウがニヤリと笑う。
「そう言う事だ」
「え?」
「ゼクシードとたらこも、一人暮らしだった。普通一人暮らしの人間がフルダイブするとなったら、部屋の電気は消すだろ?そりゃそうさ、自分以外に部屋を使ってる奴が居ねぇのは分かりきってんだし、フルダイブ中は主観的に見りゃ自分は部屋に居ねぇのと同じだ」
鼻で笑いつつ、リョウは続ける。
「それに二人はヘビーユーザーだった。一度ダイブすると何時間も落ちねぇのは自分が一番よく知ってる筈だし、いくらこの世界で稼いでも、ひと月に稼げる額なんざたかが知れてる。無駄遣いは控えてぇ筈だ」
「そっか……そんな二人が電気を付けっぱなしでダイブする可能性はかなり低い……」
シノンが呟く。頷いて、リョウは続ける。
「そう言う事だ。なら、なんで電気は付けっぱなしだった?」
「それは……」
「部屋に……他に誰かが居たから……?」
シノンの言葉を引き継ぐように、アイリが言った。リョウはニヤリと笑うと、返す。
「可能性は高いな。んで、そうするとさっきの俺とキリトの話しの意味も分かってくるんじゃねぇか?」
「え……」
アイリとシノンが唖然としたようにリョウを見る。そこに、キリトが告げた。
「つまり……初めから俺達は常識の範疇で考えて良かったんだよ。VRMMOで人を拳銃で撃ったからと言って、現実世界の人間が死ぬなんてありえない。その通りだったんだ。本当の殺人者は、現実で殺人を犯したんだ」
「それって……」
アイリとシノン。二人がついに察したように、目を見開いた。リョウが続ける。
「死銃は一人じゃねぇんだよ。こっちでアバターを撃つ役と、現実でそれを操ってるプレイヤーを殺す役。少なくとも二人以上が、死銃として存在してるっつー寸法だ……多分両方ともラフコフの元メンバーだな」
「そ、そんな……」
アイリが茫然としたように、口元を押さえる。そのまま震えた声で言った。
「でも、だ、だって現実の住所は……?」
「さっき言ったろ?お前らだって入力したんじゃねぇか総督府で。それを後ろから覗かれたんだ」
「そ、そんな、無理だよ!遠近エフェクトでちょっと離れたら見えなくなるし、私達だってそんな近くに人が居たら気付くもん」
「望遠鏡かスコープで覗きゃいいだろ」
「そ、そんな事したら誰かに見られた途端通報されてアカウント抹消(BAN)……あっ!?」
「あ、アイリ?」
目を見開き、その瞳の奥に戦慄の光を浮かべて口元を掌で抑えたアイリに、シノンが戸惑ったように声を上げる。
アイリが途切れ途切れに結論を紡ぎ出した。
「違う、出来ちゃうんだ……もしアイツの、《メタマテリアル光歪曲迷彩》が、街中でも使えるとしたら……」
「あっ……」
それならば。と、シノンは思わず納得してしまった。しかしそれを否定するように、リョウに尋ねる。
「で、でも鍵は?家の人とか」
「少なくとも初めの二人は、一人暮らしだ。それに家も古いアパート。電子錠も初期型なら、使うもん使えば軽く開けんのも無理じゃねぇ。大体GGOに相手が参加してるってことは多少手間取っても気づかれねぇって事だからな」
「…………」
リョウの言葉に、シノンは息をのむ。
住宅の鍵が、電波式キーレスエントリー錠に変わったのは大体は八年位前からの話だ。
物理的ピッキングは不可能になったものの、初期のころはマスターキーならぬマスター電波が解析されたりし、それがブラックマーケットに流れたこともあったらしい。実際、現在もそう言ったマスター電波は緊急用に病院や警察等には配備されていると聞く。
ちなみに詩乃は現在電波式と暗証番号式のキーを併用している。
「じ、じゃあ死因は……?警察にもお医者さんにも分からない方法で心臓を止めるなんてそんな事出来るの……?」
「多分、なんかの薬品を使ったんだろ。死体は発見された時点でかなり腐敗が進んでたらしいし、飲み食いしねぇでダイブしまくってるヘビーユーザー死ぬ例なんざ今の世の中少なくねぇからな。金目当てじゃねぇからゃ部屋も荒らされねぇ。自然死って判断される可能性の方がよっぽど高けぇし、まして、薬品を注射されたなんざ、分かってて調べねぇ限りは見つけんのはムズいだろうな」
「そんな……」
シノンは俯き加減に地面を睨むと、唇を噛んだ。
それだけ周到に準備をして、唯殺すためだけに人を殺す。それは完全に、シノンの理解の範疇を超えていた。彼等の心意も、感覚も、想像することすらできない。そこにあるのは、ただただ底の見えない悪意……
「狂ってる……」
「そだな」
シノンの呟きに、リョウが肩をすくめて答えた。
「正直御世辞にもまともとは言えねぇ……が、まぁ、それだけアイツはあくまでも《レッドプレイヤー》で居たかったんだろうよ。極端な想像すんなら、アイツにとってはもうそれ以外生き方がねぇのかもしれねぇ。殺すことが生きる事、殺すことがクールな事だと思い込んでるんだろうな」
「そんな……そんな事って……」
「そんな事が起きちまうのが、ある意味今の世界の恐ろしい所かもしんねぇな……ま、それは良いとして……いやまぁ良くはねぇんだが、大事なのはむしろここからでな……」
リョウは一瞬だけ言いにくそうに顔をしかめる。しかしすぐに何かを決めたように、シノンとアイリを交互に見た。
「お前ら、今日家の状態どんなんだ?鍵、掛けてあるか?チェーンは?」
先に答えたのは、シノンだった。
「鍵は掛けてある……けどチェーンは……してない。かも」
「アイリはどうだ?お前確か……」
「う、うん家に家族が居る……普段は」
「……は!?」
「今日親戚の家まで出掛けてて……明日のお昼まで私以外の家族居ないの……鍵はかけてるけど……旧式のキーレス錠だけ……」
「マジかよ……」
あちらの調査能力がどの程度なのかは定かではないが、もしそれを知られている事を考えると……やはり不味いかもしれない。
「くそ……いいか二人とも、初めに言っとくけど落ち着いて聞けよ?」
「「…………」」
リョウに、珍しく真剣な懸念の色を認めて、シノンは息をのむ。アイリは静かな表情で、彼を正面から見ていた。
リョウは一瞬キリトを見、彼が頷いて返すのを見ると、リョウはゆっくりと話しだした
「お前ら二人は、俺やキリトと違って、一回あの野郎に拳銃を向けられてる。つかシノンに至っては撃ってきてる。つまり、準備OKかもしれねぇって事だ」
「準備……」
「それって、なんの……」
シノンの言葉にリョウはそのまま、何一つ態度を変えることも無く、淡々と返した。
「リアルのお前らの部屋で、今この瞬間に、死銃の共犯者が、お前がゲーム内で撃たれるのを待ってるかもしれねぇ。って事だ」
シノンの表情が、一瞬で凍りついた。まるで彼女だけ時間が止まってしまったかのように、そのアバターが動かなくなる。しかしやがてその体が細かく震え始め、見開かれた瞳に居売れるな恐怖の色が宿ると、状況は嫌でも変わる。
「嫌……いや……いやだよ……そんな、そんな……」
うわごとのように同じ言葉を繰り返しだす。
最早それは恐怖と言うよりも拒絶反応だろう。当然だ。アイリは何とか耐えているようだが、普通十六の少女に、ベットの上で完全に無防備な状態をさらしている貴女の隣に殺人が快楽と考える狂人が居るかもしれません。と言うかほぼ間違いなく居ます。等と教えたら、こうなるのは目に見えている。
だからこそ、リョウの反応も速かった。
「落ち着、けっ!!!!」
「ぐっ!?」
シノンの頭を掴み、軽く、しかし勢い付けてパチキを決める。
痛みは無い物の、強めの衝撃がシノンの頭を駆け抜け、アバターから離脱し掛けていたシノンの意識が戻ってくる。
後ろで見ていたキリトが小さく「ざ、雑だな……」と言ったが無視する。
「よぉ、大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「りょう、にぃ……」
冗談めかして声を掛けると、目の前に現れた少女の眼が、自分の目と合った。まだ焦点が定まり切っていないが、リョウは微笑しつつ続ける。
「難しいかもしれねぇけど、落ち着け。大丈夫だ、少なくともアイツらは死銃の拳銃にお前が撃たれねぇ限りは、お前を殺したりはしねぇからよ」
寧ろ、今脳波の異常を感知したアミュスフィアに自動切断されてしまい、現実世界で意識を取り戻した詩乃が犯人の顔を目撃してしまうような事が有ればそちらの方が余程危険性が高い。
「でも……でも……っ」
向き合う藍色の瞳の奥には、合い分からず強く恐怖の光が染みついている。リョウは安心させるように、何時ものように二ヤリと笑って言った。
「それに、お前が撃たれるなんざもうありえねぇよ。撃たせねぇからな」
「う……」
その焦りも無く、唯圧倒的な自身だけが有る彼の態度に、不思議な事にシノンは少しずつ安心を得て行く。心が落ち着きを取り戻し、恐怖をパニックにつなげないだけの冷静さが戻ってくる。
「だから、安心しろ。俺の前じゃアイツに、俺の家族やダチを殺させたりはしねぇからよ」
「なっ?」と言ってニカッと笑顔を浮かべたリョウの顔をシノンは少しだけ見つめていたが……やがて、小さな声で言った。
「うん……分かった」
「よしっ」
そう言うと、リョウはようやくシノンの頭を離した。今更ながら顔と顔がごく近くに接近していた事に気が付いたシノンは若干朱くなったが、しかし元々涼人にはそう言った所のデリカシーが欠けている人間だったことを思い出して、諦めた。
同時に、やはりどんな過去が有るとしても、彼は自分の知っている涼人なのだと、この時強く彼女は感じた。
「…………」
アイリはそんな二人の姿を、どこか複雑そうな表情のまま、見守っていた。
後書き
はい!いかがでしたか!?
今回は原作でのキリトの探偵役を全員でやってもらいました。
なんだかんだで、アイリがひらめきガールに見える回になったかな~と思っております。
ちなみに前半アイリがやたらと幽霊系の話を怖がっていますが、アレは彼女が人を怖がらせる意図で作られたお話が苦手な為ですw
ではっ!
ページ上へ戻る