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戦国異伝

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第二百八話 小田原開城その十一

「これは子等も同じじゃが」
「?我等もとは」
「それにご子息やご息女もですか」
「どの方も」
「わしの最期には構うな、どうでもよい」
 一向にというのだ。
「それぞれ生きよ」
「いえ、それは」
「我等は殿の家臣です」
「ですから」
「松永家に仕える者です」
「闇の者達ではないですか」
 こう松永に言うのだった。
「ですから」
「殿と一緒です」
「十二家の一つ松永家に仕えていますので」
「ですから」
「最期の最期まで」
「殿に」
「いやいや、死ぬ時はよい」
 その時はというのだ。
「わしに構わずにな」
「それで、ですか」
「殿とご一緒にですか」
「死の時は」
「我等は」
「別にわしに構うな」
 笑って言うのだった。
「よいな」
「それは殿のご命令ですか」
「そう思っていいのですか」
「そうなるのう、まあとにかく御主達は御主達で生きよ」
 明るいがだ、その裏に何かを隠しての言葉だった。ただ隠していることはその中身も含めて周りに悟らせていない。
「よいな」
「わかりませぬな、そのお言葉」
「殿はよく我等にそうしたことを仰いますが」
「今のお言葉もです」
「どうにも」
「ははは、わからずともよい」
 やはり笑って言う松永だった。
「今はな」
「ですか」
「そうじゃ」
 松永は穏やかな言葉も出した。
「それはな」
「ううむ、では」
「今はそのままということで」
「そうしてくれると有り難い」
 ここまで話してだった、松永は自分から茶を淹れてだった。そのうえで自分も茶を飲み楽しんだ。それは明らかに人のものであった。


第二百八話   完


                          2014・12・2 
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