リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第百五十二話 試練
前書き
タケルに大輔が与えるチャンスとは?
タケルは現在自室に閉じこもっていた。
あの時はパニックになってしまい、まともな思考が出来なかったが、冷静になってみて、自分の仕出かしたことの重大さに身体を震わせる。
必死に頭を振り、罪悪感から逃れようとするが、ブラックセラフィモンのことが脳裏を過ぎる度に震えが大きくなる。
タケル「違う…僕は…僕は…パタモンを暗黒進化させるつもりなんか…」
ただ闇を倒すという気持ちだけだったのに。
何故パタモンは勝手に暗黒進化したのだ。
おかげでパタモンはデジタマとなり、デジタマは大輔に奪われ、選ばれし子供としての権利を剥奪された。
今のタケルに出来るのは、誰かに八つ当たりみたいなことしか出来ない。
それが大輔達から完全に愛想を尽かされた原因ということにも気付かず。
タケルは深夜とも言える時間に外に出た。
今は母親は仕事場に泊まり込み。
だからタケルを止める者はいない。
深夜の誰もいない公園で、タケルはベンチに座っていた。
選ばれし子供としての権利を剥奪されたことでただのガラクタと化したデジヴァイスを思いっ切り地面に叩き付けた。
大輔「八つ当たりか?みっともないぜ?」
タケル「っ!?」
大輔の姿を見るのと同時に自分から全てを奪った(と思いこんでいる)怨敵がいる。
タケル「お前、パタモンを暗黒進化させるきっかけを作ったくせによく僕の前に顔を出せたね。恥を知らないの?」
大輔「恥ね、自分のことを棚上げする元・選ばれし子供よりは色々分かってますがね。」
タケル「お前…」
殴り掛かろうとするタケルに大輔はニヤリと笑みを浮かべた。
大輔「お前にチャンスをくれてやろうか」
タケル「チャンスだって?」
大輔「選ばれし子供に戻るためのチャンス。」
タケル「!!?」
それを聞いたタケルは動きを止めて大輔を見つめる。
大輔「パタモンのデジタマは始まりの町に置いてあるのは知っているだろ。パタモンのデジタマを見つけて孵化させれば、選ばれし子供に戻れる」
タケル「そんなことで?簡単じゃないか。パタモンのデジタマは簡単に見つけられる」
大輔「果たして…どうかな?」
ノートパソコンを開いて、デジヴァイスでゲートを開くと、自分とタケルを始まりの町に。
タケル「久しぶりに来たな…こんなだっけ始まりの町は…?」
少し雰囲気が違うような気がするが、そんなことよりパタモンのデジタマを探さねばと、町にあるデジタマを探し回る。
タケル「こんな、同じようなのばかりで分かるわけないじゃないか…」
しばらく探して見つからなかったタケルは愚痴り始める。
大輔「おやおや?簡単だと仰ったのはどなた様で?」
嘲笑する大輔にタケルは悔しそうにするが、必死にパタモンのデジタマを思い浮かべようとして…。
タケル「(あれ…?)」
思い浮かばない。
パタモンの…一度孵化させたはずのデジタマを思い出せない。
タケル「(な、何で…?)」
少しずつ、焦り始めるタケル。
このままでは自分の選ばれし子供としての資格が完全に剥奪されてしまう。
こうなったらここにあるデジタマ全てを撫でて孵化させるしかないと考え始める。
それを見透かした大輔は絶対零度の視線で見つめる。
タケルが近くのデジタマに触れようとした瞬間。
[パタモンのデジタマに触るな人でなし!!]
タケルの姿を見つけたデジモン達は揺りかごの中で騒ぎ立てる。
[ここのデジタマに何をする気だ!!]
1匹の幼年期デジモンがタケルの肩へ突進してくる。
その身体は小さい為防御しただけで弾かれる。
タケル「な、何って…パタモンのデジタマを探そうと…」
[嘘だ。お前はパタモンのことなんかどうでもいいんだ。自分のことしか頭にないくせに!!]
幼年期デジモンの言葉がタケルの頭に鈍器で殴ったような衝撃を与える。
[闇への憎しみでパタモンを暗黒進化させて殺したくせに]
[闇は悪?そんなこと誰が決めたんだ?]
[僕達の中には天使型デジモンに殺されたデジモンもいる]
[お前のそれは正義じゃない。ただの独り善がりだ]
[お前の独り善がりのためにパタモンは死んだんだ!!]
心に深く突き刺さる幼年期デジモンの言葉達。
知らずにタケルは後退しようとしていたが、大輔に抑えられる。
タケル「パタモンが死んだのは…僕のせい…?ち、違う…僕の…僕のせいなんかじゃ…」
大輔「そうやって自分の罪から逃げ続けるのか?お前、ヤマトさんにまで見捨てられたじゃないか。あんなにお前を大事にしていた兄貴に…」
タケル「っ…」
ヤマトに殴られ、失望したような目を向けられたことを思い出したのか、タケルは唇を噛み締める。
大輔「いいか高石。3年前は確かにデビモンやヴァンデモン、ダークマスターズが敵になったけど、あれは偶然なだけだ。たまたまあいつらが敵になっただけだ。実際、闇属性のデジモンにはいい奴はいる。クロアグモンやダスクモン、ブラックテイルモンのようにな」
[お前はパタモンを見つけると言うのは建て前で自分のことしか考えていないんだろう?パタモンが勝手に暗黒進化しなければ選ばれし子供でいられたのにって]
[勝手に?お前の傲慢さが招いたことだ!!]
[お前はパタモンのデジタマを見つけて、死なせた罪を軽くしたいんじゃないのか?苦しみから逃れられると思っているんだろう?パタモンが戻ってくれば軽くなると、選ばれし子供に戻れると……]
別の幼年期デジモンの言葉。
[お前は狡い奴だ。そんな奴の為にパタモンが生まれ変わるものか!!]
次々にタケルの心を抉る言葉達。
本当は理解していたが、全てを何かに押しつけようとすることで何とか保っていた防波堤が崩れ始める。
罪の重さがのし掛かり、タケルは恐怖で震えていた。
[お前のした事は本当に取り返しのつかない事だ!!]
[パートナーの信頼を裏切った挙げ句否定した!!]
[一度してしまった事は二度と元には戻らない]
[過去は…消えないんだ!!]
[良い事も悪い事も、全部自分なのだからな!!]
責め立て続ける言葉達。
タケルはその言葉達に潰されそうになる。
しかし、そんな彼を救ったのは怨敵のように憎んでいた大輔。
大輔「高石、確かに過去は消えねえ。でもな、償うことは出来るんじゃないのか?賢も昔の罪を償って必死に生きているんだ。」
タケル「………」
大輔「それにな、光とか闇とかの概念は捨てろ。光が正義で闇が悪なんてのは人が勝手に考えたもんだ」
大輔はタケルを放すと、涙を流しながらタケルは足をフラフラと動かしながらある方向に向かう。
顔はまるで幼子。
3年前から今まで必死に抑えてきた物が溢れてきた。
タケル「…僕は…あの時、自分の弱さが憎かった。でも、自分の我が身可愛さに闇を敵視することで逃げてきた。逃げ続けるなんて…出来るはずないのに…」
大輔「高石…」
今、目の前にいるのは小学2年生のタケル…いや、もしかしたら光が丘テロのあった4歳の頃のタケルかもしれない。
両親の離婚をきっかけに歪み始める前の。
タケル「パタモンのことよりも自分のことしか考えてなかった…自分の罪を自覚するのが怖くて…」
大輔「ああ、だから皆はお前から離れていった」
自分の責任から逃れようとばかりしている者に誰が一緒にいたいと思うだろうか?
いたとしてもそれは何か打算的な何かを持った人物だけ。
大輔「償え高石。どんなにみっともなくても、生きて罪を償うんだ。それがお前の戦いだ」
タケル「僕の…戦い…僕は、もう…逃げない。自分の罪…から。どんなにみっともなくても、どんなに人に何か言われても、必死に償って…」
ようやく本心からの言葉を言ったため、タケルのデジヴァイスが光り輝く。
1つのデジタマから光が溢れ、デジタマから幼年期を飛ばしてパタモンが生まれた。
パタモン[タケル~!!]
タケル「パタモン!!」
パタモン[タケル、迎えに来てくれて、ありがとう。]
タケル「うん、うん…!!生まれてくれてありがとう…パタモン…そして、ごめん…ごめんよパタモン…!!」
泣きじゃくりながら、パタモンを抱き締めながら謝罪をするタケルを見遣りながら、大輔は現実世界に戻る。
大輔「終わりましたよ」
大輔がそう言うと太一達は安堵の表情、フェイト達は胡散臭そうに始まりの町が映った画面を見つめていた。
大輔「(これからが正念場だぞ高石。お前はこれからしばらく、フェイト達から不審な目で見られることになる)」
一度失った信用は簡単には取り戻せない。
タケルはどこまで頑張れるか見せてもらうとしよう。
後書き
一応、タケルの改心イベント完了
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