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詩集「棘」

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宵闇



夕宵の闇に紛れ ふいに飛びたつ
水鳥に振り返り 薄紅の世界を眺め

人の理は まるで淡い陽炎
向こう岸に立つ人影は ユラリ過去へと…

今 逢いたい人が居て 祈り 心…届けて
温もり感じられぬ 夜が冷たく覆うよ…


愛は流れて どこへゆく?
君だけを見続けていたい
哀しみさえも流せば
僕は生きてゆけるの…?


星屑の細やかな明かり どこかで呼ぶ声が
蛙は知らぬ振りで 夕月を纏う宵の幻

君への想いは絶えなく流れ出す
不意に吹く風の中へと フラリ身を投げ…

今 触れたい人が居て 名を呼ぶ…大空へ
声さえ聞こえぬ 闇が塗り潰してく

今 逢いたい人が居て 祈り 心…届けて
温もり感じられぬ 夜が冷たく覆うよ…

哀しみ抱いて 灯一つともした…




 
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