ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through to take her back in Alfheim
Chapter-Final 物語の終着
Story16-2 SAO帰還パーティー
第3者side
次の日の昼、和人と明日奈、直葉、悠海は、【本日貸切】と書かれた木札がかけられた黒いドアの前に着いた。
「そういえば、スグや悠海はエギルに会うの初めてだっけ」
「あー、うん。向こうでは何回か狩りしてるけどね」
「ホント、大きい人だよね~」
「言っとくけど本物もあのまんまだかんな。心の準備しとけよ」
直葉は感心するように答えると和人はニヤリと笑って、和人が言った。それに眼を丸くする直葉の向こうで明日奈がクスクスと笑っている。
「わたしも初めて会ったときはびっくりしたよー」
「正直俺もビビッた」
少々おびえたような表情を浮かべている直葉の肩を、和人はポンポン叩いて安心させ、笑いながらドアを押すと…………そこには広いともいえない店内にぎっしりと集まっている人が。
カランと鐘がなると同時にわぁっと歓声やら拍手やら口笛やらが鳴り響く。さらにはスピーカーから大音量でアルゲードのBGMが流れているのでさらに盛り上がりに拍車をかけた。
「おいおい、俺たち遅刻はしてないぞ」
あっけに取られている和人とは違い、明日奈と直葉、悠海はもともと決めてあったかのような定位置に移動していた。それと入れ替わるようにリズ…………篠崎里香が進み出てきた。
「作戦成功ねっ。主役どもは最後に登場するもんですからね。アンタたちには遅い時間を言ってあったのよ。さ、入った入った!!」
たちまち和人は店内の奥へと引っ張り込まれて小さなステージに押し上げられる。
「あとは……フローラとシャオンね。あの二人は何をやってるんだか」
「さぁな」
と話していると、カランと音を立てて扉が開く。
「遅れてごめん……」
「フローラ……アンタ何やって…………って…………」
「えっと……道に迷っちゃって…………」
「ほーう……シャオンとイチャついてたんじゃないの?」
「ち、違うよ! 聖音くんは朝から見てないよ」
「嘘丸見えよ? こんなにおめかししちゃってねー……シャオンの気を引こうとでもしてるわけー?」
「違うって! 本当に聖音くんは朝から見てない!」
「ふーむ……じゃあどこほっつき歩いてるのか」
そこで、ウェイターが一つ皿を運んできた。
「お客様、こちらに置かせていただきます」
「あ、どーもどーも」
「あれ……? エギルさんウェイター雇ったんですか?」
エギルがニヤリと笑った。
「ウェイターなんて雇ってないぞ。シャオン……ウェイターのフリはもうやめろ」
「あっれー……もう終わりかよ。つまんねーの」
「聖音くん!?」
「よっ。よく似合ってるじゃん、その服」
「そ、そう…………?」
「あーこら、そこイチャつかない。そしてシャオンはステージに登る」
「へいへい」
ミズキ……村橋瑞希に言われて聖音はステージに登り、そこでリズが再びマイクを手に取った。
「えー、それでは皆さんご唱和ください! せーの!!」
『キリト、シャオン、SAOクリアおめでとーーー!!』
叫ぶと同時にフラッシュとクラッカーが一気に来すぎてポカンとする。だが、雰囲気のせいで聖音たちも笑いへと変わっていく。
「お前への賞賛じゃないの」
「ヒースクリフ倒したのはお前だろ」
「そっか。なら……」
「あぁ」
「「ありがとな、相棒!!」」
その声と共にハイタッチをした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
聖音side
まさかあの後にスピーチがあるとは思わず和人はテンパっていたが、俺のお祭り好きが発動して「よっしゃ、盛り上がってこーぜ!!」と一言叫ぶと予想通りカオスに突入。
そして数時間後、カウンターに座っていた俺のうしろに人影が。
「やつれたな、和人」
俺よりいじりやすいのか、男性から手荒い歓迎を受けていて疲れきった表情をした和人はよろよろとカウンターまで来ていた。
「何でお前はそんな疲れてないんだよ」
「こーいうのには慣れてるからね」
俺は野球の試合でこういうのは慣れっこだ。
「マスター、バーボン。ロックで」
「何言ってるんだお前は」
俺の隣に座った和人のオーダーに店主のエギルはロックアイスに琥珀の液体を注いだグラスを滑らせてくるが、バーボンなどという酒ではなく未成年も飲めるウーロン茶でした。
クラインは便乗して本物を頼んでいたけどな。
「ってかクラインこの後仕事は?」
「へっ、残業なんて飲まずにやってられるかってんだ…………それにしても、いいねぇー」
「桜華に手ェ出したらぶっ飛ばすからな」
鼻の下を伸ばしながらいうクラインが見ている先には明日奈、桜華、珪子、里香、瑞希、ユリエールさん、サーシャさん、直葉、悠海ら女性プレイヤー陣が勢ぞろいしている集まりが。確かに目の保養にはなる。
ここを見れないユイやレイのために録画はしているが、この男には渡してはいけない。
そこでキリトとは反対のスツールに男が座った。こちらもクラインと同じスーツ姿だがビシッとしておりまともなビジネスマンという印象を持てる。その人物は元アインクラッド解放軍最高責任者、シンカーだ。
「ユリエールさんとの、結婚おめでとうございます」
「俺からも。おめでとうございます」
俺は水の入ったグラスを掲げてカチンとあわせ、俺の奥にいるキリトも身を少々乗り出してシンカーさんのグラスをカチンとあわせる。
「現実に慣れるのはまだ精一杯ですけどね……ようやく仕事も軌道に乗ってきましたし」
「うん、実にめでたい!! くっそぅ、俺もあっちで相手見つけとけばよかったぜ。そういや見てるッスよ、新生MMOトゥデイ」
「いや、お恥ずかしい……まだまだコンテンツも少なくて。それに、MMOの事情じゃ攻略データとかニュースとかは無縁になりましたしね」
「まさに宇宙誕生の混沌って感じだもんな」
「だな……そういや、どうなったエギル。あの後、《種》の方は?」
和人は目の前でシェイカーをシャカシャカと振っているウェイターに話しかける。
「すげぇもんさ。今、ミラーサーバがおよそ50……ダウンロード総数は10万、実際に稼動してる大規模サーバが300ってとこかな」
和人が茅場から託された種……世界の種子はナーヴギア内にいるユイからメモリチップに落とされ、エギルの手によってその種を出芽することに成功した。
あの世界に、憎しみの感情はもちろん存在する。だが、同時に、あの世界でかけがえのないものを手にいれた。そういった意味では、あの世界を愛していた、とも言える。だから、俺と和人は、何が芽吹くのかだけでも見てみようと考えた。
その芽吹いたものは『フルダイブ・システムによる全感覚VR環境を動かすためのプログラム・パッケージ』というものだった。
『絶対に危険性はない』という報告後の俺たちの相談の結果、このプログラム・パッケージ、通称《ザ・シード》をあちこちのサーバにアップロードして企業や個人、だれでも構わず落とせるように完全開放することにした。
このおかげでちょっとした機材があれば仮想世界があっという間に誕生するようになる。さらにはALOプレイヤーのベンチャー企業関係者のおかげでアルヴヘイムは消滅を免れ再生し、プレイヤーデータも引き継がれた。そして《ザ・シード》で生まれた世界から他の世界へ自分のキャラをコンバートできる仕組みすら整いつつある。
「私たちは今、新しい世界の創造に立ち会っているんです。その世界を括るにはもうMMORPGという言葉では狭すぎる。私のホームページの名前も新しく変えたいんですがどうも、これ、というのが……ね」
「う~………う~~む……」
腕組みしながらうねり声を上げてクラインが考え始めるがそれを和人の肘が邪魔をする。
「ギルドに《風林火山》なんてつけるやつのネームングセンスには誰も期待してないって」
「なんだとキリト! 言っとくがな、新生・風林火山にゃ加入希望者続出なんだよ!!」
「女子の入団希望者、いるといいな」
「ぐっ……」
残念、いないらしい。
「そういやエギル、二次会の予定変更はないよな?」
「あぁ、11時ジャストにイグドラシルシティ集合だ」
「もちろんあの城も……だよな?」
「新しいサーバ丸々1つ使ったらしいが……なんせ伝説の城だからな」
資金もがっぽり儲けれるとかさすが元商人な発言を目の前の大男はしているがそんなに上手くいくのか、という疑問を込めてオレンジジュースを飲み干して肩をすくめる。
「おーい、キリト、シャオンー! こっちこーい!!」
「そっちでのんびりせずにこっちでさわごーよー!」
なぜかすっかり出来上がっているリズとミズキが大声で手をぶんぶん振って俺たちを呼ぶ。
「あいつら出来上がってるんじゃねーの?」
「1%以下だから大丈夫だ」
「それ以前の問題だろ」
どうやら……めちゃくちゃなパーティータイムになりそうだ。だけど……楽しまないと損だよな!
Story16-2 END
後書き
何故聖音と桜華はみんなのことをプレイヤーネームで呼ばないのか……
聖音「名前覚えるのが早いからな」
桜華「親の職業に関係してるかもね」
お、桜華ここに来るの久々なんじゃないか?
桜華「お久しぶりでーす」
よし、次回、ついに最終話です。ここまで付き合ってくれた皆様……ありがとうございます!
聖音&桜華「「次回も見てねー!」」
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