ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through to take her back in Alfheim
Chapter-Final 物語の終着
Story16-1 これまでとこれからとそれから
聖音side
ここはどこだろう……つーか、俺……死んだのか…………?
なんかあっちに見える……あっちに行けば、楽になれるのかな。
『……く……ん』
…………? 誰の声だろう…………
『し……ん…………ん』
聞き覚えのある……綺麗な声だ。
『しおん……ん』
…………俺の名前を呼ぶ声…………この声は……!
『聖音くん』
桜華の声……なんだ、やり残したことあるの忘れてたよ。まだ桜華にちゃんと会わないと……俺の物語は、一つ、完結しないよな。
さぁ……行こう。俺にはまだ、やり残したことがあるから。
「うぅ……………………」
俺は目を覚ました。朝日の光が眩しい中、ベッドに寝かされていた。
「聖音くん…………!」
診察衣を纏い、ベッドに寄り添う桜華の姿が隣にあった。
「あ、桜華……えーと……ごめん」
「聖音くんのバカ!!」
「うっ……」
「心配したんだからね…………!! もう二度と会えないんじゃないかって…………」
「約束したろ? 俺はずっとお前の隣にいる……って」
「うん…………! よかった……約束守ってくれて」
「俺って約束破ったことあったっけ?」
「あったよー……覚えてないなんて信じられない」
「都合の悪いことはすぐに忘れるんだ」
「うわー……何それ」
「そういう人なんだよ、俺は。
って、あ、そうだ……」
「何?」
「自己紹介まだだったよな」
「あ、うん。私は春宮桜華、4/26生まれの16歳です」
「俺は光崎聖音、12/25生まれの16歳だ。
桜華、これからも…………俺についてきてくれるか?」
「うん! これまでも、これからも……ずっと一緒だよ♪」
その後、俺は順調に回復をし、桜華が退院する時に一緒に退院をした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、月日が経ち……
「それでは、今日はここまで。
課題ファイル25と26を転送するので来週までにアップロードしておくこと」
チャイムが午前中の授業の終わりを告げる。
教師が大型パネルモニタの電源を落として立ち去ると、広い教室には弛緩した空気が漂った。
俺は出された課題を確認して、端末に保存した。
にしても……この学校のチャイムは始まりの街にあったチャペルの音にすっごく似てる……っていうかほぼ同じだと思うんだけど。
もし、それを知っていてこの音色に設定したのなら、この校舎の設計者はいたずら好きなんだろうな。
まぁ、揃いの制服を纏った俺たち生徒は誰もそんな事を気にしてはいないようだ。
和やかに談笑しながら、三々五々連れ立って教室を後にしている。
恐らく、カフェテリアにでも行ったのだろう。
「お、セイ、カフェに行くなら席の確保をお願い」
「無理無理、セイは今日も姫との会食だぜ」
「ちくしょう! 春宮と恋仲なんてうらやましい限りだぜ。学年No.1の美人とよー」
「ま、そういうことだ」
「聖音くん行こー?」
「お、噂をすればなんとやら、だな」
教室の外から、隣のクラスの桜華が呼んでいる。
「ああ! 今いくよ!」
そう言い、俺は教室を後にし、桜華と共に中庭へと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
真新しい煉瓦の敷かれた小道が、新緑に萌える木々の間を塗って伸びている。
校舎はコンクリートの地肌が剥き出しの素っ気ない外見をしているが、統廃合で空いた校舎を3ヶ月の突貫工事で作り替えたとは思えない立派なキャンバスだ。
花壇の配されたその外周には白木のベンチが幾つか並び……その内のひとつに、一組のカップルが空を見上げている。
2人は同じ濃いグリーンを基調にしたブレザーの制服……ってまぁ当たり前か。今昼飯の休憩時間だし。
とりあえず、声かけとくか。
「和人くん、明日奈、やっほー」
「わりぃ、遅くなった」
「ううん、私たちも今来たとこなの。ね? キリト君」
「ああ。ってかセイお前俺が出てったところ見たろ?」
「カズが教室出たところなんて見たことねーよ。いっつも影のようにスーッといなくなるだろ」
「俺の影はそんなに薄くない」
「あれ? 聖音くんとキリトくんって仲よかったの?」
「そういえば……『カズ』『セイ』ってニックネームで呼んでるよね」
「こいつは、相棒……だからな」
「ああ。こいつの数少ない友達で、相棒」
「うるさい」
和人と明日奈の向かい側にとりあえず座る。
間にテーブルを挟んだちょうど晴れた日のピクニックで使うといい感じの場所だ。
「あー……疲れた……腹減った……」
「まったく同感だ」
「んー……実際この一ヶ月で5歳くらい歳取った気分だなぁ……」
「二人とも年寄り臭いよー」
「でも……確かに色んな事があったものね……キリト君たちのおかげで、私や桜華も助けられたし……」
「そうだね、こうして無事帰って来たんだし……」
「うん……助けられて良かった……それと、此処ではキリトじゃなくて、和人だぞ?」
「ここじゃ一応キャラネームを出すのはマナー違反だからな」
「あ、そっか。つい……って私はどうなるのよ!バレバレじゃないの」
「本名をキャラネームにしたりするからだ」
この学校に通う生徒は全て、中学、高校時代に事件に巻き込まれた旧SAOプレイヤーだ。
おまけに顔が同じときたらバレてても可笑しくはない。
因みに、積極的殺人歴のある本格的なオレンジプレイヤーはカウンセリングの要有りということで、1年以上の治療と経過観察を義務付けられている。しかし、俺たちを含む自衛の為にプレイヤーを手に掛けた者は少なくないし、盗みや恐喝といった犯罪行為は記録に残っていないのでチェックのしようがない。
だから、基本的にアインクラッドでの名前を出すのは忌避されているのだが、先ほども言った通り、顔がSAO時代とほぼ同じなので、明日奈に至っては入学直後に即バレしていたし、和人や俺、桜華も一部の旧上層プレイヤーの間では古い通り名を含めてかなりの部分が露見してしまっている節があった。
もっとも、全てが無かった事にできるかと言われればそうではない。あの世界での体験は夢や幻ではなく、現実に起きたことだし、その記憶にはそれぞれのやり方で折り合いをつけていくしかないのだから。
俺と和人も目覚めた当時は必死に体力を戻そうと躍起になってリハビリをしたが、最近目覚めた明日奈や桜華は入学に間に合わせる為に相当過酷なリハビリを行ったらしい。俺も瀕死の重症から回復した後はある程度のリハビリをやった。
明日奈や桜華が松葉杖なしで歩けるようになったのはつい最近の事だし、今でも走ることを含め、運動の類は禁止。
彼女たちが覚醒後も俺たちは頻繁に病室を訪れ、歯を食いしばり涙をにじませながら歩行訓練を続ける二人を見守っていた。
その甲斐あってかなんとか入学式には間にあったようだ。
「さて、お昼にしよっか!」
アスナの合図でお昼の会食となった。
桜華はバスケットからパンを4つ取り出し、合わせて明日奈もバスケットから包みを4つ取り出した。そして、それぞれ包みを1個ずつ配る。
配り終えた後全員で、いただきますの合図で明日奈がくれた包みから食べた。
「こっ……この味は……」
ガツガツと食って、飲み込んでしてから和人は目を丸くして明日奈の顔を見た。
「覚えてたのね」
「忘れるもんか。74層の安地で食べたハンバーガーだ……」
「いやー、ソースの再現に苦労したのよね、これが。
ふふ、理不尽よね。現実の味を真似ようとして、向こうで死ぬほど苦労したのに、今度はその味を再現するのにこっちで苦労するなんて」
「変な話だな……っと、そういえば章三氏はどうしてる?」
「うん、会社は聖音くんのおかげで潔白が証明できたけど、人を見る目がなかった、って落ち込んでるよ……」
「たしかにね、でも2人はすごく感謝してるって言ってたわ」
「けど、驚きだな。まさかセイがアーガスに肩を並べるほどの大企業、アートテックスの社長の息子だなんて」
「悪かったな……意外で!」
「まあ、そのうち趣味でも見つければ元気になるよ」
明日奈の言葉にそうだな、と頷き食事の続きを楽しんだ。
…………あれから須郷兄弟がどうなったのか。
アルヴヘイムで現実離れ、人道離れした実験をしていた二人は否定、否定の繰り返しでさらには互いに罪をなすりつけようとし、そして最後にはあの茅場晶彦に全ての罪をかぶせようとした。
が、部下の1人が重要参考人で引っ張られた時点で自白し始めたのだ。さらにSAO未生還プレイヤーのこともばれて完全に逃げ場がなくなり、後半が決まった今は精神鑑定を申請するというあがきをいまだに見せているらしい。まぁ、須郷兄は殺人未遂の刑は免れられないだろうけどな。現に俺が死にかけたわけだし。
で、この件のせいで結婚話を進めていた明日奈の父親、彰三氏は結構なショックを受けていたらしい。
そして幸運だったのは桜華以外、実験をされたという記憶を持っているSAOプレイヤーがいなかったこと。そして桜華もそんなに精神に異常をきたしているわけではなく、普通の生活を送れば十分に治るらしい。
ここまで聞くと、いいことだらけだが……実は須郷兄弟のせいでレクトプログレス社とアルヴヘイム・オンライン、さらには他のVRMMOというゲームすらも存続不可能な打撃を被ったのだ。SAOだけで結構な信頼を失っていたにもかかわらず人体実験していたというのが追い討ちとなって『全てのVRMMOが犯罪に使われる可能性がある』という評価が下った。
最終的にはレクトプログレスは解散、レクト本社もかなりの打撃は受けたものの経営陣を刷新しつつ何とか危機は乗り越えつつあるらしい。そしてアルヴヘイム・オンラインは運営中止に追い込まれてほかのVRMMOも社会的批判がすごくて中止を免れないと言われていた……
が、そんな状況を丸々ひっくり返したのが……和人が託されたという『世界の種子』というデータだった。託したのはヒースクリフこと茅場晶彦だ。
茅場は、SAOがクリアされたあの日……普通のSAOプレイヤーとは違う方法で死んでしまったらしい。
俺と和人は、神代凛子という茅場と同じ研究をしていた女性から、茅場がSAOクリアと共に命を絶つということを事件以前から決めていたこと、そしてその死に方を教えてくれた。どうやらナーヴギアのようなフルダイブマシンを改造したもので脳ミソに高出力のスキャニングを行って、脳を焼ききって死んだということらしい。スキャンが成功する確率は0.1%にも満たないものだったらしい。
で、世界の種子に関して神代さんは「あの世界に憎しみしかないのなら消去してください。ですが……もしも、もしも……あの世界に憎しみ以外のものがあなた方の中にあるのなら……」と言っていた。
俺と和人は相談した結果、それをエギルの店に持ち込み、サーバーにアップロードしてもらった。
「聖音くん……?」
「あ、ああ。悪い。考え事してた」
「もう……考え事し始めたらいっつも聞こえてないよね。
明日のオフ会、どうするの?」
「え? 明日なのか?」
「何人か都合あわないから明日にしようってリズが言ってたよ」
「ふーん……なら、あとでうちに寄ってけよ」
「なんで?」
「渡したいものがあるから」
「分かった」
「じゃ、俺行くわ。ミーティングあるし」
「いってらっしゃい」
俺は三人に別れを告げたあと、ミーティングに向かった。
Story16-1 END
後書き
死の淵からシャオン復活&学校だー編←
ミーティング……聖音がどんな生活しているかはお分かりでしょう。そしてオフ会を次の日にしたのはちゃんとした理由があるんです。
聖音「私服姿の描写を入れたかっただけだろ」
ご名答。まさにその通り。
聖音「主人公なんだからそれぐらい分かる」
次回はオフ会。Let's party time!
聖音「うるさい!」
ぐへっ!
聖音「まぁ、そんなわけで……次回も見てくれよなー」
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