少年少女の戦極時代・アフター
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After7 チャッキーとペコの距離感
今日も中心市街地のダンスステージでは、混成ビートライダーズが踊っている。
(昔はチームメイト以外と踊るなんて考えられなかったのに。こんなに変わるんだ。人って。世界って)
チャッキーは最後のリズムに合わせてポーズを決めた。
観客からも、同じステージ上にいるビートライダーズからも、歓声が沸いた。
チャッキーはステージを下りて裏に回ってから、水分補給のために持ってきたマイボトルの中身をぐーっと煽った。
「ぷっはぁ。――ね、ザック。今日もペコいないの?」
本番前は聞けなかったことを、同じく紙パックのジュースで水分補給中のザックに尋ねてみた。
「ああ。なんか最近、あいつ、付き合い悪いんだよな。でもダンス辞めたいわけじゃないみたいだし。一体どうしたんだか」
「仲間のメンタルチェックはちゃんとしとくべきじゃない? リーダーでしょ」
「俺に当たるなよ。それと、今はリーダーじゃなくて『元』リーダーな」
「でも実質あたしたちのまとめ役ってあんたでしょ」
「それ言うなら、元チーム鎧武の代表だってお前じゃん」
ザックの言に間違いはない。正式リーダーの裕也が亡くなり、紘汰も舞もいない今、リーダーポジションは最古参という理由でなんとなくチャッキーに落ち着いているのが現状だ。
「自分んとこのメンバーは大丈夫なのかよ。最近また一人増えたんだろ?」
「ああ。あの子。かなりテクあるよ。性格はエキセントリックだけど。――って、あたしのほうはいいから。ペコの話どこ行ったの」
「やけにそこに戻りたがるな。もしかしてペコが気になる男か~? なーんて」
「――――」
「……あれ?」
「――――」
「えーっと……マジでペコが気になってる感じ?」
チャッキーは答えもせず、肯きもしなかった。
ただ顔が熱かった。
合同ステージを終えての帰り道。
チャッキーは、アーティスティックな都市公園の木陰のベンチを占領して寝転がるペコを、見つけた。
「ペコ? 何してんの、こんなとこで」
「ん~……おわ!? チャッキー!?」
ペコが跳ね起きた。
ここまで大仰に反応されると、チャッキーのほうが驚いてしまう。
――“マジでペコが気になってる感じ?”――
ザックの言葉を思い出し、チャッキーは大きく頭を振った。
「あ。もしかして熱中症!? 今日、暑いし」
「いやいやいやっ。何でもない、何でもないから」
「じゃあ何で今日のステージ来なかったのよ」
チャッキーが迫ると、ペコはベンチから立ってチャッキーと距離を置いた。
「よ、用事があって。だからっ」
かしゃん
地面に物が落ちた音がしたので、チャッキーは反射的にそれを拾った。
落ちたそれは、ヨモツヘグリのロックシードだった。
チャッキーはヨモツヘグリにまつわる多くのことを思い出して、言葉が出なくなっていた。
あわや凌馬に殺されかけなかった舞を助けるため、ペコがイザナミインベスを召喚した。
雨の中をふたり、必死になって、舞をガレージに連れ帰った。
だが結局、舞は――
「見つけたぞ。アーマードライダー」
石の回廊の中に、低く重い声が反響した。
チャッキーとペコは二人して声がしたほうをふり返った。
この季節に、全身を黒の長袖で固めた服装の、一人の男。ハードボイルド小説の主人公を張ってもおかしくない出で立ちと雰囲気だ。
ペコがチャッキーを背に庇うように前に出た。
「な、何だよ、あんた。ナニモンだ!」
男は答えなかった。答えない男は、返事の代わりとばかりに――怪物に変異した。
全身を黒光りする装甲に覆われ、肩越しに見える刺々しい双剣の柄はまるで。
「クワガタ……?」
「オーバーマインドか!」
『そうだ。私は鍬木。クワガタインベスのオーバーマインドだ』
鍬木と名乗った怪物が人間の男の姿に戻った。
「貴様らを排除する」
後書き
タイトルは恋愛ものと思わせて、最後に敵キャラを投入して一気にムードをぶち壊す。これがあんだるしあ流である(`ФωФ')カッ
あんだるしあはペコチャキ推しです。
ちなみに話題に上がった「新しく元鎧武に入った子」というのは、実は邪武に取り憑かれたあの女の子だったりします^m^ ラストシーンでダンス上手そうだったもので、つい、出来心で。
新キャラ・クワガタインベスこと鍬木も、スーパーかみ様から頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。
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