転生赤龍帝のマフィアな生活
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五十話:束の間の休憩
前書き
キリが悪いかも知れませんが本編に戻ります。
カオスは作者の手にも負えなくなったんです(白目)
悪いのは全部変態のせいなんです。
俺はあの地獄とも呼べる平行世界から無事に帰って来ることが出来た。もう途中からは何が起きたのかは分からない。どうやって帰って来たのかも分からない。ただ、気づいたときには自分の家に居て女になった俺の撮影会が開かれていて濡れた白ワイシャツと下着のみという格好だった。おまけに目の前には鼻血を垂れ流している我が家の女性陣+焼き鳥女、カス猫がいたのでとにかくカオスだった。
何を言っているのかと思うかもしれねえが、俺にも分からねえ。まあ、何はともあれ夏休みに入ったので俺は久しぶりにイタリアに帰ることにして、我が家の女性陣を引きつれて自家用ジェットに乗ってイタリアに向かっている最中だ。因みにバジルはリアス・グレモリー達と一緒に冥界に行っているらしい。まあ、俺には関係のねえことだけどな。
「ご主人様、この拘束具はいつまで着ければいいのでしょうか?」
「おい、まるで俺が着けさせたような言い方してんじゃねえよ、エルシャ」
「私はご主人様の心の声を受け取ったんです」
「勝手に俺の心の声を捏造してんじゃねえよ!」
そう言えば、言い忘れていたが変態の教祖ことエルシャはあの平行世界の一件以来、自由自在に現実世界に出てこられるようになってしまった。そのせいで、最近の俺の胃薬の減り方は半端じゃねえ。最近、胃を摘出してしまおうかと真剣に悩んでいるぐらいだ。さらには成功例が出たせいか、まだ俺の精神世界にいる変態共も妙に張り切ってやがる。
「う~ん。先輩さん達がうるさくて眠れないよー」
『ヴァーリ……待っていろ。俺が必ず黙らせてみせる』
『無駄だ、白いの。変態は手に負える存在ではないぞ』
因みにだが、歴代白龍皇の方も変態化しやがったので最近はヴァーリも苦しんでいる。最も、歴代白龍皇の方はヴァーリに父性らしきものも抱いているようで本当にヴァーリが辛い時は抑えたり困ったりした時は助けたりしているらしい。……ちくしょう、どこで俺の方と差がついたんだ? まあ、それは置いておくとしてだ。
中でも便利な奴が仙術を覚えている歴代白龍皇で人を探す時は無償で力を貸してくれるらしい。それに関してはこっちとしても迷子になった時に探す手間が省けて助かるんだが……いつでも俺の場所が分かるようになったせいかちょこちょこと俺の後ろに付いて来るようになっちまった。最近は特にベッタリで中々離れやしない。
今も特注で作ったソファーのような座席に座っている俺の右膝の上で眠ろうとしているしな。ついでに言うと、左膝にはユニが寝ていて、その様子を恨みがましげにイリナが睨みつけているがユニは幸せそうに眠るだけで反応を返さない。そのせいで俺だけがイリナの殺意にさらされることになっている……理不尽だ。
「イッセー君、僕の頭撫でて欲しいなぁ」
「はあ……わかったよ」
俺はヴァーリの要求をのみ、その煌めく銀髪を撫でる。……別にトロンとした目で俺を見つめてくるこいつが可愛かったからじゃねえからな? 俺はカストカゲみてえにようやく見つかった道連れだからということで贔屓してるだけだ。勘違いすんじゃねえぞ。
「うらやま―――いや、妬ましいわ!」
しまった。イリナがどす黒いオーラを噴き出し始めやがった。これは不味い、下手しなくてもイリナの被害が俺に及びかねねえ。ほら、見てみろ。顔は十人中十人を魅了する様な笑顔なのに左手の薬指につけた雲のボンゴレリングからこれでもかとばかりに純度の高い炎が吹き出てるからな。
……というか、なんであいつは薬指につけてんだよ。そいつは婚約指輪でも何でもなねえんだぞ。俺まで誤解されたらどうしてくれんだよ。婚約指輪ぐらい別のをや―――って、俺は何を考えてんだ!? べ、別にイリナに婚約指輪をやろうなんて考えてもねえからな!
(よっ! ツンデレ系ボス)
(遅かれ早かれそうなるんですから早いとこ結婚して亀甲縛りルートを開拓してください)
「イリナ様、ご主人様は婚約指輪なら後で好きな物を買ってやるからボンゴレリングは別の指にはめろとのことです」
「え!? そ、そっかぁ……えへへ。もう、ダーリンも素直じゃないんだからぁ」
そんなこと考えてねえよ! と叫びたい所だが俺の膝の上には寝ているユニとまどろみ始めたヴァーリがいるために大声が出せない。くそっ、これじゃあ否定できねえじゃねえか。それとエルシャはなんで実体化してるくせに俺の精神世界に居る時と同じように心の呟いたことを読んできやがんだよ!?
(仕様です、ご主人様)
(ここぞとばかりに話しかけてくんじゃねえよ!)
はあ……疲れた。俺はいつまで変態とヤンデレの相手をし続けなくちゃいけねえんだ。しかも、さらに増えていくような予感もするしな……。今、考えても仕方がねえか。来るもんは来るその時に受け止めりゃいい。さてと、俺もこいつらみたいに寝て少しでも胃を休ませるか。そう決めてヴァーリの頭を撫でながら目を閉じる。そういや、こいつとの出会いはどんなもんだったかな……俺はそんなことを考えながら夢の中に落ちて行く。
ボンヤリとした映像が頭の中に流れる。イッセーは、夢だと瞬時に判断するが起きようとは思わない。別に夢を見たからと言って何か害があるわけでもない。それに夢の光景は丁度彼が思いだしたかったものだったからだ。月が綺麗な夜に出会った幼い少年と少女。一方は間違いなく過去の自分だ。我ながら目つきが悪いと思う。もう一方の少女は手入れの行き届いていないぼさぼさに伸ばされた銀色の髪の少女、幼き日のヴァーリだ。
「おい、ハーフコウモリが何でこんなのとこにいる?」
「みんな…みんな…僕を虐めるんだ! うわあああっ!」
『よせ、ヴァーリ! そいつは―――』
イッセーのセリフにまた自分が拒絶され、虐待を受けると思ったヴァーリは幼き頃よりあるその才を十二分に使用した巨大な白銀の魔力弾をイッセーへと撃ちだす。目の前の少年の正体に気づいていたアルビオンが警告を飛ばすがそれは既に遅かった。
「うっとうしい」
軽々しく振られた拳により、魔力弾は跡形もなく消失する。それを見たヴァーリは茫然として立ち尽くす。一方、魔力弾を消失させた張本人であるイッセーは特に感慨の無い表情でヴァーリを見つめていたがやがて黙って歩み寄って来る。
アルビオンは己の感が間違いでなかったことを確信する。相手は争うべき今代の赤龍帝で、尚且つ自分の宿主よりも強い。自分の宿主が今までで一番の天才であることは間違いがないが、あれは天才などと言う人の縛りに含むべきものではない化け物なのだということを。
「ひっ! こ、こないで!」
「……………」
近寄るイッセーに対してヴァーリは自分の身を守るようにしゃがみ込み自身の体を抱きしめる。体を震わせて涙を零す様を見てもイッセーは顔に何の表情も浮かべずにただ歩み寄るだけだった。そして、ヴァーリの前の前で立ち止まりゆっくりと彼女の頭へと右腕を伸ばして―――撫でた。
「ふぇ……?」
「ハーフコウモリがイタリアのど真ん中にいたら殺されても文句は言えねえぞ」
「やだ……怖いの…やだ」
イッセーの口から出たのは遠回しな忠告だった。ハーフデーモンであるヴァーリがこのまま裏の教会勢力に見つかってしまえば子供であろうと容赦なく殺されてしまうだろう。そのことを伝えようとしたのだ。普段の彼であれば自分で殺していたかもしれないが今回は気が向かなかったのと、エルシャに対して対処の方法がなく苦しんでいた時期であったのでそのことまで頭に回らなかったのである。
イッセーの言葉を聞いたヴァーリは死への恐怖から体の震えが増す。実の家族から殺されかかった彼女には死への恐怖がこびりついていたのである。何とか命からがら逃げだして彷徨っているうちに辿り着いた場所で彼と出会ったのである。彼は忠告をしても立ち去ろうとしないヴァーリに対して少しイラッとした表情を見せる。別に立ち去らなかったことが気に入らなかったのではない。弱いくせに誰にも頼らない彼女が気に入らなかったのだ。
「湿気た面しやがって……てめえみたいな顔見てると苛々するんだよ」
「ご、ごめんなさい」
「ちっ……別に怒った訳じゃねえよ」
「ほえ?」
自分が怒られていると思って必死に謝るヴァーリ。イッセーはさらに面倒くさくなったとばかりに舌打ちをしながらガシガシと自分の頭を掻き、そっぽを向きそう呟く。その言葉にヴァーリは気の抜けた声を出してポカンとした表情でイッセーを見つめる。少し顔を赤くしながらイッセーはヴァーリに手を伸ばして口を開く。
「カスはカスらしく俺に助けを求めりゃいいんだよ。1日位なら面倒を見てやるよ」
「僕を……助けてくれるの?」
「一日だけだ、俺からの施しだ。ありがたく受け取りな」
流石にハーフデーモンの彼女をずっとイタリアに置いておくわけにもいかないので一日と限定する。別に彼は悪魔と言う理由で相手を拒絶する様な人間ではない。彼は相手をカスかドカスでないかで判断する。例外は身内と認めた人間だけだ。それ以外の判断方法は持ち合わせていない。
では、なぜ彼女を手元に置いておかないかと言うとだ、単純に彼女に対して興味がないのと、彼女の身の安全の為だ。常に自分がついていれば安全であろうが、生憎それは出来ない。だからこそ、一日経てば彼女を追い出すのだ。あくまでも彼にとってはファミリーと地域住民以外はどうでもいいのだ。
「とっとと、手を伸ばせ。俺は手を伸ばす奴以外に施しは与えねえぞ」
「う、うん……ありがとう」
「ふん……」
ヴァーリは小さな手を伸ばしてイッセーの手を握りお礼を言う。彼は気に入らなさそうに鼻を鳴らすがその手を離すことはしない。彼女は初めて握られた手に、暖かな感触に戸惑いながらも手を引かれながら歩いていく。そして、彼の家に辿り着き、そこで丁重にもてなされた。
アルビオンは何故赤龍帝であるにも関わらずにドライグが話しかけてこないのかを考えていたが目覚めていないのだと思って一人納得する。ただ、真実としてはドライグがその時、イッセーにより四分の三殺しにされていて、尚且つエルシャの変態行為により肉体と精神のどちらも追い込まれていてそれどころの話ではなかったという事なのだが。
そして、ヴァーリは束の間の優しさに触れ合い心を癒していったが、幸せな時間という物は直ぐに過ぎると相場が決まっているので、気づけば別れの時になっていたのだ。ヴァーリはイッセーがさりげなく呟いた、堕天使の元なら悪魔にも天使にも追われないという言葉を信じて堕天使の元に行くことに決めていた。アルビオンも自分を宿す以上は下手な扱いは受けないだろうと考えてそれに賛成していた。
そして、名残惜しみながら別れを告げるヴァーリだったがイッセーはそっけなく返すだけで感傷の欠片もない。そんな様子に少し傷つくヴァーリだったが黙って立ち去ろうとする。だが、そこにイッセーが声を掛ける。
「ちょっと待て」
「え? なんなのかな?」
突如として呼び止められて困惑するヴァーリをよそにイッセーは近づいてヴァーリの伸ばされたまま切られていない髪を撫でる。思わず、顔を赤くするヴァーリに向けてさらにイッセーは言葉を続ける。
「邪魔な髪だな、これでも使って纏めてろ」
そう、ぶっきらぼうに呟いてイッセーはヴァーリの髪をツーサイドアップ結い始める。そして、それが終わった後に赤色のリボンで固定する。初めての経験に固まるヴァーリに反してイッセーは何事もなかったように作業を終えたらさっさと離れていく。
「じゃあな。そいつは餞別にでも持っていけ」
「ま、待って!」
「あ?」
「……その名前を……教えてくれないかな?」
ビクビクとしながらそう尋ねるヴァーリに対してイッセーは何だそんなことかと、ばかりに呆れたような顔をして答える。
「兵藤一誠」
「イッセー……」
それだけ告げてイッセーは振り向くこともなく去って行くのだった。その姿を茫然と眺めるしかできないヴァーリはその首筋が赤くなっていることに気づくことは出来なかった。
『……ヴァーリ、そのリボンに書かれている文字がわかるか?』
「え、文字なんて書いてあったの?」
『ああ、幸せになりなさいだ』
「……幸せ。……優しいんだね、イッセー君は」
そう言って呟くヴァーリの顔は正に恋する乙女そのものの顔であった。そこで、イッセーの夢は終わりを告げる。ヴァーリが自分の膝の上から落ちた衝撃から目を醒ましてしまったのだ。相変わらずのドジっぷりに軽くため息を吐くが悪い気はしなかった。イッセーは夢の中の出来事から彼女に問いかける。
「……ヴァーリ」
「なに、イッセー君?」
「今、幸せか?」
キョトンとした目で一瞬イッセーを見つめるヴァーリ。だが、次の瞬間には質問の意味を理解して満面の笑みを浮かべて答える。
「うん、すっごく幸せだよ!」
「そうか……」
そう言って何でもないように再び目を閉じるイッセー。
だが、その口元が満足げに緩んでいたのにヴァーリだけは気づいていた。
後書き
なぜだろうか、以前リクエストがあったヴァーリたんの過去を書いてたら最終回みたいな台詞に……ヴァーリたんが可愛いのがいけないんです。
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