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エディプス

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3部分:第三章


第三章

「それが。迎え入れられることがです」
「貴方のその罪故ですね」
「そうです」
 そうなのだった。まさにその通りだった。その罪故に彼は今彷徨っているのだから。
「ですから。私はこのままもう」
「罪は清められるものです」 
 アテナはその彼に対してまた告げた。
「必ず。清められるものです」
「必ずですか」
「そうです」
 アテナはまた告げてきた。
「必ずです。そう、貴方の目もまた」
「私の目もですか」
「罪を償う為に自ら潰したその目も」
 アテナの声はいとおしげなものになっていた。エディプスに対する慈しみ故だろうか。その声で彼に対して告げてきたのだった。
「元に戻る時が来ています」
「何故ですか?」
 ここでエディプスは思わず女神に問うた。
「何故私に。そんな」
「救いをですか」
「救いは必ずもたらされるものです」
「救いは」
「そうです」
 また語るアテナだった。
「罪は償われ救いが与えられる時が来たのです」
「ですが私には」
「エディプスよ」
 女神の言葉は続く。
「今からアテネに行くのです」
「そのテーセウスの下にですか」
「そこに貴方を救ってくれる者がいます」
「私をですか」
「貴方はそこで目を癒され」 
 アテナはさらに言う。
「そしてその罪も清められるのです」
「アテネに行けば」
「御父様は」
 女神の言葉は娘達の心も打った。それを聞いて今父に顔を向けて告げた。
「御父様、是非」
「参りましょう」
「御前達もそう言うのか」
 エディプスは娘達の声も聞いた。
「私にアテネに行けと」
「はい、是非です」
「参りましょう」
 彼女達の言葉はまさにその通りのものだった。
「それが私達の願いです」
「アテナ様と同じく」
「そうか」
 娘達の声を受けて。彼は考える顔になった。目はなくともそこにあるものは深い思慮だった。
「それでは私は」
「アテネにですね」
「私達が案内致します」
 再びそれぞれ父に告げた。
「ではアテナ様」
「参ります」
「エディプスを頼みましたよ」 
 アテナは娘達に対しても優しい声をかけたのだった。
「ではアテナで」
「はい、それでは」
「あの街で」
 こうしてエディプスは娘達に連れられてアテネに向かうことになった。アテネへの道はこれまでの山道とは違い平坦な道だった。その道を歩みながら話すのだった。
「私の罪が許されるなどと」
「御父様は充分償われました」
「アテナ様も仰っていたではありませんか」
 娘達はここでも父に対して告げていた。
「ですから参りましょう」
「あの街へ」
「そうだな」
 何度も言われてだった。彼も遂に頷いたのだった。
 
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