大陸の妖精
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・Original Episode 3・
前書き
アニメをご覧になっている方は気付くと思います
この閉話はアニメの「413DAYS」の一部をパクッてます(汗)
ある雨の日の出来事である
いつも騒々しい笑い声が飛び交うフェアリーテイルだが、今日は特別騒がしい
何故なら外は生憎の雨であり、皆 仕事に行かずにギルド内で騒いでいるのだ
ジュビア「アルト様!」
木造の長椅子に座っていたアルトは、自分の名を呼ぶ声がする方に視線を向ける
視線の先には恥ずかしげに頬を染め、パンが乗っかっている大皿を差し出すジュビアの姿があった
ジュビア「ジュビアが作った〝アルパン6号〟が焼きあがりました♡」
目を輝かせ、アルトの隣へ座るジュビア
期待を込めた視線を浴びながらもアルトは机の上に置かれたパンに視線を向ける
〝アルパン〟というのはジュビアが作る料理にして、ジュビアのアルトに対する愛情表現の一つである
アルト「(毎度の事ながらすごいなぁ・・・)」
〝アルパン〟には毎回パンの上にアルトの顔が描かれている
ジュビアとしては好きな男性の顔が描かれた品を作るのだから楽しい事この上ないのかもしれない
しかし、アルトとしては自分の顔が描かれた品を食べる事は いささか気が引けるらしい
ジュビア「はい、あーん…♡」
アルト「はぁ!!?」
パンを手に乗り、自分の口に近付けてくるジュビア
流石にギルドメンバーのほとんどが揃っている前で、自分と同い年の女性に食べ物を食べさせてもらうという行為には抵抗がある
アルト「(は、恥ずかしい・・・けど)」
ジュビア「……♪」
期待と感激が入り混じったような満面の笑みを浮かべられると、どうしても自分から断れないのはアルトの性分なのであろう
アルトは周りに救援を求めるように視線を送った
まずはグレイに視線を向ける、しかしアルトの視線を感じ取ったグレイは万が一のとばっちりに備えて他の机に移動した
次にルーシィへと視線を向けるが、同情の色に染まった瞳を向けられるだけで助けてくれそうには無かった
〝今度こそ〟という念を込めエルフマンへと視線を向ける、するとそこには親指を突き立てニヤリと笑みを零すエルフマンの姿があった
まるで〝漢なら食うべし〟と訴えかけているようだった
アルト「・・・あ・・・あーん」
観念したように、気恥ずかしげに口を開くアルト
ジュビアは手作りパンをアルトの口に優しく押し込み、アルトがそれを咀嚼する
ちなみに その光景を見て、ジュビアを羨んでいたミラとレビィには気づかないアルトであった
ジュビア「あ~ん、ジュビア幸せ♡」
アルト「そ、そう・・・おめでと」
身体をくねらせ、幸せそうに満面の笑みをこぼすジュビア
そんなジュビアを見ていると、呆れながらも自然と頬が緩むアルトだった
ジュビア「アルト様、他に何か食べたいもの等はございますか?」
アルト「他に食べたいもの・・・?」
ジュビア「はい、ジュビアはアルト様の為なら何でも作って見せます・・・♡」
アルト「う・・うーん・・・食べたいものかぁ・・・」
いつもはナツと同じぐらい食い意地はってるアルトだが、いざ改めて食べたいものを聞かれるとパッとすぐには思い浮かばなかった
アルト「じゃあ・・・ケーキが食べたいかなぁ」
ジュビア「ケーキですか・・・?」
アルト「うん、しばらく食べてなかったし・・・作ってくれるって言うなら、お願いしてみようかな」
アルトが邪気一つない笑みで言うと、ジュビアは目を光らせ勢いよく立ちあがった
ジュビア「はい!!ジュビアにお任せ下さい、アルト様!!」
決意を瞳に宿し、そう叫んだジュビアは軽い足取りで厨房へと向かった
ジュビア「待っていてくださいアルト様、ジュビア頑張ります!」
ケーキを作るための材料と調理道具を用意したジュビアは、エプロンに着替えて調理場に立つ
恐らく手作りであろうアルトのデフォルメされた人形を傍に置き、調理を開始した
ジュビア「まず砂糖と卵をボウルに入れてかき混ぜて・・・よく泡立てる」
片手に握る調理本を丁寧に読み上げ、その通りの手順で作業する
生地を作るため、泡立て器でボウルの中身を慎重にかき混ぜるジュビア
しかしどれだけかき混ぜようと、何故か一向に泡立つ気配がない
ジュビア「あ・・あれ・・・全然泡立たない・・・?」
中々上手くいかずに、ムキになっていたジュビアの力が徐々に強まる
力強くかき混ぜたため、ボウルの中身は飛び散り、気がついた頃には調理台がひどく汚れてしまっていた
ジュビア「はぁー・・・まさか最初から躓くなんて・・・」
落ち込むジュビアは、ゆっくりとアルトの人形に目を向けた
自分の愛しき男性が、今の状況を見たらなんて思うだろうか
そんな思考がジュビアの脳内をよぎった
◆◇◆◇◆◇◆◇
『ごめん、ジュビア・・・俺、料理できない人とは結婚したくないな』
『そんな・・・!』
『やっぱり女の子は料理が上手くないと、その点で言えばルーシィやミラさんは俺の理想的な女性だ』
『ま、待って!!アルト様!!』
『じゃあな・・・永遠にさよならだ、ジュビア』
『アルト様ー!!』
◆◇◆◇◆◇◆◇
ジュビア「そんなの嫌ぁぁああ!!!!!」
自分なりのビジョンを妄想したジュビアは悲しみに暮れる
ジュビア「どうしよー!!そんな事になったらジュビアもう生きていけなーい!!!」
再びボウルを取り、必死に中身をかき回す
その瞳に冷静さなど欠片も感じられず、ただただケーキの完成を急ごうと、がむしゃらになっているようだ
ジュビア「こうなったら最後までやるしかないっ!!」
焦るあまり次へ次へと作業を進める
きごちない包丁さばきでバターを切り分ける、すると一瞬手元がグラつき、包丁の刃を自分の指にかすめてしまった
ジュビア「痛ぁ!!」
見ると、ジュビアの白く綺麗な指から、赤い血が一本の線を描くように流れていた
ジュビア「うぅ・・アルト様・・・」
自分の指の血を拭い、弱々しい声で呟くジュビア
いっそ、自分一人で作るのは諦めて、ルーシィやミラジェーンのような料理になれた人物に教えてもらった方が良いか
しかしそれでは自分だけの料理にはならない
そう思い悩んでいた時、ジュビアの脳裏に浮かんだアルトの姿
その姿が〝自分一人で作る〟という決意を再び作りだしたのであった
ジュビア「そうよ・・他人に頼ってちゃダメ・・ジュビア一人で完成させるのよ!!そうすればきっと・・・」
◆◇◆◇◆◇◆◇
『アルト様!これ・・・受け取ってください!!』
『おおっ!すごいじゃないかジュビア、一人で作ったのか?』
『はい、アルト様の為に・・・/////』
『ジュビア・・・そこまで俺の事を・・・よし、結婚しよう!!!!』
『はい、喜んで!!!!』
◆◇◆◇◆◇◆◇
ジュビア「なんて事になったら・・・もー、ジュビアどうしましょう♡」
妄想により調理意欲を掻き立てたジュビアは再び調理台の前に立つ
指の傷の痛みなどすっかり忘れていたのであった
ジュビア「よーし、もう一回始めから!!」
「ジュビア?」
意気込んだジュビアの後ろから自分の名前を呼ぶ声がした
その声は最も聞き覚えのある声であり、最も聞きたい声でもあった
ジュビア「アルト様!!?」
アルト「うぉっ!!」
凄まじいスピードで振り返り、アルトの近くへ駆け寄ったジュビア
ジュビア「どうしてここに!?」
アルト「いや・・そこら変歩いてたらジュビアの〝痛ぁ〟って声がしたから・・・」
少し照れた様子で話すアルト
そんなアルトの言葉を聞いたジュビアが目の奥にハートマークを浮かべ、喜んだ
ジュビア「それで心配してわざわざジュビアに会いに!?」
アルト「いや、心配ってわけじゃないけどさ・・・元々、俺が原因でこんな事してくれてるんだし・・・ちょっとだけ様子を見にね」
そしてアルトは調理場に目を向ける
ひどく汚れた調理場に、ジュビアの指の傷を見る限り、あまり上手くいってなさそうだった
アルト「・・・良かったら、一緒に作ろっか」
ジュビア「えっ!?」
アルトの意外な発言に目を丸くするジュビア
アルト「俺も料理は得意な方じゃないけど、二人なら作業も早くなるだろうし」
ジュビア「で、でも・・・私が言いだしたことですし・・・」
アルト「それに、二人で作る方が楽しそうじゃないか」
ジュビア「!!!!」
材料を手に取ったアルトが、満面の笑みをジュビアへぶつけた
それは、ジュビアの〝自分一人で作る〟という使命感に似た感情をも簡単に溶かしたのであった
ジュビア「アルト様・・・そこまでジュビアの事を・・・」
アルト「う゛・・!?」
感動でその身を震わせるジュビアを見て、アルトは妙な胸騒ぎを感じた
次の瞬間、ジュビアが何をしてくるか・・・今までの経験上、簡単に推測できた
ジュビア「アルト様ー、愛してます!!」
アルト「げふっ!!?」
ダイブしてきたジュビアをなんとか受け止め、調理の準備をするアルト
その後ジュビアはアルトの身体から離れず、結果的にアルト一人の調理作業となったのは言うまでもない
後書き
ごめんなさい、エルザの閉話がまだ製作途中なので先にジュビアの方を投稿させていただきました
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