少年少女の戦極時代・アフター
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After16 出発前夜 ①
話し合いはお開きとなった。
出発は明朝。場所は鎮守の森の大樹の前。異星へ行くメンバーは咲、戒斗、光実。そう決まった。貴虎と城乃内は、地球に来たオーバーマインドのさらなる出現に備え、居残り組となった。
貴虎が全員に「夕食を一緒にどうか」と提案したため、解散後も咲たちは呉島邸に残った。
夕飯は光実と舞が二人で作った料理を馳走になった。
ちなみに、手伝おうとして料理中のキッチンを覗いた咲は、(ヘキサに憑依した)舞と並んでこの上なく幸せそうな光実を見て、すごすごと皆が集まった食堂に戻ったのであった。
(あたしだってヘキサと料理してみたかったのに。あんな顔されたらジャマできないじゃん。光実くんのばか)
夜も更けゆく中、咲たちの中の誰も「何となく」帰らず、居間に場を移し、益体のない話に花を咲かせた。
本当に、明日が決戦だとは思えない、緊張感のなさ――を演出してくれているのだろう。彼らはオトナだから。
(だから笑わなきゃいけないの。いけないのに。笑え。笑え、あたし)
意識すればするほど、表情筋が硬くなっていった。
――ロード・デュークは強い。はじまりの男とはじまりの女である紘汰と舞を封印し、オーバーマインドを地球へ連れて来たのだから、強いと判断して然るべきだ。
ポケットの上からヒマワリのロックシードを押さえた。
これを使うことの「副作用」は知っていた。もしかしたらこのロックシードを限界まで使う戦いになるかもしれない。
「不安か?」
声をかけたのは戒斗だった。紘汰とちがい、彼はごく少ない言葉で、咲の心を言い当てる。
咲は無言で肯いた。
すると戒斗の腕が咲の肩に回り、咲はそのまま戒斗の胸板に引き寄せられた。
心許した他者の体温は、無条件に落ち着く。咲は詰めていた息を細く長く吐いた。
視界の端で、光実が貴虎たちを居間の外へ連れ出しているのが見えた。
こんなにもたくさんのオトナに気遣われる自分は、きっと幸せ者なのだろう。
「咲」
「だいじょうぶ。あたしたちしかいないんだもん」
咲、戒斗、光実。異星に発つアーマードライダーは自分たち3人しかいない。地球と異星の命運は、3分の1が咲の薄っぺらい肩にも懸かっているのだ。
「なら付いて来い。俺たちがどんなに先に行っても。どんな高みに登っても。お前の力で追いついて来い」
咲は無言で首肯した。自分の表情が痛々しげであることに気づくことなく。
「カラダも付いて行けたらよかったのにな――」
――おもむろに、視界が戒斗の顔でいっぱいになった。
――唇に触れて1秒と数えず離れたのは、まぎれもなく戒斗の唇だった。
咲はつい、ぽかんと戒斗を見上げた。
戒斗が席を立ち、居間のドアまで行ってノブに手をかけた。
「もう遅い。送る」
「……ううん。だいじょうぶ。ちゃんと帰れるよ。また明日ね」
戒斗はドアを開けて居間を出て行った。
ドアが閉じてから、咲はくちびるを指でなぞった。
後書き
ついに戒斗さんがやらかしました。アウト。
実はこのシーンを書きたいがためにこの連載始めたと言っても過言ではありません。タグにも「原作キャラ×オリ主」付けておきましたし。
嘘ですごめんなさい他のシーンもちゃんと書きたいもの詰め込んでます(笑)
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