魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十三話 虐め解決と、前世の縁
前書き
これ、題名の部分でもう大体答え言っているような気がするのは気のせいか?
全は教室に戻る最中、中庭でひそひそと話し合う二人の女子生徒を見かけた。
その女子生徒達は先ほどから周りを気にしており、その様子はどう見ても挙動不審だ。
「シン、彼女達は?」
『彼女達ですか?確か……六年の女子ですね。ほら、リボンの色が違います』
この聖祥大付属小学校の学年を見分ける方法は胸元のリボンだ。
三年であるなのは達のリボンの色は黒。
六年である彼女達の色は緑だ。
「そうだな……彼女達は、俺が目をつけてる虐めの主犯格達だな」
実は全はある程度まで主犯格を絞り込めていた。
それが、今中庭でひそひそと話し合っている二人の女子生徒だ。
しかし、今問い詰めた所で口を割る筈も無い。
なので、動向にだけ気をつけようと思いその場を後にした。
全は後にこの行動を後悔する事になるのだが……今の全は、それに気づかなかった。
それから数日が経つ。全は未だに全ての準備を整えられないでいた。
というのも。今回の相手、徹底的に自分達に届かないような情報しか公開していない。
それに、全が未だ神楽院紗華だった頃に蔓延してしまった嫌な噂等が邪魔をして思うとおりに動けなかったのだ。
全はそれでも地道に情報を集める他なかった。
突っ走ってしまえばその分、るいにも被害が及ぶ可能性があったからだ。
「お、おはよう……」
と、全が今日の予定を頭の中で整理しているとるいが教室に入ってきた。
しかし、心なしか顔色が悪い。そして、その手には手紙らしきものが握られていた。
るいは早歩きで自分の席に座ると急いでその手紙をカバンの中に詰め込む。
(……?何を慌てて入れているんだ?)
手紙の内容を知りたいと思った全だったがそれでも、あそこまで必死な表情をしているるいの事を考えると、すぐには話しかけられなかった。
るいSIDE
今日、下駄箱を開けたら手紙が入っていた。
何なんだろうと思ってその場で手紙を開けてみたら……それは、指定の時間に指定の場所に来い、という物だった。
これって……私を虐めている人からの呼び出しだよね。
今、私はその指定された場所……小学校の裏山の中腹辺りにいる。
大丈夫……私は負けないって、決めたんだから。
「来たわね」
私がその場所に到着すると……そこには、先輩である女子が二人と取り巻きなのか男子が複数人いた。
「あなた達ですか?私にあんな仕打ちをしていたのは」
「あら?何を言っているのかしら?私達は何もしていないわよ」
「そうそう。ただ、ちょっとあんた目立ちすぎなのよね。だから、もうちょっと抑えなさいっていう先輩からの忠告」
何が忠告だ、白々しいっ。
あそこまで陰湿なことをしておいて。
「そういえば本題に入らないといけないわね。あんた、ちょっと目立ちすぎだからもう少し控えてくんない?」
「そうそう。あんたなんか普通にどこにでもいる女なんだから。目立ったって意味ないでしょ?」
「私は目立っている気はないんですけど」
「んな事はないでしょっ。高宮君の近くにコバンザメみたいに引っ付いて」
なるほど。この女子達の真の目的はそれか。
「確かに。聖の傍に私は結構いますけど……それでも、ずっとって訳じゃありません」
「それに高宮君は迷惑してんのよ」
それをこの人は聞いたのだろうか、聖本人に。いや、たぶん聞いてないだろう。
勝手な憶測だけでここまでの事をしたのだ。
「それで?私がそれに従わなかったらどうするって言うんですか?」
「ちょ~っと、お話する事になるわね」
女子がそう言うと、男の先輩達がにじり寄ってくる。
「へっへっへ。ま、目立った自分を恨むんだな」
「にしても、本当にいいのかね?」
「大丈夫だって。悪い事したのを止めようとしたって言っとけば先生に怒られたりしないって」
「こ。来ないでよっ」
私は少しずつ近寄ってくる男達から下がる。
「もう、遅いよっ」
そう言って男子の一人が私の右手首を掴んだ。
「きゃっ!は、離して!?」
「へへっ。もう諦めなって……ぎゃっ!?」
と、私の手首を掴んでいる男子の右手首を掴んだ手があった。
その手に、何でだろう。既視感を感じた。
男子はあまりの痛さに私の手首を離す。
「て、てめぇ……!」
「止めてやれ」
「た、橘……?」
私を助けたのは……屋上で泣いていた私を励ましてくれた橘全だった。
SIDE OUT
全は放課後になってそそくさと教室を出て行くるいを見て、疑惑が確信に変わった。
呼び出されたのだと、瞬時に分かったのだ。
だからこそ、こうやって最悪の瞬間を迎える前に助けることが出来た。
しかし、少し遅かったかもしれない。なぜなら今の男子生徒の行動でるいの心に傷が出来たからだ。
心の傷は簡単には癒せない。
(また守れなかった……)
しかし、今は目の前の問題に集中すると決め、全は意識を切り替える。
「あ?神楽院じゃねぇか」
「何だ?俺の嫁って奴がピンチになったから助けに来たって口か?」
「ははは!笑えてくるぜ!」
男子生徒達が笑っている。おそらく挑発的な意味も込められているのだろう。
がそんな物、全にとっては挑発でも何でもない。
「お前達、こんな事して何になるって言うんだ?」
「あ?お前には関係ねぇよ」
そう言って先ほどるいの手首を掴んだ男子生徒が全に近づき、その頭を掴もうとする。
が、その手は空を切る。
「あ?…………がっ!?」
全の体は男子生徒の死角……その場に瞬時に潜んだ。
そして、男子生徒の懐に威力を弱めた発勁を叩き込んだのだ。
発勁は体の内面にダメージを喰らわせる技。どんな人間でも内面……つまり、体内を鍛える事など出来ない。
それをついた技である。
それを受けた男子生徒は苦しみながら倒れこむ。
ちなみになぜ全が発勁を使えるのか……というと、全の前世の仲間にこの発勁を用いて暗殺していた人物がいたのである。
全は前世では器用であり、色々な武術を学ぶ内に発勁の事を知り、仲間で発勁を使用する仲間にやり方を教わったのである。
ちなみにその仲間は義理人情に厚く、裏切りなどを誰よりも許さない正義感を持っていた。
だからこそ人をあまり傷付けない発勁を学んだのであろうが。
全は今となって発勁を学んだ事を感謝していた。
「お、おい、大丈夫か!?」
「だ、だめだ、気絶してやがる……!」
「く、くそっ!?」
男子生徒達は仲間の一人が倒されたのを確認すると、慌ててその場を後にし始めた。
「ちょ、ちょっと!?」
「あんたら、どこに行くのよ!?」
「黙れっ!?あんなのとやり合えるかよ!?」
「そもそも、お前達の勝手に付き合わされた方なんだぞ、俺達は!?」
男子生徒達はそう叫んでその場を後にした。
「さて……後は、貴女達だけですね」
「「ひっ!?」」
女子達は全がゆっくりと近づいてきているのに気づいて思わず悲鳴を上げそうになってしまう。
悲鳴など聞こえないかもしれないが、それでも万が一という可能性もある。
女子達は気づいていなかったが、この場面で悲鳴が職員などに聞こえて職員がこの場に来れば全が悪いという事に出来るのだが……おそらくそこまで頭が回らないのだろう。
今は目の前の存在から逃げ切る方法をだけを模索しているようだ。
「今回の件、あんたらが今すぐ止めると誓えば、俺もこれ以上あんたらに関わる気はない」
「ほ、本当でしょうねっ!?」
「ああ、本当だ……だから、さっさとどっかに行け」
「っ!!!」
女子達は踵を返すと、全力で走っていった。
その場には、全とるいだけが残された。
るいは先ほどから俯いたまま、何も全に言おうともしない。
全も何も言わない。
「……で、………のよ……」
小さい声で、るいが呟く。小さな声だったからか全には聞こえなかった。
「何で、助けたのよ……!」
今度は、恨みがこもった声で全にそう言った。
「何で、とは……?」
全がそう問いかけた瞬間、るいは全に掴みかかる。
「何で、助けたの!?私一人で解決出来たのに!?今度こそ……誰の手も借りずに、いじめに負けないって決意してたのに……」
るいはそう言って泣き崩れる。
全はその姿に前世の幼馴染を重ねていた。
(あいつもこんな事言ってたっけな……確か、あの時は「東馬に助けられてばかりは、嫌なの!」だったっけか……じゃあ、きちんと言っておかないとな……)
全はるいと視線を合わせるように腰を落とした。
「宮坂、俺は当然の事をしたまでだ。それに、助けちゃいけない理由なんてない。もし助けたかった理由があったんだとすれば……それは、るいだからだ」
「っ!」
るいはそこで顔を上げる。るいの瞳に映る全の表情は……笑顔だった。
「るいだったから、俺は助けたかった。るいだったから、俺はここまで頑張れた。だから、最後にもう安心だっていう証を込めて笑顔を見せてくれ。それが、俺がここまで頑張った事への報酬になるから」
その時、るいの記憶に何かが差し込まれた。
真耶SIDE
「ふぅ……」
全が宮坂るいへの虐め問題を解決したようだ。
さすがは、私の全。
と、その時、私の体の中から光る玉が二つ出てきた。
この光る玉は私が奪った記憶。その記憶をこうやって具現化させたのがこの光の玉だ。
その光の色は綺麗な赤色に染まっている。
「なるほど。最近になって昔の記憶である筈のお前が騒いでいたが……お前も戻りたいという事か。確かに、お前の存在は全にとって嬉しい誤算だろうな。なにせ、昔の幼馴染が戻ってくるんだから」
私はそう言って、二つの赤い玉を解放してやる。
「さあ全。幼馴染との、再会だ」
SIDE OUT
るいSIDE
私の頭の中に記憶が流れ込んでくる。
小学校の頃、虐めにあって……それを体を張って止めてくれた幼馴染。
何も言わず、いなくなり、そして忘れてしまっていた幼馴染の顔。
今でははっきりと思い出せる。
あの時、かけてくれた言葉も。温もりも。
そして……私の死の瞬間、もう一人にはしないって誓ってくれて、一緒に死んだ事。
目の前の少年……全と、姿が重なる。
雰囲気が、一致した。
そして、この世界に来ての記憶も戻ってきた。
小さい頃、私は全と遊んでいた時期があった。
その時、私は童心に帰って遊べていた。そのひたむきな優しい笑顔は私を虜にした。
そして、いつの間にか好きになっていた。
その少年の名前は……
『俺、全。橘全って言うんだ。これからちょっとの間だけだけど、よろしくっ』
橘全、目の前の少年だった。
「全が……………………………東馬、なの?」
私は思わず、そう口にしていた。
SIDE OUT
後書き
はい、という訳で全君とるいちゃんは前世では幼馴染でした。
まあん、え。大体の方は予想していたと思います。
これから、このアドバンテージを利用してどのようにるいが恋の戦いに参戦するのか、お楽しみに!
ページ上へ戻る