バイアーナドレス
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第二章
「もう少ししたらこの街でもな」
「ああ、祭りだな」
「祭りになってな」
それでというのだ。
「余計に賑やかになるぜ」
「そうなるな、それでうちの娘もな」
「うちの娘もだよ」
「もうその時着る服がどうとかで」
「女房と話してな」
「で、俺達はな」
「蚊帳の外だよ」
父親はというのだ。
「こうした話になるとな」
「女の服の話なんてな」
「男の俺達が言う権利ないからな」
「男は金を出すだけ」
「稼いでな」
「半分は男のお陰で生まれるのにな」
「神様も因果なことしてくれるぜ」
笑って二人で話すのだった、父親二人は。
そしてゴンガーザはだ、ペドロにこんなことを尋ねた。
「それで御前さんところの娘さんは何着るんだ?」
「ああ、あれだよ」
「ドレスだよな、やっぱり」
「バイアーナドレスな」
この服だとだ、ペドロはゴンガーザに答えた。
「決まってるだろ」
「やっぱりそうか」
「ああ、もう女房と二人でな」
「どんな柄のドレスにするかでだよな」
「友達同士みたいに話してるよ、家でな」
「で、御前さんは見ているだけ」
「そして聞いているだけだよ」
ただそうしているだけだというのだ。
「お金は俺が出すけれどな」
「ははは、俺もだよ」
「御前さんもか」
「男がドレス着るか?」
「女装が趣味だと着るけれどな」
「それでも普通はないな」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「俺もだよ」
「見ているだけ、聞いているだけでな」
「本当に蚊帳の外だよ」
男は、というのだ。父親であっても。
「俺達は俺達で服着るけれどな」
「男の服なんてな」
「何でもないからな」
「タキシード着てもな」
そうした礼装になってもだ、ちなみに二人は仕事柄そうした服を着ることはない。二人共砕けた感じが売りの店だからだ。実際二人がいるゴンガーザの喫茶店もラフで飾ったものはない。
「男はそれで終わりでな」
「隣のドレスの淑女の方が注目される」
「そんなものだな、世の中」
「男は金を出すだけ」
「そして見ているだけ」
「まあ言い寄ることが出来るな」
つまり浮気だ、だが。
ペドロは浮気についてはだ、ゴンガーザに真剣な顔で言った。
「あれは駄目だな」
「ああ、御前さんも浮気したことあるのか」
「というとあんたもか」
「三年前したさ、ばれないようにしたつもりなんだがな」
「ばれただろ」
「ばれて女房にぎったんぎったんにされたよ」
浮気の代償として、というのだ。
「殺されるかと思ったよ」
「俺もだよ、五年前な」
そのペドロも言うのだった。
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