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ルドガーinD×D (改)

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五十四話:戦いの始まり

ディオドラとかいう、変態クズストーカーが来てから数日経ったある日、俺はオカルト研究部で俺の過去を知らないイリナに部長達と黒歌と一緒に過去の事を話した。ん? 何で、ディオドラが変態クズストーカーにランクアップしているかだって?

それはな、ディオドラがこの前訪ねて来た時にあろうことか、アーシアを今度行われるレーティングゲームの景品扱いしたらしいからだ。昔アーシアに助けられたとかいうらしいいけど、正直胸糞が悪くなる。アーシアはこの世に一人しかいないって言うのに、それを物扱いしたのは許せない。もし、その場に俺がいたら切り刻んでいたかもしれない。

もしかすると、アザゼルはそれを危惧して俺を止めたのかもな。まあ、何はともあれ、今度のレーティングゲームではイッセーにあいつをボコボコにして貰おう。俺が手を下せないのが非常に腹立たしいけどな。……と、まあ、色々と言ってはいるけどこれは目の前の状況を現実逃避しているからだ。そう、俺達はイリナに俺の過去を話した。一切の脚色など無しに至って普通に……なのに。


「ヒグッ……グスッ……ルドガーにそんな過去があったなんて……悲しさと、感動の涙で前が見えないよ。ああっ、神よ! この勇敢な者に祝福を!」


もの凄い号泣されて、俺の幸せの為に全力で祈られた。……なんでだ? 元々、オーバーなリアクションを取るようなタイプの子だったけど、こんなにも必死に祈られると俺の方が戸惑ってしまう。しかも、既に知っているはずのゼノヴィアやアーシアまで涙を流しながら祈りだす始末だ。なんか、俺が新興宗教の教祖みたいな感じになってて自分で自分が怖いんだけど……。


「なあ、そんなに悲惨な人生でもないだろ。俺は自分の選択に後悔はしてないし」

「ルドガー君はそうかもしれないけど見ている側からすると辛すぎるんだよ……」


愛想笑いを浮かべながら、やんわりとやめさせようとするが、祐斗からやたらと真剣な顔でそう言われてしまい、思わず顔が引きつってしまう。いや、確かにまともな人生だとは思えないけどそこまでのことか。エルを守れたんだから、俺は結構満足しているんだけどな。


「不幸過ぎるんですわ……ルドガー君は」

「ルドガー先輩は僕なんかよりもよっぽど不幸な人生を送っていますぅぅ」

「なんか、不幸、不幸って言われるとへこむんだけど……」


ネタで不幸って言われるのには慣れているけど、真顔で不幸って言われると結構くるんだよな……いや、自分が不幸なのは自覚はしているけどな。俺は朱乃さんとギャスパーの言葉に内心を密かに痛めながらそんな事を考える。


「でも、事実なんだから仕方ないにゃ」


どこか呆れた顔の黒歌にまでそう言われてしまう。うーん、でも、今現在、俺は幸せなんだからそんなこと言われても納得できない。だから、ハッキリと言わせてもらう。


「確かに、俺は不幸かも知れない。でも、ちょっと位運が悪くたって俺は黒歌に愛して貰える最高の幸せ者だからいいんだよ」

「っ! ……もう、バカ」


俺が笑顔でそう返すと、黒歌は一瞬、間の抜けたような顔をするが、すぐに頬を赤くして俺の耳元でそう呟いて抱き着いてくる。俺はそれを抱きしめ返して幸せを実感する。黒歌の温もりを感じられるならどんな不幸が待ち受けていたとしても俺は幸せだ。……逆に言えば黒歌がいなかったらどんな幸運が待ち構えていたとしても幸せじゃない。たぶん、“あいつ”が過去を求めるのはそのせいなんだろうな……。


「……幸せなのはいいことですけど、こうも目の前でイチャイチャされると殴りたくなってきます」

「ふむ、よく分からないが私も殴るべきか? 私の女子力の見せ所だな」

「ゼノヴィア、女子力って女子の腕力のことじゃないわよ」

「っ!? そ、そうだったのか?」


なんか、一気に雰囲気が明るくなったのはいいんだけど、小猫が指をゴキゴキ鳴らしながらこっちを見ているから、ゼノヴィアのアホ発言で有耶無耶になっているところで逃げるか。何はともあれ、今度のレーティングゲームは応援にいくからしっかりとディオドラをブッ飛ばしてくれよな。それをしたらおっぱいドラゴンの件は許してやる。そんな応援を心の中で送りながら俺は黒歌の手を引きながら部室から出て行くのだった。





あれから、特に俺にとっては目立って新しいこともなく日々は過ぎていき、ついに部長対ディオドラのレーティングゲーム当日になった。勿論俺と黒歌は応援の為に観客席に座っていたんだけど……何故か、VIPルームに案内された。なんだ、何かまずい事でもしたのか?

そんな疑問を不安になりながら抱いたが俺達を案内してくれたグレイフィアさんは何も答える事がなかった。そして、VIPルームに着いてみると、当然のことながらサーゼクス様やアザゼルに並ぶ各勢力のVIP達がズラリと揃っていた。その様子に自分達が明らかに場違いな感じがして俺達は身を縮こまらせる。すると、そんな俺達にある隻眼の老人が声を掛けて来た。


「ほっほっほ、そう緊張するではない若者よ」

「あなたは……北欧の主神―――オーディン様ですか?」

「いかにも、ワシがオーディンじゃ。……所で、お主の連れは中々にエロい体つきをしとるのぉ」

「殺すぞ?」


俺は黒歌の方に隠すことなくいやらしい視線を向けるオーディン様……いや、こんな奴はオーディンで十分だ。とにかく、オーディンに対して本気の殺気を叩きつける。だが、オーディンは愉快そうに笑うだけで平然と俺の殺気を受け流す。

流石に主神というだけの力はあるんだな。というか、つい勢いで殺すなんて言ってしまったけど今の発言は仮にも主神に対しては不味かったか? まあ、本人も笑っているし、お供の銀髪が綺麗なヴァルキリーの女性も俺に対して注意すべきかどうかかなり迷っているみたいだし、お咎めはなしかな。


「そう、目くじらを立てるでない。別に減るものでもないじゃろう」

「減るさ。具体的にはお前の寿命がな」

「あの……一応は主神であるオーディン様に対して無礼ですよ」

「ロスヴァイセ。お主も相当無礼だと思うのじゃが」


我慢しようと思ったけどやっぱり無理だった。つい、喧嘩腰で話してしまう。やっぱり俺は黒歌の事となるとかなり心が狭くなる傾向にあるな。まあ、治す気もないけど。それとお供のロスヴァイセさんが俺に若干申し訳なさそうに注意してきたが一応とつけている辺り元々彼女の中でのオーディンの地位は高くないらしい。

多分、毎日のようにセクハラを受けているんだろうなと、俺はねぎらいの眼差しを向ける。すると、向こうもそんな視線に気づいたのか大丈夫ですよといった感じの哀愁の漂う笑顔を返してきた。その哀れさにどこか他人とは思えずに頑張ってください、と視線を再び返すが、俺がずっとロスヴァイセさんの方を見ていたことに嫉妬した黒歌が俺の頭を小突いてきたのでそこで視線を切ってオーディンに戻す。


「それで、俺に何か話があるのか?」

「ほっほっほ、そうじゃ。ワシがわざわざお主を呼んだのじゃ……異世界の若者よ」

「……何が目的にゃ?」


雰囲気の変わったオーディンに俺は警戒心をあらわにして睨みつける。隣の黒歌も冷たい声でオーディンを問いただす。だが、オーディンは先ほどとは打って変わっていやらしい視線は一切向けることなく静かに視線を返すだけだったがやがてゆっくりと口を開く。


「ワシはミーミルの泉に片方の目を差し出して、魔術、魔力、その他の術式、結界に関しての知識を得た。じゃが……知識欲というものは幾つになっても衰えんものでのぉ。爺は知りたがりなのじゃ。特に異世界という摩訶不思議な物はのぉ」

「俺が居た世界の知識が欲しいのか。それを俺が話すメリットは? そもそも、どうやってそれを知ったんだ?」

「そう、矢継ぎ早に質問するでない。まず、どうやってそれを知ったかじゃが―――お主と同類の者から聞いたのじゃ」


その言葉に俺は目を見開く。俺と同類の人間……それはつまりは、新しい審判を受けているクルスニク一族だという事だ。問題はそれが誰かだけど……オーディンがこうして俺に聞きに来たという事は、そいつは少なくとも俺の事をしっている人間で、尚且つ、オーディンに対して協力的な態度を取っていない人間という事になるな。

後者の方は別にそこまで重要なことじゃないけど、俺を知っている骸殻能力者となると……嫌な予感がするな。多分、ヴィクトル以外だろう、あいつは俺だからオーディンならその事に気づくだろうからな。何も言わないという事はそういうことなんだろう。


「そいつは誰なんだ? 名前とか特徴とかは分からないのか?」

「ほっほっほ、それこそがお主のメリットじゃ。どうじゃ? こと(・・)が始まるまでの爺の退屈しのぎに付き合う気にはなったかの」

「……わかった。俺に話せることは話そう」

「それでは契約成立じゃな。それでは、まずは――――――――」


その後、俺は一体誰が審判に加わったのかを頭の隅で考えながらオーディンの質問に答えていくのだった。





レーティングゲームの控室で待っていたグレモリー眷属はゲーム開始時刻となったので皆、若干緊張した面持ちで用意されていた転送用の魔法陣の中に入り、静かに転送されるのを待つ。特に今回の件の中心人物であるアーシアは不安そうにイッセーの手を握っている。

そんなアーシアの不安を感じてかイッセーはその手を優しく握り返して微笑みかける。そして、彼等は光に包まれて転送される。彼等が転送された場所は辺り一面が白く、地面は石造りで出来ており、ただ何もない広い空間で、一定の間隔に柱のようなものが埋め込まれていた。

そしてその後方には大きな神殿のようなものがあったが、どこか様子がおかしいことに彼等は眉をひそめる。なぜ、そうしたのかというと、戦闘フィールドに到着したにも関わらず未だにアナウンスがかからない上に敵であるディオドラ・アスタルトの眷属も到着した様子がないからだ。何かしらトラブルでもあったのかと顔を見合わせている所に背後から声を掛ける者が現れる。


「久しぶりだな……グレモリー眷属諸君」

「あなたは…っ! ヴィクトル!?」


声を掛けた者の正体、ヴィクトルは仮面の下に冷たい笑みを浮かべて驚愕の表情を浮かべるグレモリー眷属を見つめる。突然の登場に一瞬、呆気にとられて固まっていたグレモリー眷属だったがすぐに意識を戦闘に移して、陣形を組み始める。だが、その陣形は直ぐに崩されることとなる。何故なら、突如としてアーシアの体に鎖が纏わりつき、その身動きを封じてしまったからである。


「キャァァァッ!」

「アーシア!?」


アーシアが拘束されたのを見計らったようにヴィクトルの隣に新しい魔法陣が現れる。そして、その中から鎖の先端を持った人物が現れ、強引に鎖を引き、アーシアを引きずるようにしてその手の中に収め、高らかに笑う。


「あははは! これでアーシアは僕の物だ!!」

「ディオドラァァァァッ!!」

「おっと、赤龍帝。アーシアがどうなってもいいのかい?」


アーシアをその手中に収めた人物の名はディオドラ・アスタルト。その登場と行為にイッセーが怒りの雄叫びを上げて殴りかかろうとするが、ディオドラは嘲るように笑いながらアーシアの首筋に手を当てて、それ以上近づけばアーシアを殺すぞと暗に脅しをかける。その卑劣な手口にグレモリー眷属は全員歯ぎしりをしながらディオドラを睨みつけるがアーシアを人質に取られているために迂闊には動くことが出来ない。


禍の団(カオス・ブリゲード)の手引きご苦労。ディオドラ君、君の役目はこれで終わりだ」

禍の団(カオス・ブリゲード)ですって!?」

「当然だろう。私もその一員なのだから。もっとも、本隊は今頃、観戦席やVIPルームで暴れまわっているだろうがね」


リアスの叫び声に対してヴィクトルは淡々と答える。それを聞いたリアスは今回のレーティングゲームは仕組まれていた罠だったのだと気づき、歯噛みする。恐らくは現在の三勢力のトップが集うこの機会に、全戦力を持って一掃してしまおうというのが旧魔王派の考えなのだろうと憶測を立てる。

同時に、新魔王の血筋である自分とその眷属も狙われているのだろうと思い、それに対しては相手の数が少ないとつい思ってしまうが、すぐにヴィクトルに為すすべなく倒された過去を思い出して、理解する。敵は自分達に一人しか送れなかったのではなく、一人で十分すぎると判断したのだと。


「そういうことだ。醜いドラゴンは僕とアーシアが結ばれるのを、指を咥えて見ているがいい!」

「……ディオドラ君。先程の私の言葉を聞いていなかったのか?」

「なんだ、人間? 僕は今からアーシアと―――」


ディオドラはその言葉を最後まで続けることが出来なかった。
なぜなら―――その胸から血濡れた赤い槍が突き出していたからだ。
何が起きたのかも分からずに血を吐き出しながら自身に槍を刺したであろう人物を見るために彼が後ろを向くと凍り付く様な冷たいエメラルド色の瞳と目が合った。


「言ったはずだ。君の役目はこれで―――終わり(・・・)だと」


言外に用済みだと、言い放つと同時に手の部分だけ骸殻化させて出していた槍を引き抜くヴィクトル。ディオドラは支えが無くなり立つことが出来なくなり、アーシアを手放してスローモーションのように地面へと崩れ落ちる。そんなまさかの事態にグレモリー眷属はヴィクトルとディオドラを交互に見る事しか出来ない。


「愚かだな。自分が利用していると思いこみ、実際には利用されていただけとも気づかぬお前は」

「なん……だと? この僕が…利用されていた…?」

「所詮、お前は使い捨ての駒に過ぎない。旧魔王の奴らも役に立たなくなったら捨てるつもりだったようだ」


何の感情も感じさせない声で自分を見下ろしながら淡々と真実を告げていくヴィクトルにディオドラは初めて死への恐怖を抱く。ようやくと言ってもいい程遅くに感じ始めた死の予感に耐えられなくなった彼はアーシアの拘束を解き、必死に頼み込む。


「アーシア! お願いだ…っ。僕を…助けてくれ!」

「え…えっと……」

「その必要はない。そもそも、君が教会を追い出されるはめになったのは、こいつの罠だ」


その言葉にアーシアは驚きの表情を浮かべてヴィクトルの方を見やる。一方のディオドラは血が足りなくなってきたせいか、真実をこのタイミングでばらされたせいか顔を真っ青にして血の滴る口をパクパクとさせている。そんな醜い様子にヴィクトルはフンと軽く鼻を鳴らしてから言葉を続ける。


「こいつはわざと自分で傷を負い、君に近づき、君が追い出されるように仕向けた。そして、時期を見計らって接触して感動の再会を装い、最後には真実を告げ絶望に苦しむ君を犯す予定だったらしい」


知らされた余りに悪趣味な計画にグレモリー眷属は怒りの眼差しで地に伏せるディオドラを睨みつける。それに対して、ディオドラは惨めに出鱈目だと喚き声を上げるが、ヴィクトルがうるさいとばかりにその腕を踏みつけ、槍を喉元に突き付けたことで黙らざる得なくなる。


「君の手下のフリードから聞いたことだ。ああ、恨み言ならあの世でたっぷりと言うがいい」

「い、嫌だ! 死にたくない! 死にたくない! 僕はまだ死にたくないっ!!」


自身の殺害宣言と、フリードを殺したという事を暗に仄めかす口ぶりに、ディオドラはいよいよ余裕がなくなり、死への恐怖を叫び始める。そんな様子にグレモリー眷属は思わず、憐れんでしまう。

事の中心人物であるアーシアもその優しさから許してあげてもいいのではないかと思い、ヴィクトルの方に視線を向けるがヴィクトルはその視線を受け流して冷たくディオドラを見下ろすだけだった。その様子からは彼がディオドラを逃がす気など欠片もないことが十二分に感じられた。


「僕は崇高な悪魔だぞ!? それなのに…人間なんて……劣悪種に…殺されてたまるか!」


「その劣悪種の痛み……存分に味わうがいい―――地獄の業火でな!」


直も喚くディオドラに対して地獄に住むとも呼ばれる悪魔に対して皮肉のようなセリフを吐き捨て、ヴィクトルは槍を振いディオドラの体を跡形もなく消し飛ばす。ヴィクトルは自分が善人だとは欠片も思っていないし、ディオドラのような人間を責められるほど自分が綺麗な人間だとも思っていない。だが、許せなかった。人の愛情を弄ぶディオドラが。

例え、娘の愛情を利用した身であっても許せなかった。同族嫌悪と呼ばれるものかもしれないと思うが自分はただこいつのことが気に入らなかった。理由なんてそれだけで十分だと彼は血を振るい落として槍を消しながらそう結論付ける。そして、自分本来の目的を果たすためにグレモリー眷属の方へと向き直り冷たい声で告げる。



「ルドガーがいないのは残念だが……まあ、後でいい。
 まずは君達から―――始末するとしよう」



若い未来の芽を摘む、死刑宣告を。

 
 

 
後書き
ディオドラさんは瞬殺。だってこの章のボスはヴィクトルなんだから、仕方ないよね(´・ω・`)

それと前回の後書き書いていたヴィクトルのクロス物、リリなのの方を二話ほど書きました。
気になる方は作者のページを見てくださればすぐわかると思います。
前回後書きに書いたので一応の報告でした。 
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