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転生とらぶる

作者:青竹
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番外編044話 if 真・恋姫無双編 14話

 シ水関の中。現在そこには反董卓連合軍を結成した諸侯の面々が縛られて並べられていた。
 逃げ出さないように手足を縛られ、更には首まで縛られて諸侯全員が一繋ぎにされている。それぞれが軍勢の長だった者達だと考えれば、その屈辱は耐えがたいものだろう。
 同時に、武将達に関しても別の場所に隔離されて諸侯と同様に縛られている。
 いや、武将という事でより厳重に手足を縛られ、身動きが出来ない状態になっているといってもいいだろう。
 シ水関の戦いで上手く逃げ出せた者は、ほんの少し。偶然にも地上に落とされたジェネシスに背後にいた者達のみだ。
 もっとも、アクセルの発案で冥琳や穏、亞莎、詠といった面々が考えて実行に移した、商人や旅人、あるいはその類の組織を使っての情報操作により反董卓連合に所属した者達は須く逆賊として大陸中に名前が知れ渡っている。
 もし自分の本拠地に戻ったとしても、下手をすれば民衆に討たれる事になる筈だった。
 その辺の事情を華琳や桃香を始めとした諸侯に説明すると、殆どの者が絶望のあまりに頭を垂らす。
 そんな中でも完全に打ちひしがれており、まるで魂そのものが無くなってしまったかのような人物を眺めつつアクセルは内心で感嘆する。

(まさか、ジェネシスの真下にいたというのに生き延びていたとはな。悪運ここに極まれりってところか?)

 その人物は金髪の縦ロールをした美しい女。本来であれば高飛車な態度を取っているのだが、今はその態度も完全に鳴りを潜め、ただ呆然としたままだ。
 袁紹。即ち、今回の反董卓連合軍の発起人である。
 シ水関に向かって進んでいた中でも、その立場から軍勢の真ん中にいた袁紹。当然真上からアクセルがジェネシスを落としたのだが、ジェネシスの隙間に上手い具合に入り込んで、ほぼ無傷であの惨劇を乗り越えたのだ。
 他にも、お付きの武将でもある文醜や顔良もその幸運によってかすり傷程度で生き延びる事が出来た。それ故に身体的な傷は殆どないのだが……その精神に負った傷は深い。
 何しろ、袁紹が率いてきた軍勢の大部分がジェネシスに押し潰されて死んだのだから。
 もしこの場をどうにか出来たとしても、圧倒的な兵力不足になるのは明白だった。
 尚、反董卓連合に所属する兵士や武将、あるいは諸侯をプチリと潰したジェネシスは、既にアクセルの空間倉庫に再び収納されている。
 その光景を見ていた諸侯は、自分で見たものが信じられないといった様子でただひたすら呆然とするしかなかった。
 ともあれ、アクセルは目の前にいる諸侯に対して口を開く。

「戦後処理が一段落ついたら、お前達を洛陽に運ぶ。その際に逆賊となったお前達に対して反逆罪の裁きが下されるだろう」

 淡々とアクセルの口から出る言葉に、殆どの諸侯の顔が青く染まる。
 皇帝に対する反逆罪ともなれば、斬首は間違いない。いや、それだけではなく、自分以外の血族も死刑となるのは間違いなかった為だ。
 そんな中、華琳と桃香の2人はただ自らの運命を受け入れるかのように言葉を発しない。
 その様子を見たアクセルは、華琳はともかく桃香の方が動じた様子がないのを意外に思う。

(劉姓だから助命されるかも……とか考えている、のか?)

 首を傾げつつ、その辺に関して自分は関係無いんだから董卓に任せた方がいいと判断する。
 アクセルが口にしたように、普通であれば反逆罪は死罪だ。だが、今回は色々と考慮する理由もある。ここにいるのは、諸侯の中でも有力者と呼ばれている者が多く。それら全てを処断してしまえば漢という存在自体を維持出来なくなるのだから。

(その辺を理解しているからこその態度だったりするのかもな)

 とはいえ、幾ら助命されるとしてもそのまま無罪放免という事は有り得なかった。何らかの枷が付くのは間違いないだろう。

(俺なら鵬法璽辺りを使うけど……さて、月や詠はどう判断するんだろうな)

 そう考え、取りあえずこの場には監視の兵を残してアクセルは戦の後処理をすべく部屋を出て行くのだった。





「うわぁ、アクセル様。これを片付けるのは色々と……」

 明命がそう告げてくるのを聞き、アクセルもまた面倒臭そうに頷く。

「確かにこれを1人ずつ片付けるのは色々と面倒この上ないな」

 シ水関へと続く道で、アクセルは呟く。
 ジェネシスによって押し潰されて死んだ者、出撃した孫呉・董卓連合軍によって殺された者、あるいは味方同士の混乱の中で死んだ者。
 それらを含めれば、数万人規模の死体の山、山、山、だ。
 だが、これを放っておけば間違いなくこの周辺に疫病が広がるだろう事を考えると、このままにしておくような真似は出来ない。

(炎……は駄目だな。『燃える天空』辺りを使えば一気に焼却出来るけど、寧ろ威力が強すぎて崖にも被害を与える事になりそうだ。となると……しょうがない、か)

「祭、明命。これからちょっと驚くような光景を見ると思うが、一応これも俺の仙術の1つだからな」
「ぬ? はてさて、どのような仙術なのやら」
「あ、はい。分かりました」

 それぞれからの声を聞き、指をパチンッと鳴らして空間倉庫からスライムを呼び出す。
 祭や明命の口から悲鳴が上がっていたが、アクセルは全く気にした様子も無くスライムをシ水関へと向かう通路一杯へと大きく広げていく。
 元々これまでの経験でかなりの容量となっていたスライムは、薄く、広く伸びていき、反董卓連合軍のいた場所全てへと覆い被さるように広がる。
 そうして、次の瞬間には死体や血、あるい剣や鎧といったものの他にも多くを吸収し、数万人分の死体の容量分一気にその大きさを増す。
 ……死体だけを区別するのは面倒だという理由で、道そのものもある程度吸収した結果、スライムで吸収した部分だけが綺麗に整地されたような状態になったのは、色々な意味で予想外だっただろう。
 意図せぬスライムの使い方にアクセル自身も驚いたのだが、このスライムの使い方は、以後孫呉において大いに役立てられる事になる。

「……なんともまぁ。道に少なからずあった石や岩、あるいは穴といったものが全部無くなっておる」
「はわわ……凄いです」

 そんな、感心とも呆れともつかない声を聞きながら、死体の処理を含めて終えたことによりシ水関へと戻る。

「じゃあ、ウチは一応ここに残っていればええんやな?」

 洛陽へと向かうのは、アクセル、祭、華雄。
 霞と明命はそれぞれ董卓軍と呉軍を代表してシ水関に残ることになる。

「ああ、悪いけど頼む」
「それはまぁ、ええんやけど……あの人数をどうやって洛陽まで連れていくつもりや? 正直、無駄に時間が掛かると思うんやけど」

 数十人の諸侯。当然それなりの扱いをしなければいけないのでは? と尋ねてくる霞に、アクセルは何の問題もないとばかりに口を開く。

「仙術でな」
「はぁ……仙術っちゅうのは色々と出来るもんなんやなぁ……」

 そんな言葉を聞きながら、アクセル、祭、華雄の3人は縛られている諸侯と共に影のゲートを使って洛陽へと戻る。
 その際、影に沈む感触に悲鳴を上げる者も大勢いたが、当然ながらアクセルがそれを考慮する筈も無かった。





 その後、洛陽についたアクセル達は早速捕らえた諸侯を董卓軍へと引き渡す。
 月や詠はそれを引き取り、皇帝と共にどのような罰にするのかを相談する。
 詠としては、自分の大事な月に牙を剥いた者達は殺してしまいたいという気持ちで一杯だったのだが、軍師としての頭がそれを否定する。
 どうしてもこの中華全土を治めるには、諸侯に協力して貰う必要があった為だ。
 もしもここで諸侯全てを斬首した場合、間違いなく中華は混乱の渦に巻き込まれるだろう。それを理解出来るだけの頭があった為に、詠は反董卓連合軍に参加した者達を斬首にする事は出来なかった。
 勿論そのまま無罪放免という訳はなく、地位の降格や必要最小限を残して資産の没収、同時に連座制を適用して血族も同様の処置に。兵力に関しても10分の1近くまで減らされる事に決められていた。
 特に袁紹は反董卓連合の発起人という事もあってほぼ全ての財産を漢に没収され、その結果シ水関で死んだ兵士の補充も出来なくなり、広大な領地を治めきれずに自ら皇帝へと返納する事になる。
 その結果袁家そのものが没落していき、かつては三公を排出したという名門の名前は地に落ちる事になる。
 華琳を含めた曹家に関しては袁家程の没落ぶりはみせなかったが、それでも天下統一を目指すのは不可能となった。
 寧ろ、能力が高いだけに詠や冥琳も監視の目をこれ見よがしに送り込み、24時間常に監視の目に晒される。しかし、それでもさすがに華琳と言うべきか、きっちりと仕事をこなし続け、常に結果を出し続ける。
 結果的には治世の能臣という人物評に相応しい活躍を続けるのだった。
 桃香に関してもアクセルからの進言により華琳と同様の処置がとられ、こちらもまた優秀な部下の力を借りて自らに任された土地を過不足なく治める事に成功する。
 寧ろ桃香本人は結果的には漢で争いが少なくなった為、望んでこの結果を受け入れていた。
 もう1人の劉備軍の重要人物でもある一刀は、桃香と共に与えられた土地を治め、同時に劉備軍に所属している殆どの武将との間に子供を作ることになる。
 馬超や公孫賛もまた反董卓連合軍に所属したとして一律に罰せられるが、五胡と接している防壁という土地柄や、あるいはアクセル自身が殆どその名前に聞き覚えがなかった事もあり、桃香や華琳程厳しい処分はなかった。
 また、シ水関から上手い具合に撤退する事に成功した劉表軍だったが、他の諸侯が軒並み捕虜となっている以上は自分だけで孫呉・董卓連合軍に対抗出来る筈もなく降伏の道を選ぶ。
 その潔さを認められ、財産の没収と監視の派遣だけで済まされる事になる。
 また、劉表の部下として高名だった霍峻がアクセルに接触。その後の詠と冥琳の協議により、霍峻は孫呉預かりの身となり客将となる。
 本人は色々と納得していなかったが、劉表の下に霍峻程の有能な人物をつけておくとまた厄介な事になりかねない為の処置だった。
 事実、霍峻は優秀であり孫呉の発展に関して大いに力となる。
 何だかんだ言いつつアクセルともそれなりに仲良く過ごしていた。
 特にアクセルからこれまで経験してきた世界の事を聞かされると、自分好みのアニメや漫画、ゲームの世界を巡ってきたと知り、酷く羨ましがるという一幕も。
 尚、霍峻は最終的に何故か孫尚香とくっつき――より正確には捕食され――名実ともに呉の重鎮となる。
 その後、呉は霍峻の知識やアクセルの反則的な能力の数々、冥琳や穏、亞莎を始めとした有能な人物の指揮の下、大いに栄える。
 最終的にその版図は広大になり、漢からの完全な独立という形で中国は三國志ではなく二國志といった形で後世に伝わる事になる。
 ……尚、原作であれば病気により死んでいた筈の冥琳なのだが、アクセルに毎晩のように抱かれていた影響か、いつの間にか病が綺麗さっぱりなくなっていた。
 冥琳本人は自分はそう長くないだろうと判断していたにも関わらず、気が付けば全くの健康体になってたのだ。
 三國志に関して詳しい知識を持っていた一刀や原作知識を持っていた霍峻から勧められ、名医と名高い華佗に診てもらったのだが、その結果が全くの健康体だった。
 これには冥琳本人も混乱したのだが、アクセルがシェリルの件を思いだした事により一件落着となる。……ただし、その後暫く華佗がアクセルの身体に興味を持って呉に居座り続けたのだが。
 ただ、その結果霍峻の知識を含めて呉の医療技術は急速に発展する事になる。
 その中には、アクセルの空間倉庫の中に入っていた各種薬も影響しているのだが。
 また、アクセルが不老の存在だと知った雪蓮と冥琳が死別するのを嫌がりアクセルと共に生きる事を望む。
 だが空間倉庫の中には時の指輪はなく……最終的にとった手段は、アクセルの血を飲むということだった。
 高濃度に圧縮された魔力の詰まったアクセルの血は、魔法使いであっても……それこそ真祖の吸血鬼であるエヴァですらも摂取しすぎれば危険な代物なのだが、雪蓮と冥琳の2人がそれをどうにかこうにか乗り越えたのは、やはり愛の力だったのだろう。
 また、それを機に雪蓮は呉の玉座を正式に蓮華へと譲る事を決め、不老となった2人とアクセルの3人は公の場から姿を消す。
 ……尚、その際にアクセルは蓮華に告白され、思春と共に一夜だけの恋人として過ごしたという噂が流れた。
 その後、呉は栄え続けて数百年以上も国が存在し続け、最終的には漢という国すらも併合する事になる。
 だが、それを見届ける前にアクセル、雪蓮、冥琳は完全に呉から姿を消していた。
 風の噂に寄れば、光の繭のようなものと共に数人の女が姿を現し、アクセルに対して抱きついていたという話もあり、それがアクセル・アルマーという人物がこの世界において最後に姿を現した出来事となる。 
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