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美しき異形達

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第四十五話 博士その十五

「調べてくれて」
「色々わかればいいわね」
「わかると思うんだよ」
 薊は確実ではないがそれに近いといった口調で答えた。
「あたしはさ」
「博士ならって思うのね」
「ああ、色々知ってる人だしな」
「それでなのね」
「あの人ならな」 
 それこそ、というのだ。
「あたし達のことを全部はっきりさせてくれるさ」
「じゃあ楽しみにして」
「待っていようか」
 これが薊の考えだった。
「今は」
「そしてよね」
「横須賀な」
 薊は再びだ、その顔を引き締めさせて裕香に言った。
「行くか」
「電車でよね」
「あたし的には本当にさ」
 薊は今度は苦笑いになって裕香にこう言った。
「バイクで行きたいんだけれどな」
「だからそれはね」
「しんどいっていうんだよな」
「時間もかかるしね」
 電車で行くことに比べてというのだ。
「お金も」
「電車の方がずっといいか」
「私はそう思うわ」
「だからか」
「うん、やっぱり電車よ」
 神戸から横須賀に行くにはというのだ。
「ここはね」
「そうか」
「あくまで私の考えだけれど」
「そうか、じゃあな」
「電車で行く?」
「そうしようか。割引もあるしな」 
 薊も金のことは頭に入れていた、ここではガソリン代だ。バイクもガソリンがなくては動き様がないからだ。
「電車にするか」
「うん、ただね」
「ただ?」
「横須賀には行くのね」
「ああ、それはな」
「もう決めてるの」
「そうしようって思ってるよ」
 実際に、というのだ。
「駄目かい?」
「いえ、夏休みはまだまだあるし」
「それにお盆だしな」
「だからね」
 それならと言うのだった、裕香も。
「いいと思うわ」
「そうか、じゃあな」
「行くのね」
「そうするな」
「じゃあ私もね」
 裕香は薊の決意を聞いて微笑んで答えた。
「一緒に行っていい?」
「ああ、裕香ちゃんもか」
「うん、そうしていいかな」
「お金あるよな」 
 薊が裕香に最初に問うたのはこのことだった。
「裕香ちゃんも」
「うん、あるわ」
「じゃあいいよ」
 電車賃なり何なりがあるのなら、というのだ。
「行こうか、一緒に」
「うん、それじゃあね」
「横須賀も観てくれよ」
「薊ちゃんいい場所っていつも言ってるわね」
「実際にそうなんだよ」 
 いい場所だというのだ、薊も。
「期待してもらって結構だよ」
「何か岡田監督みたいなこと言うわね」
「元阪神の監督のか」
「うん、あの人もそんなこと言ってたから」
 期待してもらって結構だとだ、実際に阪神をリーグ優勝にさせた実績がある。日本シリーズはともかくとしてだ。
「何かね」
「阪神か、まああたしは野球は横浜だけれどな」
「ベイスターズね」
「そうだよ、じゃあ横浜もな」
「あそこも行くの?」
「そうしようか、メインは横須賀だけれどな」
 薊が育ち彼女のことを詳しく知っている人がいる孤児院のあるその場所がというのだ。
「それでも行くか」
「それじゃあね」
 こう湯舟の中で話してだった、そのうえで。
 薊は裕香と共に横須賀に行くことにした。そこでもまた己のことを知ろうというのだった。


第四十五話   完


                      2015・1・8 
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