ロンジー
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第二章
「そんな恥ずかしいこと」
「そうよね」
「人前でお肌を見せることは」
それこそというのだ。
「悪いことよ」
「その通りね」
「別にムスリムみたいにヴェールはしないけれど」
「仏教徒ならね」
「お肌は見せないわよ」
決して、というのだ。
「そんなの当然じゃない」
「その通りよ、本当にね」
「暑くてもお肌は見せない」
「それは絶対よ、だからね」
「結局のところは?」
「我慢するしかないのよ」
この暑さをというのだ。
「今はね」
「やれやれね」
「というか確かに今日は暑いけれど」
それでもとだ、シ=トーはスー=チーに言った。
「スー=チーは暑がりよ」
「それに過ぎる?」
「相当にね」
そうだというのだ。
「あんた前も言ってたし」
「何か今年暑いでしょ」
「今年の夏は?」
「特にね」
「ミャンマーは暑い国じゃない」
ひいてはこのヤンゴン近郊の二人が住んでいる町もというのだ。今は三時半でありまさに一番暑い時である。二人共学校帰りを一緒に歩いているのだ。
「最初からね」
「そのことは言うまでもないけれど」
「ミャンマーで生まれてるのなら」
「慣れて当然っていうのね」
「だからお家に帰るまでの我慢よ」
「お家に帰ったら扇風機があって」
「そして氷もあるわよ」
氷の様な菓子もというのだ。
「アイスキャンデーやアイスクリームがね」
「夏はそれね。氷を入れたお水とか」
「あとジュースね」
「そういうのがあるから、何ならお店で買う?」
そうしたお菓子やジュースをというのだ。
「それで涼しむとか」
「ううん、お金もないから」
スー=チーは買うとなるとだ、困った顔になった。
「というか前に暑かった時にジュースとかいつも飲んでたら」
「お金なくなったのね」
「そうなの、アイスクリームも最近やたら食べてるし」
夏だからだ、ミャンマーは熱帯にあり常に暑いが夏になると特に暑い。それでスー=チーも暑さに耐えられなかったのだ。
「それでなのよ」
「無駄遣いの結果なのね」
「今はお金がないの」
「厄介なことね」
「だからお店で買いものは出来ないの」
ジュースやお菓子をというのだ。
「家まで我慢するしかないわね」
「そういうことね」
こんなことをだ、二人で話しながらだった。スー=チーはシー=トーと共にその暑い帰り道を進んでだった。
家に帰った、そして家に帰ると。
すぐに冷蔵庫からアイスキャンデーを出してそのうえでだ、ジュースに氷をたっぷりと入れてごくごくと飲んだ。
そうして扇風機の風に当たってだ、こう言ったのだった。
「本当に今日は暑いわ」
「あんた最近ずっとそう言ってるじゃない」
そのスー=チーにだ、母が言って来た。丁渡家事をしている。
「暑い暑いって」
「だって本当に暑いから」
扇風機の風を最強にして当たりつつの言葉だった。
「仕方ないじゃない」
「暑いって幾ら言っても涼しくならないわよ。それにね」
「昔はアイスキャンデーも氷も扇風機もなかったっていうのね」
「全部ね」
スー=チーが家に帰って楽しんでいるもの全てがというのだ。
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